「お主のことは、よく覚えているぞ」(忍軍襲来時、梟に対して九郎が言ったセリフ)
「お主… 若様の、忍びじゃな」(平田屋敷住人。隻狼に対して)
「…お主 梟の…せがれか…」「御子様を… 急ぐ、のじゃ…」(平田屋敷の寄鷹衆)
だが、梟は平田襲撃の手引きもしている
「梟の手引きも、なかなかのものではないか」(平田屋敷、義父の守り鈴)
平田襲撃の梟の目的は大きく二つある
一つ目はお蝶を誘き出して始末すること
二つ目は死んだことにして行方をくらますことである
まず一つ目であるが、お蝶が問答無用で襲ってくるところを見ると、彼女は梟とその倅を敵と認識している。つまり、九郎の護衛だと認識しているのだ
これは彼女が梟の思惑を知らずに平田屋敷を襲撃したことを示している
お蝶の目的は、丈との契約に失敗した時に残された桜雫を使い不死になることである。おそらく梟は竜胤の御子がそこにいて、その日、その時に警備が手薄になる、とでも情報を流したのであろう
九郎:丈様の竜胤もまた…
そなたと共に、生きるのだ(桜雫を九郎に渡した時)
「……肝心なときにおらぬ、とんだ役立たずめ」(平田屋敷の住人)
「お主、賊を手引いたのではあるまいな? さもなくば、この平田屋敷がこうも呆気なく落ちようものか…」(平田屋敷の住人)
お蝶はまんまと梟の罠にはまり、平田屋敷を襲撃したのである。そうして幻覚により九郎を操り不死の契りをしようとしたちょうどその時、隻狼が現われた
彼女にとって隻狼は九郎の護衛という認識である。ゆえに襲いかかったのである
梟は隻狼がお蝶を倒すも良し、殺されるも良し、と考えていたのであろう。隻狼とお蝶が同士討ちしてくれるのが最上の結果であっただろう。
だが、隻狼が勝ってしまった。ゆえに梟自身がとどめを刺したのである
お蝶が死ぬことで一つ目の目的が達成された。また、目撃者(関係者)を全員始末することで、梟は二つ目の目的を達成し、自分の死を偽装することに成功したのである
「死んだと聞いていたが、いったい何をたくらんでいる」(忍軍襲来時、梟に対する九郎)
「生きておいでだったとは…」(隻狼)
「謀よ」(梟)
抜け忍には執拗な追っ手がつきものである。それを避けるため、梟は自分の死を偽装する必要があったのだ
葦名の忍びを抜けて寝返った先はおそらく内府方であろう
「…オレは、好かねえなぁ あの爺は、どうにも胡散臭えや あれは、外道… ド外道だぜ、正就さんよう…」(平田屋敷、義父の守り鈴)
孤影衆 槍足の正長と戦うこと、正就がいることなどから、梟が葦名を抜けて寝返ったのは内府方だと思われる
だが、梟の本当の目的はただ内府方に寝返るだけではなかった
彼は、薄井右近左衛門として、その名を轟かせようとしていたのである
その目的のために竜胤の力を欲したのである
「お主も、竜胤に魅入られたか」(忍軍襲来時、梟に対する九郎)
戦いの残滓・大忍び 梟
心中に息づく、類稀な強者との戦いの記憶
今はその残滓のみが残り、
記憶は確かに狼の糧となった
大忍びの梟は、
身に余る野心を抱き、竜胤の力を欲した
さあ、己の真の名を、日の本に轟かせるのだ
全てはそのための謀であった
ここでいう竜胤の力とは、「拝涙」ではなく「開門」のほうであろう
修羅エンディングで、彼は黒の不死斬りを手に隻狼の前に現われる
全盛期の力で黄泉返ることにより、それは可能となる
※平田襲撃時に九郎を連れていかなかったのは、そもそも不死の契約をするつもりがなかったからである。彼は「開門」による黄泉返りを求めていた。ゆえに、九郎はむしろ葦名方に保護されていた方が都合がよいのである
※子供をつれて黒の不死斬りを探しにいくよりも、安全な場所にいてもらったほうがいいからである
なぜお蝶を殺したか
もともと梟とお蝶は一心とは近しい間柄である
一心に竜泉を飲ませたとき
一心:酒飲みながら、十文字槍を手放さぬ馬鹿者に…
人の酒を幻術でかすめとる、馬鹿者 盃片手に、作りかけの義手をい じっておる、馬鹿者
それから…
でかい図体で、すぐに真っ赤になる、見かけ倒しの梟もな!
人返りルートでエマはいう
「あの頃…私と弦一郎殿は、良くここを訪れていた 常桜の下で、丈様が笛を吹かれ、巴殿が舞われる… それを見るのが、たまらなく好きだった」
エマが丈と巴と面識があったとするのなら、梟とお蝶も面識はあっただろう。一心との間柄を考えるともっと深い関係であったことも考えられる(お蝶は丈の桜雫をも所持している)
一心にとって丈と巴は客人である。主としてその身の安全を守らなければならないのである。その護衛として信頼の厚い梟とお蝶を遣わしたというのは、考えられる話である
つまりお蝶は丈と親しく、それゆえに「竜胤の力」の秘密をも知っていたのである(桜雫を持っていることからも、かなり深く竜胤の力に関する知識を持っていた可能性が高い)
「開門」による黄泉返りを企む梟にとって、その秘密を知る者は非常に危険な存在である。先を越されるかもしれないし、妨害されるかもしれない。ゆえに、まずその知識に通じたお蝶を始末することが優先されたのである
※お蝶が桜雫を手に九郎に会いに行ったのは、あるいは九郎自身との契約が断られた場合、それを見せて情に訴えるつもりだったのかもしれない。九郎なら絆されて桜雫を使って再契約した可能性はある
なぜ隻狼を殺したのか
死の偽装が露見すれば、追っ手として狼が遣わされる確率が高い。一刻も早く黒の不死斬りを探さねばならない梟にとって、強敵の存在は邪魔であるさらに、隻狼が生きていれば必ず自分を探すはずで、そうすると偽装が露見する可能性がある
関係が近しいがゆえに、隻狼もまた非常に危険な存在だったのだ
またお蝶を倒した者として、それにふさわしい力量の者は隻狼しかいなかったのであろう。お蝶ほどの忍びが死んでいれば必ず殺した者が探られる。だが、同士討ちならば、調査が梟の偽装にまで及ぶ可能性は低いであろう
薄井の森で修行を積んだお蝶と、薄井右近左衛門。
返信削除一心に出会う前から、深い関係があったのかもしれませんね。
平田屋敷の義父はフクロウの幻術出しますからね。あのフクロウは薄井の森の影響がうかがえます
削除開門は死人帰りのための刀だから、まず自分が死なねばならない。その方法を使うには、信頼できる相手が必要だが……梟にそんな相手はいないだろう。
返信削除だから狙いは開門による黄泉返りではないと思う。
極論すれば、絶対に命令を遂行する忠実な部下が一人いればいいんだと思います
削除大忍び、梟が率いる忍軍もまた「忍び」であるので「忍びの掟」に縛られているでしょう。隻狼が御子の従者となったのを知って、方針を変更したという可能性も考えられます
九郎がムービーで「父上・・母上・・蝶々どこだ」と呼んでいるので蝶々も平田屋敷に住んでいたのでは?
返信削除コメントありがとうございます
削除蝶々というのはお蝶のことではなく、まぼろしの蝶々のことではないでしょうか
まぼろしクナイ
投げると音が鳴り、
クナイを追って“まぼろしの蝶々”が飛ぶ
九郎は幻術の蝶々を追って隠し仏殿へ誘い出された、と考えました
お蝶と梟の関係ですが、お蝶の残滓に「義父が狼にあてがった」とあるのでこの二人には上下関係があったのでしょう。
返信削除そして義父の守り鈴での梟のセリフ「よもやここまでになるとはな」の「ここまで」はお蝶を打ち負かしたことを指しており、梟は狼を始末するためにお蝶を差し向けたのだと考えられます。主である御子が拐われれば、狼が掟に従い取り戻しに来ることは明白ですから、憂いを断つために殺そうとしたのでしょう。
お蝶が若き日に修行した薄井の森の、「薄井」の名を受け継いでいることから、梟のほうが地位が上だったというのは同意です
削除平田襲撃時に「お蝶殿、何故」と隻狼が口にすることから、隻狼がお蝶を同陣営だったと考えていたこともわかります
しかしながら大忍び梟が、「第一の掟により、父が命じる。主よ捨てよ」と言うことから、梟のなかでは「主よりも親の方が優先される」という考え方があるかと思います
「親は絶対 逆らうことは許されぬ」とまで言い切る梟であれば、お蝶を差し向けるよりも先に「命ずる」か、「自分で始末する」かを試みるかと思われます
それをせずにお蝶を隻狼と相対させたのは、二人の共倒れを狙ったからではないでしょうか
どちらが倒れたとしても、それは梟の想定内であり、最初から生き残った方を己の手で始末する計画があったと思われます
そしてなぜ二人ともを始末しなければならなかったかというと、「死んだことにして行方をくらませる」という「すべては謀よ」のために、知人血縁を消す必要があったからではないでしょうか
掟を教える際に親と主で優先順位をつけていなかったのだと考えていたのですが、OPで梟は狼に対して、主のことを親の次に大切なものと言っていたので親の命令が第一と考えていたのは間違いない事に気づきました
削除お蝶が不死を求める理由がわからないのですが、自説の補強をする根拠も無いのでこれ以上はやめておきます
私も返信したあとにOPを観ていて思い出しました
削除なかなかとっさには出てこないものですね
自分の理解力が不足していて分からないのかもしれませんが、お蝶が不死になろうとする理由がピンと来ません
返信削除九郎を狙ったのは彼が竜胤の御子だからという理由からでしょう
削除また、それに加えて桜雫が彼女の未練を象徴しているのではないでしょうか
素晴らしい解説でした、自分はゲームをクリアするだけで精一杯で、今でも”まだまだ子犬よ”しか脳内に響いてなかった
返信削除ありがとうございます。梟は隻狼と関係が深いわりに謎が多く、丈時代から暗躍していたような、そうでないような困った人です。「謀よ」の一言がインパクトありすぎですからね
削除梟もお蝶も老いを恐れたんですかね…
返信削除一心様の話を聞く限り2人とも元々はまともな人だったようですし…
それともその時から野心はあったのでしょうか…
契機となったのは、巴と丈とのアレコレだったのではないかと考えています
削除お蝶は桜雫を所持していますし、梟は常桜の枝を折っています。その意味をどうとらえるかなのかなと。
梟とお蝶は敵対関係にあったのでしょうか…?
返信削除むしろ共同戦線を張っていた可能性があると思います。
隠し仏殿にて「久しいな 梟のせがれ」とお蝶が言います
返信削除「梟のせがれ」と認識していてなお、戦う意志を見せることから「梟」とは敵対関係にあると解釈しています
その上で「梟と手を組み、狼を倒そうとしていた」という可能性も考えられますが
その場合、梟の性格からして二人がかりで隻狼を亡き者にする気がします
過去の平田屋敷に関しては様々な仮説があるので、解釈の分かれるところですね
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返信削除忍びたちの思惑についての考察、大変面白かったです。ただ、他の読者の方も仰るように、お蝶が桜雫を持ち、九郎を狙ったのは野心故ではないと思うのです。
返信削除これは妄想の域を出ませんが、お蝶は丈に次代の竜胤の御子の事を託されていたのではないでしょうか。
丈は竜胤の力を憂いていたのは作中に語られる通りです。そして、彼は竜胤の力に魅入られた者たちが竜胤の残滓である桜雫を奪い合うことを予測していた。お蝶が桜雫を持っていたのは、おそらく彼女が丈にあてがわれた、もしくは丈が信を置く忍びであったため、丈と巴の亡き後に隠してしまうように言いつけられたためではないでしょうか。
平田屋敷で狼と相対したのも、お蝶は、狼が梟の謀を知らずに彼に利用されており、説得は通じないと考えていたためではないでしょうか。(現に、狼は梟の死んだふりと遺言に騙されています。)お蝶は梟と近しい関係であり、彼の野心を見抜いていたのでしょう。そして、彼が「開門」を以て全盛の力を取り戻そうとしていたこともまた察しており、九郎が供物として弑されることを防ぐために、平田襲撃の混乱に乗じて九郎を拐かそうとしたのでは、とも思うのです。(もっとも、お蝶の最期の言葉には安堵しか感じられず、丈との約束を守れないことへの無念は見出だせません。ここまで成長した狼ならば梟の謀をも破れると感じたのかもしれませんし、ここまでの文を全否定するならばそもそもお蝶と丈にはさしたる関係は無かったのかもしれません。)
論拠は脆く、またお蝶の狙いが分かったとてマクロな考察に影響はないでしょうが、やはりどうしてもお蝶が野心家であったようには思えないのです。
そうですね、お蝶に関しては考察が浅かったかもしれません
削除個人的にはお蝶のモチーフキャラクターは『タフの方舟』のトリー・ミューンというキャラクターだと思っているのですが、その点からいっても本考察のお蝶とはそぐわない気がします
本考察では、メインは梟でありお蝶のそれは本筋から離れるということで、やや粗雑になってしまった感は否めません
ふと、お蝶の考察をしていなかったなと気づいたので、お蝶の単独の考察をしてみようかとも思っています