2019年4月29日月曜日

Sekiro資料:壺の貴人

源の宮の壺の貴人、維盛(これもり)


→接近

維盛:のう… のう…

→離れて最接近

維盛:そこのお主… のう…

→話しかける

維盛:のう、お主、鯉の鱗を知らんかえ?
宮様の宝鯉(たからごい)の、貴い鱗…
それを持てば、存分に褒美をとらそうぞ…

→話す

維盛:…のう、お主よ
もし何処かで、我と同じ、壺に会うことがあっても
あ奴の願いを、聞かぬでおくれや
…あれは、一族の恥者(はじもの)
己のため、ぬしの鯉様を弑(しい)せんとした、大逆の罪人(つみびと)よ…

→話す

維盛:…ふふ、大分鱗が戻ったのう
お主のお蔭じゃ… ようやっと、あ奴の罪を償える
…しかし、鱗は貴いのう…
まるで、我までが貴いようじゃ…
ウフッ

→話す

維盛:
…のう、お主よ
ここまでの働き、天晴れであった
ゆえに、お主を見込んで話を…
いや、秘めごとを、聞いておくれや?

→秘めごとを聞かない

隻狼:………

維盛:おお、もしや我をお疑いかえ?
だが、それは誤解というもの
そして、誤解ゆえ、すぐにも解けるというものじゃ
…のう、お主なら分かるじゃろう… のう?

→話す

維盛:…のう、お主よ
我の秘めごと、聞く気におなりかや?

→秘めごとを聞かない

隻狼:………

維盛:おお、まだ誤解は解けておらぬかの
だがお主なら、すぐにも解けるというものじゃ… のう?

→話す

維盛:…のう、お主よ
我の秘めごと、聞く気におなりかや?

→秘めごとを聞く

隻狼:ああ

維盛:おお、左様か。まこと天晴れなおのこよの
…して、秘めごとじゃが…
この餌を、ぬしの鯉様に献上しておくれ
…くれぐれも、誰にも知られず、ひそひそとな…

→まこと貴い餌
 まこと貴い餌
  これは、まこと貴き餌なり

  毛など生えていれば、なおさら貴い
  生きた心地もせぬほどに

  源の宮の壺の貴人は、実にぬし思いである

   この餌を、ぬしの鯉様に献上しておくれ
   くれぐれも…
   誰にも知られず、ひそひそとな…

維盛:さすればお主に、宮の秘宝を授けようぞ…

→話す

維盛:のう、お主、我の餌を、よろしく頼むぞえ
ぬしの鯉様に献上しておくれ
くれぐれも、ひそひそと… ひそひそとな…
さすればお主に、宮の秘宝を授けようぞ…
ウフ、ウフフフフッ…

→話を抜ける

維盛:のう、お主、我の餌を、よろしく頼むぞえ
ひそひそと… ひそひそとな…
ウフ、ウフフフフッ…

→斬る

維盛:ひっ!
ひいっ!
わ、割れる!
壺が、割れてしまう!


平田屋敷の壺の貴人、春長(はるなが)


→接近

春長:そこのお主… もし…

→話しかける

春長:お主、鱗を持っておいでかい…?
もし持てば、存分に褒美をとらそうぞ…

→話す

春長:…お主よ
我は鯉になりたいのじゃ
永い時を、育ちと共にある、大きな鯉
…老いぼれぬ鯉にのう…

→話す

春長:…お主、仙郷の香りがするのう…
それに、今までのよき心がけ…
よきかな! お主に、これを授け渡そうぞ

→まこと貴い餌
 まこと貴い餌
  これは、まこと貴き餌なり

  毛など生えていれば、なおさら貴い
  生きた心地もせぬほどに

  平田屋敷の壺の貴人は、ぬしになりたい

   仙郷の、ぬしの鯉に与えてたもれ
   さすれば、我は鯉となり…
   お主に、秘なる宝を授けようぞ…

春長:仙郷の、ぬしの鯉に与えてたもれ
さすれば、我は鯉となり…
お主に、秘なる宝を授けようぞ…

→話す

春長:お主、我の餌はどうしたかの?
仙郷の、ぬしの鯉に与えてたもれ
さすればお主に、秘なる宝を授けようぞ…
待っている、待っているでの…
待つことは、慣れているでの…
ウヒ、ウヒヒヒヒッ…

→話す

春長:…源の宮の、痴れ者どもめ…
もうすぐ、我は鯉になろうぞ
老いぼれるだけのお前たちに… 及びもつかぬ永遠…
新しいぬしにのう…
ウヒ、ウヒヒヒヒッ…
ウヒヒヒヒヒヒッ…

→話を抜ける

春長:お主、我の餌を頼むぞや
待っている、待っているでの…
ウヒ、ウヒヒヒヒッ…

→斬る

春長:あっ!
やめっ!
やめぬかっ!
壺が、割れるでないか!

Sekiro資料:源の宮の姉妹

妹(水生の御屋敷)


妹:もし、お若いお人…

→話しかける

妹:お若いお人、お気をつけください
宮の貴族たちは、若い精気に渇いています
吸いたくて、吸いたくて、仕方がないのです

隻狼:…ああ

妹:特に、この先… 中庭は鬼門です
宮の貴族が、わらわらと…
先に進むなら、外周を回られた方がよろしいです

→話しかける

隻狼:なぜ、俺に?

妹:…お若いお人に、ひとつ頼みがございまして…

隻狼:何だ

妹:父のことです
我が父は、貴族になりましたが…
そのとき、鯉に魅入られてしまいました
もうずっと、ずっと、ただ鯉に餌をやっています
お若いお人。どうか父を、鯉の呪縛から解き放ってください
あのような永遠は、父の望みではありませんでした…

→話しかける

妹:中庭は鬼門です。先に進むなら
外周を回られた方がよろしいです
…そして、もし我が父に見えたなら
どうか、鯉の呪縛から解き放ってあげてください
ずっと、ずっと、ただ餌をやり続ける…
そんな永遠は、父の望みではありませんでした…

→ぬしの白鬚を父に渡す

父:ア… ア… ア…
ヌシ… ミマカリ… オオ…
オオオオオ…
ヨウヨウ… ヨウヨウ…
オヤクメ… ハタシタリ…
カタジケ… ナイ…

→休息
→話しかける

妹:お疲れさまでした、父様
永遠などなくとも
私も、姉さまも、ずっと一緒ですよ…
だから、休みましょう。父様…


姉(湖にある廃屋の屋根上)


姉:もし、お若いお人…

→話しかける

姉:お若いお人、もしや、内裏に行かれるのですか?

隻狼:ああ

姉:それならば、脇道の方がよろしいです
今は水の中、ぬしの鯉の寝床になっている
大きな洞窟の先でございます

→話しかける

隻狼:なぜ、そのような…?

姉:…内裏の扉は、もう永い間、閉じたままです
大事な、お使いがあるのですが
この婆の身では、どうにも果たしようもなく…
お若いお人に、内裏の扉を開けて頂ければと…

→話しかける

姉:今は水の中、ぬしの鯉の寝床になっている
大きな洞窟の先が、内裏への脇道です
…そして、内裏についたら、内より扉を開けて頂ければと…
大事なお使いがあるのです…

→内裏の扉を開けたあと
→話しかける

姉:この!このっ!
よくも、よくも謀りおったな!
なにが貴族なものか!永遠なものか!
返せ!父を… 父様を、返せぇ…
ヒッ、ヒイッ、ヒイイイイイイッ…

2019年4月28日日曜日

Sekiro 考察25 仙郷の範囲

桜竜と戦うステージに到着した際、隻狼が「…仙郷か」と呟くことから、では源の宮は仙郷ではなかったのか、という疑問が浮かび「仙郷の範囲」について混乱してきたので、考察してみる


まず、仙郷には他に「仙」というが使われる例がある 

竜胤断ちの紙片」である

 竜胤断ちの紙片
  丈が遺した竜胤断ちの書の一部のようだ
 
   不死斬りがあれば、
   我が血を流すことが叶うはず
 
   血を流せば、香が完成し、仙境にいける
   そうすれば不死断ちもできるだろう

   竜胤の介錯、如何に巴に頼もうか…

仙郷と仙境との違いは何か分からないが、英語版の該当箇所には「the divine realm」と記されている


この「the divine realm」は、常桜の香木常桜の花竜胤断ちの書巴の手記淤加美の古文書、にも登場し、その際の日本語訳が「仙郷」であることから、「仙境」「仙郷」の誤字である確率が高い


また日本語版において「仙郷」の文字が登場する貴重品のなかで唯一、英語版において「the divine realm」という文字が登場しないまこと貴い餌(平田壺貴人)であるが、これは「仙郷のぬし」を代名詞Heに置き換えているからと考えられる

平田屋敷の壺の貴人との会話(英語版)では、「Bring it to the Great Carp of the divine realm.」と表記されており、壺の貴人はぬしの鯉が住んでいる場所を仙郷と認識していることがわかる

これは日本語版の「仙郷の、ぬしの鯉に与えてたもれ」というセリフと一致している


壺の貴人のテキスト宮崎氏が担当したとのことなので、「仙郷=源の宮を含む領域」と考えるのが、世界観的にも正しい…と思われるのだが、源の香を炊いた際に九郎が、

源の宮… 丈様が書き残されていた通り そこから、仙郷に通じているのだろうな」(九郎)

ということから、やはり源の宮は仙郷に含まれないのかもしれない

2019年4月27日土曜日

Sekiro資料:竜の帰郷ルート

→永旅経・蟲賜わりの章を渡す
 永旅経・蟲賜わりの章
  永い悟りの旅路へいざなう経典。その一節
  あの子に渡して欲しいと、託されたもの

   我、蟲を賜わり、幾星霜

   死なずとは、永き悟りの旅路なり
   死なぬ訳もまた、悟らねばなるまい

   神なる竜は、西の故郷より来られたという
   我に、蟲を授けられたは、なにゆえか

隻狼:受け取れ

変若:それは…

隻狼:お主に渡してくれと、書かれていた(池底で拾った場合)

変若:ありがとう、ございます…
…受け取ります
………

隻狼:どうした

変若:私は… あの人たちを…
まだ、どうしようもなく、憎んでいるのです…


→休息
→幻廊へ向かう
→話しかける

変若:私は… あの方たちを、失いたくない

  :………

変若:けれど… 竜胤をお返しする道… それを選べば…
みなと、別れることに、なるかもしれません

  :………

変若:そう言って、くれるのですね…

  :………

変若:フフ… いいえ、みな…
あの御方は… 本当にお優しいのですよ
これを、渡してくださったのも…

隻狼:おい

変若:あ、御子の忍び… いらしていたのですね
おかげで、友たちと深く… 語らうことができました

隻狼:変若の御子たち、か

変若:はい
…それで、貴方にお伝えしたいことがあります
竜胤を断つのではなく…
あるべき場所に、お返しする道について

隻狼:竜胤を、返す?

変若:そうです
竜胤は… 故郷を放たれ、この日本(ひのもと)に流れ着いたもの
あるべきではない場所に、あるべきではないものがある
ゆえに、我らのような歪んだ命を生み出そうとする者が
絶えぬのでしょう
竜胤や、竜胤に連なる我らは… きっと、帰るべきなのです
西へ…。神なる竜の故郷へと…
ただ、如何にしてたどり着くか…
それが、まだ分かりません

隻狼:定かなことを、知る者は

変若:仙峯上人ならば、あるいは

隻狼:それは、誰だ

変若:この仙峯寺の開祖です
齢は、果たして如何ほどか…
胎内くぐりの内に、籠っています
御子の忍びよ

隻狼:何だ

変若:これは… 不死断ちとは、また異なる道
ゆえに、無理にとは申しません
もし、竜胤を返す道を望まれるならば
仙峯上人より、その術を聞き出していただけぬでしょうか

隻狼:…考えておこう


→胎内くぐり
→永旅経・竜の帰郷の章
  永い悟りの旅路へいざなう経典。その一節

   我、死なず。竜の帰郷をただ願う
   みな死なず、永く待とうぞ

   竜胤の御子が、つめたい竜の涙を飲み干し
   竜胤の揺り籠が、二つの蛇柿を食すのを

   揺り籠の命果てず、御子を宿さば、
   西への帰郷は叶うだろう


→話しかける

変若:御子の忍びよ
もしや、仙峯上人と会ってきていただけたのですか

隻狼:死んでいた

変若:仙峯上人は、蟲憑き… 何故、そのようなことが…

隻狼:だが、書が残っていた。これを

変若:拝見します
………
………なるほど
蛇柿というものを二つ食らえば
竜胤の御子を収める、揺り籠となれる
そうすれば、竜胤を故郷にお返しすることができる…
………私が…
その揺り籠、私がなりましょう

隻狼:…お主、確と読んだのだな?

変若:もちろんです

隻狼:………

変若:私は… 変若の御子の、唯一人の生き残り
生半には、死にませぬ
御子の忍びよ
竜胤を返す道を望まれるならば、二つの蛇柿をお持ちください

隻狼:心当たりはあるのか

変若:おそらくは、大蛇(おおへび)より取れる肝かと
柿のように、赤く染まっていると言います


→話しかける

変若:御子の忍びよ
二つの蛇柿を手に入れられたのですか

→蛇柿を渡す

隻狼:ああ、手に入れた

変若:この赤き様… 確かに
柿とは、良く申したものですね

隻狼:真に食らうのか

変若:もちろんです
そうすれば我が体は
竜胤をお返しするための、揺り籠と成りましょう
ただ…
貴方の前でそれをするのは、憚られます
時をおいて、また、おいでください


→休息
→盗み聞く

変若:ぐ… ううう…
あぁ… あああ…

隻狼:………


→休息
→話しかける

変若:………
あ…
御子の忍び…?
そこに… いらっしゃるのですか?

隻狼:お主… 目が…

変若:ああ… やはり、いらしてくださったのですね
御子の忍びよ
私は… 揺り籠となれたようです
手を、取っていただけますか

隻狼:ああ…
これは…!

変若:ひんやりと… 氷室のようでございましょう
だから、ほら…
私の涙も… 零れ落ちる間に、凍てついてしまう
この氷涙を、お授けしましょう

→氷涙
 氷涙
  揺り籠となった変若の御子が零した涙
  それが、凍てついたもの

  竜の涙と、この氷涙を
  ともに九郎に飲ませることで、
  揺籃の儀を成すことができる

  つめたい竜の涙とは、そのことだ


隻狼:氷涙、か。もしや…

変若:はい
おそらくは、「つめたい竜の涙」が指すのは…
竜の涙とともに、この氷涙を飲んでいただくことかと
さすれば、きっと
九郎様に、揺り籠に宿っていただくことが、叶うでしょう

→話しかける

変若:御子の忍びよ
私にできることならば、お任せください

→お米を授かる

変若:ふふ…

隻狼:何だ

変若:お手を…

隻狼:ああ

変若:白銀(しろがね)の豊穣を

隻狼:これは…
つめたい…

変若:凍えたこの体が…
お米をつめたく輝かせるのでしょう

隻狼:まるで、細雪(ささめゆき)だ

変若:フフ… たしかに
では、そう呼びましょう
御子の忍びよ。細雪を、どうぞ

→細雪
 細雪
  変若の御子の手のひらより
  零れ落ちた、つめたい白銀のお米
  HPがゆっくりと中回復する
  お米よりも、その回復量はわずかに増している

  つめたさは、米を甘くする

  お米はやはり大事
  噛めば噛むほど、ますます甘く、
  ますます元気も出るだろう


隻狼:いただこう

変若:お米は、大事
きっと、また… いただきに、いらしてください

→話す

変若:竜胤を返すことを望まれるならば…
竜の涙とともに、お渡しした氷涙を
九郎様に飲んでいただけば、良いでしょう
御子の忍びよ
竜の涙をどうか、お探しください

2019年4月26日金曜日

Sekiro 考察24 巴の手記

巴の手記は一読すると矛盾しているように思える

 巴の手記
  柔らかな字でしたためられた巴の手記

   丈様のは、ひどくなられるばかり
   仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ
   せめて竜胤を断ち人に返して差し上げたい

   人返りには、常桜の花不死斬りが要る 
   なれど、花はあれども不死斬りはない
   仙峯上人が、隠したのであろう
   竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…


「仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ」(巴の手記)


不死斬りがあれば、我が血を流すことが叶うはず を流せば、香が完成し、仙境にいける」(竜胤断ちの紙片)などの記述から、不死斬り入手できないために、仙郷へ帰る道を諦めたのだと読むこともできる

が、

「人返りには、常桜の花と不死斬りが要る」(巴の手記)


なぜか入手を諦めたはずの不死斬りをまた手に入れようとしている

巴がただのポンコツだという可能性は否めないが、この誤読は手記の言葉が足りていないせいである

正しくは第一の文節は以下のように補完されると思われる

「丈様の咳は、ひどくなられるばかり(で、衰弱した体ではもはや旅路に耐えることができない)。(よって、たとえ不死斬りを手に入れたとしても)仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ。(そこで次善の策として)せめて竜胤を断ち人に返して差し上げたい」

※第一文節で問題とされているのは、丈が帰郷できないことであって、不死斬りが入手できないことではないもはや不死斬りを手に入れても丈の帰郷が叶わないほどに状況が悪化してしまっている)


次に第二文節であるが、これも一読すると「常桜の花と不死斬りさえ」あれば人返りができる、と読める

だが、

人返りを望むならば、竜の涙常桜の花を竜胤の御子に飲ませれば良い」(常桜の花

と、あるので人返りにも、竜の涙が必要なことが分かる

また「せめて竜胤を断ち人に返して差し上げたい」(巴の手記)とあるので、人返りには、竜胤を断つことも含まれているのである(ゆえに涙は必須

よって、第二文節は以下のように補完されると思われる

人返りには、常桜の花と(「拝涙」を行うための赤の)不死斬りが要る。(赤の不死斬りさえあれば、私(巴)が仙郷へ行き竜の涙を持ち帰ることができる)。なれど、花はあれども(赤の)不死斬りはない。仙峯上人が、(赤の不死斬りを)隠したのであろう。(竜胤断ちのために欠かせない「拝涙の儀」を行えるのは赤の不死斬りだけであり、黒の不死斬りではない)。(赤の不死斬りにより「拝涙」を行うことは仙峯上人とも目的が合致するが、涙を使って竜胤を断つなど、(竜の帰郷を願う)あの者は望まぬゆえに…」


第二文節で問題とされているのは、不死斬りが入手できないことである。丈は健康上の理由で帰郷はできないけれども、が単独で仙郷へ向かい涙を手に入れてくることは可能なのである(隻狼がそうしたように

※そもそも拝涙には、竜胤の御子(丈)は必要ではない。丈が不死斬りを求めたのは第一に帰郷したかったからである。帰郷を果たしたのちに、不死断ちによって竜胤を断つことが第二の目的である

※この、第一と第二が、丈の咳の悪化により不可能となった。ゆえに巴が単独で動こうとしているのである


2019年4月24日水曜日

Sekiro資料:おはぎイベント

みんな大好きおはぎイベント
竜の帰郷ルートの前提イベント
内容的に独立しているのと、合わせると長くなってしまうので分離することに



変若の御子が体調を崩してから

変若の御子(以下「変若」):はぁ…はぁ…はぁ…

→話しかける

変若:御子の忍び… 良く、おいでくださいました…

隻狼:どうした

変若:大事、ありません…
それより、いま、お米を…

隻狼:待て
顔色がすぐれぬ… ゆっくり休め

変若:………はい
わかり、ました…

隻狼:…何かあるか

変若:えっ?

隻狼:何か、欲しいものはあるか

変若:は、柿を… 柿を、食べたいです

隻狼:分かった


→話しかける

変若:はぁ… 御子の忍び… いらしてくれたのですね

→柿を渡す

隻狼:柿だ

変若:真に、取ってきてくださったのですね

隻狼:食え

変若:はい、いただきます
もぐ… もぐ… もぐ…
甘くて、おいしいです

隻狼:そうか

変若:忍びよ、お手を

隻狼:だが…

変若:もう、大丈夫です。お手を…

隻狼:分かった

変若:豊かな実りを、貴方に

→お米
 お米
  変若の御子の手のひらより、零れ落ちたお米
  一定時間、HPがゆっくりと中回復する

  偽りなれど、竜胤の力
  その血は豊穣をもたらす

  お米は大事
  噛めば噛むほど甘くなり、元気も出るだろう


変若:礼を言います、御子の忍びよ
いただいた柿のおかげで、たくさん実ったようです
よければ、竜胤の御子にも差し上げてください

隻狼:分かった

→九郎へのお米
 九郎へのお米
  変若の御子の手のひらより、零れ落ちたお米
  それを九郎のためにと、包んでくれたもの

  お米は大事
  竜の御子にも、ぜひ元気になって欲しい

  九郎に届ければ、喜ぶだろう


→御子の間

→話しかける

九郎:戻ったか、狼よ

隻狼:はい
九郎様に、預かりものがございます

九郎:預かりもの?

隻狼:これを

→九郎へのお米を渡しました

九郎:これは… 米か?

隻狼:はい、仙峯寺の御子が、九郎様に…と

九郎:そうか、それはありがたい
良き米と見える… フフッ、実につやつやしておる

隻狼:噛むと、甘うございます

九郎:噛む…?
狼よ… 米は炊いて食べた方が、うまいぞ

隻狼:はっ

九郎:うーむ… そなた、甘いものは好きか?

隻狼:何でも、食べまする

九郎:ならば、嫌いではないのだな
良し、そなたに、良いものを作ってやろう

隻狼:良いもの…とは

九郎:はは… それは、お楽しみじゃ

→休息

→話しかける

九郎:フフフ… 待っておったぞ、狼よ
さあっ、手を出すが良い!

隻狼:はっ

→おはぎ
 おはぎ
  変若の御子がくれたお米で、
  九郎がこしらえてくれた、おはぎ
  一定時間、HPがゆっくりと中回復し、
  加えて体幹が常に回復するようになる

  腹を空かせた狼に、
  黙って義父は、おはぎをくれた
  あのおはぎは、とてもうまかった

  このおはぎも、きっと、とてもうまい

隻狼:これは…

九郎:おはぎじゃ!
仙峯寺の御子殿にいただいたお米で、こさえたのだぞ
さあ、遠慮はいらぬ、食うてみよ

→話しかける

いただいたお米でこさえた、おはぎじゃ
さあ、遠慮はいらぬ、食うてみよ

→離れる

九郎:フフッ… そなた、隠れて食う気だな
まあ、それも良し!

→盗み聞く

九郎:うむ… うむ、うむ…
これ以上ない、できばえ
フフッ、やるではないか、九郎

→おはぎ使用

隻狼:うまい…

九郎:フフフ… そうであろう、そうであろう

→話しかける

九郎:狼よ、私のおはぎは、どうじゃった

隻狼:旨う、ございました

九郎:で、あろう
幼き頃から、菓子をつくるのが好きでな
平田のお屋敷でも、良く炊事場に入り込んでいたものだ
いずれ… 暇(いとま)ができたら、茶屋でも開くかのう

→話しかける

九郎:………
…どうか無事で
……ん?
おお、狼か。大事ないか?

隻狼:はっ

九郎:そうじゃ。これを、そなたに

→おはぎ
 おはぎ
  九郎がくれた、おはぎ
  一定時間、HPがゆっくりと中回復し、
  加えて体幹が常に回復するようになる

  これは、密かに秘めた決意と
  惜別をこめて、こしらえたもの

  秘められた想いとは、
  誰もいないとき、一人で呟くものだろう

隻狼:竜の涙
必ず手に入れて参ります

九郎:ああ、頼む… 狼

→話しかける

九郎:何やら…
内府の軍が、騒がしいようだな
…だが、心配はいらぬぞ、狼
時折、一心様が、様子を見に来てくださる
心強いことじゃ


→奥の院

→話しかける

変若:御子に、お米を渡していただけましたか

隻狼:ああ
もらった米を、御子様がおはぎにしてくださった

変若:まあ… 竜胤の御子が、御自身でそのようなことを…

隻狼:とても、張り切っておられた
そして、とても、うまかった

変若:ふふ… それは、良かったです
……ああ、そうか
竜胤の御子も、また… 人なのですね
なんと、当たり前のことか…
不死断ちも、きっと… ゆえに迷い…
それでも、選ばれたのでしょうね
御子の忍びよ、一つ聞きたいのですが…

隻狼:何だ

変若:御子様の名は、なんと

隻狼:九郎様だ

変若:九郎様… とても良い響き…
いつか、お会いしたいものです

Sekiro 考察23 エンディング

※修羅endに関しては別の機会に

竜胤断ち(不死断ち)

竜胤の御子+桜竜の涙=竜胤断ち

正式名は不死断ちであるが、不死の種類が多くてややこしいのと、丈の残した『竜胤断ちの書』『竜胤断ちの紙片』からとって、竜胤断ちと呼ぶことにする

竜胤断ちをするためには、神なる竜の涙を戴く必要がある(『竜胤断ちの書』)
桜竜のを竜胤の御子に飲ませることで可能となる(『桜竜の涙』)

なぜ桜竜の涙を飲ませる必要があるのかというと、そのままでは不死斬りを用いて竜胤の御子を殺しても、そこに宿る竜胤は消滅させられないからである

丈→九郎という竜胤の転移を見ると、例え竜胤の御子が死んだとしても、竜胤は別のヨリマシに転移してしまい、消滅することはない

不死である竜胤の御子を不死斬りでいくら斬殺しようと、肝心の竜胤には逃げられてしまうのである

ややこしいのだが、竜胤の御子竜胤とはイコールでは繋がらない。竜胤の御子不死であるし、竜胤を宿しているのだが、竜胤そのものではないのだ。御子は竜胤を入れる器のようなものであり、器が割れたとしても代わりはいくらでもいるのである

と、考えると桜竜の涙の機能がはっきりしてくる

桜竜の涙の機能とは、竜胤の御子の体内に竜胤を固定するものである

竜胤を固定して逃げられぬようにした上で、不死斬りで竜胤の御子ごと竜胤を斬る。そうすることで初めて竜胤は消滅させられるのである

桜竜の涙は、形を保ち常しえに乾くことはないとされる

 桜竜の涙
  桜竜のその身は常しえ
  一度流れた涙もまた、形を保ち
  常しえに乾くことはない

その性質と実際のグラフィックを見ると、これはある種の結晶、つまりである



そして濃い桜色をしている

変若の御子の流す氷涙は透明であり、また竜胤の御子の零す竜胤の雫も透明である。ゆえに本来ならば桜竜の涙も透明であるはずだ(桜雫については後述する)

本来透明な桜竜の涙がなぜ桜色に染まったのか

涙に血が混じったからである

「拝涙」の場面を確認すると、刀を突き刺したあと竜の眼から血が勢いよく噴き出している。この状態では涙に血が混じらないはずがない



形を保ち常しえに乾くことのない桜竜の涙であるが、竜の血は涙に混入するのである
つまり桜竜の涙には、竜胤を吸収して結晶内に吸着させる性質があるのだ

竜胤の御子の体内に入った桜竜の涙は、そこに流れる竜胤(竜の血)を全て吸収し、吸着して結晶内部に閉じ込めてしまう。そうして竜胤は御子の体内に固定されるのである

固定された竜胤はもはや別のヨリマシに転移することはできず、不死斬りにより消滅させることが可能となるのである


桜雫が桜色をしているのも血が混じったからである。また桜雫を使い不死の契りをやり直せることから、混じった血は竜胤であると考えられる
※逆に言うと竜胤がなければ不死の契りは出来ないのだから、桜雫には竜胤が入ってなくてはならない。であるのなら、桜雫を桜色に染めているのは「竜胤(血)」となる



人返り

竜胤の御子+桜竜の涙+常桜の花=人返り

桜竜の涙によって固定された竜胤に、儚さ(死)を象徴する花を付与することで、常しえの竜胤が死すべきものとなり、竜胤が死ぬ(消滅する)

常桜というのは、枝を折られるだけで枯れ果ててしまうほどに弱い。その折られた枝につく花は、竜胤を即死せしめるほどに強い死の香りを帯びている

コノハナノサクヤビメ(Wikipedia)の神話にあるように、石は永遠性を人に与え、花は死すべき運命を人にもたらすのである

桜竜の涙という永遠の石は、常桜の花という「死」の象徴に触れることにより、その永遠性を剥ぎ取られ死すべきものとして消滅するのである

だがこれで竜胤が完全に消滅したわけではない
御子自身が「不死の契り」を結んだ隻狼の体内にはまだ竜胤の血残っている

 常桜の花
  「竜胤の血を受けた不死は、その主を縛る

血を流せない竜胤の御子血を与える方法は分からないが(平田屋敷に「黒の不死斬り」があったのではないかという仮説を考え中

従者に竜胤の血があることで、竜胤は完全には消滅しておらず、「不死の契り」の形で残り続け、結果として竜胤の御子は人に返れない。ただしそれは「不死の契り」の触媒に使われたものなので、隻狼が不死の契りを破棄すれば御子に還る(還って消滅する)と思われる(常しえなのでその場では消滅しない)。ゆえに最後の不死を斬る必要があるのである

※「主を縛る」ものは「不死の契り」という契約である
※それがどのように主を縛るのかは、周囲の人間たちの代わりに生の力を奪われる(丈の竜咳の原因か)とか、竜胤の御子に戻ってしまうとか、考えてみたが結論には至っていない


竜の帰郷

竜胤の御子+桜竜の涙+氷涙=揺籃の儀

竜胤の御子の体内に固定された竜胤は、さらに氷涙の力によって氷結し、そのその御魂は鎮められるのである。いわゆる鎮魂(たましずめ)(「遊離した、また遊離しようとする魂鎮め、肉体につなぎ止める祭儀」大辞林)や鎮花祭などの御魂や神を鎮める儀式である

鎮められた竜胤はその呪いとも言うべき影響力を失い、揺り籠に宿ることで移動することが出来るようになるのである

※桜竜の本性は植物+竜である。つめたい竜の涙を飲んだ竜の御子は、植物としては種子の状態に、竜(蛇=爬虫類)としては冬眠状態となる

という字は「」と「たね」のダブルミーニングである
※機能を停止した竜胤は、「冬眠中の竜」であると同時に「発芽不能のたね」である

2019年4月22日月曜日

Sekiro資料:残影

序盤なんだけどなんだか重要そうなことを言ってそうな残影


虎口階段、厩舎付近

九郎:これも、平田の者だ
弔って、やらねば

エマ:九郎様…

九郎:エマ殿、平田から逃れてきた者、他には?

エマ:もう、ほとんど、残っておりません

九郎:そう、ですか…
…済まぬ
竜胤を狙うものは、絶えぬ…
平田の者たちを… 私が、巻き込んでしまった



大手門前


弦一郎:一度は退けたが
内府の軍は、あまりに強大だ

九郎:それ故、我が血を…
竜胤の力を、利用するというのですか?
いかに力を得るとて
痛みも、恐れも忘れ、戦い続けるなど…
私は… 人の生き方を、歪めたくはないのです…

弦一郎:この屍の山を見ろ
もはや尋常の術では、葦名は守れぬのだ

九郎:私は… 弦一郎殿ほど、強くはなれません
何を為すべきか… 未だ分からぬのです…

弦一郎:…あれから、随分と経つ
待ったとて、無駄なことだ



葦名本城入り口


葉笛の音

エマ:九郎様…

九郎:…刻限ですね、エマ殿
分かっています
弦一郎殿がお待ちなのでしょう
天守の上階に、戻ります
………
………狼よ
あの時、吹いてくれた葦の葉笛じゃ
此度はそなたが…
音を頼りに、きっと参れ


月見櫓

九郎:狼よ、お主は言ったな
「為すべきことを、為せ」と
それが未だ、見出せぬ
分からぬのだ
竜胤は、なにゆえ私に授けられた…


天守上階 葦名流伝場付近


九郎:エマ殿、あれは一体…何なのです…

エマ:変若水…
そう呼ばれています

九郎:あれが、葦名の秘策だというのですか…

エマ:はい
飲んだものは、生半には死なぬ…
いえ、死ねぬようになります
そして、変若水もまた…

九郎:その源は竜胤にある、というのだな

エマ:はい

九郎:エマ殿、私には…
竜胤が貴いものだとは、とても思えぬ


2019年4月21日日曜日

Sekiro 考察21 桜竜の右眼

桜竜の右眼が潰れているという情報を確認してみた

これを拡大したのが以下の画像である

確かに右眼だけつぶっているように見える

隻狼の右眼周辺に白い痣が出来ていることの理由であろうか(ただのガッツオマージュかと思っていたが)

かつて右眼で「拝涙」が行われたのか、あるいは竜胤の御子自体が右眼なのか、その涙なのか。あるいは右眼から流されたが竜胤の御子となったものか。





Sekiro 葦名探訪

ネタが少なくて探訪ってほどでもないけど…

荒れ寺

屋根は入母屋造、向拝は唐破風
 唐破風は戦国時代に特に流行った意匠で寺社に多い


仙峯寺

金剛界曼荼羅胎蔵曼荼羅がモチーフの曼荼羅
両曼荼羅対面させて安置するのは古い形式


東に胎蔵曼荼羅、西に金剛界曼荼羅が安置される


源の宮

雅楽の舞台に対置してあるのは鼉太鼓(だだいこ)
火焔太鼓とも呼ばれる(詳細はこちら


鴟尾
古い形の鴟尾(Wikipedia)である。東大寺大仏殿とか

六壬栻盤(りくじんちょくばん)
平安時代の占い盤らしい(Wikipedia

2019年4月19日金曜日

Sekiro 考察20 まつろわぬ葦名衆

Sekiroはモチーフなり物語構造なりがむき出しなので、遊んでいるとコレはアレかな、と思うことが多々ある。けれどもそれを説明しようとすると、組み替えられたり跳躍している部分がたくさんあるので、やたらめったら話が長くなる


結論を先に述べれば、首無しは大和朝廷にまつろわぬ民や鬼と呼ばれた蝦夷の軍事指導者たちの成れの果て、であるのだが、それを説明しようとすると鈴鹿峠の鬼女の話からしなければならず、その最大最後の御霊(怨霊)である平将門に行き着くまでに、長い長い話が必要となるのである

また一心の葦名国とは、そうした蝦夷の末裔を自称した奥州藤原氏がモチーフのひとつであり、Sekiroにおける葦名国の物語とは、都から落ち延びてきた源義経(九郎)を匿った奥州藤原氏源頼朝滅ぼされる顛末を、戦国に置き換えたものであるのだが、ただ単純に史実をトレースしたものではなく、個々の事項が組み替えられているので、一言にモチーフと表現するのは適切ではないのである


関連する事項を自由自在に組み替え共時化し、重層化し、ひとつの統一した世界を作る手腕はデモンズソウルから一貫して受け継がれているが、このSekiroも例外ではない

Sekiroは日本がテーマであり、その神話的歴史的事項をいったん解体し、そこから新たな形に組み立てていると思われるのだが、それが効果を発揮するのは、その一つ一つに対して正確な理解があってこそである(生半可な理解でそれをすると、どこか奇妙な日本像ができあがってしまう)


というわけで、鈴鹿峠の鬼女の話から始めたいと思う。結論は特に変わらないので、読んだところで得することは何もない


 昔、鈴鹿峠にも旅人が桜の森の花の下を通らなければならないような道になっていました。花の咲かない頃はよろしいのですが、花の季節になると、旅人はみんな森の花の下で気が変になりました。(『桜の森の満開の下』坂口安吾)

その昔、鈴鹿峠には鈴鹿御前なる鬼が棲んでいた
鈴鹿御前は御伽草子や浄瑠璃などで有名な鬼女で、『桜の森の満開の下』もその伝説から材を取ったものである

桜の森の満開の下には、がいるのである


さてこの鈴鹿御前、瀬織津姫という女神と同一視されることがある。瀬織津姫というのはその名の通り、(川の)瀬を織る神という意味で、水神であり、穢れを流し清める祓神でもある

そして水神である淤加美の神がそうであるように、やはり竜神としての性質も有している(鈴鹿という淤加美が登場してもおかしくはない)

また鈴鹿御前は坂上田村麻呂と夫婦になったという伝説があり、その坂上田村麻呂は、Sekiroのオープニングに登場する「敵将、田村」のモチーフとされる田村隆顕の祖先とされる(田村氏は坂上田村麻呂の末裔を自称)(坂上田村麻呂本人がモチーフである可能性も)

坂上田村麻呂といえば蝦夷討伐がすぐに想起されるが、彼の戦った蝦夷とは大和朝廷に服従しようとしなかったまつろわぬ民たちである

土蜘蛛と呼ばれたまつろわぬ民たちは、支配者による討伐の対象となり、その物語はいくつもの鬼退治や化け物退治の物語に変容して今も伝えられている

そうした鬼たちの有名なもののひとつが、平安初期に東北地方にいたとされる悪路王と呼ばれる蝦夷の首長である

御伽草子の世界では、悪路王鈴鹿御前坂上田村麻呂モデルとした英雄討ち取られるという筋になっている

この悪路王と同類とされる鬼たちに大嶽丸や大武丸といった者たちがいるが、他の有名な鬼(酒呑童子)と同様に、彼らも首にまつわる伝説や首塚が存在する

大武丸などは、落とされた首が飛行し、落ちた場所が鬼首村と呼ばれたり、その体を埋めた地が鬼死骸村と呼ばれたり、とにかく日本においては死後もその首や体が恐れられたのである

とはいえ、蝦夷の側に視点を移してみれば、侵略者から国を護ろうとした勇者であるともいえ、これらの鬼たちの首を断たれた姿が「首無し」なのである

また平将門の首が飛行したとされたり、首塚が恐れられるのは、将門の姿に古代の鬼を重ねているからである。板東武者の将門は、まつろわぬ民の最後の鬼なのである


さて、こうした鬼=まつろわぬ民=蝦夷末裔を自称したのがかの奥州藤原氏である。奥州藤原氏といえば平泉文化を花開かせたことでも有名であるが、その滅亡の原因は都落ちした源義経(九郎判官源義経)匿ったことにある

この構造を抜き出すと以下のようなものとなる
から落ち延びてきた義経を、奥州藤原氏匿い源頼朝に攻められて国を滅ぼされる

これを言い換えると、
源氏の都から落ちてきた貴種を、古代の血を引く勢力が匿い外部勢力の侵略を受けて国を滅ぼされる


さらにこれをSekiro風に言い換えるとこうなる
源の宮から落ちてきた竜胤の御子(丈→九郎)を、古代から葦名に住まう葦名衆が匿い、内府の侵略を受けて国を滅ぼされる

この葦名衆とは、一心によれば
 元々、この葦名は…
 我ら葦名衆が、暮らす地じゃった
 源から流れ出ずる水
 それを、こよなく愛する民じゃ
 …ぷはぁ…。ゆえに酒も、うまあいっ!
 …じゃが、我らは異端、そして弱い民じゃった
 当然に蹂躙され、服従を強いられた
 ずっと、長い年月な…
 源の水を、祀ることすら許されぬ

異端であり、弱い民であるがゆえに服従を強いられ、その独特の信仰すら禁じられた民である

これはまさしく、古代に蝦夷と呼ばれた民の姿そのままである


上の方で、桜の森の満開の下には、鬼がいるのである、と述べたが、この鬼とはまつろわぬ民のことであり、Sekiroの世界では桜竜の下に住まう葦名衆のことである

2019年4月18日木曜日

Sekiro 考察19 白木の翁

仙郷
 隻狼が桜竜ステージに到着したときに「仙郷か…」と言っているので仙郷と源の宮とは厳密には区別されると思われる

白木の翁の特徴として
仙郷に登場する
木と人の融合したような姿をしている
黒と白がいる
・竜に罹っている
翁たちとの戦いを経て桜竜が顕現する


仙郷に到着した直後の桜竜は、枯れかけた姿をしている


それが翁との戦いを経て咲き誇る桜の神的な姿になるのである

この白黒の翁たちとの戦いにどういう意味があるのだろうか

というのは、かつてDethStrandingの考察でも触れた記憶があるが、一種の神である。能楽においては「式三番(wikipedia)などで「天下泰平・国土安穏・五穀豊穣を祝祷」する翁として登場するが、その正体は老いた神である

ではとは一体いかなる神であるのか

金春禅竹による『明宿集』では、翁は宿神と同定され、住吉明神、諏訪の神、塩釜の神、走湯山の神、筑波山の神であるとされる

この宿神とは、元来はシャグジ、シュグジなどと称された小祠の神の名(コトバンク)であり、柳田國男は『石神問答』において、境界に祀られる石神であるといっている

このシャグジに敬意を表わす『御』の字を付けると、ミシャグジとなる。このミシャグジ(Wikipedia)は、正体の分かっていない神とされ、縄文時代から祀られているとか、芸能の徒の隠された神であるとか、境界を司るであるとか言われているが、金春禅竹に宿神と同定された「諏訪の神」でもある

この諏訪の神であるミシャグジとは、元来は石や樹木を依り代とする神である

つまり翁=宿神=ミシャグジとなり、とは樹木に依り憑く樹木神であることがわかる

白木の樹木的な姿をしているのは、能の「翁」をモチーフとしたからであろう

※これほど迂遠な説明をせずとも、『高砂』に登場する翁は「松の精」である
※『猩々』や『巴』、『鍾馗』など能のモチーフもちらほら見える、のかなぁ?

ちなみにミシャグジ神は後に蛇神(白蛇)ともされ、その神徳は「百日咳治癒」である


さて、翁の登場する「式三番」のうち、二番目に登場する白色尉(はくしきじょう)をつけて舞い、三番目に登場する三番叟黒式尉(こくしきじょう)をつけることになっている(式三番(翁) |能・狂言事典 - ジャパンナレッジ

この三番叟の舞いをもって舞い納めとし、めでたく「天下泰平・国土安穏・五穀豊穣」が成り、桜竜の生命力が復活するのである


つまるところ仙郷ステージにおける白木の翁たちとの戦闘は、戦いというよりも「舞い」なのである。その目的は、枯れ衰えた桜竜に活力を与えることで復活させることである

黒面の翁たちが頭を下げているのも、舞いが終わったことを神に伝えているのである

舞いは、桜竜とのコミュニケーション手段であった可能性がある
 竜の舞い面
  源の宮で、淤加美の女武者は、
  竜がために舞いを捧げた
  すると不思議と力がみなぎったという

ちなみにサクラという文字は、「稲(サ)」+「神の憑依する座(クラ)」が語源とされることもあり、「お米は大事」なのである(Wikipedia)


2019年4月16日火曜日

Sekiro 考察18 桜竜

すべては桜竜の意志だったんだ!

という陰謀論めいたことも考えてはいるのだが、それにしては桜竜の振る舞いが行き当たりばったりで、ちぐはぐなようにも思える

とはいえ、うまく説明できそうな部分もある

例えば、仙峯上人から渡される『永旅経・竜の帰郷の章

 永旅経・竜の帰郷の章
  永い悟りの旅路へいざなう経典。その一節

   我、死なず。竜の帰郷をただ願う
   みな死なず、永く待とうぞ

   竜胤の御子が、つめたい竜の涙を飲み干し
   竜胤の揺り籠が、二つの蛇柿を食すのを

   揺り籠の命果てず、御子を宿さば、
   西への帰郷は叶うだろう

この異常なほどの具体性桜竜自身が教えたとも取れる。また緑衣の即身仏から渡される『永旅経・蟲賜わりの章』には、当初はその目的すら知らされていなかった様子がうかがえる

 永旅経・蟲賜わりの章
   我、蟲を賜わり、幾星霜

   死なずとは、永き悟り旅路なり
   死なぬ訳もまた、悟らねばなるまい

   神なる竜は、西の故郷より来られたという
   我に、蟲を授けられたは、なにゆえか

考えられる線としては、桜竜が仙峯上人に蟲を授け、死なずの探求に引きずり込む。その後、期を見て変若の御子の作り方を伝え、完成したところで揺り籠の作り方を伝える、というものであろうか(情報を伝達した存在は不明だが)

この時期、仙峯寺は揺り籠作りに突き進み、その方法は柿婆のような下働きの者にも広まっていったと思われる

「御子さまがた… どうかどうか、遠路ご無事で…」(蛇柿を食べさせた後の柿婆)

これは揺り籠の使命を知る者しか口にできない言葉である。また柿婆が蛇柿のヒントをくれることから、変若の御子が蛇柿を食べることで揺り籠になることを知っている(望んでもいる)

しかしながら、揺り籠推進派の柿婆追い出されていることから、揺り籠に反対する者もいたようである

「坊主どもめが… 儂を追い出しおって…」(柿婆)

『永旅経・竜の帰郷の章』の記述から、仙峯上人は揺り籠推進派だと思われる。もしかすると反対派のクーデターにあい、『永旅経・竜の帰郷の章』を隠し持ち胎内巡りに籠ったのかもしれない(百足衆が侵入者を攻撃するのは、永旅経を反対派から守るためであろうか)

という具合に、仙峯上人に情報を伝えた存在が謎のままだが、『帰郷の章』の不可解なほどの具体性や、仙峯上人の謎の確信、実際に変若の御子を作れていることなどは説明できそうな気もするのである(桜竜が作り方を教えてくれたなら、変若の御子作りで多大な犠牲を出すこともなかった気がするが)


問題は次の竜の御子である

桜竜の意志竜胤の御子に伝えられているとすると、望郷の念にかられて仙郷に戻ろうとして果たせなかったり、不死断ちをしたがったり、不死斬りがなくて人返りもできなかったり、竜咳にかかったりと、命令を受けているわりには好き勝手、行き当たりばったりが過ぎるのではないかと思われる

これが九郎であれば、例えば竜胤の御子になった時に丈から事情を伝えられなかったから、とすることもできるのだが、何らかの理由や目的を持って葦名に到来したであろう丈の言動がこうもチグハグであると、桜竜の意図を感じることすらできないのである

さらにいうのならば、丈が「桜竜帰郷」ために動いていたとして、なぜ仙峯上人はそれに協力せず、赤の不死斬りを秘匿したのであろう。竜胤を断つことには反対であろうが、丈の目的が「帰郷」とそれに関連する「拝涙」であるのならば、秘匿する必要はない

仙峯上人の目的もまた「竜の帰郷」にあったとすると、両者の目的は一致するわけで、協力を拒む理由はないように思えるのだ

また、仮に桜竜の意志があったとして、みすみす竜胤の御子に不死断ちや人返りをさせてしまったのはどういったことであろう。これでは神というより先の手を読めないポンコツである

もしかすると御子に宿った状態では意志を伝えることも出来ないのであろうか。しかしそうだとすると、そんな状態になるまで手を打たなかったのだから、なおのことポンコツである

桜竜の最終的な目的が「帰郷」あったとして、その最も大切な最終段階に関わる竜の御子不確定要素何の策も講じてないのは如何なものだろうか

案の定、エンディングのうち2つは桜竜の意志に反する竜胤消滅である

もし仮に、全てが桜竜の意志のままだとしたら、弦一郎を超えるポンコツとしか思えないのである


以上のように、桜竜の干渉があったとした場合、納得のいくケース納得のいかないケースに分かれてしまう

これは一体どういうことであろうか?

考えられるのは、桜竜の意志と別の何者かの意志とが鍔迫り合いを演じているということだ。相反する二つの意志が葦名の地で衝突した結果、上記のような矛盾する事象が発生したのである

まず、桜竜の意志を受け継いでいるのは意外にも仙峯寺勢力である。実際にそれが桜竜の意志かどうかはともかくも、「桜竜の帰郷」のために動いているのは確かである。少なくとも仙峯寺は桜竜の側に立っているのだ

とすると、「竜胤」の消滅を願う丈(竜胤の御子)が反桜竜派となる。その血を受け継ぎながら、父に反抗する(不満を持つ)というのはヤマトタケルの故事からも見て取れるし、また実際に丈や九郎といった竜胤の御子はその「竜胤」を消滅させるために行動している

だが丈は明確に父に反抗しているわけではない。これもヤマトタケルの故事と同様であるし、また丈の第一の望みが「仙郷へ帰ること」であることからも推測できる。よって丈(竜胤の御子)反桜竜派の傾向はあるけれど、完全にそれに組するわけではない


では、明確な反桜竜の意志もつ何者かとは誰であろうか?

桜竜や仙郷に詳しく、その竜胤を断つ方法も知っていた人物


である

 巴の手記
  丈様の咳は、ひどくなられるばかり
  仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ
  せめて竜胤を断ち、人に返して差し上げたい

  人返りには、常桜の花と不死斬りが要る
  なれど、花はあれども不死斬りはない
  仙峯上人が、隠したのであろう
  竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…

仙峯上人が桜竜の意志により動いていることを巴は知っていた。ゆえに反桜竜派の巴には協力することはないだろう、と察しているのである

その巴の背後には淤加美一族が控えている

淤加美一族には神なる桜竜とは別種の土地神「ぬしの白蛇」との繋がりがあった

 鉄砲砦の社の鍵
  中でも、蛇の目の石火矢は、恐ろしい

  かの女衆は、いにしえの淤加美の一族の末裔
  稀な目を持ち、遙か彼方を容易く射抜く

 五の念珠
  落ち谷の鉄砲砦、取り仕切るのは男ではない
  蛇の目と呼ばれる、石火矢遣いの女たちだ

 乾き蛇柿
  柿の様に赤く染まった、ぬしの白蛇の心包

  ぬしとは、土地神

  落ち谷の衆は、ぬしの白蛇を崇め
  乾いた蛇柿を御神体として祀ったという

もともと「ぬしの白蛇」を祀っていた淤加美一族は、あるとき突然に仙郷渡りを企てる

 朽ちた囚人の手記
  捨て牢の中で朽ち果てていた男の手記

   淤加美一族の伝承を辿り、ここまで来た
   彼の女たち、まこと源の宮に辿り着けたのか

 淤加美の古文書
  仙郷を目指した淤加美一族が残した古文書

   香気の石、葦名の底の村に祀られたり
   身を投げねば、辿り着けようも無し

   これで源の香気、揃うたり
   仙郷へ、出立のときぞ

その後どうやら淤加美一族は仙郷へと到着したらしい

源の宮にある朱の橋の門にかかる楼門の大額には「淤加美門」と記されている。また滝際に面した楼門にも「淤加美門」と記された大額がかかる




なぜ淤加美一族が仙郷に渡ろうとしたのか、その理由明らかにされていない

だが、淤加美一族の性質は明白である

より強い神へと宗旨替えすることも厭わない一族なのである

 竜の舞い面
  源の宮で、淤加美の女武者は、
  竜がために舞いを捧げた
  すると不思議と力がみなぎったという

 神食み
  だが、神なる竜が根付いたのちは、
  そうした小さな神々は、姿を潜めてしまった

桜竜が到来したせいで衰微していく「ぬしの白蛇」を見限り、信仰の対象を外来の神へ変更し、竜のために舞いを捧げる

淤加美というのは、そういった一族なのである

であるのならば、桜竜の力が弱まった時次なる信仰の対象を求めるのは彼女たちにとっては、不思議なことではない

 「かつて、葦名に… 竜咳が広まったことがあったといいます そのときは、治すことが叶わず、助かる者は、無かったそうです」(エマ)(もし丈の時代であると、その時にはエマはすでに生きていたのだから、伝聞にはならない

竜咳の広まったことと、桜竜の左腕が欠損していることは関係していると思われる。桜竜の力が弱まったのもこの時期からである

淤加美一族は衰微する桜竜を見限り次なる信仰の対象を求めた

それが「竜胤の御子」なのである

そのためにまず淤加美は神を殺そうとする
その方法は、赤の不死斬りによる「神殺し」である

ややこしいのだが、赤の不死斬りによる神殺し「拝涙」は厳密には違う現象である。赤の不死斬りによる桜竜殺しは、「常しえ」の神の肉体を滅ぼすことであり、「拝涙」とは「竜の涙」、つまり神の御魂を戴くことである

傷つき年老いた桜竜の肉体を滅ぼし若々しい肉体を持つ別の新しい竜の神を奉戴する。それが淤加美一族の意志だったのだ

古き神が死に、新しき神により世界は活力を取り戻す。これはダークソウルの「火継ぎ」に通ずる思想であり、その時も暗躍していたのはである(カースはムカデ、フラムは白蛇と比定することも可能かもしれない)(また、ダークソウル神話の創世において、古き竜を裏切ったのは鱗のない白い竜であった)

だが、赤の不死斬り竜の帰郷の最後のシークエンスで「拝涙」を行うために仙峯寺に秘匿されていた

桜竜の望みである「竜の帰郷」を実現させようとする仙峯上人にとって、桜竜を殺し、その御魂を奪い、新しい神を作りだそうとする者とは絶対に相容れない。巴がその協力を諦めたのも当然であろう

複雑になってきたのでここで簡単に整理しよう

仙峯上人桜竜派。桜竜の望む「竜の帰郷」を実現しようとする。「竜の帰郷」とは力の弱まった桜竜が、新しい力を持って再び誕生するための儀式のことであり、帰郷という性質上、必然的に葦名の地から神はいなくなる

淤加美一族反桜竜派。力の弱まった桜竜を捨て、その御魂を移すことで新たな神を作りだそうとしている。ただ桜竜の肉体を滅ぼすために赤の不死斬りを求める

丈と巴の立ち位置は、やや淤加美一族側にあるけれども繋がっているわけではない

まずであるが、竜胤断ちの紙片からは、とは目的が異なっていたこともうかがえる

 竜胤断ちの紙片
  丈が遺した竜胤断ちの書の一部のようだ

   不死斬りがあれば、
   我が血を流すことが叶うはず

   血を流せば、香が完成し、仙郷にいける
   そうすれば不死断ちもできるだろう

   竜胤の介錯、如何に巴に頼もうか

この紙片を丈の目的を記したものだと判断すると、丈の目的とは「不死断ち」つまり、自刃である。新しい神になることを拒否し、桜竜の御魂もろとも竜胤を消滅させることを願っている

次にであるが、淤加美一族でありながら巴は丈が全てであった。ゆえに、淤加美一族の野望を完遂することよりも、丈を優先するのである

 秘伝・渦雲渡り
  源の渦を望む、己が主
  その小さな背中が、巴にとっては全てだった

 巴の手記
   せめて竜胤を断ち人に返して差し上げたい

   仙峯上人が、隠したのであろう
   竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…

淤加美一族の意志に反し、丈を人に返そうとするのである。だが淤加美派に属するがゆえに、仙峯上人の協力は得られない。そもそも竜胤を断とうとする巴は仙峯上人とも相反するものである


整理する
仙峯上人桜竜派。桜竜の望む「竜の帰郷」を実現しようとする。

淤加美一族反桜竜派。力の弱まった桜竜を捨て、その御魂を移すことで新たな神を作りだそうとしている。ただ桜竜の肉体を滅ぼすために赤の不死斬りを求める

反桜竜派かつ反淤加美派。自分を犠牲にすることで桜竜そのものを消滅させたい

:反桜竜派かつやや反淤加美派。というより「丈派」といったほうがよいか。竜胤を断つことで丈を人に返したい

実際は、淤加美一族の思惑は、丈と巴が従わないことでによってすでに断たれている

よって、残った意志は次のようなものになる

仙峯上人:「竜の帰郷
:「不死断ち
:「人返り

エンディングと完全に一致するのである




2019年4月14日日曜日

Sekiro 考察17 竜胤の御子

竜胤の御子とは何か
例えばゲーム内では、竜胤竜胤の御子、さらに桜竜といった言葉は同義語的に使われている

 「我が血は…竜胤は人を死なぬようにする」(九郎)
 「竜胤は…故郷を放たれ、この日本に流れ着いたもの」(変若の御子)
 「桜竜は、神なる竜 古く西から流れ着き、この地に至った」(戦いの残滓・桜竜)


  竜胤の御子が、つめたい竜の涙を飲み干し
  竜胤の揺り籠が、二つの蛇柿を食すのを

  揺り籠の命果てず、御子を宿さば
  西への帰郷は叶うだろう」(『永旅経・竜の帰郷の章』)」

で、あるのならば素直に桜竜=竜胤=竜胤の御子と考えるのが正しいのではないだろうか

やや同語反復的な表現になるが、竜胤の御子とは、桜竜の宿った依り代(依巫、よりまし)であり、ゆえに竜胤そのものなのである

Sekiroにおいては、九郎はすでに竜胤の御子であり、ゆえに桜竜なのである

では、神域で戦ったあの桜竜は何だったのだろう
実はすでにゲーム内においてヒントが与えられている

「祈ることである特定の時空に移動する」

これは仏像に鈴を供えて祈ることで過去の平田屋敷に転移したときと同じシステムである

また、義父の守り鈴を用いてまったく架空と思われる時空に転移した例も存在する

つまるところ、桜竜と戦ったあのステージは、義父と戦ったあの不思議空間と同一の種類に属する時空なのである

簡潔にいうと現実ではない

ただし過去ではないし、架空の時空でもない

巫女の存在を考慮に入れると、あれは巫女の見る夢の中なのである

隻狼は桜竜の涙を手に入れるために、どうしてもあの姿の桜竜と対面しなければならなかったのである。ゆえに、桜竜の棲む巫女の夢の中へと転移する必要があったのだ

そして義父を倒して「常桜の花」を手に入れたように、桜竜を倒して「桜竜の涙」を手に入れたのである

戦った桜竜が夢の中の存在だとして、では、現実の桜竜はどこへ行ったのか

桜竜=竜胤=竜胤の御子である以上、竜胤の御子の中しかない

桜竜が常しえである以上、それは尋常の方法で滅びることなく、ある種の呪いとして依巫(よりまし)の中に宿っているのである

不死断ちとは、竜胤の御子に宿る桜竜を殺すことである。常しえの桜竜を殺すためには、不死斬りでなければならなかったのである

竜胤の御子=桜竜であるのだから、竜の帰郷ENDとはそのまま桜竜が帰郷することである。帰郷とはそこから来た場所に帰ることであり、それはそこからやって来た桜竜でなくては表現が矛盾する。よって竜胤の御子とは桜竜のことであり、揺り籠に宿った御子もまた桜竜なのである

丈の竜咳とは、依巫である丈の生の力桜竜に吸い取られて罹ったものであろう

丈の肉体が限界を迎えたために、桜竜は次なる依巫「九郎」へと依り移ったのである

ゆえに、九郎は仙郷に行った経験がない葦名の地で丈から桜竜を受け渡されたからである


葦名には御霊降ろしの儀式が存在する

 阿攻の御霊降ろし
  「阿攻」を身に降ろす、首無しの遺魂
  一時、攻撃力と体幹攻撃力を強化する
  形代を消費すれば、何度でも使用できる

  首無しは、かつて護国のため、
  道を踏み外した勇者の成れの果て

  人ならぬ御霊は、降ろせば力となるが、
  代わりに差し出すものなくば、やがて狂う

同様に神なる桜竜を降ろした状態が、竜胤の御子なのである

Sekiro 考察16 左腕

Sekiroに登場する隻腕キャラは例外なく左腕を失ってます(隻狼、猩々、桜竜)

フロムゲーに隻腕が多いのは『ベルセルク』のガッツの影響とも言われますが、そのガッツの元ネタの一つに鉄腕ゲッツという異名をもつ騎士がいて(Wikipedia)、この人の鋼鉄の義手はだいたいガッツと同じ機能を持っていたようです(現存する義手からすると右手のようですが)

ガッツの造形という意味で言えば、隻眼なのはオーディンWikipedia)の影響、隻腕なのはテュールWikipedia)の影響も大きいのですが、他にも例えばフェムトの仮面は『ファントム・オブ・パラダイス』という映画の怪人が被っているマスクがデザインの元ネタで、他にゴッドハンドは『ヘル・レイザー』の魔道士たちの影響が大きいと思われます

話が脱線しすぎました

で、隻腕となった理由や出来事が明らかになっている隻狼や猩々はともかく、桜竜は唐突に隻腕なわけです

常しえである桜竜がどうして傷ついたのかは明かされませんが、「常しえ」である限りは、左腕もまだ生きているに違いないと思うわけです

そのことから断たれた左腕が自律してムカデになったとか、不死斬りになったとか、になったとか考えるわけです

ムカデになった説では、謎だったムカデの発生源が解明されるわけで、変若水のを飲んだ弦一郎の体が黒くなっているのと、竜胤の御子の従者である隻狼に白斑が出てることから、白木の翁は竜胤系の成れの果てであり、黒木の翁(名前は出てないけど)は、ムカデ系の成れの果てなのではないか、という推測も成り立つわけです

不死斬りになった説では、不死斬りの誕生した経緯が説明づけられるわけです。ヤマタノオロチ神話でヤマタノオロチの尻尾から天叢雲剣が出てきたように、桜竜の左腕から不死斬りが誕生したのだ、と言えるわけです

断たれた左腕から二振りの刀が生まれ、それは生を司る不死斬りと、死を司る不死斬りとなったのだ、とかも考えるわけです

丈になった説では、もともと丈は言ってしまえば木の枝なのであり、人としての生命が終わった後、樹木として白木の翁に仲間入りしたのだと考えることも可能なのです。白木の翁が咳(竜咳)にかかっていることから、丈が竜咳になった説明もつくわけです。樹木の属性を持ち、桜竜に縁の深い丈は、桜竜が傷ついた時、その生の力を奪われるわけです。で、竜咳にかかったのです

白木の翁に変化しただけであり、実際は死んでいないわけです。すると、巴の不死の契約も生きているわけで、神域にいる巫女は丈を祀る巴であった、という考えることもできるわけです(丈と巴の墓の存在やエマの証言を無視するのであれば)

丈=常桜とすると、梟が枝を手折って枯れ果てさせたのは、ある意味で病気に苦しむ丈を救うための行為だったとも考えられるわけです。常桜の化身であるは、本体の常桜が枯れると、その人としての生命がなくなるからです

さらにいえば上記の説すべてを融合させることもできるわけです

断たれた左腕がまず桜竜成分と百足成分の二つに分かれるわけです。そのうちの桜竜成分から丈と赤の不死斬りが発生し、百足成分からムカデと黒の不死斬りが発生したわけです

こう考えると、だいたいの説明はつくかと思われます(ただし細かい根拠は考慮に入れてない)

で、そもそも何で桜竜の左腕が断たれたのかという問題に戻ってくるわけですが、神の行動原理なんて人間には理解できるわけがないです

たぶん、人間が「何かください」と願ったら、左腕をブチッとちぎって差し出したとか、そういう狂った感じなんじゃないでしょうか


以上の論考は、Sekiroのテキストを読み込んで考察したというよりも、単なる印象論、直感による想像の話であり、ほぼ状況証拠から演繹したものに過ぎないのであります

実際、テキストと矛盾する点(例えば丈と巴の死去の情報、証拠)があることを最後に記しておきます

※丈と巴の死去関連の情報が全て嘘だったという可能性もある。人返りルートではエマの記憶がおぼろげであり、その証言が完全に信用に値するかというと疑問である

竜胤の御子と従者は最終的には白木の翁と巫女という関係に帰着するのかもしれない

Sekiro資料:人返りルート

人返りルートのテキスト

聞き耳
九郎:あと、少しだ…
………うむ…
為すべきことを… 為すまでだ

休息後エマに向かって
隻狼:為すべきことを、為さねば…

エマ:え?

隻狼:御子様が、そう仰っていた
おそらく、何かを…。秘められている

エマ:…そう、ですか…
………

隻狼:…どうした

エマ:丈様の記録に、介錯という言葉がありました

隻狼:ああ

エマ:おそらく、介錯とは…
竜胤の御子の命と共に、その不死を断ち切ること

隻狼:…何だと

エマ:このまま…。不死断ちの道を、歩まれるならば
不死斬りで、九郎様を…

隻狼:御子様のお命を、断たねばならぬ

エマ:…はい
不死断ちこそが、九郎様の望み…
それは、承知しています
ですが…。狼殿…
九郎様を殺さぬ道が、無いものでしょうか…

隻狼:…竜胤は、常ならぬ力
そのような道も、あるやもしれぬ

エマ:…ならば、狼殿
九郎様を殺さぬ道…
それを共に、探ってはいただけませぬか?

→断る。不死断ちは主の命だ
隻狼:断る
不死断ちは… 御子様の願いだ

エマ:分かり…ました
ですが、狼殿…
もし考え直されるならば、言ってください

→話しかける
隻狼:御子様は、定かにご存じなのだろうか
不死断ちが、己の死につながることを

エマ:貴方が見たご様子からも…
きっと、そうでしょう
丈様が残された記録は、元は書棚にありました
九郎様は、熱心に書棚の本を読みふけっておられた
介錯、という言葉の意味も、感づいておられるはず
…狼殿
やはり、私は諦めきれません
九郎様を殺さぬ道…
それを共に、探ってはいただけませぬか?

→考えは変わらない

隻狼:………

エマ:分かり…ました

→考え直す。やはり九郎の命を救いたい

隻狼:やはり… 御子様を死なすことはできぬ

エマ:狼殿… ありがとう、ございます

隻狼:手がかりを、探らねばな

エマ:はい
………ふむ…
……そうか、巴殿の…
狼殿、私に一つ心当たりがあります
調べを進め、分かったことがあればお伝えしましょう

隻狼:ああ

エマ:それから、このこと…

隻狼:御子様には、伏せておく

エマ:はい…

→同意する。九郎の命を救いたい

隻狼:御子様は、死なせぬ

エマ:…ありがとう、ございます

隻狼:手がかりを、探らねばな

エマ:はい
………ふむ…
……そうか、巴殿の…
狼殿、私に一つ心当たりがあります
調べを進め、分かったことがあればお伝えしましょう

隻狼:ああ

エマ:それから、このこと…

隻狼:御子様には、伏せておく

エマ:はい…


休息後
エマ:狼殿…
九郎様を殺さぬ道
その手がかりをつかみました
これを

→巴の手記

隻狼:…人返り

エマ:はい、ここには… 書かれています
竜胤を断ち、人に返す道がある、と
そのためには、常桜の花がいるようです
以前、お伝えした通り…
常桜とは、丈様が仙郷より、持ってこられた桜です
ですが、何者かが枝を手折り、花を持ち去り…
常桜は、やがて、枯れ果てました
常桜の木、そのものが失われてしまったのです

隻狼:木そのものが無い
当然に、常桜の花も無い…か

エマ:はい
ですが、持ち去られた枝には、花がついていた
それが見つかれば、あるいは…

隻狼:常桜の枝とは、これか?
義父が… 持っていたのだ

エマ:梟殿が…
ですが…。花はもう無いようですね…
………ふむ

隻狼:どうした

エマ:…いえ
常桜があったころのことを
思い出そうとしているのですが…
どうも、記憶がおぼろげなのです
………お二人の、お墓を

隻狼:何?

エマ:常桜の跡にある、丈様と巴殿のお墓を
参ってみようと思います
何か、思い出せるかもしれません

→仏渡り「名残り墓」
エマ:………
ああ… 何故、そのような道しか…

隻狼:…おい

エマ:狼殿…
…いらして、いたのですね

隻狼:何か、思い出せたか

エマ:………
いいえ、あいにく、何も

隻狼:…何もか

エマ:はい…
思い出せず、済みません

隻狼:………

エマ:…私の古い友ならば
その頃のこと、何か覚えているかもしれません
荒れ寺で、猩々と会ってきます

隻狼:猩々…?

エマ:…仏師殿の、古い名です

エマ:あの頃…
私と弦一郎殿は、良くここを訪れていた
常桜の下で、丈様が笛を吹かれ、巴殿が舞われる…
それを見るのが、たまらなく好きだった
………
…私の古い友ならば
その頃のこと、何か覚えているかもしれません
荒れ寺で、猩々と会ってきます

→仏渡り「荒れ寺」
仏師:………

隻狼:仏師殿?

仏師:…いや、何か用かい?

→話す
仏師:儂は、忍びを捨てた
じゃが、その忍義手だけは
どうにも捨てられぬ
その儂が、腕を失ったお前さんを拾うとは…
因果よな

→会話を抜ける
仏師:………なあ、お前さん

隻狼:何だ

仏師:知ってたか
この荒れ寺は、実に、隙間風がひどい

隻狼:………分かった

→エマと話す
エマ:…狼殿、いらしたのですね

隻狼:仏師殿からは、何か聞けたか

エマ:いいえ、これといって…
人返りについて
何か、別の手がかりを探さねば、なりません…

→話す
エマ:九郎様は、ずっと…
竜胤の御子であることに、縛られておいででした
そこから解き放たれ…
ただ人として、生きていただきたい
それを、願うばかりです

エマ:狼殿、では、また…


→盗み聞く
仏師:なあ、エマ…
お前さんは、それでいいのかい

エマ:私には、分からぬのです
不死断ちをなすためには…
九郎様か、あの方…
そのいずれかが、死なねばならぬ

仏師:………

エマ:なぜ、そのような道しかないのか…

仏師:だから… そいつを隠すのかい?

エマ:だって、猩々…
これを渡せばきっと、あの人は、死んでしまう

→盗み聞いたことを尋ねる
隻狼:いずれかが、死なねばならぬ

エマ:っ!

隻狼:それは、どういうことだ

エマ:聞いて、いたのですか

隻狼:教えてくれ

エマ:………私は、見たのです
あの日、常桜の木の下で…
巴殿が… 自刃されようとしたのを…

隻狼:なぜ、自刃など

エマ:巴殿は、こう言っていました
「竜胤の血を受けた不死は、その主を縛る」と…

隻狼:…人返りのためには
竜胤の血を受けた者が、死なねばならぬ、か

エマ:…はい。その、通りです

隻狼:だが、人返りも、成らなかった

エマ:はい。不死斬りが、無かったためでしょう

隻狼:………

エマ:私は、九郎様を…
そして貴方も、失いたくはない
どの道も、行き止まりなのです…

→隠しているものについて尋ねる
隻狼:何を、隠している…?

エマ:………それも
聞いて、しまったのですね

隻狼:教えてくれ

エマ:………

隻狼:為すべきことを、為す
御子様と同じように、そうしたいのだ

エマ:…これを

→義父の守り鈴

隻狼:これは、鈴か…

エマ:きっと、梟殿の亡骸から、こぼれ落ちたものでしょう
梟殿と貴方は、縁(えにし)が深い…
それを供えれば
また異なる記憶が、見られるやもしれません

隻狼:…供えてみよう

エマ:どういった記憶かは、分かりません
ですが、それは、梟殿が持っていたもの
どうか、お気をつけて…


→話す
エマ:狼殿…

隻狼:何だ

エマ:………どうか、武運を

隻狼:ああ


→話す
エマ:狼殿… では、また


平田屋敷(義父の守り鈴)攻略後

隻狼:手に入れた

エマ:それが、常桜の花
ああ、確かに… 間違いありません

隻狼:………

エマ:少し、顔を見せてください
………
何か、あったのですね

隻狼:…これで、御子様の人返りが叶う

エマ:………

隻狼:為すべきことを、為すだけだ

エマ:…分かりました
どうか、武運を


仏師:フンッ… お前さん、すこし空気が変わったようじゃな
何か… 大きなものを越えてきたと見える

→盗み聞く
仏師:…エマ
お前さん、行かせちまって、良かったのかい

エマ:…私が止めたとて
あの方は、行かれるでしょう

仏師:フンッ、じゃろうな

エマ:…ねえ、猩々
せめて、願っていたいのです
あの方が、成し遂げることを

仏師:ああ、そうするといい

2019年4月13日土曜日

Sekiro 考察15 梟

平田襲撃前、梟は九郎の周辺にいた(オープニングによれば隻狼の主人は九郎であり、二人を引き合わせたのが梟)
「お主のことは、よく覚えているぞ」(忍軍襲来時、梟に対して九郎が言ったセリフ)
「お主… 若様の、忍びじゃな」(平田屋敷住人。隻狼に対して)
「…お主 梟の…せがれか…」「御子様を… 急ぐ、のじゃ…」(平田屋敷の寄鷹衆)
 
だが、梟は平田襲撃の手引きもしている

「梟の手引きも、なかなかのものではないか」(平田屋敷、義父の守り鈴)

平田襲撃の梟の目的は大きく二つある

一つ目お蝶を誘き出して始末すること

二つ目死んだことにして行方をくらますことである

まず一つ目であるが、お蝶が問答無用で襲ってくるところを見ると、彼女は梟とその倅敵と認識している。つまり、九郎の護衛だと認識しているのだ

これは彼女が梟の思惑を知らずに平田屋敷を襲撃したことを示している


お蝶の目的は、丈との契約に失敗した時に残された桜雫を使い不死になることである。おそらく竜胤の御子がそこにいて、その日、その時警備が手薄になる、とでも情報を流したのであろう

  九郎:丈様の竜胤もまた…
  そなたと共に、生きるのだ(桜雫を九郎に渡した時)

「……肝心なときにおらぬ、とんだ役立たずめ」(平田屋敷の住人)
「お主、賊を手引いたのではあるまいな? さもなくば、この平田屋敷がこうも呆気なく落ちようものか…」(平田屋敷の住人)


お蝶はまんまと梟の罠にはまり、平田屋敷を襲撃したのである。そうして幻覚により九郎を操り不死の契りをしようとしたちょうどその時、隻狼が現われた

彼女にとって隻狼は九郎の護衛という認識である。ゆえに襲いかかったのである

梟は隻狼がお蝶を倒すも良し、殺されるも良し、と考えていたのであろう。隻狼とお蝶が同士討ちしてくれるのが最上の結果であっただろう。

だが、隻狼が勝ってしまった。ゆえに梟自身がとどめを刺したのである

お蝶が死ぬことで一つ目の目的が達成された。また、目撃者(関係者)を全員始末することで、梟は二つ目の目的を達成し、自分の死を偽装することに成功したのである
「死んだと聞いていたが、いったい何をたくらんでいる」(忍軍襲来時、梟に対する九郎)
「生きておいでだったとは…」(隻狼)
謀よ」(梟)

抜け忍には執拗な追っ手がつきものである。それを避けるため、梟は自分の死を偽装する必要があったのだ

葦名の忍びを抜けて寝返った先はおそらく内府方であろう

「…オレは、好かねえなぁ あの爺は、どうにも胡散臭えや あれは、外道… ド外道だぜ、正就さんよう…」(平田屋敷、義父の守り鈴)

孤影衆 槍足の正長と戦うこと、正就がいることなどから、梟が葦名を抜けて寝返ったのは内府方だと思われる

だが、梟の本当の目的はただ内府方に寝返るだけではなかった

彼は、薄井右近左衛門として、その名を轟かせようとしていたのである

その目的のために竜胤の力を欲したのである

「お主も、竜胤に魅入られたか」(忍軍襲来時、梟に対する九郎)

 戦いの残滓・大忍び 梟
  心中に息づく、類稀な強者との戦いの記憶
  今はその残滓のみが残り、
  記憶は確かに狼の糧となった

  大忍びの梟は、
  身に余る野心を抱き、竜胤の力を欲した
  さあ、己の真の名を、日の本に轟かせるのだ

  全てはそのための謀であった

ここでいう竜胤の力とは、「拝涙」ではなく「開門」のほうであろう
修羅エンディングで、彼は黒の不死斬りを手に隻狼の前に現われる

全盛期の力で黄泉返ることにより、それは可能となる


※平田襲撃時に九郎を連れていかなかったのは、そもそも不死の契約をするつもりがなかったからである。彼は「開門」による黄泉返りを求めていた。ゆえに、九郎はむしろ葦名方に保護されていた方が都合がよいのである

子供をつれて黒の不死斬りを探しにいくよりも、安全な場所にいてもらったほうがいいからである


なぜお蝶を殺したか


もともと梟とお蝶一心とは近しい間柄である

 一心に竜泉を飲ませたとき
  一心:酒飲みながら、十文字槍を手放さぬ馬鹿者に…
  人の酒を幻術でかすめとる、馬鹿者 盃片手に、作りかけの義手をい じっておる、馬鹿者
  それから…
  でかい図体で、すぐに真っ赤になる、見かけ倒しの梟もな!


人返りルートでエマはいう
「あの頃…私と弦一郎殿は、良くここを訪れていた 常桜の下で、丈様が笛を吹かれ、巴殿が舞われる… それを見るのが、たまらなく好きだった」

エマが丈と巴と面識があったとするのなら、梟とお蝶も面識はあっただろう。一心との間柄を考えるともっと深い関係であったことも考えられる(お蝶は丈の桜雫をも所持している)

一心にとって丈と巴は客人である。主としてその身の安全を守らなければならないのである。その護衛として信頼の厚い梟とお蝶を遣わしたというのは、考えられる話である

つまりお蝶は丈と親しく、それゆえに「竜胤の力」の秘密をも知っていたのである(桜雫を持っていることからも、かなり深く竜胤の力に関する知識を持っていた可能性が高い)

「開門」による黄泉返りを企む梟にとって、その秘密を知る者は非常に危険な存在である。先を越されるかもしれないし、妨害されるかもしれない。ゆえに、まずその知識に通じたお蝶を始末することが優先されたのである

※お蝶が桜雫を手に九郎に会いに行ったのは、あるいは九郎自身との契約断られた場合、それを見せて情に訴えるつもりだったのかもしれない。九郎なら絆されて桜雫を使って再契約した可能性はある


なぜ隻狼を殺したのか

死の偽装が露見すれば、追っ手として狼が遣わされる確率が高い。一刻も早く黒の不死斬りを探さねばならない梟にとって、強敵の存在は邪魔である

さらに、隻狼が生きていれば必ず自分を探すはずで、そうすると偽装が露見する可能性がある

関係が近しいがゆえに、隻狼もまた非常に危険な存在だったのだ

またお蝶を倒した者として、それにふさわしい力量の者は隻狼しかいなかったのであろう。お蝶ほどの忍びが死んでいれば必ず殺した者が探られる。だが、同士討ちならば、調査が梟の偽装にまで及ぶ可能性は低いであろう

2019年4月12日金曜日

Sekiro 考察13 不死斬り

突然だがSekiroには、秘匿されたある集団の影が見え隠れしている

それが存在した痕跡があり、またそれを示唆する物品があちこちに落ちており、さらにいえば、キーアイテムである不死斬りそのものが指し示すにも関わらず、その存在がまったく無視されるかのように隠蔽されているのだ

隠蔽された存在、それが製鉄集団である

落ち谷衆を見て「もののけ姫」を想起した人も多いだろう
もののけ姫に登場する石火矢衆落ち谷衆とそっくりなのだ


もののけ姫における石火矢衆の役目の一つがたたら場の警備である
また製鉄場で作られたにより、彼らの石火矢は製造されている(逆に言うと製鉄場が無ければ、石火矢は製造できない)

これが本来は石火矢と呼ばれる武器
石火矢衆ならびに落ち谷衆が持っているのは火槍である

また落ち谷の鉄砲砦のボス、ジラフ百足衆の長(六の念珠)であるが、百足衆とは鉱山を採掘をする集団のことである

『甲陽軍鑑』に拠れば武田家の金掘り衆は、トンネル戦法を得意とする工兵部隊で、百足衆と呼ばれたとも言われる。(Wikipedia 「百足」モチーフ、象徴

さらに、素材アイテムのいくつかは直接的に製鉄の存在を示すものである


また製鉄は竜とも関係が深い。例えばヤマタノオロチの尾からは天叢雲剣が発見されるが、これはスサノオによる製鉄集団の征服を物語った神話だという説も存在する

参考:たたらの歴史

参考:草薙剣と出雲地方のたたら製鉄(ヤマタノオロチと草薙剣の伝説)

これほどまでにその存在を示唆されながら、なぜSekiroに製鉄集団が登場しないのか。もののけ姫に似すぎてしまうことを避けたのか、あるいはDLCで触れるつもりなのかは不明だが、その秘匿のされ方はあまりにも不可解である

何より不自然なのは、不死斬りと呼ばれる名刀(妖刀)が伝わっているにもかかわらず、それを作った鍛治師(それは製鉄技術と関連が深い)の存在に全く触れられていないことだ

とはいえ、現在の葦名に製鉄集団の姿が見えないのは説明可能である。古代の製鉄集団は基本的に漂泊の民である。採掘技術が低く深部の鉄鉱石を取れないため、表層の鉄鉱石掘り尽くした製鉄集団は次の場所へ移動する必要があったのだ

そうして残されたのが、かつて鉱山の採掘の任に当たった百足衆であり、製鉄により作られた石火矢を持つ落ち谷衆であり、鉄屑であり、また不死斬りなのである

この不死斬りであるが、その力ゆえに尋常な方法で製作されたものでないことは想像に難くない。不死を切れるほどの力を持つ武器の製作に使われたのは、金剛鉄であろう

 金剛屑
  白色に鈍く輝く金剛鉄の屑

  強化義手忍具の作成の基本となる筒薬
  深い段階の作成に、広く使われる

  金剛屑は、葦名の中でも、
  ひと際古い土地のみで採れる
  古い土や岩は、神を寄せるとも言われる
  この恩寵か、金剛鉄は実にしなやかで強い


神を寄せるほどのならば、不死を斬ることを可能な刀も製作できるであろう。またこの金剛鉄は以前の考察でも述べたが、隕鉄であると思われる

(隕鉄は古代より神の石とされ、それは崇拝の対象であった。イスラムの聖地メッカのカーバ神殿にある聖石は、隕石である。ついでに言うとゲールマンの葬送の刃も隕鉄から出来ている)



赤の不死斬り

二振りの不死斬りのうち隻狼が手にしたのが赤の不死斬りである

 不死斬り
  死なぬ者さえ殺す大太刀
  その赤き刃は、刀を抜いた者を一度殺す
  回生の力なくば、不死斬りの主とはなれぬ

  不死斬りならば、
  蟲憑きにとどめ忍殺をすることができる

  この刀は、長く仙峯寺に秘匿されていた
  刻まれた銘は、「拝涙」
  それがこの刀の真の名だ

刻まれた銘「拝涙」のとおり、桜竜の涙を拝領するわけであるが、なぜ「拝涙」という銘を刻まれたのかという由来は伝わっていない

しかしながら、もし鍛治師が赤の不死斬りを製作したとして、「竜の涙を受け取れそうだから拝涙という銘にしよう」と考えたとは思えないのである

普通こうした銘は、その刀の成し遂げた事績から付けられるものである

つまり、「拝涙」とは「竜の涙を受け取った事績」により与えられた名だと思われるのである

であるのならば、「拝涙」隻狼以前にも行われたことがあることになる

ではなぜ「拝涙」という極めて特殊な行為をあらわすが付けられたのか
なぜ「竜斬り」ではいけなかったのか。

簡潔にいうと、不死斬り拝涙の儀式のために作られたからである

拝涙によって得られるのは桜竜の涙である。竜胤の御子に飲ませると不死断ちを可能にするアイテムである

別に竜胤の雫と呼ばれるアイテムがある。竜咳に罹ったものに生の力を返すことのできるアイテムである。よく見ると涙の形をしている

つまり、この二つは両方とも涙であり、桜竜と竜胤の御子のレベルの差はあるが、本来的には同様の機能を持つアイテムとも考えられるのだ



拝涙の儀

桜竜から涙を戴く「拝涙」と呼ばれる儀式が古代から行われていた。この儀式は活力の衰えた世界に再び活力を与え、復活させるための儀式である

これはダークソウルにおける「火継ぎ」とほぼ同じ機能を持つ儀式である

ただし、拝涙の儀の対象は衰えた世界ではなく、衰えた京人(ミヤコビト)たちである

不死ではあるが不老ではない京人たちは、数十年も過ぎると京の水の影響もあって徐々に姿を保てなくなってくる

その行き着く先は、ゲームに登場する軟体生物化した京人であるが、彼らはそうなることを事前に防ぐ方法を知っていた

それが、桜竜の涙を戴き、それを用いて力の衰えた京人たちに活力を付与する儀式である

儀式の具体的な作法だが、竜胤の御子の従者不死斬りを手に桜竜に挑み、その眼に剣を突き刺すことで涙を得る、という隻狼がしたのとまったく同様の手順であると推察される(儀式には試練がつきものなのである)

この拝涙の儀はある一定の期間ごとに行われていたと思われる(後述する)

そうして手に入れた桜竜の涙を、竜胤の雫を用いて生の力を元の人々に返すように、桜竜の涙を用いて生の力を京人へと戻すのである


この生の力とは「若さ」である


儀式により、不死である京人若さを取り戻し、再び老いるまでの時間的猶予を得るのである

だがあるときから拝涙の儀は行われなくなってしまった。結果、京人たちは軟体生物と化し、若さに飢渇するがゆえに人から「若さ」を奪おうとするのである



黒の不死斬り

不死斬りには黒の不死斬りと呼ばれる刀がある

 黒の巻き物
 黒の不死斬りについて記された古い巻物

  不死斬りには、赤の他に、もう一振りがある

  即ち、黒の不死斬り。その銘は「開門」
  黄泉への門を開く刀なり

  黒は転じて生を成す
  竜胤を供物に乞い給え…

この黒の不死斬りもまた「開門」と呼ばれる儀式に使うために作られたと思われる

まず拝涙の儀を終わらせた竜胤の御子とその従者用済みとなる
拝涙の儀式を行えるのは、竜胤の御子とその従者一組につき一度だけである

隻狼が神域に戻っても桜竜のいる時空へ再び飛べないこと、また、もし何度も挑めるのであれば、竜胤の御子が何人もいる必要は無いからである

複数の竜胤の御子がいると言うこと自体が、儀式の一回性を示しているのである

そうして用済みとなった御子と従者は、速やかに処理されることになる
処理とは殺害することである。そのために不死斬りは必要なのである

黒の不死斬りを用いて竜胤の御子を供物にする(本来は殺害)ことで、従者の肉体を引き裂いて死者が復活する

この死者とは、宗教学的にはでなければならない
世界が更新されるごとに、王は新しい肉体を持った王として復活するのである

この思想は、日本神話においては瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)真床追衾として伝わっている

床をおおう夜具。日本書紀の天孫降臨神話や海幸山幸神話などで、誕生した皇子を包む具とされ、天皇の即位儀礼における衾との関連が指摘されている。(真床追衾(まとこおうふすま)

此真床襲衾こそ、大嘗祭の褥裳を考へるよすがともなり、皇太子の物忌みの生活を考へるよすがともなる。物忌みの期間中、外の日を避ける為にかぶるものが、真床襲衾である。此を取り除いた時に、完全な天子様となるのである。(青空文庫『大嘗祭の本義』折口信夫)

さて、源の宮におけるとは、帝(みかど)のことであろう

だが、不可解なことに、本来いるはずの帝の姿が源の宮には見えないのである

源の宮が平安の都を模したものであり、また内裏がある以上は帝がいるはずなのである

だが、帝はいない。軟体生物化しているふうでもない。

内裏にいる貴族は、深緋の束帯を着用しただけである(襲われている淤加美は護衛であり貴族とは系統が異なる)


律令の官位と服色(当色)、その変遷の項

摂関期以降の欄を見てみると、深緋の服色の官位は「五位」と決まっている。また、源の宮で確認できるもう一つの服色、深縹(青)は「六位」であるが、これは源の宮におけるヒエラルキーの印象と一致する

となると、天皇は黄櫨染の束帯を着用しているはずだが、その色の服を着た貴族は確認できない

なぜ帝がいないのか。考えられるのは死んだか、あるいは源の宮を去ったかのどちらかであろう

立ち去ったと考えると該当する人物はであるが、公式サイトにおいて当初は御子ではなく皇子というが使われていたことから、帝ではないと考えられる(即位していたのならば、竜胤の帝とでも呼ばれていただろう)

そうなると帝は死んだと考えるほうが適切でないかと思われる。だが京人は不死である。不死である帝がなぜ死ぬのか

答えは単純で、は源の宮でただひとり、不死の京人ではなく死すべき人であったからであろう

京の水を頼らずとも、帝は不死に近い存在であった。なぜならば、死んでも「開門」によって復活することができたからである

拝涙の儀帝の薨去ごとに行われたのである。その目的は京人が若さを取り戻すことと、帝の復活なのである

しかしいつの頃からか「拝涙の儀」は執り行われなくなり、帝は黄泉返ることができず、京人たちは若さを失い続けて、軟体生物と化してしまった

これが不死斬りの存在から考察される源の宮の現状である



不死斬り

以上のように二振りの不死斬りは元々は拝涙と開門の儀式のために作りだされたと考える

今のところこれ以外「拝涙」と「開門」という銘の不死斬りが存在する理由を思いつけないのと、回生システムが桜竜から連なるシステムであることを考えると、竜胤の雫に備わる竜咳の快復機能が、桜竜にも上位機能として存在するのではないかと考えたことによるものである

竜胤の御子とは桜竜を矮小化させた存在であり、竜胤の御子に備わる力は、基本的に桜竜にも上位版として備わっていると思われる

変若の御子が「竜胤の呪い」と言うように、都人の不死老衰も「呪い」だと考えると、桜竜の涙呪いを解く機能があるのかもしれない(呪いと考えると、ソウルシリーズの不死と共通する点が見えてくる)


これらの考察から丈の行動も説明できるように思える。丈は桜竜ではなく死期の迫った帝の命によって追放同然に葦名の地に派遣されたのだ

その目的は「拝涙の儀」ならびに「開門の儀」を執り行うための「不死斬り」を探すことであった

彼は「拝涙の儀」の機能、つまり「呪いを解く」機能を理解していた。ゆえに、竜胤断ちの術を書き残すことができたのである(そうでなければ、竜の涙を、戴くべし、などという具体的なことは書くことが出来ない)

 竜胤断ちの書
  九郎より授かった書物
  竜胤を断つための術が記されている
  古い物のようで、綴じ紐はほつれ
  紙片が所々抜け落ちている

   竜胤断ち
   それを成す術を、ここに書き残す

   源の宮の、さらに神域
   仙郷の神なる竜の涙を、戴くべし


もまた、不死斬りの機能について把握していた。でなければ、人返りの方法を知っているはずがない(「人返りには、常桜の花と不死斬りが要る」とまで言い切っているのである)

 巴の手記
  柔らかな字でしたためられた巴の手記

   丈様の咳は、ひどくなられるばかり
   仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ
   せめて竜胤を断ち、人に返して差し上げたい

   人返りには、常桜の花と不死斬りが要る
   なれど、花はあれども不死斬りはない
   仙峯上人が、隠したのであろう
   竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…


丈と巴は、源の宮に帰る方法を知らなかった。ゆえに調べてそれを突き止めたのである。一方、不死斬りについては、調べた形跡がなく、なんとなれば最初からその存在や機能を知っていたようにしか思えないのである

しかも「仙峯上人が不死斬りを隠したので“あろう”」と手記に書き残していることから、不死斬りの所在も大まかには分かっていたようだ

これらのことから、丈と巴の葦名到来の目的は不死斬り」にあったと考えるほうが自然である

けれども丈は目的を果たすことなく葦名の地で病没し、「拝涙」が行われないために京人は軟体生物化し、「開門」が行われないため、帝は死んだまま復活することなく源の宮から姿を消したのである


蛇足

「拝涙」による「生の力(若さ)」の復活、というところまでは竜胤の雫というモデルがあったため、詰まることもなく考察できたのだが、「開門」にはとても困った

死者を黄泉返らせる機能があるとして、これまで誰を復活させてきたのか皆目見当がつかなかったからだ

まさか鍛冶師が「この剣は竜胤の御子を供物にすると、死者を黄泉返らせることができそうな予感がする」として「開門」という銘を付けたわけではなかろう

というわけで、「開門」にもまた死者を復活させる目的により鍛えられ、その事績があるがゆえに「開門」と名付けられたのかなと考えてみたのである

しかし、そうだとしても一体、だれが復活したのかさっぱりわからない
よほどの人であろうとは推測されるのだが、Sekiro内にそんな人物は存在しない

しかし製鉄集団の存在が隠されていたように、本来いるべき存在が秘匿されているのではないか、と想像をめぐらし、紆余曲折を経て帝に至った次第である


Sekiro 考察12 訂正:仙峯上人

緑の法衣の即身仏紫の法衣の仙峯上人が別人だったという訂正

確か発売直後ぐらいからすでに指摘されていた記憶があるのですが、すっかり間違えて認識してました

というわけで、各考察の訂正をしました。申し訳ない

緑の即身仏と仙峯上人が別人だったとして何か考察が変わるかというと、特に何も変わらないんですが、今後その差異が何か意味を持ってくるかもしれない

よく見なくても一目瞭然ですね。なんで間違えてたんですかね

2019年4月11日木曜日

Sekiro 考察11 水生村(クトゥルフ篇)

「化做蛞蝓得自由(ナメクジになり自由を得た)」(内藤丈草) 

Sekiro世界における水生村の考察はまだまとまっていないので、ひとまずクトゥルフ方面から読み解いてみたいと思う

なぜクトゥルフかというと、Sekiroの解析によって「京の水」の元の名前が「インスマウスの生き肝」であることが判明しているからだ

京の水とは都に渡った人間が飲むことになっており、実際に飲んだ神主が軟体生物化したアイテムである

インスマウスとはラヴクラフトの『インスマウスの影』(インスマス Wikipedia)という作品が元ネタであり、そこではインスマウスという海辺の町の住人たちが魚人族と混血を重ねた結果、半漁人的な特徴を獲得し、さらに年を取った住民は海底に棲むようになる(魚人は不死)、という怪異譚が語られる

これが源の宮で起きていることの、ざっくりとした元ネタであり、その怪異のネタバレであることは、すぐに理解できるかと思う

では、水生村で起きていることも源の宮と同じ現象なのか、というと、これが少しことなる

神主が変貌したのは、あくまで「京の水」を飲んだからであり、その「京」とは源の宮を意味する言葉である
つまり、インスマウス=源の宮なのであり、水生村がインスマウスとは言い切れないのだ

そもそもインスマウスだけでは、水生村で確認できるナメクジの存在が説明できない


では、水生村にいるナメクジは一体なんなのか

クトゥルフ的に答えるのならば、「グラーキ」(Wikipedia)である
英国作家ラムジー・キャンベルのクトゥルー神話作品『湖畔の住人』に登場するナメクジ型の旧主である

詳細はWikipediaあるいは各種クトゥルフ事典なりで読んでもらいたいが、彼らは隕石の落下によってやって来て、湖の底に住んでいる神である

また、グラーキの棘に刺されると、人はゾンビとなりグラーキの奴隷にされるという

ナメクジ型、湖底に住む、住民はゾンビと化す、(そしておそらく隕石)」
これらの共通点から、水生村の元ネタは『湖畔の住人』であると思われる

つまり水生村で確認できる半分だけナメクジ化した魚は、魚がナメクジ化したものではなくナメクジが「インスマス的変貌を遂げ」魚に変化しつつある、その過程の姿なのである

源の宮のモチーフは『インスマウスの影』であり、水生村のモチーフは『湖畔の住人』なのである

この二つの作品を混淆して創作されたのが、源の宮および水生村なのであり、Sekiroにおいては、この二つの町に潜む「影たち」互いに影響し合っており、人間はその「影たち」の接触に、彼らとの意志とはまったく無関係に巻き込まれているだけなのである


蛇足

以上のように源の宮と水生村はクトゥルフ的な解読が可能である




2019年4月9日火曜日

Sekiro 考察10 蟲

「蟲憑き」や「仙郷」の考察で触れたというか、触れざるを得なかった蟲そのものに関する考察

まず結論として、蟲とは葦名土着の小さな神々の零落した存在である

 神食み
  葦名のひと際古い土地に生える草木には、
  名も無き小さな神々が寄っていたという
  これは、そうした草木を練り上げ作られる
  神々を食み、ありがたく戴く秘薬である

  だが、神なる竜が根付いたのちは、
  そうした小さな神々は、姿を潜めてしまった…

桜竜が根付いたことで、小さな神々は姿を潜めたという。消滅ではなく潜めたのである。つまりどこかに隠れている

どこかというと、それは水の中である

 神ふぶき
  紙を抄くというが、
  源ので行うそれは、神を掬うことでもある

加えて神主から濃縮した源の水(「酒」)を飲まされた水生村の住人の言動を思い出して貰えればわかりやすいと思われる

 籠かぶりの正助
 「喉が渇いて、たぁくさん、お酒を飲んだからなあ」
 「ただなあ… お酒を飲むと、喉が渇いちまう
 「酒樽は、すぐ空になる」
 「仕方なく、みな、池や川の水を啜るんだ」
 「けどなあ、飲めば飲むほど、喉が渇く…」


同じ症状蟲憑きにも確認できるのである


この画像は葦名の底で戦う獅子猿の、戦闘前の姿勢である
壁を伝って落ちてくる水を、首の無い猿が飲んでいるように見える

首が落とされた獅子猿が、ムカデと酷似したアクションを取ることは、菩薩谷での戦闘からも分かると思う

要するに、首を落とされると憑いた蟲の本能が表面に現われるのだ

で、あるのなら、この水(源の水)を飲むという行動は、蟲本来の本能的な行動だと考えられる

ここに、源の水を飲んだ人間と、共通した症状が確認できるのである

源の水を飲んだものは例外なく喉が渇き、さらなる源の水を求める衝動を抑えきれなくなる


さて、源の水とは桜竜の影響を受けた水のことである

この水に影響された小さな神々同じような症状を発症したと推測される

 戦いの残滓・桜竜
  この葦名には、ひと際古い土地がある
  古い土や岩が、そこに染み渡った水が、
  神なる竜を根付かせたのだ

仙郷の神域からは膨大な量の水が噴出している

その水が古い土地に染み渡ってゆき、その水を草木が吸い上げ、さらにそこに寄りつく小さな神々にも影響を与えていった

源の水と接触した神々は激しい渇きにさいなまれ、池や川の水を啜りに水中へと飛び込んでいったのである(水生村の湖底には飛び込んだと思わしき人間が無数に確認できる)

しかも、ひと際古い土地は源の水の源流に近い場所である。つまり小さな神々は、純度の高い源の水に接触している

純度の高い水は劇的な変化を小さな神々にもたらした(神主に「京の水」を渡した時のような)。小さいがゆえに、人間よりも影響の度合いが高く、人間が不死になる程度の純度でさえ、小さな神々には致命的だったのである

そうして小さな神々は水の中に溶けていった

神々の溶けた源の水は濃度が高まると変若水となり、さらにそれが濃縮されると、変若水のを析出させる

この変若水のこそが、である

貴い餌は変若水が溜まり、その濃度が高まっていると想定される場所に置かれている。源の宮の湖底、水生村の滝壺、獅子猿の水場の滝壺などである

これらは、変若水の濃度が高まり、水中に溶けていた小さな神々が再び形を成したものだと考えられるのである

は元はであり、神の属性を有するがゆえに、人に憑く

また、神々と呼ばれていたように、複数の種類があり、おそらくは蟲によって憑いた人間の症状が異なってくる

さて、「仙郷」の考察において仙峯上人はぬしの色鯉の肉を食べて蟲に寄生された、と述べた

ぬしとは土地神であり、神の肉は人の身には「毒」になるとされる

 生の蛇柿 
  ぬしとは、土地神

  神を食らうなど、
  人の身にとってはとなろう

だが、絶対に変若水に触れようとしない白蛇(例えば落ち谷で襲われた時には、水中まで絶対に追ってこない)と比べ、ぬしの色鯉は純度の高い源の水に棲んでいる神である

この神もまた、小さな神々と同様に源の水に影響を受けていただろう。つまりぬしの色鯉の肉体は蟲化しているのである(蟲の群体である

神の肉は人の身にはである。が、そのもまた蟲化している
神の毒が蟲と化し、それは毒虫の最たるものであるムカデの形を成したのだ

神の毒たるムカデ憑かれると、人は不死になる。桜竜の「常しえ」を受け継いでいるゆえに、蟲もまた「常しえ」なのであり、宿った肉体を「常しえ」にするからである(獅子猿は水場に流れてきたぬしの肉でも食べたのだろう)

が、それはやはりである。怪異の領域にある獅子猿ならともかくも、人間がそのに耐えられるとは思えない

事実、耐えられなかったのだろう。ゆえにぬしの肉による不死は、仙峯寺の専売特許となったと思われる

仙峯寺の本堂にいる即身仏型の蟲憑きは「中り薬」をドロップする


 中り薬
  毒に中る粉薬
  葦名の忍びが、古くから用いたもの

  口にすると、弱い「中毒」にかかる
  自らの身体に毒を取り入れることで、
  他の毒を全て無効化できる

  ある類の術のため、この薬を用いる忍びもいる
  毒も使いようと心得るゆえに

仙峯寺の僧侶たちは、中り薬を自ら飲むことで蟲の毒を無効化しているのである。そして彼らは理性を保ったまま、肉体的な不死を手に入れたのであろう

※蟲憑きである仙峯上人が死んだのは、中り薬の服用を止めたことで、神の毒毒を抑えきれなくなり、中毒死したからである
※死なず半兵衛は奥の歯(「忍びの青い秘薬が仕込まれた差し歯」)、つまり毒薬をドロップする。この毒の効果により中和されているのだろう
※獅子猿は糞投げ攻撃をしてくるが、これを喰らうと毒状態になる。つまり毒を体内に保有しているのである

※ただし破戒僧は毒攻撃ならびに毒に関連するアイテムを持っていない。よってこの考察には瑕疵がある

さて変若水には蟲となった神々が溶けていると上述した。要するに濃度の高い変若水、例えば変若水のなどを飲めば、人は蟲に感染するのだ

元は同じ源の水であるが、その濃さによって感染の度合いは異なると思われる
感染の度合いは、変若水の澱>>>変若水>>>源の水ぐらいのものであろう

変若水の澱などを摂取して蟲に感染すると人は赤目になる

赤目となった者が体内に残すのが赤成り玉である

 赤成り玉
  赤目と成り果てた陣左衛門
  その体内にあった、赤く丸い塊

  食らうと赤目となり、
  敵の攻撃に怯みづらくなる
  ただし、回生の力は使えなくなる

  この赤く丸い塊は、常しえに朽ちぬ
  害はないが、効力が切れたのちも
  きっと腹の中にずっと残るだろう

 赤成り玉
  食らえば赤目と成る、赤く丸い塊

  赤目になれば、敵の攻撃に怯みづらくなる
  ただし、回生の力は使えなくなる

  赤成り玉は、
  成りたいものに、成れなかった者の名残り
  触れば仄かにあたたかく、脈を打っている

赤成り玉常しえだという。この「常しえ」はSekiroにおいては、桜竜の属性である。つまり桜竜の影響を受けていることを指し示す

さらに、触れば仄かにあたたかく、脈を打っている、という

ある種の寄生虫(例えば回虫)は、人の腸内ボール状にかたまり、腸閉塞などを起こすという。人の皮下嚢胞(シスト Wikipediaを作る寄生虫も存在する嚢虫症 Wikipedia

赤成り玉は、人に憑いた蟲が作りだした玉状の嚢胞(シスト)であると思われる

ゆえに、仄かにあたたかくを打ち、さらにそれを摂取した人間に寄生し宿主を赤目にする。この赤目とは、蟲が憑いたことを示す症状である

上記のように神々が複数いたように蟲の種類も様々なのであろう

また鱗を集めていた壺の貴人赤目の鯉になるのは、その鱗に蟲が憑いていたからであろう(実際の鯉の鱗にも寄生虫がつくことがある)

を食し、蟲に寄生された結果、壺の貴人は魚人化したのである。鱗を介して貴人に寄生した蟲は、源の宮の湖底で確認できる

鱗が足りず蟲の数が足りなかった場合は、ぬしの「成りそこない」となる

 鯉の赤目玉
  水生村の池の底に棲む鯉
  その赤い目玉二つ

  目だけ赤い鯉は、「ぬし」の成りそこない

   鱗が足りぬ半端物。その身は錦に染まらぬが
   目玉は赤く、常しえに朽ちぬ

ぬしの色鯉とは蟲の群体であり、神たるぬしになるには膨大な数の蟲が必要なのである


※基本的に蟲は人の肉体を強化する。憑く神が強ければ強いほど人の肉体は強靱さを増し、それが極限まで高まると不死になるのである

※幻影のエマが、変若水に関して「いえ、死ねぬようになります」と言っているので、変若水も不死をもたらすのかもしれない

※都人のナメクジ化は、桜竜の異変により源の水の成分が変容したためと考えられる(源の水の濃度とは無関係の、何らかの異質な成分が混じっている)。それは植物の防御機構によるものであると推察される


蛇足

八百比丘尼人魚の肉を食べたという伝承をに絡めようとすると、どうしてもぬしの色鯉を介さねばならず、そうすると話がかなり回りくどくなってしまうので困る

色鯉とムカデは「毒」という項を通じて繋げたわけだが、多少無理があった感も否めない

他の考察をしようにも、なぜかいつもこの「蟲」ならびに「蟲憑き」が出てきて、しかもこの二つ、物語の本筋とまったく脈絡なく登場する

Sekiroの考察をするには、どうしてもまず「蟲」の考察を自分なりに片づける必要があった