2017年4月21日金曜日

【個別考察】ヨーム

大きく分けて「DS2の巨人の末裔」と「ヴァンクラッド王の末裔」の二説がある

ヴァンクラッド王の末裔説
顔の有無や、征服者という称号、巨大化したヴァンクラッド王の姿、「巨人殺し」の異名を持つ大剣ストームルーラーを持っていることなどがその主な理由

人が巨人になるという設定
個人的にヴァンクラッドの末裔説には抵抗がある
なぜならば、「人が強大な力を得て巨大化すると、巨人というになる」という設定を付け加えなければならないからだ

ソウルを得ると巨大化する、というところまではわかる。だが巨人という「」になるというのが解せない

明確な事実として、ストームルーラーはヨームに特攻を持つが、巨大化した人(サリヴァーンやアリアンデル)には特攻を持たない
やはり、ソウル(力)を得て巨人化した人間と、巨人種とは明確に区別されるべきじゃないかと私は考える

そもそも「ヴァンクラッド王が巨人となってその末裔が~」ということは、ヴァンクラッド王が巨人種に変貌したのちに子供をもうけたことになるが、果たしてそれが可能だっただろうか? 

巨人種になったのだから、相手は巨人しかいないはずである
巨人族の女性とのあいだに生まれた子供の末裔がヨーム、ということになる

そして、もしもヴァンクラッド王の巨人としての子息がいるのだとしたら、デュナシャンドラが見逃すはずがない。子息を利用して玉座を狙ったはずである

だが、DS2においてヴァンクラッド王の子息は登場していない。存在を示唆するテキストもない

征服者という称号
巨人の国を平らげたので、征服者という称号がヴァンクラッドに与えられた、ということなのだろうが、「征服者」という命名はどちらかというと「被征服者」側が新たな支配者に授ける称号だろう

そもそもDS2の時点で、ドラングレイグは滅んでいる
かつてドラングレイグを滅ぼした
巨人の王のソウル
 
海を渡ったヴァンクラッドは
巨人たちを捕え、王城へと連れ去った
その頃から、王の面持ちには
次第に暗い影が差すようになった(巨人の王のソウル)
征服され、滅ぼされたのはドラングレイグであって、 巨人の国ではない
ヴァンクラッドは海を渡り、力の源を奪ってきただけで、征服したわけではない

ドラングレイグという国を征服したのは、巨人族だ
その征服者の末裔となれば、当然巨人であるのがあたりまえなのである

ストームルーラー
自身に特攻を持つ剣を持つ理由
もちろん自分で作ったわけではないだろう。誰かが作りそれをヨームが受け継いだのだ

ヴァンクラッド王のソウルで創れるのが「ルーラーソード」であり、巨人を平らげた王の剣が巨人殺しの力を得たとしても不思議ではない

だが、何度も言うようにドラングレイグは巨人によって滅んでいる
その征服者が彼の剣を戦利品として入手していてもおかしくはない

顔の有無
顔とは差異の象徴である
元々巨人には顔があったはずだ。だが、ヴァンクラッドにその力(おそらく火)を奪われて、差異が消失し顔を失ったのだ
よって、DS2に登場する顔のない巨人のほうがイレギュラーであり、巨人は元は顔があった。そしてDS2における火継ぎにより、差異が復活、巨人たちは顔を取り戻したのだろう

あるいは征服者の数少ない生き残りがドラングレイグの地に住まい、その火によって差異を得た。その末裔こそがヨームであったと考えられる

まとめ
正直なところ、どちらにも決め手がない
考察しているうちにふと浮かんだのが、巨人(種族ではなく巨大化)となったヴァンクラッドは巨人族の女性とのあいだに子供をもうけたのではないか、そしてヨームはその末裔ではないか、という考えだ

つまり二つの説はどちらも合っていた、とする説だ
ヨームはヴァンクラッド王の末裔であり、DS2の巨人の末裔でもある

巨人という種ではなく、単に巨大化した人と、巨人族の女性とのあいだに子供が生まれる。その末裔がヨームだった

この場合、顔の有無の問題は解消される(人と巨人族のハーフ)うえに、征服者がヴァンクラッドでも巨人族でも、どちらでもよくなる

ダークソウルの手法について2 作者の死

手法については以前「ダークソウルの手法について」でいろいろ書いた
ロスリック王家の構造がイギリス史上の「エドワード懺悔王(証聖王)」と類似しているとか、クリエムヒルトとグンダが『ニーベルゲンの指輪』に登場する等々。

それ以前にも「グウィンという名前について」という記事で、グウィンやサリヴァーン、ロイド、アルトリウス、グウィネヴィアなどの語源を明らかにしたこともある

今ちょうど考察スレに「フィリアノールと小人の王たち=白雪姫と七人の小人」の一致が挙がっているが、おお、となった
眠る姫と小人という要素から白雪姫というストーリーを思い浮かばなかった自分の迂闊さをののしってやりたい

そのうえハーラルド騎士のソースコード上の名がマヌスであるという
白木の弓のテキストからウーラシールが輪の国と交流があったことがうかがえるが、マヌスの意思によるものだったという可能性も示唆される

ここで一つ疑問が思い浮かぶ
ウーラシールは魔術の国であり、マヌス自身も魔術師であった
騎士の要素などないではないか? 

いや、あるのだ。かの騎士の中の騎士アルトリウスである
つまりハーラルド騎士とは、ハーラルド騎士団が深淵に取り込まれて生まれた、アルトリウスの義兄弟のようなものである
強いはずだ

そしてハーラルドは、映画「白雪姫と七人の小人たち」の監督の名でもあるという
だからマヌスは小人の王たちの父であり、マヌスは恋人と再会できない恐怖にとらわれている云々
映画のヒロインはいわば「監督の恋人」のようなものであり「娘」のようなものでもあるこの「構造」を見事に表しているではないか

と、このように様々に考察が展開できるかもしれない

ただ、なんというか製作者が便宜上つけた名をもとに、創作物の重要なストーリー部分を解釈していいのかどうか、いつも悩むところである

要するにマヌスとは、「深淵に取り込まれた者だからマヌスにしとこう」という開発上の便宜的な理由からつけられた名であって、実際の「深淵の主マヌス」と関係があるのかわからないのである

自分で言っといてなんだが、映画監督の名との「構造的関係性」なんて、なんというか一種のうさん臭い精神分析的な印象すら受ける

ハーラルドは監督の名だ、という指摘には私自身は肯定も否定もできないのである。それがわかるのは製作者側だけだからだ

というわけで、私自身は最近はこうした方法を取らなくなってきている

作者の死
ロラン・バルトの言葉に「作者の死」というものがある
ウィキペディアから引用すると
バルトの仕事の中でも頻繁に議論されるのが、『物語の構造分析』に収録されている「作者の死」である。本稿でバルトは、現代においても、大きな支配的な概念となっている「作者」という概念に疑問を投げかける。私たちは、ある芸術作品を鑑賞するとき、その作品の説明をその作品を生み出した作者に求めがちである。これは、作品を鑑賞するということは、作者の意図を正確に理解することであるという発想である。このことから、たとえばボードレールの作品はボードレールという人間の挫折のことであり、ヴァン・ゴッホの作品とは彼の狂気であるという発想が導き出せる。しかし、バルトは、この発想を「打ち明け話である」として批判する。このように作者=神という発想ではなく、作品とはさまざまなものが引用された織物のような物であり、それを解くのは読者であるとして、芸術作品に対してこれまで受動的なイメージしかなかった受信者の側の創造的な側面を本稿で強調した。この概念は、後年のバルトの作品でもよく言及されている。たとえば、『テクストの快楽』においても、この概念についての論考が見られる(『テクストの快楽』p120)

要するに、ダークソウルというゲーム上に示された情報からストーリを解くことと、プログラムソースや元ネタをも含めて「作者の意図」を追求することとは別のことであり、ロラン・バルトは後者の方法を受動的として批判している

私自身もロラン・バルトの意見に賛同しているし、最近では元ネタにはあえて触れないようにしている

例えば阿部謹也さんの著作を読んでいると章題が「鐘の音でつながる世界(うろ覚え)」だったりゲートルードが出てきたりしてにやりとすることがある。だが、これがダークソウルのあれの元ネタなんだ、と強く主張することはない

ほかにも例えばブラッドボーンには「穢れ」という概念が登場するが、『ケガレ』を著した波平恵美子氏の論文に『水死体をエビス神として祀る信仰―その意味と解釈』というものがある。これをゴースの遺子(とそのマップ構造)の元ネタだろうと主張することも可能だろうが、するつもりはない(参考程度に触れるかもしれないが)

まとめ
紆余曲折して無駄に長くなったが、要するにもっと自由に考察してもいいのではないか、ということだ
ダークソウルはゲームなのだから、ゲームをプレイしたときの印象もテキストと同様に大切にしなければならないのではないか
あまり元ネタ探し、プログラムコード漁りに血道をあげても、それは作者の意図を理解するには適正かもしれないが、ダークソウルというゲームの考察としては、不十分なのかもしれない
以上


2017年4月19日水曜日

【個別考察】罪の都

考察スレで罪の都に関する考察が盛り上がっているので便乗して考察してみる
自分は以前に「ヨーム=ニト説」として罪の都を扱ったこともあるが、これはDLC発売前の余興という単なる戯言に近いものでもあった

まずはアイテムテキストを重視して考察してみたいと思う

罪の都の辿った歴史

1.神官の家族(女性)の呪いが切欠となり罪の火が生じる

異形と化した罪の都の住人
その中にあった異様な武器
彼女たちはある神官の家族であり
その呪いが、罪の火の切欠になったという
だが当人たちは、のうのうと生き続けていた(エレオノーラのテキスト)

2.罪の火が罪の都を焼く

冷たい頭蓋の器に納められた
罪の都を焼いた火の残滓(罪の種火)

3. 巨人ヨームが罪の火を鎮めるために薪の王となる

孤独な巨人は、罪の火を鎮めるため薪の王となった
彼を王と呼ぶその声に、心がないと知っていても(ヨームの王の薪)

4.ヨームを王として罪の都は敵対者と戦う

ヨームは王として一人先陣に立ち
決して揺るがず、その大鉈を振るったという
そして守る者を失い、彼は盾を捨てたのだと(ヨームの大盾)
大盾と一対で常に先陣にあったというが
ヨームが盾を捨てた後、左の持ち手が追加された
それは独特の叩き潰す剣技を生み
彼の晩年、その凄まじい戦いの語り草になった(ヨームの大鉈)

5.罪の炎が罪の都を滅ぼす

罪の炎に由来する呪術
離れた敵を炎で包み、焼き払う
巨人ヨームが薪の王となった後
罪の都は炎により滅びた
それは空より生じ、人々だけを焼いたという(罪の炎)

補足

・神官とは宮廷魔術師のことである
その黒く高い帽子が示唆するように
彼らはまた、神官でもあったという
その儀礼的な金刺繍が示唆するように
彼らはまた、神官でもあったという
罪の都、その宮廷魔術師たちの絹の手袋
彼らはまた、神官でもあったという
罪の都、その宮廷魔術師たちのズボン
彼らはまた、神官でもあったという(宮廷魔術師シリーズ)
 ・宮廷魔術師はローガンの魔術を継承すると主張していた
大賢者「ビッグハット」ローガンの魔術
その継承を主張する魔術師は多いが
罪の都は、その大きな二派のひとつである(宮廷魔術師シリーズ)
宮廷魔術師たちは
かの「ビッグハット」ローガンの継承を主張し
その杖もローガンのものに似せたという(宮廷魔術師の杖)
・事実、ローガンの魔術を継承していた
罪の都の宮廷魔術師たちの秘蔵の書
魔術師に渡すことで
ローガンの魔術を学べるようになる
それは確かに、かの「ビッグハット」の魔術であり
ローガンの後継を名乗った宮廷魔術師たちにも
三分の理ていどはあったようだ(ローガンのスクロール)

 考察

以上の記述から罪の都の歴史が大まかに理解できるかと思う

最盛期の罪の都は、おそらく魔術の国であったと思われる
宮廷魔術師(神官)が権力を握り、王は軽視されていたか、存在していなかった

ある時、ある神官の家族(女性たち)の「呪い」を切欠として、罪の火が生じる
罪の火は都を焼き尽くす勢いで燃え広がり、その「決して消えない罪の火」を鎮めるために人々は巨人ヨームにすがった
ヨームは人々の心が虚ろであることを知りながら、薪の王に就く

そこへ敵国が侵攻してくる
 ヨームの大盾のテキストによれば、彼は守る者を失ったのち大盾を捨てたとされる=おそらく味方の軍が全滅したのだろう。もし侵攻していたのであれば、そうなる前に撤退するはずである。また、罪の火に焼かれた罪の都には、他国を攻めるほどの国力はないはずである

ヨームは大盾を捨て、大鉈を用いて戦った
そして勝利したのだろう。そうして彼は「孤独な王」となった

敵国とはどこか?
ヨームの玉座を狙う高台に「鬼討ちの大弓」と「鬼討ちの大矢」が落ちている
東の地に伝わる独特の大弓
彼らの神話によれば、角を持つ巨人
鬼を討つために使われたという(鬼討ちの大弓)
東の地で鬼を討つために使われたという大矢
大弓でしか射つことができない
老カラスの羽を用いたというその矢は
羽の主と同じく真っ直ぐに飛ぶという(鬼討ちの大矢)
このことから推察するに罪の都は「東国」と戦ったと考えられる
 奇妙なことにイルシールの地下牢やアノールロンドには「東国関連」のアイテムが落ちている(アルバや東人の遺灰など)。古い時代には東国と罪の都やイルシールがわりと近い位置にあったのかもしれない

自軍が全滅した後、大盾を捨てたヨームは凄まじい戦いを繰り広げ、侵略者を追い返す
大盾と一対で常に先陣にあったというが
ヨームが盾を捨てた後、左の持ち手が追加された
それは独特の叩き潰す剣技を生み
彼の晩年、その凄まじい戦いの語り草になった(ヨームの大鉈)
孤独な王は、心無い者たちにかしずかれながら、罪の都を統治する
だが罪の都の人々の、冒涜的な行いが破滅をもたらすことになる
罪の都の侍女たちの短剣
攻撃命中時に、ほんの少しFPを回復する
その女たちは愉しみに人を傷つけたという(侍女の短刀)
このような行為が平然と行われる罪の都に「罪の炎」 が降り注ぐ
罪の炎に由来する呪術
離れた敵を炎で包み、焼き払う
巨人ヨームが薪の王となった後
罪の都は炎により滅びた
それは空より生じ、人々だけを焼いたという(罪の炎)
罪の都はついに滅び去り、宮廷魔術師はその顛末を物語に記し、それは奇跡となった
「フォース」の古い原型
強い衝撃波を発生させる
「神の怒り」は非常に長い物語であり
「フォース」はその略述である
原型となる深い怒りの物語は
衝撃波に大きなダメージを伴うものだ(神の怒り)
やがて一人の若き魔術師が罪の都を訪れる
遥か昔、イルシールのはずれ
その地下に罪の都と消えぬ火を見出したとき
若き魔術師サリヴァーンの心にも
消えぬ野心が灯ったのだろう(罪の大剣)

妄想

「罪」「呪い」「巨人」といった単語群から、どことなくダークソウル2に関係が深そうな場所であるが、結論を先に述べると「罪の都とはドラングレイグの別称である

ヨームは「古い征服者の末裔」である
これについてはDS2において「最後の巨人」が打ち倒されたのだから、その末裔であるはずがないという疑問が浮かぶが、これについてはDS2本編ですでに「巨人兵」なる巨人が登場するという矛盾が生じている
そして「最後の巨人」とは別の巨人(しかも征服者にふさわしい兵士である)が登場するのだから、その末裔が存在しても不思議はない

ヨームはヴァンクラッド王の末裔説
ヨームをヴァンクラッド王の末裔とする説もある
顔の有無や「征服者」の称号、巨人殺しのストームルーラーを二本持っていたことも併せて考えると腑に落ちる点も多い

篝火の近くにギリガンの死体がある
梯子をかけるのを仕事としている彼がなぜそこにいるのか
当然ながら仕事で梯子をかけに来たのである

誰のために?

サリヴァーンだろう

最後の梯子をかけたあとで、彼はサリヴァーンに殺害されたと思われる

ドラングレイグから罪の都までの流れ
DS2の火継ぎエンド後、王国は活力を取り戻したと思われる
だが、王になるべき者は姿を隠したままだった(ピザ窯に入ってる)
そこで王のない国としてドラングレイグは新たな秩序を必要とした
それが、宮廷魔術師たちによる統治である
ゴーレムの技術はやがてガーゴイルを生み出した

神官たちによる統治はやがて腐敗してゆく
王妃デュナシャンドラを矮小化したような女性たちが富を渇望し、やがてそれは「呪い」となった
デュナシャンドラのソウルから生み出された弓
かつて深淵にあった者は
滅びと共に、無数の破片に分かれ散った
闇と光は一体であり、ソウルと呪いもまた然り
かつて王たらんとした者たちの前に、それは現れた
その強く、眩い力に惹かれて(渇望の弓)
これによるとソウルと呪いは表裏一体。ソウルを集めることは呪いを集めることと同義。
彼女たちは貪欲にソウルを集めた果てに、「始まりの火」を生みだそうとする
だが「始まりの火」を生み出すことは
その牢獄のずっと奥に「忘れられた罪人」がいるのよ
はじまりの火を生み出そうとした、バカな罪人がね(愛しいシャラゴア)
とあるように、罪と直結する
彼女たちが始まりの火を作り出すことができたかどうかはわからない
だが、その「切欠」となった
罪の火(始まりの火、あるいは闇)は王国を焼き尽くそうとするが、一人の巨人に救われる

「古い征服者の末裔ヨーム」だ
王は彼でなければならなかった。「罪の火」を一身に引き受ける存在が必要だった
それは古い時代には「王」と呼ばれていた。ゆえに「征服者(王)」の血を引く存在が必用だったのだ

薪の王となり、始まりの火に身を焦がされ続ける運命を受け入れたヨームは、王国のために戦い、そして勝利する

しかし王国は結局「罪の炎」によって滅亡してしまう
王国の名は忘れ去られ、その消えることのない罪の火から、罪の都と呼ばれるようになった

罪の炎とはなにか?
罪の炎がおかれているのは、イルシールの地下牢にいる巨人囚人の足元である
あの巨人はイルシールの地下牢の最初の囚人だ
イルシールの地下牢
その最も古い牢の鍵
地下牢最初の囚人は一匹の巨人であり
その足元に人のための牢が作られたという(古牢の鍵)
 侍女が囲んでいる罪の火ではない
遥か昔、イルシールのはずれ
その地下に罪の都と消えぬ火を見出したとき
若き魔術師サリヴァーンの心にも
消えぬ野心が灯ったのだろう(罪の大剣)
罪の都のガーゴイルの持つ灯火の石槌
消えることのない罪の火を灯し
炎属性の攻撃力を持つ (ガーゴイルの灯火槌)
サリヴァーンが見たのは、消えることのない罪の火であり、罪の「炎」ではない

「神の怒り」とも異なる。神の属性は雷であり、炎ではない。「罪の炎」に由来する「罪の炎」という呪術がある以上、そして「神の怒り」という奇跡がある以上、それらは区別されなければならない

では「罪の炎」とは何なのだろう
罪の炎は「消える」「空から生じる」「人々だけを焼く」といった特徴を持つ

あまり自信はないが、ひとつだけあてはまるものが存在する
「空に浮かんだダークリング」
である

ダークリングの周囲は炎が象っている
さらにそれが人にも現れることがある
人々はダークリングの炎に焼かれ、呪い人となった
(罪の炎のテキストには人々を焼いたとだけ書かれている。焼き殺したとは書いてない)

呪術「罪の炎」は、「罪の炎」に由来するだけであって、「罪の炎」そのものではない
人々がダークリングに焼かれる、その烙印を押される様を、呪術として再現したものが「呪術の罪の炎」である

お決まりの流れ
始まりの火が現れ、やがて火が衰えてダークリングが現れるというのはシリーズ定番の流れのようなものである
そして火継ぎをして火勢を復活させたとしても、結局は火は衰え、世界は滅亡に向かってしまう
滅亡の寸前、空に巨大なダークリングが現れる、その黒い穴を象る炎こそ「罪の炎」なのだろう

罪の都は始まりの火(罪の火)を起源としダークリング(罪の炎)を終局とする、その「流れ」を象徴する場所だと思われる

後記

テキストによる考察と、考察、それと妄想、それぞれ矛盾した部分、齟齬がある
というかそもそもテキストによる考察からして正しいとは思っていない
いろんな読み方があり、ある部分は妄想で補うことしかできない
罪の都の考察はなかなか難しい。だからこそ人が惹きつけられるのだろうか


2017年4月17日月曜日

ダークソウルの世界における「輪の都」とその歴史

ダークソウル1の頃から構想されていたという「小人」とその舞台としての「輪の都」とは、いったいどういったモノなのだろうか

分かる人にしかわからない例えで申し訳ないが、簡単に言ってしまうと
「輪の都とは漫画版ナウシカの墓所」
である

ナウシカの墓所とは、旧人類が再び世界に復活するときのために作られた「旧人類の技術力と種の保存場所」である

内部には科学者の末裔が住み着き、旧文明の高い技術力を保有しており、ドルク国は墓所を聖地として、そのうえに首都を築いたのだという
ドルク国の王は彼らからの技術供与を受けて繁栄し、先代の王は人を救う方法を求めて墓所へと至り、ヒドラという不老不死の怪物を連れて帰ったという

要するに技術、科学力が保存されている文明の卵的な聖地だ

さて、輪の都にも様々な国の者たちが訪れた形跡がある

「それは、深淵歩きの英雄譚でも知られる
深淵に飲まれた古い魔術の国の足跡である」(白木の弓)

「古く王命により、輪の都を訪れた騎士団の兜」(虚ろの兜)

「はるか昔、ある使節団が輪の都を訪れたとき」(古めかしい平服)

彼らは何を求めて輪の国へとやってきたのか
おそらくは「輪の都」にだけ伝えられる技術、魔術、知識だろう

というのも、輪の都の外部では無数の王国が勃興と衰退を繰り返し、そのたびに文明が衰退していたが、流刑地である「輪の都」は滅びを経験することなく存続していたゆえに、神代の知識が保存されていたからだ

ある者は魔術を超える深淵を求め、ある者は呪いを解く法を輪の都に求めた
ある者はそれを持ち帰り、ある者は代わりのナニカを持ち帰った

ダークソウルのストーリーの背後には必ず「輪の都」があったのである


輪の都の歴史
その輪の都の歴史を再構成したいと思う。いうまでもなく妄想だ

1.小人たちが神グウィンから「輪の都」とフィリアノールを贈られる
2.小人の王たちから狂王が出てフィリアノールを殺害
3.シラが狂王を封じる
4.小人の王たちがフィリアノールのソウルを使い、かりそめの都を創る
5.世話するもののいなくなったミディールが解き放たれ、闇を求めて都を去る
6.様々な国から様々な使節団が訪れる(DS1~3)
7.ゲールが隠されていた本物の輪の都に侵攻
8.フィリアノールが眠る
9.ミディールが約束を果たすために戻ってくる
10.灰の英雄が訪れる
11.ミディールが殺され、フィリアノールの眠りが壊される
12.ゲールが小人の王たちを喰らい始める


狂王がフィリアノールを殺害したという考察
前提としてフィリアノールはシラの主人である
「私はシラ。教会の主、王女フィリアノールに仕える者です」

にもかかわらず、彼女は不死の狂王を封じている
彼女だけにそれが可能だったのもあれど、もうひとつには、狂王の存在が主たるフィリアノールを害する可能性があったからだろう

狂王はどんな形態であれフィリアノールを害そうとする
ゆえにフィリアノールに使えるシラはそれを防がなければならなかった
単に狂った王がいるというだけであれば、シラはそれを放置したはずである
どうにかして封じなければならない理由があったのだ
「主の危機」以外にこれほど苛烈な手段をとることはないだろう

眠りが壊れた後で、シラがそれまでこもっていた部屋から出て主人公に襲い掛かってくるのは、フィリアノールが消滅し、狂王が主を襲う心配がなくなったからだろう

そして彼女は言う
「だからこそ、私は許しません
お前たちの裏切り、冒涜、そして卑しい渇望を!」
裏切りとは、狂王がフィリアノールを殺害したこと
冒涜とは、小人の王たちがフィリアノールのソウルを錬成したこと
卑しい渇望とは、フィリアノールの眠りを壊してまでダークソウルを求めたこと

シラの行動原理はすべて主人であるフィリアノールが絡んでいるのである
シラの不可解な言動は、フィリアノールを中心に考えることで、理解できるものとなる





2017年4月16日日曜日

王廟について

輪の都の入り口にある篝火の名は「王廟の見張り」である
この塔のような建物が王廟だと思われる

フィリアノール教会前から見ると↓のように断崖絶壁の孤立した地形となっていて、歩いて到達することは不可能となっている

右側にちらりと見えている建物の全体像が↓である。ここは「王廟の見張り」の篝火から進み、巨人の法官の裏側に進んだ場所で、中段、左側のあたりに説教師がいるところである
この王廟が物議を呼んだのは意味ありげに登場するにも関わらず、到達できなかったからである。行く方法があるのではないか? とか、隠しマップか、などと言われていたが真相はもっと単純なものだと思われる

考察スレにも書かせてもらったがようするにここは
そのままでは王廟に行けない→卵に触れる→王廟が崩壊する→小人の王たちと会えるっていうギミックかと
吹き溜まりのDS3→DS1へマップがつながっているという演出に続き、わかりにくい演出である

↓は殻に触れた後の世界である。王廟が崩れているのが確認できる。

おそらく王たちは崩壊によって住むことのできなくなった王廟を棄て、砂漠に玉座を移動したのだろう。そこをゲールに襲われたのだ

DS3のDLCは一見なにか意味ありげなように見えて、実は開発者側の意図が伝わっていないだけ、ということが多いように思われる

しかし、それでいいのだろうとも思う
本来この記事はもっと早く公開しようと思っていたのだが、あまりに「まともな考察」だったので踏ん切りがつかなかったものだ
普段、妄想に近い考察を書きなぐっているが、時にはまともな考察もするんだぞと

2017年4月15日土曜日

【個別考察】吹き溜まり

時系列

本編の未来だが、ゲールと戦う時空よりも前

本編→→吹き溜まり→→→→ゲール戦の場所

マップ構造

ファミ通の宮崎氏インタビューによると
ロスリックの残骸(DS3)→土の塔(DS2)→初代祭祀場(DS1)と時代を遡る構造になっている


NPC

蓋かぶりの老婆

遺灰のテキストやセリフからローリアンの乳母であったと思われる
鉄塊の坊や(ラップ)とは知り合い

「鉄塊の坊やが最後かと思ったけど、どうして分からないものさね」
このセリフからゲールのことは知らないのではないか? という推測が一部にはあるが、ラップが最後と言っているだけで、ゲールを知らないと断言しているわけではない

ラップ

記憶をなくしたラップとして登場

ゲール

白霊としてデーモンの王子戦に加勢してくれる
プレーヤーを導くようにメッセージと赤い布を残していく


考察

蓋かぶりの老婆をエンマと解することも可能だが、そうすると本編で死んだエンマはいったい何だったのか、という疑問が生まれる。異なる世界線だとかパラレルワールドだとか考え始めると収拾がつかなくなるので、まずは別人だと考えることにする

さて、乳母とは一般に子供の世話を終えたらお役御免である
デーモンの王子と戦えるほど成長したローリアンの乳母も役目を解かれているはずである。一方ロスリックはいまだ病弱の身であり、独り立ちしていない。ゆえにエンマが近くで見守っていたのだろう。

役目を解かれたローリアンの乳母はどうしただろう? おそらく王権の中心からは遠ざけられたはずだ。辺境へと送り込まれたか、あるいはそこが故郷だったのか。とにかくロスリック城からは遠ざけられた。(※祭儀長の指輪のテキストの内容から間違い)

蓋かぶりの老婆が「巡礼」の姿をしているのは、遠い辺境の地からロスリックを目指して巡礼の旅に出たからだろう。
しかし彼女が到着したときロスリックはとうに滅び去り、吹き溜まりに打ち捨てられていた。彼女はロスリックの残骸から、滅び去ろうとしている世界を見下ろすことにした。

その彼女の横をゲールやラップが通ってゆき、ラップとは言葉を交わすまでになった。そうして最後に到来したのが灰の英雄であった

老婆は最後にこう言う
「あんた、死ぬんじゃないよ
あたしの景色が、悲しくなるのはご免だからね」

驚いたことに、フィリアノールの眠りを壊したタイミングで彼女は死に、遺灰を残し天使になってしまう
吹き溜まりに登場する天使とは異なり、彼女には本体がなく、倒しても篝火にかがれば復活してしまう


老婆の正体

「フィリアノールの眠り」によって存在形態を変えるということは、フィリアノールの眠りと老婆には何らかの関係があると考えられる

私は以前の記事「【個別考察】輪の都」においてフィリアノールのソウルを利用して「かりそめの輪の都」が作られたと考察したことがある
「かりそめの輪の都」は、「本物の輪の都」を世界から隔絶するための緩衝帯として存在し、人類は「かりそめの輪の都」を本物の輪の都だと思い込まされてきた

だが、本物の輪の都が滅びを迎えたとき、フィリアノールは「かりそめの輪の都」を救うために、「眠り」についた
その眠りが壊れることで時間の流れが元に戻り、滅びへの道へ戻るのである

そのあたりは考察が複雑になりすぎて、完全に白紙に戻して考察しなおそうとも思っているが、とにかく「フィリアノールの眠り」が壊されることで、老婆が死ぬことは確かである

だとしたら老婆の正体はいったいなんだったのだろう。
結論を述べると「蓋かぶりの老婆はかりそめの輪の都の人間であり、フィリアノールの眠りが壊された時、停滞していた時間が再び動き出したことで天使と化すのである」

ロスリックは輪の都の人間を王子たちの乳母としていた
十分に成長したローリアンの乳母は故郷(輪の都)へ帰された
ロスリックが火継ぎを拒否したことを知った乳母は、ロスリックへの巡礼の旅に出る
だが、すべては遅すぎた。乳母が到着したときロスリックは滅び去り、そこにあったのはロスリックの残骸だけであった。
老婆はそこで「神様」のように人の営みを見下ろし続けていた
やがてフィリアノールの眠りが壊されたため彼女の時間が流れ出し天使となった

老婆に「輪の都」について尋ねたとき、彼女はこう答える
それは確かに、この吹き溜まりの先、一番深い、その先さね」
それは確かに
老婆はその存在があることを確かに知っていたのである

なぜなら彼女こそ輪の国の人間であり、そこからやってきたからだ

補足
輪の国にいる人々は「虫」の姿をしている者が多い
説教者だったり、あるいは亡者であったり、聖職者であったり、彼らは「虫」的な特徴を持っている
そして、吹き溜まりに登場する「天使」の本編における名前は「巡礼の蝶」である
老婆が「巡礼の蝶」となったのは、彼女が輪の都の人間であるからだ

2017年4月14日金曜日

電撃PlayStation Vol.636 完結記念インタビューについて

宮崎氏のインタビューに関するいくつかの覚書

DLCについて

・DLC1は絵画世界の終わりの話
・DLC2は次の世界を描くための話
・DLC全体が「古い絵画が終わり、新しい絵画を描こうとする話」
・本編「火継ぎの終わり」で描かれた「世界の終わりとその次の話」という「流れ」との類似

ここで注意したいのは、本編火継ぎの終わりEDとDLCのEDは、その「流れ」が類似しているのであって、「ED自体」が類似しているのではないということだ

あくまで「世界の終わり→新しい世界」という「流れ」、「構造」が類似しているのである。けっして両者のED後に描かれる「新しい世界」が類似しているわけではない

名前について

・火の陰りきった世界では意味が失われてゆく
・名前は意味の象徴である
・画家の最後のセリフにも意図がある

言語学者ソシュールの差異の話を想起させるような内容である
うろ覚えながら簡単に説明すると、意味とは「ア」と「イ」という音を区切ることで初めて生まれるものであり、そうした差異の集合体が「言語」である、というものだ
その区切り方は恣意的なもので、「言葉」とは意味そのものではなく、意味を象徴するものである

要するに、「差異」が世界を創造するダークソウルの世界において、「差異」の仕方を変えればまた別の世界を創造することができるということだ
火であったり、絵を描くことであったり、恣意的なやり方で世界を創造することができるのである

だから画家はプレーヤーに名前を聞いたのだ
プレーヤーの名前ごとに、名前の数だけ新しい世界が創造される、そういう意味を込めて

人間について

・性格的に、高らかに人間愛を謳いあげることはしない

だから隠した、ひっそりとその最も暗い世界の果てに
と、曲解することも可能だが、あまりこだわろうとも思わない

篝火について

・「困難に挑むための僅かな希望であり、困難に挑み克服した僅かな証」

宮崎氏にしては珍しく「クサい(誉め言葉)」言葉である


絶望の闇の中に瞬く希望の光
暗い魂の内に宿る、導きの灯
その熱い血潮こそが、新たなる世界を創造する
DLCはそういう話

2017年4月12日水曜日

【個別考察】輪の都(THE RINGED CITY)

個別の考察に入りたいと思う
まずは「輪の都」

よく挙げられる考察例
1.幻影だよ
2.時間を止めてたんだよ
3.夢の中だよ

1は脈絡のないステージ構成からだろう(DS3→1という構造はわかるが、その選別の意味が不可解という意味)
2は眠りを覚ました後、未来(と思われる)砂漠に飛ばされるから
3はフィリアノールが眠ってるんだから夢の中なんじゃないか、という連想

先に結論を述べさせてもらうと「輪の都」とは、
フィリアノールのソウルで錬成されたかりそめの都市」である

3つの事実

1.現時点で「フィリアノールのソウル」をプレーヤーが入手することはできない
 近しい存在であろうロザリアやオスロエス、無明の王、王たちの化身のソウルすら入手可能であるにもかかわらず彼女のソウルだけが手に入れられないというのは不自然である。何らかの理由があるはず。

2.フィリアノールが抱いている卵の殻は錬成炉である(公式アートブックから)
 錬成炉はソウルを錬成して何かを具現化する装置である

3.殻に触れた後も「輪の都市」に転送可能
 輪の都が錬成炉で生み出された「かりそめの時空」であるとすれば、システム上の都合と割り切る必要もない

まとめ

まとめると、フィリアノールのソウルが得られないのは、それがすでに利用されているからであり、何に使われたかというと彼女が自分で抱いている錬成炉によってソウル錬成されたのである

ソウル錬成によって生まれたのが「輪の都市」と呼ばれる場所であり、この場所は「現実に実在する場所」でありながら、「かりそめの場所」でもある

ソウルを使われた以上彼女は「死んで」いるのが必然であり、ソウルによって生み出された都市は、ソウル錬成によって生み出された武器と同様に、ソウルの主が死んでも残るものなのである

殻に触れる

では殻に触れるという行為にどういった意味があるのか

錬成炉によって「かりそめの場所」が創られたとき、その時空はある一点から爆発的に拡がったはずである(一点から風船が膨らむイメージ)

その一点こそ錬成炉の中心である

現実に存在する錬成炉の中心から「かりそめの場所」が創造されたことで、その一点は「現実」と「かりそめの場所」が接する特異点ともなった

ゆえに、そこの至った者(灰の英雄)はワープホールを通るように「かりそめの場所」から「現実」へと転移するのである

その転移した「現実」こそが、あの荒れ果てた砂漠だった


ゲールと灰の英雄の時間差について


果てしない旅を経てきたゲールと、灰の英雄との間には時間差が見受けられる
この時間の相違はなぜ生まれたのだろうか

私は過去に「先に到達したゲールが卵を損壊したため、時空が狂った」的な考察をしたこともあるが、卵が錬成炉だったとすると結論が異なるように思われる

混同してならないのは、「輪の都」には「現実の輪の都」と「錬成炉製(かりそめの輪の都)」のものがあるということだ

そして「かりそめの輪の都」は「時間が停滞」している
ゆえに、現実の輪の都が砂に埋もれているにも関わらず、灰の英雄が通った輪の都は崩壊前の姿を保っていたのだ

おそらく二つの都市はある時期までは、同じ時間の流れを共有していただろう
だが破局を迎えるにあたって、ある者が時間の流れを押しとどめた

誰か?

「かりそめの輪の都にいるフィリアノール」である
彼女は眠るという行為によって時間の認識を「拒絶」し、その結果「かりそめの輪の都」は完全な破局を免れることができたのである

シラが眠りを侵すなと強く頼むのは、フィリアノールが目覚めてしまえば再び「時が流れ出す」からである

よってフィリアノールの殻に触れた後に転送によって行ける「輪の都」は厳密にはそれ以前と異なる
それ以前は時間が停滞していた世界であり、触れた後は実は時間が流れているのである
やがて長い時の果てに「かりそめの輪の都」も「現実の輪の都」と同じ姿になるであろう

さて、この「フィリアノールの眠り」は最終手段として予定されていたことだった

ミディールは「古い約束に従い、王女の眠りを守るために」街へ戻ってきた
ずっと眠っていたわけではない。眠ったから約束に従いミディールは戻ってきたのである

もしフィリアノールが太古から眠っていたのだとしたら、ミディールもまた太古からずっと輪の都にいることになる。となると闇を喰らうタイミングが失われる。やはり王女が眠ったのは、時間がかなり下った時点だと考えるのが適切だろう

では彼女に最終手段を取らせた原因はなんだっただろうか

それはゲールしかいない

奴隷である彼は「勅使の小環旗」を使用することが許されなかった
そこで彼は「吹き溜まり」から「果てしない旅」を経て王女のもとにたどり着いたのだ

灰の英雄は「フィリアノールの目覚め」という一回限りの出来事により、最後の地にたどりつくのである
よってゲールは灰の英雄とは別のルートで、あの場所へたどり着かねばならない

どこを通ってきたのか?

「現実の輪の都」である

彼は「現実の輪の都」を死闘を繰り広げながら通り抜けた
輪の都が砂に埋もれるほど、気の遠くなるような長い時間をかけて侵攻していっただろう

その際、シラのことは素通りしただろうと考えられる
なぜならシラは闇を恐れていたし(狂王を抱いて部屋にこもっていたということもある)、ミディールは神族など興味はなかった(同じ理由でミイラ化したフィリアノールは素通りしたはずだ)

ついに彼は王廟へ至り、王たちを喰い始めた

その時点でフィリアノールは「火の終わり」を「知った」した
特異点の直近におり、火にすがる神族でもある彼女には、それが把握できた

そして「かりそめの輪の都のフィリアノール」は「火の終わりに、闇の傍」で「眠りについた」
その後、王女の眠りを護るために、ミディールが「かりそめの輪の都」へとやってきた

そんな状況で灰の英雄が到来したのである
灰の英雄は停滞した時間のなかでミディールを屠り、シラの頼みを無視してフィリアノールを目覚めさせてしまう(その間現実の世界ではものすごい速さで時間が進んでいた)

フィリアノールが目覚めたことで停滞していた時間は再び流れ出し、破局は必然となった

目覚めはフィリアノールにとっても悲劇的なものとなった
目覚めたことで彼女は、自身が「かりそめの存在」であり本当の自分が死んでいることにも気づいてしまう

いわば二重の目覚めにより、「かりそめの輪の都」の彼女は死体すら残さずに消滅してしまう(目覚めさせたあと「かりそめの輪の都」のフィリアノールの寝室を訪れると姿が消えている)
もし、灰の英雄がいた世界が現実であるのならば、フィリアノールの遺体があるはずである(廃墟になった未来では、彼女の遺体はそこにある)

時間が止まっていたんだよ説だと、これが説明できない
遥か未来にすら遺体が残っているというのに、その過去に遺体がないのは不自然だ

よって、灰の英雄が通ってきた輪の都は「現実の輪の都と同一ではない」

だが、完全な夢というわけではない
灰の英雄が、最後の地に到達したときフィリアノールはすでにミイラ化している
死んでいる彼女が夢を見られるはずがない
フィリアノールの夢だよ説だと、これが説明できない


だが「フィリアノールのソウルで錬成されたかりそめの都市」であれば、現実のフィリアノールの生死は問わないし、ゲールと灰の英雄の時間の流れの差も説明できる


結論

「輪の都」は二つある
一つはゲールの通ってきた「現実の」、もう一つは灰の英雄が通ってきた「かりそめの」輪の都だ
「かりそめの輪の都」はフィリアノールのソウルを使用して錬成された都市であり、「現実の輪の都」とは時間の流れ方が異なる

かりそめの輪の都の存在理由としては、「流刑地である現実の輪の都」を世界から隔絶する役割があると思われる
人がその歴史に記した「輪の都」はおそらく「かりそめの輪の都」であり、「現実の輪の都」は、「誰も知らぬ」存在として誰の目にも触れずにずっと隠されていた

火が陰り、あらゆる時代のあらゆるものが吹き溜まりに集まるような末世になって初めてそこへ到達することが可能となったのだ

2017年4月6日木曜日

ダークソウル3 DLC ASHES OF ARIANDEL, THE RINGED CITY解説

DLC1とDLC2を貫く主題

新しい世界(絵画)を創造するための旅
DLC1と2のストーリーを総合すると上記のようになる

新しい世界を創るために必要なもの

  • 画家
  • 顔料

「…火を知らぬ者に、世界は描けず」(フリーデ撃破後の画家)
「火に惹かれる者に、世界を描く資格は無い」(同上)

画家

お嬢様のこと

顔料

素材となるのは、暗い魂(ダークソウル)

DLC1:ASHES OF ARIANDEL

新しい世界を描くために、画家は「火」を見なければならない
だが火は教父アリアンデルの血によって抑え込まれている
それが可能なのは灰がフリーデ一人しかおらず、その火勢が弱いからだ

 アリアンデルが苦しんでるのは、灰でもあるフリーデのせいである。苦しみの原因がフリーデであることを理解しながらもアリアンデルはそれを許し、一方フリーデはアリアンデルの苦痛を愛おしく思っている…あるいは嗜虐的な悦びを見出している
 フリーデが灰の英雄に倒された時、アリアンデルは彼女を復活させるために火を熾す。それが世界を燃え立たせると知りながら

そこへ奴隷騎士ゲールの要請を受諾した灰(プレーヤー)がもう一人あらわれる
二人目の灰は囚われていた画家を解放し、浄化の炎を熾そうとする

「いつか灰はふたつ、そして火を起こす」(フリーデ戦のアリアンデル)
「やはり君には、灰には、火が相応しい」(同上)
フリーデとプレーヤーの灰が合わさることで生まれた火により、絵画世界は浄化される

 絵画世界が燃えてなくなるのではなく、おそらく深みの聖堂でゲールが手にしていた腐った切れ端が燃え尽きる。そのことで絵画世界は元の世界から完全に切り離される

キャンバスの前に戻った画家はこうつぶやく
「…火の音が聞こえる…きっともうすぐ見える」(フリーデ戦後の画家)

これで絵画を描く画家の準備は整った
あと必要なのは顔料となる暗い魂だけである

DLC2:THE RINGED CITY

暗い魂を求めて奴隷騎士ゲールは輪の都を目指す
彼が灰の英雄(プレーヤー)を誘ったのは、自分が英雄ではなく、画家のもとに帰れないことを知っていたからだ。顔料をお嬢様に届ける者が必要だったのだ。

「彷徨える奴隷騎士、赤頭巾のゲールは絵画世界の顔料のため、暗い魂の血を求めた。だがゲールは、自らが英雄でないと知っていた。暗い魂は彼を侵し、帰ることはないだろうと」(奴隷騎士ゲールのソウル)

果てしない旅と戦いののち、ゲールはついに輪の都にたどり着く。

「果てしない旅と戦いにより各所が歪み、血に錆びついており酷使により壊れやすい」(連射クロスボウ)
「奴隷騎士ゲールの大剣。ずっと共にあった唯一の武器。元々は処刑用の断頭剣であったが歴戦により、その刃は大きく欠け血と闇に染まりきっている」(ゲールの大剣)

だが、小人の王たちの血は、顔料としては使い物にならないものだった

「ゲールが小人の王たちに見(まみ)えたとき、彼らの血は、とうの昔に枯れ果てていた。そして彼は、暗い魂を喰らった」(暗い魂の血)

怒りに身を任せたのかあるいは確信があったのか、ゲールは小人の王たちを、その暗い魂を喰らいはじめる。

やがて暗い魂の血がゲールの虚ろに生じる
「奴隷騎士ゲールの、虚ろに生じた暗い魂の血」(暗い魂の血)

暗い魂(ダークソウル)の化身と化したゲールは、遅れてきた灰の英雄に討伐される

暗い魂の血を得た灰の英雄はそれをお嬢様へ渡す
「これで私は、世界を描きます」

お嬢様は灰の英雄の名をつけた世界を描く
「…ありがとう。私はその名で、世界を描きます」

「ずっと寒くて、暗くて、とっても優しい画」
「きっといつか、誰かの居場所になるような」

彼女は帰ることのないゲールの帰還を待ち続ける
「…ゲール爺も、いつか帰ってくるのかしら」
「新しい画が、お爺ちゃんの居場所になるといいな…」

DLCの主役

DLCにおいてプレーヤーはいわば脇役である
主役にふさわしいのは奴隷騎士ゲールのほうだろう

帰ってこられぬことを知りながら、彼は顔料を求めて長く厳しい旅に出る
そうまでして彼を駆り立てたものは何だろう?
彼はそれを語ろうとしない

ただ、お嬢様の描くであろう新しい世界の絵のために、彼は死の旅に出るのである
自らを犠牲とし、その身の内に暗い魂の血を宿し、自らを討たせることで彼はその目的を遂げるのである

そうして創られるのは、誰かの居場所となるような優しい世界である

彼はお嬢様のためでもなく、自分のためでもなく、ただ他者に対する慈しみの感情によって、自らの身に世界で最も邪悪な、穢れたものを宿すのである

この自己犠牲によって、穢れの極致であったダークソウルが尊いものへと反転する

それこそが、人間が人間であり続けるための条件「人間性」である

人間性とは、神を崇めることではなく、聖なるものを尊ぶことでもなく、ただ他者のためにその身を犠牲にしてもかまわないという、その行為こそが体現するものであり、そうすることでしか生きていられない、小さき人にこそ宿るものである

小人の王たちのそれが枯れ果てていたのは、虚栄に浸り、権威に溺れることで、人間性が失われていたからだ。

神が人間性を暗い魂とさげすみ、恐れるのは、神にはそれが理解できないからだ
グウィンは人間性を理解しようとしなかった。理解することもできなかった。神々にとって尊いものとは栄光に照らされていなければならないからだ

ここにきてダークソウルというタイトルの意味が初めて明らかになる
暗くて陰鬱な、残酷で残虐な物語を紡ぎながら、これは紛れもなく人間賛歌である

人間賛歌
これが自分なりのダークソウルの答えである

「人間性=ダークソウル」という考えに至る前はゲールに代わるラスボスを待望していたこともあるし、そういった記事をいくつか書いた

だが今はもうその考えはない

なぜならば、ダークソウルという物語のラスボスとしてゲール以外のボスは考えられないからだ

「プレーヤーに倒される」というボスとしての宿命を完遂しながらも、彼は倒されることで初めて完全無欠の「ダークソウル」を体現する

「ダークソウル」というRPGのボスとしてこれ以上ふさわしい存在は考えられるだろうか

プレーヤーは確かに奴隷騎士ゲールに勝利しただろう。だが、それは「かりそめ」の勝利に過ぎない。ゲールの望みであった「人間性」によって描かれた世界は、お嬢様によって描かれようとしている

きっと絵画が完成するところは明らかにされないだろう。絵画の完成は=プレーヤーの絶対的な敗北を意味するからだ

あるいは絵画の完成を阻止することが、プレーヤーに残された最後の――。

2017年4月1日土曜日

誰も知らぬ小人について

輪の都の入り口にいたNPCがそうなのではないかという仮説
よく見ると彼は「小人の王たち」と同じ衣服を着ている

上が輪の都入り口のNPC、下が小人の王たち





にもかかわらず彼の言動は「小人の王たち」とは正反対で神を憎んでいる様子だ
しかも何やら暗い魂について何かを知っていそうな口ぶり
(フィリアノールの眠りを壊すと都から消える)

単なるシステム上の案内役という可能性もあるが、吹き溜まりにおいてその役目についていたのは、貴人の乳母(たぶんローリアンの乳母)であり、なんのバックボーンもないキャラクターが担うとは思えない

「疑うことはない。俺はあんたの味方なんだ
あんたも人なら、きっと分かるようになる
滅茶苦茶にしたいんだよ、この神共の糞溜めをさ
…きひ…きひきひひ」

まさに「最初の人」であった彼は最も早くに神の欺瞞に気付いたのではないだろうか
彼が都の入り口にいるのは、輪の都を訪れる者たちに誰よりも先に「王女の眠りを壊せ」と告げるためなのかもしれない