2019年11月27日水曜日

Bloodborne 手記6 NPCの名前

日本語名は主にアートワークス、英語名はアートワークスならびにBloodborne Wikiを参考にした。正確な明記のないものは暫定的にアイテムテキストに表記された名前から採用した

括弧は英語版表記、角括弧はプログラム上のコードネーム(ID)、緑字はスタッフロール上の名前

不明な名前や未調査の名前は空欄にしてある
英語名を先に挙げているものは、英語名が語源というわけではなく、たんに参考として挙げたものである


NPC

医療教会の修道女アデーラ(Adella, Nun of the Healing Church)

[ImprisonmentSister] Sister Adella

アデーラというカナ読みチェコ語形であるが綴りは異なる(Adéa)
アデーラは英語ではAdelineと表記され、実験棟の患者、アデラインと同名である

Adelineの語源は、古高地ドイツ語アーデルハイト(Adalhaid)であり、adal-(高貴さ)と-haid(階級、位)からなる名前である。近代ドイツ語Aadalは「貴族」という意味に使われる

また、オットー大帝の妃アーデルハイトは修道院を建設するなどの功績により、列聖されて聖アーデルハイトと呼ばれている


血族狩りアルフレート(Alfred, Hunter of Vilebloods)

[BloodRelativeHunter] Vileblood Hunter Alfred

読み、綴りともにドイツ語
Alfredという名前の意味は「エルフの王」であり、アングロ・サクソン起源

歴史上の偉人ではアルフレッド大王がいる


血の女王、アンナリーゼ(Vileblood Queen Annalise)

[Queen] Annalise, Vileblood Queen

ドイツ語の名前。AnnaLieseの合名
アンナは聖母マリアの母。また、リーゼはエリザベスの愛称でありエリザベスはヨハネの母エリザベトである。よってAnnnaliseとは、極めて母性的な印象を与える名前である


娼婦アリアンナ(Arianna, Woman of Pleasure)

[Harlot]

名前の語源はギリシャ神話のアリアドネであり、「神聖な」という意味がある


血の医療者(Blood Minister)



人形(Doll)



狩人狩りアイリーン(Eileen the Crow)

[Avenger] Hunter of Hunters


英語名。エヴェリンの語源であるAvelineから派生した名前
Avelineは女性名アヴィス(Avis)が変化した語であり、ラテン語のavisは「鳥」を意味する


助言者ゲールマン(Gehrman) 

Old Hunter Gehrman

ゲールマンというカナ読みはロシア語になるが綴りはGermanであり相違がある
Germanだとハーマン(Herman)のロシア語系

ゲルハルド(Gerhard)の派生とも考えられるがその場合でも、綴りはGermanとなり違う


ギルバート(Gilbert) Critically Ill Man

英語名。古代ゲルマン語で「明るい誓約」を意味する


ヨセフカ(Iosefka) Doctor Iosefka

ヨセフカというカナ読みJosephineチェコ語名。ただしチェコ語は綴りがJosefkaである

ヨセフカの男性形はヨセフ。新約聖書に登場するアリマタヤのヨセフは、キリストの血を受けた聖杯をイギリスに運んだという伝説がある。聖杯伝説において、重要な地位にいる人物である


偽ヨセフカ(Iosefka)[FalseDoctor] Impostor Doctor



学長ウィレーム(Provost Willem)

英語名ウィリアム(William)のチェコ語形
ただしチェコ語ではVilémと綴る

実在の人物では征服王ウィリアムや、ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世などがいる



オドン教会の住人(Chapel Samaritan) Oedon Chapel Dweller

サマリタンとは聖書に登場する善きサマリア人のこと'(wikipedia)

聖書用語がそのまま使用されているのは意外


蜘蛛のパッチ(Patches the Spider)



古狩人デュラ(Retired Hunter Djura)

英語名ジュリアス(Julius)のハンガリー語形(ただしチェコ語の綴りはGyulaである)

歴史上の人物としてはユリウス・カエサルが同名である
Juliusの語源をたどると「ユピテルの子孫」という意味になる


連盟の長、ヴァルトール(Valtr, Master of the League)

英語名ウォルター(Walter)のチェコ語形



DLC

教会の暗殺者、ブラドー(Brador, Church Assasin)


シモン(Simon) Simon, the Harrowed

ヘブライ語名シメオンと同じ名前
シメオンはヘブライ語で「彼は聴いた」から生まれた名前shimon(hearing)が語源
キリストの最初の弟子として有名で、彼は漁師だった


実験棟の患者、アデライン(Adeline, Research Hall Patient)

アデーラを英語にした名前。アデーラとアデラインとは同じ名前を持つ血の聖女とも言える


流浪の狩人、ヤマムラ(Yamamura the Wanderer)



聖剣のルドウイーク(Ludwig, the Holy Blade)

ルドウイークというカナ読みはチェコ語であるが、Ludwigという綴りはドイツ語である
Ludwigはルートヴィヒと読むが、本作に関係ありそうな人物として狂王ルートヴィヒ2世が挙げられる



その他

アーチボルド(Archibald)

英国(スコットランド系)の名前
源流は古代ゲール語、あるいは古高地ドイツ語のErcanbald
Ercanは「本物」「純粋」「高貴」
baldは「勇敢」「強い」などの意味


オト工房(Oto Workshop)※貫通銃

オトというカナ読みはチェコ語形(ただし綴りはOtto、Od)
実在の人物では初代神聖ローマ帝国皇帝オットー大帝がいる

ヴィクトリア期では「鉄血宰相、オットー・フォン・ビスマルク」がいる



筆記者カレル(Runesmith Caryll)

カレルというカナ読みはチェコ語形。ただしやはり綴りは異なる(Karel)
チェコにはカレル大学カレル橋などカレルの付く名が多い

語源は中世の高地ドイツ語Karl(男、農夫)
実在の人物ではカール大帝が有名
カール大帝はフランス語でシャルルマーニュと言うが、『ローランの歌』のローランはシャルルマーニュの甥である


背教者イジー(Izzy)※獣の咆哮

イジーというカナ読みはチェコ語形だが綴りはJiŕiとなる
英語名ではジョージ(George)



召喚NPC

古狩人ヘンリエット(Old Hunter Henriett)

英語名ハリエット(Harriet)のハンガリー語形
ヘンリエットの男性形はヘンリックである


古狩人ヘンリック(Old Hunter Henryk)

英語名ヘンリーのハンガリー語形
ドイツ語名ハインリヒ(heinrich)から派生した名であり、ハインリヒの原義は「家長」である


マダラスの弟(Younger Madaras Twin)

マダラスはハンガリーの姓(Wikipedia)


メンシスのダミアーン(Mensis Scholar Damian)

ギリシャ語名ダミアノス(Damianos)から派生。「飼い慣らす」という意味


離反者アンタル(Defector Antal)

英語名アンソニーのハンガリー語形
語源はギリシャ神話の英雄ヘラクレスの息子アントン



敵狩人

最後の学徒、ユリエ(Yurie, the Last Scholar)

英語名ジュリア(julia)のチェコ語形
ユリア(Julia)は古代ローマのユリウス・カエサルの氏族の出身者に付けられる名
性別が異なるがデュラと同名である


聖歌の間者、エドガール(Choir Intelligencer Edgar)

エドガールというカナ読みはハンガリー語形(ただし綴りはEdgár)
Edgarの-garは「」を意味する言葉

聖杯伝説に関わる人物として、エドガー平和王がいる

彼の遺体が葬られたグラストンベリーに、アリマタヤのヨセフが聖杯を携えてやって来たとか、アーサー王の埋葬地であるという伝説がある



聖杯ダンジョン

墓暴きサー・グレミア(Tomb Prospector Gremia)

シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』の登場人物Gremioと関係があるかもしれない


墓暴きオレック(Tomb Prospector Olek)

英語名アレクサンダーの愛称の一つ
あるいはOleg(オリェーク、北欧系のヘルゲHelgeの派生)


異常者ワラー(Madman Wallar)

Wallerの変化したものであればアングロサクソン起源(SurnameDB)


獣爪のユゼフ(Old Hunter Beastclow Josef)

Josefという綴りはドイツまたはチェコ語系
ヨセフカと同語源


古狩人ヴィート(Old Hunter Vitus)

ヴィートというカナ読みはチェコ語だが、Vitusという綴りはハンガリー語である(ヴィテウシュと読む)


さまよえる血の狩人、レオー(Vileblood Drifter Leo)

レオーと語尾が伸びるのはハンガリー語形
語源は聖書に登場するライオン


骨炭の狩人、カルラ(Bone Ash Hunter Carla)

カルラというカナ読みはチェコ語形だが綴りが違う(Karla)
英語名でいうシャーロット(Charlotte)



ボス

教区長エミーリア(Vicar Amelia)

エミーリアと読むのはドイツ語とハンガリー語

カタカナのエミーリアはラテン語起源だが、英語のAmeliaはゲルマン語起源である
歴史的にこの両者は混同されてきたらしい

ただしAmeliaがEmiliaとなりエミリアと読まれることもあり判然としない(『テゼイダ』ボッカチオ)


黒獣パール(Darkbeast Paarl)

英語名ポールをパールと読むのはハンガリー語形
ただし英語版では綴りが違う(Pálを書いてパールと読む


殉教者ローゲリウス(Martyr Logarius)

英語名ロジャー(Roger)のハンガリー語形がローゲリウス(Rógerius)

Rogerは「Ro-(栄光)」と「-ger(槍)」を合わせた名で、「栄光の槍」という意味
語源は古北欧語のHrodger

実在の人物ではノルマンディー出身のノルマン人傭兵で、南方のシチリアの王となったロゲリウス1世がいる


アメンドーズ(Amygdala)

Amygdalaは扁桃体のこと(wikipedia)

扁桃とはアーモンドのこと
アーモンドが訛ってアメンドウと呼ばれる
アメンドーズとは、アメンドウ達という意味か


白痴のロマ(Rom, the Vacuous Spider)

ジプシーと呼ばれてきた集団のうちの主に北インドのロマニ系に由来し中東欧に居住する移動型民族である(Wikipedia)

民族としての名前はRomaである
Romaは英語の man に相当するロマ語 rom の複数形


星の娘、エーブリエタース(Ebrietas, Daughter of the Cosmos)

ラテン語で「酩酊」や「陶酔」の意


悪夢の主、ミコラーシュ(Micolash, Host of Nightmare)

英語名ニコラス(Nicholas)のチェコ語形。ただしやはり綴りが異なる(Mikoláś)
語源は勝利の女神ニケ


メルゴーの乳母(Mergo’s Wet Nurse)

ラテン語Mergoは「浸す」や「沈める」という意味


月の魔物(Moon Presence)



聖杯ダンジョンボス

トゥメルの女王、ヤーナム(Yharnam, Pthumerian Queen)



DLCボス

初代教区長ローレンス(Laurence, the First Vicar) Laurence

ラテン語名ラウレンティウス(Laurentius)から生まれた英語名

ラウレンティウスはローマ発祥の地ラティウムにあった町ラウレントゥム(Laurentum)に由来。この名の原義は「ラウレントゥムの人
ラウレントゥムの意味は「月桂樹(laurel)の町」


時計塔のマリア(Lady Maria of the Astral Clocktower)

マリアの名を持つ者は多いが、Ladyが付くと聖母マリアを連想する
ノートルダム大聖堂のNotre Dameとはour Ladyのことであり、聖母マリアの名を冠する大聖堂である

また、たんに爵位を持つ女性を指す場合もある
貴族的慣習の残っていたカインハースト出身者ならば、Ladyと名乗ることも充分に考えられる


ゴースの遺子(Orphan of Kos)

Kosは不明
ラテン語Orphanus錬金術における第一質料の異名でもある



蛇足

日本語版のカナはチェコ語、ハンガリー語であることが多い。一方英語版になるとチェコ語の綴りを変更している場合が多い

どちらがよりオリジナルかというよりも、日本人と海外勢それぞれに「異国風」のニュアンスを感じとって欲しかったのだろうと思われる





2019年11月17日日曜日

Death Stranding 胎児の夢

※考察ではなく、レビューとクリア直後の感想のようなもの

人間の胎児は、母の胎内に居る十箇月の間に一つの夢を見ている。(『ドグラ・マグラ』夢野久作)

ゲーム

まずゲームとしてのレビューを書きたいと思う

SSS(ソーシャル・ストランド・システム)による動的な地形変化は、これまで単なる手段でしかなかったオープンワールドにおける「移動」を、ひとつのインタラクティブな「遊戯」として提示するものである

他者との双方向的な影響(建設とそれに対するいいね)によって形作られる世界は各プレイヤーにとって唯一無二のものとなり、その即興性と偶然性を兼ね備えた遊戯によりひとつの世界が創造されるのである

これはまさしくホイジンガがいうところの、「文化は遊びとして始まるのでもなく、遊びから始まるのでもない。遊びのなかに始まるのだ」ことであり、「真の文化は何らかの遊びの内容をもたずには存続してゆくことができない」という、遊戯の「創造する力」によるものであろう

デスストランディングにおけるSSSが現在のような形態であるのは、その特異な世界観によるところも多いかと思われる。例えば肉体(ハー)と魂(カー)の分離ビーチ、それらのビーチを繋ぐカイラルネットワークという設定がある

これらをメタ的に類推するのならば、プレイヤー(肉体、ハー)は、サム(魂、カー)として固有の作中世界(ビーチ)へ移行するが、そのビーチは他のビーチと繋がることでソーシャル・ストランド・システム(カイラルネットワーク)を構築し、その影響で双方向的に影響を受ける、という解釈が得られる

設定をシステムに落としこんだというよりも、システムが先在し、そのシステムに合わせた世界設定が考え出されたような印象を受けるが実際のところは分からない。また、クリアしたばかりなので私の知識があやふやな部分もあり、かなり雑な類推である

以上のように、デスストランディングを遊ぶということは、ゲームを体験すると同時にその世界に偶発的に起きる現象に立ち会うことでもある。プレイヤーは単にストーリーを追っていくのではなく、即興的なナラティブの発生に立ち会い、体験し、そして自らの物語として受容するのである

つまるところソーシャル・ストランド・システムとは、プレイヤーが創造的遊戯を行うための「場」である



ストーリー

では次にストーリーについて触れたいと思う

※ここからネタバレ全開なので注意

ゲームシステムにおける「繋がり(SSSやいいね)」が繋がりの良い面のみを強調していたのに対して、ストーリーにおける繋がりは、善でもあり悪でもある両義的なものとして描かれている

分断された人々を繋げて世界を一つにすることは「善」であるが、一方その繋がりに使用された「カイラルネットワーク」は生物を絶滅させるためにも利用される

これは現実のインターネットがまず軍事利用を目的として開発されたこと、その後の爆発的な普及により世界の人々を繋げたこと、さらにはネットを牛耳る巨大企業や、情報を統制しようとする国家の暗躍などのアナロジーのように思える

さっそく話が逸れたので筋を戻す



BB

BBは複数存在するが、画面に登場するBBは二人である

クリフのBBであるサム(BB-1)と、サムのBBであるルイーズ(BB-28)
※28は『AKIRA』のアキラと同じナンバーである(28号)

このうちサムはクリフとリサ・ブリッジズの息子である。サムはブリジットに銃撃された後にビーチでアメリによって臍帯を断たれて「帰還者」となっている

一方、ルイーズはキャピタル・ノット(K2)の集中治療室に脳死状態で眠るスティルマザーの娘とされる(デッドマン情報なのでやや怪しいが)

デッドマンの情報を信じるのならば、サムとは何の関係のない胎児である

たとえルーシーのお腹の子が女の子で、BBになれる28週目の少し前にルーシーがビーチに呼ばれていたとしても、そしてその少し後、ルイーズが28週目に入った頃にルーシーが自殺したとしても、BB-28がサムの娘であるという根拠はない(ルーシーの手記による)

ルーシーが自殺し、対消滅が起きたのは10年前の事である(デッドマンによると)。帰還者の娘であるルイーズが帰還者の性質を受け継いでいて、その事件の後から10年間ビーチに滞在した後にBB-28としてなぜか世界に戻ってきた、ということも考えられるがやはり根拠はない

実際のところ、BB-28がサムの娘であるのならばイゴールに貸与されずアメリが保護していただろう

以上のことから、私の個人的見解としてはBB-28はサムとは血縁関係にない無関係な胎児であったと考える

さて、では焼却炉での蘇生はいかに説明したものだろうか。その後にサムとルイーズは焼却炉から出てくるが、その時に降っている雨は時雨ではない。また、日が差して虹が映るが、その虹は逆さ虹ではなく、青色も確認できる

これはDS(絶滅現象としてのデスストランディング)が終わったことを示している

また、死者の蘇生に関してハートマンが次のように記している

DSによってこのプロセスが変化した。帰還者のような特殊な能力の持ち主か、よほど運が良くなければ、死者は甦らなくなってしまった」(ハートマン「古代エジプトの死生観とネクローシスのこと」)


つまり、DSが終わったことでビーチ(個人のビーチ)にいった魂が肉体に戻ってこられるようになっており、ルイーズは蘇生することが出来たのである



ビッグファイブ



空に浮かぶ五人の人影は五人の絶滅体なのか、それともサムが絆を繋げた五人(フラジャイル、デッドマン、ハートマン、ロックネ(ママー)、ルー)なのかという問題

後者だとメンバーの人選が難問である。ロックネとママーを一人として見るか、二人として見るならばルーは外れるが、デッドマンの説明によるとサム救出にはルーも関わっている

とすると、ロックネとママーを一人として数え、フラジャイル、デッドマン、ハートマン、ロックネ(ママー)、ルーとなるが、五人の人影のなかに胎児型の人影は確認できない(ルーの代わりにダイハードマンが入ることも考えられるが、繋がりというほど絆が強くないのと、ルーを数に入れない理由が思いつかない)

ムービー中、デッドマンがサム救出に関わった者として挙げるのは、ハートマン、ママー、ロックネ、デッドマン、フラジャイル、ルー、ダイハードマン、ブリジット(臍帯)である

また空に浮く人影とは別に、海の中でデッドマンとルーが直接姿を現している。デッドマンによると、サムのビーチに飛んだのはデッドマンとルーとのことだから、五人の人影が見るのは少々おかしい

五人の人影は実体ではなく、絆の象徴として現われているとも考えられるが、空に浮く人影はオープニング、時雨を避けて洞窟に逃げる場面ですでに登場している。当然ながら五人と繋がりを持つ前のことである

カイラルネットワークやビーチが時間から切り離されていることを考えると、未来の表象が時雨に白い影として映っているということも、一種の絶滅夢だったとも考えられる



また五人というと、焼却炉に降りてくる「輝く胎児型BT」の数も五人のように見える


ただしこの場面の遠景では五人以上いるように見えることからあまり関係がないのかもしれない




絶滅体

絶滅体といっても、これまでのそれは臍帯のある恐竜やらアンモナイトやらマンモスやらアイスマンであり、アイスマンを除いて人型からはかけ離れている

ここでまた人型である理由を考えなければならない

単純に、絶滅体はその時代の最も繁栄している生物の形を成し、それは過去にいた五体の絶滅体も当てはまる、のかもしれない。

というのも、「彼らの本当の目的は世界の消滅」(アメリ)であったのだが、消滅させることはできず、絶滅からの新たな種の誕生を許してしまっている

役割を果たせずさりとて消え去ることもできず、五体の絶滅体は絶滅体ビーチに存在し続けているのである。だが、絶滅体としての性質は失っておらず、その特性のうち「その時代の最も繁栄している生物の形を成す」だけは律儀に守っている、と考えられなくもない

ゆえに、(六回目のデスストランディングがラスト・ストランディングであることは明言されているが)、もし七回目のデスストランディングがあったとして、その時の絶滅体が猫型であったら、空に浮く六匹の猫影が見えるのかもしれない

正直、五体の人影が人型である理由は分からない

さて、ではなぜそもそもサムは五体の絶滅体を見ることができるのか。エンディングでアメリが次のように語っている

「ラスト・ストランディングを熾すには“絶滅体”の一部あなたが必要だった」(アメリ)

つまりサムも絶滅体なのである。同じ絶滅体として五体とは繋がっており、ゆえに見ることができるのである


※五人の人影については、どちらともとれるような演出であることから確固たる結論は出せない



胎児の夢

世界を消滅させようという宇宙の意志とは何か

それはリグ・ヴェーダにおける世界を夢見る「黄金の胎児」(ヒラニヤ・ガルバ)である
眠りから覚めると世界を終わらせるというマアナ=ユウド=スウシャイ(『ペガーナの神々』)である
その影響を受けたクトゥルフのアザトースである
また世界の歴史を見続けるドグラ・マグラの胎児である

胎児の誕生は夢から覚めることである。世界を夢見る胎児は、夢という世界を消滅させることではじめて、夢から覚めて生まれることができるのである

この宇宙は胎児の見る夢であり、生物の進化を辿ってきた夢は、進化が人に到達するところで終わらなければならないのである

ラスト・ストランディングとは、胎児が誕生するために見る、最後の夢なのである



胎児の夢
 人間の胎児は、母の胎内に居る十箇月の間に一つの夢を見ている。 
 その夢は、胎児自身が主役となって演出するところの「万有進化の実況」とも題すべき、数億年、乃至、数百億年に亘るであろう恐るべき長尺の連続映画のようなものである。 
すなわちその映画は、胎児自身の最古の祖先となっている、元始の単細胞式微生物の生活状態から初まっていて、引き続いてその主人公たる単細胞が、次第次第に人間の姿……すなわち胎児自身の姿にまで進化して来る間の想像も及ばぬ長い長い年月に亘る間に、悩まされて来た驚心、駭目すべき天変地妖、又は自然淘汰、生存競争から受けて来た息も吐かれぬ災難、迫害、辛苦、艱難に関する体験を、胎児自身の直接、現在の主観として、さながらに描き現わして来るところの、一つの素晴しい、想像を超越した怪奇映画である。
……その中には、既に化石となっている有史以前の怪動植物や、又は、そんな動植物を惨死、絶滅せしめた天変地異の、形容を絶する偉観、壮観が、そのままの実感を以て映写し出される事はいう迄もない。引続いては、その天変地妖の中に、生き残って進化して来た元始人類から、現在の胎児の直接の両親に到るまでの代々の先祖たちが、その深刻、痛烈な生存競争や、種々雑多の欲望に駆られつつ犯して来た、無量無辺の罪業の数々までも、一々、胎児自身の現実の所業として描き現わして来るところの、驚駭と戦慄とを極めた大悪夢でなければならぬ事が、次に述べる通りの「胎生学」と「夢」に関する二つの大きな不可思議現象を解決する事によって、直接、間接に立証されて来るのである。(『ドグラ・マグラ』夢野久作)(改行引用者)


蛇足

いくつかの解釈の違いはあれどもストーリーに関しては作中でほとんど語られているので、考察の必要はないと思われる

2019年11月6日水曜日

Bloodborne 手記5 ガスコイン神父

ガスコイン

ガスコインという名は英国圏、特にアイルランド系の名前と言われることが多い。ガスコイン神父が異邦人でありヤーナム出身ではないことは、神父装備に書かれている

神父の狩帽子
なお神父とは、元々が異邦の聖職者であった故の呼び名であり
医療教会では、神父という敬称は使用されない

また、マーク・ガスコイン(Marc Gascoyne)という実在の人物がおり、彼はTRPG関係、特に「クトゥルフの呼び声」関連の仕事で知られているという

TRPGに造詣の深い宮崎氏が「マーク・ガスコイン」から神父の名を採用したと考えてもおかしくはない
(英語版では「Gascoigne」と綴られるが、内部IDではマーク・ガスコインと同じ「Gascoyne」と綴られている)

つまり、異邦感を出すためにイギリス、アイルランド系の名前を探しているなかで、マーク・ガスコイン氏の名を思い出し(または見つけ)、神父の名をガスコインにしたという推測である


ガリア

しかしながら、このガスコインという名は、そもそもイギリスではなくフランス南部のガスコーニュ地方に由来するという。これは元サッカー選手ポール・ガスコイン氏Wikipediaにも書かれている

ブラッドボーンとは関係の薄い印象のあるフランスの地。しかしフランスはかつてガリアと呼ばれており、ガリアとは「ケルト人の地」を意味する言葉である

ケルト文化がダークソウルシリーズやブラッドボーン、デモンズソウルに与えている影響は大きいが、それは別の機会にまとめたいと思う(一例として、ハベルとはチェコ語で「ケルト人」、ガルとは英語で「ケルト人」をそれぞれ意味する)

ヤーナムの位置を現実世界の地図に重ね合わせると、おそらく中東欧のあたりだろうと推測される
一言に中東欧と言ってもかなり広く、フランスからドイツ、チェコやハンガリーを含む地域である

現代の地図に重ねようとすると複数の国にまたがり、ゲームの世界設定として散漫な感じがするが、これをケルト人の住んでいた地域と考えるのならば、ちょうどハルシュタット文化の起こったあたりが、ヤーナムの推定地域とピタリと重なる(Wikipediaの地図

つまりブラッドボーンとは、時代背景をヴィクトリア朝にした「ガリア」が舞台の物語なのである
※ただしガリアの地を時間空間的にかなり狭い範囲に圧縮していると思われる


ローラン

さて、ガスコーニュの語源となったヴァスコニアフランク王国との間に起きた戦いが「ロンスヴォーの戦い」であり、これは後に古フランス語の叙事詩『ローランの歌として語り継がれていく

『ローランの歌』は後の中世騎士物語の理想的なモデルとなっていくが、その中世騎士物語で最も好まれたのがアーサー王と円卓の騎士による「聖杯探求」の物語である

このローランという名は、ローレンスと語源が同じである

獣の病によって滅んだローランと、獣の病に侵され獣化したローレンス同じ名前を持つのである。さらにいえば、ローランの聖杯のグラフィックには聖杯に侵食されている頭蓋骨が描かれているが、ローレンスの頭蓋骨もまた聖遺物として祭壇に捧げられ、その骨は醜く獣化している

※聖杯の中で頭蓋骨が描かれているのはローラン系のみである

あるいは、ローランの聖杯とはローレンスの聖杯そのものを意味しているのかもしれない

周回において聖杯ダンジョンが前周回の情報を受け継ぐことから、聖杯ダンジョンは時間や空間と切り離された時空であり、つまり未来も過去もなく、そこにはあらゆる時代の聖杯(ダンジョン)が登場するのである

ゆえに、ローランの聖杯ローレンスの頭蓋を乗せた聖杯とするのも、砂に埋もれたローランをかつてのヤーナムとするのも(ローランは、主人公の狩人が到着せず、ヤーナムが獣の病で滅びた世界線)、聖杯を除く世界全体が周期的に繰り返していると考えるのならば、可能なのである

とはいえ、ローランの歌のローランはRolandであり、ローランの聖杯のLoranや、ローレンス(Laurence)とは綴りが異なる

砂に埋もれたという情報も加味すると、古代中国にあった楼蘭(Loulan)という都市である可能性もある(楼蘭は古代中国ではなく、その西方にあった国の間違いです。ご指摘ありがとうございました)

楼蘭(ろうらん,Loulan,推定されている現地名はクロライナ Kroraina)は、中央アジア、タリム盆地のタクラマカン砂漠北東部(現在の中国・新疆ウイグル自治区チャルクリク)に、かつて存在した都市、及びその都市を中心とした国家である。(Wikipedia)



家族

話が逸れまくったので軌道修正する

さて、ガスコイン神父には家族がいる。それは例えば小さなオルゴールの紙片に残された「ヴィオラとガスコインの名」であり、ヤーナムの少女の母がつけているという真っ赤なブローチに刻まれたヴィオラの名から推測できる

小さなオルゴール
蓋の裏の紙片は、どうやら古い手紙のようで
かろうじて2人の名前が読み取れる
それはヴィオラと、そしてガスコインであろうか
※ガスコイン戦で小さなオルゴールを使うと、ガスコインがもだえ苦しむ

少女:お母さん、真っ赤な宝石のブローチをしてるんだ
少女:お母さんを見つけたら、このオルゴールを渡してほしいの
少女:お父さんの好きな、思い出の曲なんだって

真っ赤なブローチ
女物の真っ赤なブローチ
刻まれたヴィオラの名も見てとれる

まとめると、父ガスコイン母ヴィオラ娘ヤーナムの少女という家族構成である。この他に、終盤になって登場する少女の姉が存在する

ここまでは大体の人がプレイしながらなんとなく把握できたと思われる

問題は少女の言う「お爺ちゃん」である

少女:お母さんとお父さんと、お爺ちゃんの次に大好きよ

このお爺ちゃんが古狩人ヘンリックではないか、という説がある


ヘンリック

お爺ちゃん=ヘンリック説では、正気を失っていたのがヴィオラとガスコインの死んだ「オドンの地下墓」であることや、ヘンリックがガスコインの相棒であったことなどがその根拠とされる

ヘンリックの狩帽子
古狩人ヘンリックの狩帽子
かつてガスコイン神父の相棒であったこの静かな古狩人は
強者であったが故に、狩人として死に場所を得られなかった
だが、彼の黄味がかった独特の装束は、特に雷光に強く
獣狩りの遺志を継ぐ狩人を助けるだろう


さて、ヘンリックはお爺ちゃんなのであろうか?

少し話が変わるが、宮崎氏はインタビューで「NPCの命名法」をたずねられ、こう答えている

宮崎:私はちょっと命名オタクだと思う。私にとってはいつも楽しいです。単語の起源表現でどのように聞こえるか、地域的な考慮事項、全体などを検討します。(Future Pressによるインタビュー

宮崎氏がかなり名前にこだわっていることが分かるインタビューである

さて、ではヘンリックという名前の起源はどうか

ヘンリックの語源はドイツ語のハインリヒであり、Heinrich原義は「家長」である

名前にこだわる宮崎氏が、「家長」を意味する名前を持つNPCを単身者として採用するだろうか

家長とは文字通り家族の長である。ガスコイン家で言うのならば、「お爺ちゃん」の地位なのである

つまり、判明している家族構成では「お爺ちゃん」は「家長」であり、その「家長」という意味の名前を持つNPCが「ヘンリック」なのである

※ちなみにヴィオラ(Viola)は、ヴァイオレットのハンガリー語形である
※ヘンリックは英語版では「Henryk」となっているが、内部IDは「Henrik」である。このHenrikはハンガリー語形である


蛇足

少女の姉については再プレイがそこまで進んでいないこともあり、あまり触れられなかった
Wiki等で先回りして考察することも考えたが、これといって思いつかないので、何か閃いたら追記するなりする予定



2019年11月3日日曜日

Bloodborne 手記4 聖職者の獣

考察というよりも情報をまとめたもの

聖職者の獣

剣の狩人証をドロップすることから、獣になる前は医療教会の狩人であったことが分かる

剣の狩人証
かつて医療教会の工房が発光した、狩人証の1つ
銀の剣は、教会の狩人の象徴でもある
ルドウイークを端とする医療教会の狩人
また聖職者であることも多かった
そして、聖職者こそがもっとも恐ろしい獣になる

なぜ聖職者こそがもっとも恐ろしい獣になるか。宮崎氏はインタビューで次のように語っている
※グーグル翻訳。太字引用者。クレクリックビースト=聖職者の獣

このゲームのテーマの1つは、獣型の敵の中で行われる「内部衝突」です。
獣に変身する衝動は、私たち全員が持っている人間性の基本的な感覚と矛盾しています。その人間性は一種の手枷として機能し、変容をその場所に保ちます。その場で変形する衝動を維持する手枷が強いほど、手枷が最終的に壊れた後の反動が大きくなります。その結果、より大きなクリーチャー、またはよりねじれたクリーチャーに変身します。これら2つの衝動の間の闘争は、ここでの1つの概念です。早い段階でデザインされた獣のキャラクター、特にクレリックビーストは、アイコンのような役割を果たしています。それは、聖職者が本当に彼らの中で最も恐ろしい獣であるという考えに関連しています。(Future Pressによるインタビュー)


聖職者の獣が恐ろしい姿をしているのは、獣化衝動を抑え込む手枷が強固であったからである。手枷とは人間性であり、聖職者として高徳(高位)であるほどに人間性は大きく高く、強く、また手枷が外れた時の反動も大きくなるのである

では聖職者の獣の聖職者としての地位はいかほどであったか

聖職者の獣を見ると、巨大な角が生え、肋骨がむき出しになり、左手は肥大化している


これらの特徴はダークソウルに登場した深淵の主マヌスやSEKIROの怨嗟の鬼と共通するものである
つまり聖職者の獣は、ほぼ裏ボス的な地位にある怪物たちと共通した特徴を有するのである

こうした造形から推測するに、聖職者の獣はかつてはかなり高位の聖職者であったことがうかがえるのである



教区長

また、解析によれば聖職者の獣に割り振られたIDは「Kyoukuchou」であり、内部データでは聖職者の獣は「教区長」と呼ばれていたことが分かる

しかしながらゲームに登場する現在の教区長は「教区長エミーリア」である
彼女が「金のペンダント」とドロップすることからも、エミーリアが正式な教区長であることは確かである

金のペンダント
教区長エミーリアのペンダント
使用により血晶石となり、武器を強化できる
それは医療教会の長教区長に代々受け継がれた
警句の象徴でもある
それを知りたければ、祭壇の頭蓋に触れるとよい


考えられる可能性としては以下のようなものが挙げられる


  1. 聖職者の獣はエミーリアの前任者、つまり前教区長
  2. 聖職者の獣は別の教区の教区長だった
  3. 「Kyoukuchou」は暫定的・便宜的な命名だった
  4. そもそも教区長ではない


1ならば、なぜ教区長を辞めたのかという問題が残る

単純に獣となってその任を果たせなくなったという推測も出来るが、後任であるエミーリアも獣化していることから、獣となっても教区長であることは可能である(訂正:エミーリアはプレイヤーが到着した後にムービーで獣化する)

教区長に代々受け継がれてきた「金のペンダント」をエミーリアは所持しているが、獣化した聖職者の獣から黄金のペンダントだけを奪い返したとは考えにくい。というのも、剣の狩人証聖職者の獣が未だに所有していたからである


2ならば、聖堂街の教区長はエミーリアであり、聖職者の獣の教区は旧市街となろうか

剣の狩人証によって「白い丸薬」が売りに出されることからも、聖職者の獣と旧市街とは何らかの関係があったと思われる

3と4はほぼ同じ理由となる。聖職者の獣はそもそも教区長ではないというものだ

と言うのも、剣の狩人証により売りに出される物品のなかに「狩長の印」がある

狩長の印
かつて教会の狩人、その長が持ったという布製の印
大聖堂の円形広場に至る、正門を開く鍵となる
正門は、獣狩りの夜に固く閉じられ
外側からは、ただこの印を持つものにのみ開いたという
長の帰還は、すなわち、獣狩り完了の印だったのだ

聖職者の獣となる前、彼は「狩長」であり、「狩長」と「教区長」とは異なる位階だったのである



教区長と狩長

個人的な結論としては3と4がより蓋然性が高いのではないかと思われる

まず、教区長であるが、教区長の初代はローレンスである
一方、医療教会最初の狩人はルドウイークである

この両者が同時期に存在していたかは定かではないが、教区長と狩人とは区別されていたのである
※ローレンスとルドウイークが同一人物でないかぎり、最初の教区長と狩長を兼ねることは不可能

教区長ローレンスの系譜の最後に位置するのが「教区長エミーリア」であり、狩長ルドウイークの系譜の最後に位置するのが「聖職者の獣」である

剣の狩人証により売りに出される物品からも、聖職者の獣がルドウイークの系統であることが推測できる

剣の狩人証によって売りに出されるアイテム

  • 白い丸薬
  • 狩長の印
  • 教会の石槌
  • 教会の連装銃
  • 狩人の確かな徴
  • 携帯ランタン


たとえば教会の石槌の長剣は、ルドウイークの聖剣と同じデザインであり、連装銃に見られる歯車機構もまたルドウイークの長銃と共通の機構である
銀の剣のデザインは同一である

歯車機構はルドウイークの長銃から受け継がれている

つまりプレイヤーは聖堂街を攻略することで、医療教会を象徴する二人の長、教区長と狩長の末裔と戦うという構図になっているのである(聖職者の獣はスルーできるが)

そしてそれは、瀕死の医療教会にとどめを刺すことに他ならないのである


蛇足

情報の整理と確認のための手記なので、目新しい点はそれほどないと思われる