2020年8月6日木曜日

Bloodborne 考察39 ゴースの遺子

上位者

トロフィーから判断するに、ゴースの遺子は上位者である

トロフィー ゴースの遺子
上位者「ゴースの遺子」を倒した証

また母であるゴースも上位者である

ゴースの寄生虫
海岸に打ち棄てられた上位者ゴースの遺体
その中に大量に巣食う、ごく小さな寄生虫
人に宿るものではない

つまりゴースとゴースの遺子は母子揃って上位者ということになる


赤子

これは、「すべての上位者は赤子を失い、そして求めている」という3本目のへその緒のテキストと矛盾するように思える

しかしながら作中でもメルゴー、(月の魔物)、アリアンナの赤子、ヨセフカの赤子、と最大で4体ほど上位者の赤子は生まれている

※4体の赤子の父親はおそらくはオドンであることから、ゴースの遺子の父親もオドンである可能性は高い

ではゴースの遺子はゴースとオドンの赤子なのであろうか
そう単純なことではないようだ

なぜならば漁村の囁き声は以下のようなことを囁いているからである

母は殺された。赤子は奪われた
ウロコは痛み、ゴースの嘆き(漁村の囁き声)

狩人が海岸に到着したときのムービーでゴースの遺子は母であるゴースから生まれてくる
つまり赤子はゴースの胎内にずっと存在していたのであり、「赤子は奪われた」という囁きと平仄が合わないのである

赤子は奪われている(おそらくビルゲンワースに)
しかし当の赤子はゴースの胎内に宿っている

この矛盾を解消するためには、奪われた赤子とゴースの胎内にいた赤子別人だ、と考えるほかない

つまりゴースの赤子と、ゴースの遺子とは別の存在なのである

これは「HUNTED NIGHTMARE」と表示されるのがゴースの遺子を倒したタイミングではなく、「黒い影」を斬った直後であることからも推測することができる

黒い影が海上に漂う場面で、「ゴースの赤子が、海に還る」とナレーションが入ることから、この黒い影こそが「ゴースの赤子」である

ただしゴースの遺子を倒さない限り黒い影は出現しないことから、両者には何らかのつながりがあるように考えられる

黒い影はゴースのへそのあたりから立ち上っている


ゴースの遺子が倒されるまで黒い影がどこにいたかというと、ゴースの遺子と融合していたのであろう。心身二元論的にいうのならば、ゴースの遺子は肉体であり、黒い影はその心(魂)だったのである



ゴースの遺子

では一体、ゴースの遺子とは何者なのか

この狩人の悪夢という悪夢には初期狩人の多くが登場している。そしてこの悪夢はシモンによればそもそも狩人の罪に芽生えたものであるという

この悪夢は、狩人の業に芽生えているのさ(やつしのシモン)

…この村こそ秘密。の跡…
…そして狩人の悪夢は、それを苗床とした(やつしのシモン)

これほどまでに狩人と関係が深いのに、最も重要な狩人だけがこの悪夢に登場していない

最初の狩人、ゲールマンである

狩人の夢でゲールマンを倒すと、彼は肉体を残さずに消滅する。また姿を消したまま「液体状」の遺志として工房に存在していることもある



一方、肉体をもった者が悪夢で死ぬとその死体は残るのである



つまり死体を残さずに消滅するということは、すでに肉体を失っている事を意味しているのである

またゲールマンは夢を見ているのか寝言を漏らすことがある

…もう長い間、夢を見ている…
もはや狩りなどできぬ身なれど、それが私の役目なのだ…
友だちと、約束したのだよ…
約束をね…
クー、クー…

ん…、うう…
…ああ、ローレンス…ひどく遅いじゃないか…
…私はもう、とっくに、老いた役立たずだよ…

これは眠っていた人形が眠りから覚めた後、どこかにいたような、と呟くことと同じ現象であろう

ハッ
ああ、お帰りなさい。狩人様
すみません、私は、どこかに…(人形)

二人は夢の中で「何者かになった夢を」見ているのである。しかしそれもまた「夢」であり、ヤーナムの世界では夢は一つの悪夢的現実として存在しているのである

人形はマリアとなり、ゲールマンはゴースの遺子になった夢を見、そしてそれは悪夢に囚われている状況なのである

マリアを倒した直後に人形が打ち明けるように悪夢に囚われている夢の対象は夢見る者にとって「重い枷」である

狩人様。おかしなことを聞いて宜しいでしょうか
…私は、どこか変わりましたか?
先ほど感じられたのです。私のどこかで、どこか中で、重い枷が外れるのを
不思議ですね。元より、私のどこにも、枷などありませんでしたのに

同様にゲールマンゴースの遺子(の肉体)として悪夢に囚われていたのである。しかしその悲劇の根源はゲールマンがゴースの赤子を奪ったことに起因するのである

追記

書き忘れていたのだが、ゴースの遺子を倒した後、人形から以下のようなセリフが聞ける

ああ、狩人様。ゲールマン様の寝息が聞こえます
苦しそうないつもと違い、今宵は、とても穏やかなのです
…あの方に、僅かでも救いがあったのでしょうか…(人形)
このセリフは、ゴースの遺子撃破後ならば黒い影を攻撃する前でも聞くことができる。つまりゲールマンと繋がりがあるのは黒い影ではなく、ゴースの遺子のほうである

このことからも、ゴースの遺子がゲールマン(その肉体)であり、黒い影こそがゴースの赤子であると裏付けられる



3本目のへその緒仮説

ゲールマンが遺子であり上位者になったとした場合、上位者になる方法としてはまず3本目のへその緒による瞳の獲得が挙げられる

上位者の赤子は3本目のへその緒を持っており、使用すると内に瞳を得るという

3本目のへその緒
使用により啓蒙を得るが、同時に、内に瞳を得るともいう
だが、実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった

ゴースの赤子も当然ながら所持していたであろう

※内に瞳を得るということが何を意味するのかについては深く立ち入らない。また狩人が上位者の赤子になるために3本使う必要があったことについても立ち入らない

※しかし瞳を授かり上位者になったロマという実例があることを考量すると、瞳を得ることで上位者に変異する、ことはあり得ると考えられる(なぜミコラーシュは上位者にならなかったか、についてもここでは触れない)


再誕者仮説

次に再誕者メソッドによる上位者の顕現という方法が考えられる。これは再誕者をいかに解釈するかにもよるので3本目のへその緒を使用する方法よりはゲーム設定から離れている

再誕者はメンシス学派により造られた疑似生物のようなものである。一方でメンシス学派の首領であるミコラーシュは夢を現実にすることを目指していた

儀式はもうすぐ終わる
夢が現実に、我らに瞳をもたらすのだ!(ミコラーシュ未使用セリフ)

では再誕者は何のために造られたのかと考えると、夢が現実になった際に上位者の肉体になる依り代である

メンシスの悪夢のボスメルゴーの乳母であり、メルゴー自身には姿がない。これは父であるオドンの属性を受け継いだと思われる

姿のないメルゴー現実に顕現させるためにはその肉体となるべく依り代が必要である。そのために再誕者は造られたのである

同じようにオドンを父とすると思われるゴースの赤子は姿がない(あるいは黒い影のような姿である)

よって現実世界において神威を発揮させるためには、現実世界における器(依り代)が必要だったのである

その依り代となったのがゲールマンの肉体であり、ゴースの赤子の心と融合したゲールマンはゴースの遺子になったのである

ただしこれは上述したように本作の設定からかなり離れた案である


上位者ゴースの遺子

さて、これまでやや強引にゴースの遺子=ゲールマン説を推してきたがこれには理由がある

狩人の夢のゲールマンはしばしば寝ており寝言を呟く
その寝言の最後に発せられるゲールマンのうめき声が、ゴースの遺子の泣き声と酷似しているのである



狩人の悪夢と名づけられながら、最初の狩人が登場していないこと、また同じ老人の姿をしていること、さらに同じ音声を発すること等々を併せて考えると、ゴースの遺子=ゲールマンというのはある程度の蓋然性はあるのではないか、というのが私の考えである

※未使用データに幼児型のゴースの遺子のモデルデータが存在する。これは単に没になったのかそれとも、やはりゴースの遺子は赤子から成長していったのかもしれない

※ただし、狩人の夢のゲールマンが「私はもう、とっくに、老いた役立たずだよ」と呟くことから、夢の中でも老化することが示唆されている。ならば赤子と融合し当初は幼児型をしていた遺子も長い時間を経て老人になった、とも考えられる

※しかし漁村の司祭が「老いた赤子」と言うことから、幼児型は単純に没になった可能性も高い



蛇足

正直なところゴースの遺子と黒い影の関係はゲーム内の設定からだけでは解き明かしがたい。ゆえにこの考察も未だ途上である

ただ事実としてゴースの遺子黒い影のゴースの赤子という二者は存在する

5 件のコメント:

  1. ゴースを倒すと人形から「ああ、狩人様。ゲールマン様の寝息が聞こえます 苦しそうないつもと違い、今宵は、とても穏やかなのです …あの方に、僅かでも救いがあったのでしょうか…」というセリフが聞けるので、人形が悪夢ではマリアな様に、ゲールマンがゴースの遺子というのは的をいているかもしれません...

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    1. ゲールマンの寝息について書いたと思っていたら書いてませんでしたね…動画の方と混同していたようです。追記しておきます。ちなみにゲールマンの寝息についての話は、ゴースの遺子を倒した後ならば黒い影を攻撃する前でも聞くことができます

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  2. 漁村についてエビス信仰との関連を述べた者です。
    今回の考察からゴースの遺児と黒い影について、考えてみました
    ゴース加えて遺児、黒い影、ゲールマン。この三者を神と聖霊とその子の、三位一体に見立てる事は出来ないでしょうか。
    これは医療教会の源であるビルゲンワースがキリスト教的な思考体系を持つからなのかと考えます。
    ビルゲンワースから見て野蛮な土着神を奉ずる漁村。
    漁村襲撃前までビルゲンワースは上位者と神との区別が出来てなかったか、分かりません。
    ただビルゲンワースは自身の思想に添う神を造り出そうとしたと思います。
    だから、身籠った神(ゴース)を解体し、神たる母体と繋がる赤子を縁(聖霊あるいは精霊)にゲールマン(子)に赤子の臓器を移植したと考えます。
    そして、この三位一体は星見盤にあるΩの文字を3つ掛け合わせた物で表されたと考えてみました。

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    1. 三位一体論を当てはめるとするとゲールマンが父、黒い影が精霊、遺子が子あるいは、ゴースが父、黒い影が精霊、ゲールマンが子になると思いますが、ゴースの遺子もゴースの赤子も「子」のカテゴリーになるような気がします

      どちらかというと母という属性からはキリスト教よりも母性崇拝寄りのグノーシス主義的な印象を受けます。あるいはその伝統を受け継ぐ錬金術の思想、神(精霊)と人間(魂)と世界(肉体)の、つまりゴースの赤子(精霊)とゲールマン(魂)とゴース(肉体)の結合によって生じるホムンクルス的な存在のような気もします

      この場合、ゲールマンの遺志とゴースの赤子が子宮であるゴースの胎内で生育されて生まれたのがホムンクルスつまりゴースの遺子になるでしょうか

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  3. 私も少なくともゴースの遺子の体=ゲールマンはほぼ確定してるかと思います。
    ゴースの遺子の登場ムービーを見ると右手についてるゴムのような輪や背中のマントのようなものはゲールマンの格好そのもの。また、ゴースの遺子の武器はよく胎盤とか言われるが、明らかに狩人の武器に何かがフジツボのように付着してるものであり、元々狩人であった可能性が高い(これが葬送の刃が元になっていたらゲールマン説確定だが、葬送の刃より大きな鎌状の武器に付着してる気がする)
    確定的なのはムービー中にゴースの遺子が立ち上がった直後に背中からずり落ちるのは、明らかにゲールマンが背中につけていた散弾銃そのものである。
    よってゴースの遺子の体=ゲールマン説が有力で、マリアの狩装束のテキストに出てくる(ゲールマンの)好奇の狂熱とは上位者への好奇のことで、彼自身が上位者になりたかったのではないかと妄想する。上位者になりたかったから自分でゴースの中から産まれ直したのかと…。
    まあ好奇の狂熱が自分が好きな人の人形を作って愛でることでなければの話だが…。

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