2020年12月24日木曜日

Cyberpunk2077 物語分析

本作のゲーム面での批評はすでに多く語られているので、ここではジョニーを足がかりとして物語の分析をしてみたい



ジョニー

ジョニーという破天荒なキャラクターに対してプレイヤーが抱く感情は好意的なものばかりではない


むしろその反対に嫌悪や否定的な感情を抱くことのほうが多いのではないだろうか


しかしこれはジョニーに課せられた役割(ロール)ゆえの反応である


端的にいえば、本作におけるジョニーの役割はトリックスターである(ロックスターでありトリックスター)


ユングによればトリックスターとは以下のようなものである


神=獣的な性質をもった「宇宙的な」原存在であり、一方ではその超人的特性によって人間にまさり、多方ではその非理性と無意識性のために人間よりも劣っている(『元型論』)


野蛮に残忍に愚かに無意味に行動する代わりに、トリックスターは物語の終わりのほうでは、有益なことや意味のあることをし始めている。(『元型論』)


その『元型論』の訳者解説で林道義氏はトリックスターの特徴を挙げている


1.反秩序

秩序を壊す者、文化的な約束事を破る者

無秩序の精神、教会を無視する精神


2.狡猾さ

狡猾なトリックを使って騙し、それによって自分の欲するものを手に入れるという性質


3.愚鈍

トリックスターは相手を騙すこともあるが、逆に騙されて酷い目にあうこともある。これは彼が相手と同じ程度に愚鈍だからである(ジョニーがソウルキラーを使われたのもある種の愚鈍ゆえである)


4.セックスと飢え

彼の行動はすべて露骨な性欲と食欲を動機としており、本能的・生物的次元に生きている


5.英雄的

トリックスターは最後に一転して、人間に文化をもたらす英雄や救世主のようになる

神や君主を欺いて、人間や民衆に文化や利益をもたらす


また宗教学者エリアーデによればトリックスターとは


神話的な「いたずら者」あらゆる面での常軌の逸脱(『世界神話事典1』)


大多数の神話伝承において、トリックスターが死の到来、世界の今日的状況とに深いかかわりがあるということは事実だ。しかし彼は同時に変革者であり、文化英雄でもある。(『エリアーデ著作集8』)


であるという


さらに『トリックスターの系譜』によれば


創造力をもった白痴、賢明なる愚者、白髪の赤子、異性の服の着用者、聖なる冒瀆的言葉の語り手


言語活動が妨げられたり、死に絶えたり、その魔力を失ってしまった場所で、トリックスターは新たに言葉を発する。


とも言われる


そしてレヴィストロースによれば、トリックスターの物語が出現するのは「神話的思考によって対立を仲介しようとするとき」であるという



まとめると、トリックスターのもっとも重要な役割は、世界に現われた対立を仲介することであり、そのために秩序を破壊し、新たな活力を創造することである


神話や伝説に登場するトリックスターは愚かで卑怯で、読者や聴衆をいらだたせる存在であるが、それゆえに物語に活力を与え、聴衆を惹きつけるものでもある


本作のジョニーはVの肉体的秩序を侵す形で現われ、その野蛮な言動によってVの精神的秩序をかき乱し社会の秩序を破壊せよとVに発破をかけ、ついに秩序の象徴たるアラサカタワーを襲撃させるのである


トリックスターに翻弄され続けたVの生はあっけなく終焉を迎え、しかしその死はまた新たな秩序を打ち立てることになるのである(Vの生と死については後述する)


つまり本作におけるジョニーは典型的なトリックスターの役割を果たしているのであり、プレイヤーの全面的な支持を得られないのも、秩序をかき乱すという役割ゆえのことなのである



革命家

トリックスターであるジョニーは本作の大きな対立の中間にいるキャラクターである


ジョニーとアラサカの因縁があまりにもクローズアップされるために背景に退いてしまっているが、本作における最も大きな対立項AIと人類のそれである


不良AIたちから人類に残されたわずかなネットを守る壁がブラックウォールである。ここにAI対人類という対立構図が見られる


すなわちジョニーは、AIと人類という対立項を結びつけるものであり、AIの人類への反逆を先導する革命家でもある(彼にその気はなくとも)


このAIの人類への反逆、言い換えれば被造物による創造主への反逆という主題は「ブレードランナー」「ブレードランナー2049」に共通する主題であり、カレル・チャペックの『R.U.R.』の直系の子孫でもある(その大本は旧約聖書にある楽園追放であろう)


本作ではこの主題は曖昧な形で提示されるにとどまる。しかしながら、市長候補のペラレス夫妻の一連のジョブ(またその時に語られる不良AI)や、オルトのアラサカタワー襲撃への協力というプロットによって暗示されている


この主題の中心にいるのがジョニーとVである


肉体を得た人格コンストラクトという人とAIの中間項であるジョニーを媒介にして、人とAIは接触を果たし、対立し、ついにAIは人類からの自由を勝ち取ろうとするのである(太陽END。詳しくは次の項)


しかしその自由は一方でAIと人類との共存を意味するものである


すなわちジョニーとVはAIと人類との対立を解消し、人類に新たな恩恵をもたらす役目も果たすのである。なぜならばトリックスターは、最後に文化英雄になるからである


この役割はマトリックスにおいて、機械と人類との戦争を終結させる鍵であったネオと同一のものである(ネオを演じたのはジョニーと同じキアヌ・リーブスである)


こうした機械と人類AIと人類、という対立項はもとをたどれば「神と人」との対立ならびにキリストの犠牲による贖罪を経た神と人類との和解に見出すことができる


ブレードランナーレプリカント(被造物)と人間(創造主)の対立

マトリックス機械(被造物)と人間(創造主)の対立

本作AI(被造物)と人間(創造主)の対立をそれぞれ描いている



太陽END

太陽ENDにおいてVはクリスタル・パレスから顧客データを強奪するが、それが必要だったのは、その顧客データが人類の支配層と重なるからである


クリスタル・パレスの超裕福層の顧客たちこそ、現在の人類社会を先導する者たちであり、そのデータこそが人類の急所でもあるのである


市長夫妻のジョブで示唆されたように、AIは人類に対して影響を持とうと企図し、実際にそれは成功しつつある


同じように人類の支配層を掌握することができれば、AIは人類に勝利したも同然なのである


それゆえ彼らは人類の支配者層のデータを欲したのである。彼らさえ掌握することができれば、AIは人類から自由になれるからである(または人類を支配することができる)


もちろん依頼主であるミスター・ブルーアイズはAI側の者である


「覚めない夢」でジェファーソンと話をするとき、なぜかミスター・ブルーアイズが監視している



V

物語の表層だけを追っていくと、結局のところ太陽ENDでさえVは命を落とすことになる


しかもクリスタル・パレス襲撃の意図もその真価も示されないことから、エンディングのVが何をしたかったのか分からぬままにゲームは終わる


これではまるでバッドエンドである


しかしこれは人類としてのVのみを見たときに生まれる印象であり、実はここに重大な錯覚が生じている


というのも太陽ENDの前、Vはいったん人格コンストラクトに変化させられている(このときに本物のVは死んでいる)


つまりこの段階でVは人類とAIの中間的存在に変化しているのである。そしてそのことは、かつてのジョニーと同じ役割を課せられたことを意味している


すなわち、トリックスターとしての役割である


上述したように、クリスタル・パレスの顧客データの強奪はAI側にとっての宿願である


秩序を破壊し、新たな世界を創造する役割を課せられたトリックスターにとって、この仕事はおのれの存在意義を証明するための使命ともいえるものなのである


それゆえにVは死を賭してクリスタル・パレスを襲撃しなければならなかったのである


なぜならばトリックスターとは、おのれの死にすら抗おうとする永遠の反逆者だからである



蛇足

おそらく本作の出来事のすべてにAIは関与している

ヴードゥーボーイズを介してエヴリンをVに接触させたのも、ヨリノブに生体チップを持ちかけたのも、彼に父を殺させたのも、あるいは最初からAIの目論見だったのかもしれない


2020年12月16日水曜日

Cyberpunk2077 隠しエンディングへの行き方【更新2020/12/19】

エンディングの詳細は一番下に


TAPEWORM/寄生虫

最後の選択肢は「わかった。運転を譲るよ」を選ぶ(この時点で25%のはず)




まず前提として「CHIPPIN'IN/銀腕の男開始時にメニュー画面で見える「ジョニーとのシンクロ率」が25%必要

CHIPPIN'IN/銀腕の男」開始直後に薬を飲んでジョニーに入れ替わると30%になります


画面の青で囲ったところ

流れとしてはジョニー、ローグ、ケリー、Samuraiのクエストを順番にこなしていく。薬を飲んでVがジョニーになるたびにシンクロ率が上がっていく



CHIPPIN'IN/銀腕の男

1.グレイソンを殺害

2.クレーンを操作してコンテナを降ろす

3.コンテナの中のジョニーのポルシェに乗って油田へ(ジョニーの墓がある)




ジョニーの墓場での選択肢

※テキストは女Vのもの

※3.から選択により展開が変わる

※墓場に向かう時点で30%必要


  1. [座る]墓石でもあると思った?
  2. [ジョニーのイニシャルを刻む]じゃあ何か残そう
  3. 「あたしの命を救った男」
  4. どの口で言ってるわけ?
  5. あたしに何を期待してるの?
  6. わかった。でもこれが最後のチャンスよ
  7. 最初の頃はほんとにひどい奴だったね
  8. 友達を失望させたって言ったのは…
  9. スマッシャーの件で思い詰めてた
  10. いいよ、ローグに連絡する


この段階でジョニーとのシンクロ率は40%になっているはず

ジョニークエ終わり


BLISTERING LOVE/焼けつくような愛

ドライブシアターでの選択肢

  1. このデート、どうなると思ってた?
  2. 2077年のローグが好きだ
  3. お前を失わないためなら何でもする
  4. 大切なのは、俺がお前のところに戻ってきたことだ
  5. [キスする]それだけあれば十分だ


この段階でジョニーとのシンクロ率は50%

ここでローグクエは終わり、以降はSamurai再結成のクエストライン


HOLDIN’ON/反骨

ケリーの屋敷に忍び込んだあとの選択肢

  1. 〈Samurai〉を復活させたいのか?


このあと連絡を1日待つことになる(わたしはパナムクエを1つ終わらせたら連絡が来た)


この段階でジョニーとのシンクロ率は60%


SECOND CONFLICT/新たな苦しみ

デニーの屋敷に集合したあとの選択肢

  1. デニーとやりましょ


A LIKE SUPREME/至上の想い

ライブが終わったあとにケリーと会話しているときの選択肢

  1. アンコールライブでもやるか?


この段階でジョニーとのシンクロ率は70%



夜想曲第15番 OP,55-1

屋上の選択肢「裏目に出るぞ。お前の命だけの話じゃないんだ」のところで数分間待つ(結構長い5分くらい?)

銃に視線を向けている必要があるかもしれない

するとジョニーが提案してくる

以下ネタバレ




ネタバレ回避で小さな画像



  1. どんな作戦を考えているの?
  2. [アラサカ・タワーを襲撃する]真正面から攻め込むわけね。気に入った

動画
以上をまとめた動画


エンディングの詳細

基本的にはローグルートを選んだときと同じ「栄光への道」
今のところ気づいた相違点はアフターライフにローグがいることのみ




2020年12月11日金曜日

Cyberpunk2077 ファーストインプレッション(PC)

環境

CPU: i5 10400F

GPU: Nvidia RTX 3060ti

RAM: 16GB DDR4 3200MHZ

SSD: Crucial 512GB(SATA)


FHD60fps 高画質RTウルトラ

重い場面では50程度まで落ち込む


もし3060tiと3070を迷っているのならば3070を勧める(充分だろうと軽い気持ちで3060tiを購入したもののやや後悔中)



PC版

さて、PS4版をPS5でプレイした時の印象は前回の記事で述べた


そこでは、かなりというかほとんどの部分が否定的な評価であったが、それがPC版ではどのように変わったのかを簡単に書いておきたい


まずPS4版のネガティブ要素として挙げたのが以下である


  • 3D酔い
  • 操作性
  • UI
  • 戦闘
  • 世界観


このうち、3D酔い、操作性、世界観についてはPC版で印象が一新された



3D酔い

PS4版をPS5で起動すると60fpsでプレイできる。確かにフレームレートの著しい低下は感じられなかった(ごく一部を除き)


しかしやや違和感のある60fpsであり、そのあたりがPC版の60fpsとは異なっているようである


簡潔に言うと、PC版は何時間プレイしようとも酔わなかった



操作性

PC版を基本として作られたからなのか、PC版での操作はそれほどイライラすることはなかった


アイテムを拾う時などもPS5の時よりも反応する範囲が広かったように思える


簡潔に言うと、一般的なFPSのように遊べる



世界観

前回の記事では「作り物の街」と評したが、PC版のそれはまさしくサイバーパンク的な世界を彷彿とさせるものであった


個人的にグラフィックにこだわりはない方だが、ここまで違うのかと驚かされた


まるで違う世界にいるような印象すら受ける


神は細部に宿るというように、細かなディティールが積み重なって世界は作られるのだということを再認識させられた



UI

改善されたことは確かだが、PC版でも使いにくいというのがUIである


マウスを俊敏に動かせる分だけストレスは軽減されたものの、根本的にUIは使いにくい


例えば装備している武器とインベントリ内にある武器を比較しようとした場合などである


詳細情報が表示されるツールチップの位置が固定されず、一瞬どちらが装備済みのアイテムなのか分からなくなることがある


ハクスラ要素があり膨大なアイテムを比較しなければならない本作において、これは致命的ともいえる仕様である


とはいえ、このあたりはMODでも改善できる部分であるのでそのうち直るであろうと思う



戦闘

マウス操作によりヘッドショットを狙いやすくなり、また監視カメラのような小さなデバイスにも即座にフォーカスできるなど、全体的な操作感は向上した


ただ基本的には強い武器防具を揃えごり押ししていくのが、もっとも簡単というRPG的なゲームなので限界はある(高望みしても仕方の無い部分であるが)



総評

操作感の劣悪さ、世界の希薄さ、プレイのしにくさ(3D酔いなど)が改善されたPC版は別のゲームとさえ言える


とはいえ、個人的にはPS4版が悪いというよりも、PS4版をPS5でプレイしたために、違和感のあるプレイ感になったような気もしている


PS4版をPS4(pro)でプレイしたのならば、筆者の抱いたような不満点はなかったのかもしれない

2020年12月10日木曜日

Cyberpunk2077 ファーストインプレッション(PS5)

 (PS5)とあるように、PS5でプレイした感想である

PC版もプレイする予定があり、そちらはまた別の記事にまとめる


またPS5とあるが、現時点でPS5版は完成していない

よって正しくは、PS4版をPS5でプレイした感想ということになる



3D酔い

Cyberpunk2077のゲーム文化における位置については、筆者はそちら方面の知識に乏しいので詳しく書くことができない


そこでこの記事では、Cyberpunk2077が幾重にもまとう「サブカル的・SF的」な衣をはぎとって、単にひとつのゲームとして数時間ほど遊んだ印象を記す



プレイを開始して即座に感じたのが「3D酔い」である

筆者は基本的に3Dゲームで酔ったことはほとんどなくスカイリムVRを酔わずにプレイする程度には酔い耐性が高い


しかし、Cyberpunk2077をプレイしはじめて数分後にはすでに気持ちが悪くなっていた

その後、気持ち悪さをこらえながら5時間ほどプレイし続けている間も慣れることはなく、プレイを終えたいまもやや悪心が残っている


この3D酔いの原因としては、PS4版をPS5で60fps動作させたことで違和感が増大したのかもしれない、というのが印象である


PS5でプレイしてもPS4のテクスチャのままであり、ややのっぺりとしたテクスチャが60fpsでヌルヌル動くことで脳が違和感を覚えているのではないかと思われる


しかし3D酔いは筆者だけの症状かもしれず、実際のところ原因は不明である




操作性とUI

PC版を基本として開発されたからなのか、コントローラーでの操作性ははっきり言って悪い。エレベーターのスイッチを押すのにも一苦労するほどである


というのも、基本はアナログスティックで操作するのだが、アクティベート可能な施設を起動させるためにはかなり接近しなくてはならず、反応する範囲もかなり狭い


このためフォールアウトやスカイリムの時のようにアイテムを拾う楽しさのようなものはなく、常に米粒を箸で拾わされるようなイライラ感がつきまとうのである


またステータス画面などではマウスカーソル的なカーソルが表示され、それをアナログスティックで操作することになるのだが、カーソルを思うように動かせない


UIに関しても洗練されているとは言い難い

パークの説明からして、いちいちカーソルを合わせなくては表示されず、膨大な数のスキルを前に説明を読むことを諦めてしまいそうになる


同じような効果のパークのステータスのカテゴリーののタブにあったりするので、できればパークの数ももう少し絞り込んで欲しかったというのが正直なところである。


字幕や取得アイテムの文字の小ささは、PCモニターでプレイしていても感じる部分である


何を拾ったのかわかりにくく、例えば新規アイテムを拾った場合には親切にもそれを知らせてくれるのだが、アイコンが表示されるのみで、詳細を見るためには結局インベントリを開かなくてはならない


FPSの画面上はすっきりしているのだが認識性に欠けており、すっきりしている、という以上にあまり意味はない


逆にステータス画面やインベントリの画面はごちゃごちゃしており、極めて見づらい。筆者は武器に改造チップを装着する方法をついに見つけられなかった(これは筆者の能力のなさゆえであるが)


全体として、操作性やUIはPC版のMOD(出ると思う)がなければプレイしたくないほどである




戦闘

純然たるFPSではなくRPG的なFPSなのでスキルの揃っていない序盤で判断するのは時期尚早であろう


しかし一言でいって「」である


プレイヤーはどのように攻略しても良いことにはなっており、その部分は自由度が高くてよいと思うのだが、それは一方では調整の放棄に繋がってしまう


つまり、一つの状況をプレイヤーにどのように攻略させるのか、という思想が存在せず、とりあえず何も考えずに敵をたくさん配置し、利用できる施設(監視カメラなど)を配置し、さあ好きなようにしてくれ、と言われているようなものである


「ここにこの施設があるのはこの敵のためか」というようなパズルを解いたような快感は得られず、プレイヤーは場当たり的に敵を倒していくだけである


とはいえ、最初にいったようにRPG的なFPSなので序盤で判断するのはフェアではない




世界

各ゲーム系サイトで絶賛されているサイバーパンク的な街並みであるが、個人的にはそれほど感銘を受けなかった


スリーピングドッグスという香港を舞台にしたオープンワールドゲームがあるが、あちらの方がまざ雑然とした雰囲気があったように記憶している


何というか、空気がきれいすぎるのである


空気に透明感があり、街の明かりにも透明感があり、人々の着ている服にも透明感があり、街全体がくっきりキラキラ輝いているのである


そこにとってつけたような日本語が貼り付けられていても、サイバーパンクな感じはにじみ出てこない


映画「ブレードランナー」の濁ったような空気感や、身体にまとわりつくような雨や煙などは存在せず、そこには作り物の街があるだけである


※これはPS4版をPS5でプレイした感想であって、PC版で高画質RTウルトラでプレイすればまた印象は変わるであろう




総評

かなりネガティブな評価となったが、PS4版をPS5でプレイしたこと、まだ4時間ほどしかやっていないことなど、これからいくらでも評価が覆る(手のひらくるり)可能性はある


少なくとも操作性やグラフィック、UIなどについてはPCとコンソールでは大きく違うと考えられることから、まったく正反対の感想を抱いてもおかしくはない

2020年12月5日土曜日

Bloodborne 考察まとめ8 啓蒙と獣性

啓蒙/獣性システム

啓蒙/獣性システムはこのゲームの根幹に据えられたものであり、またその影響は多岐にわたるので、まずはそれぞれの確認から始めたいと思う


啓蒙

ゲーム内のヘルプによれば、啓蒙とは以下のようなものである


啓蒙の度合い

人ならぬ知識を得るほどに高まる

特別な鐘を鳴らすときに必要となり

また高いほど発狂しやすい


ステータス画面などでR3を押し込むと見ることができる


しかし啓蒙の値が影響を与えるのはこれらだけではない

啓蒙値による世界の変化をまとめたものが以下である


啓蒙1

  • 人形が起動、血の遺志によりレベルを上げることができるようになる
  • 人形の隣のメッセンジャーより「狩人呼びの鐘」と「共鳴破りの空砲」を贈られる
  • 啓蒙取引が可能となる


啓蒙15

  • 教会の使いがオーラをまとい特殊な攻撃をしてくるようになる
  • ヘムウィックに狂気者が出現するようになる


啓蒙40

  • 儀式を暴く前でも大聖堂やヤハグルでアメンドーズが見える


啓蒙50

  • 儀式を暴く前でも狩人の夢のBGMが変わる
  • 聖堂街にあるレバーの周囲に使者が見える


啓蒙60

  • 儀式を暴く前でも、すべてのエリアで赤子の泣き声が聞こえる


また上のヘルプにもあったように、啓蒙の値が高いほど、発狂耐性が下がり発狂しやすくなる


加えて、啓蒙の値が高まれば獣性の値が下がり、逆に啓蒙の値が下がることで獣性の値が上がる



獣性

ゲーム内のヘルプによれば、獣性とは以下のようなものである


獣性。一時的獣化に際し

高いほど獣に近くなる




ここでいう一時的獣化とは、「獣性ゲージ」が表示されている時のことである


「獣の爪」とカレル文字「獣の抱擁」を同時に装備



「獣の爪」とカレル文字「獣の抱擁」を同時に装備すると獣化するが、これは「ゴースの寄生虫」とカレル文字「苗床」を同時に装備した際に苗床化するのとになる現象である


端的にいえば獣性の値とは、獣血の丸薬を使用したり獣の爪を装備した時の「獣性ゲージの長さ」である


このゲージは攻撃がヒットするごとに貯まっていくが、ゲージが貯まれば貯まるほどに狩人は攻撃力を増し、逆に防御力は減少する


ゆえにゲージが長いほどゲージを満たした時の「最大攻撃力」は増える


あまり使う機会はないが「鎮静剤」により獣性を抑えることができる

つまり鎮静剤は「発狂」と「獣性」に効くのである



発狂

さて、以上が啓蒙と獣性の表面的な説明である。ここから先は過去の考察を踏まえた上で考察していくことにする


過去の考察では、啓蒙とは精霊の卵が孵化した際に得られる神秘の智慧である、とした(「考察31 啓蒙」参照のこと)


つまり啓蒙が高まるとは、精霊がより多く孵化し、より多くの神秘を拝領されたことを意味するのである。また、上述したように啓蒙の高まり発狂耐性獣性の減少をもたらす


このうちまずは発狂とは何かについて考えてみたい


発狂という言葉からは、精霊から流れ込む人ならぬ知識の量が脳の許容量を超えた際に起きる理性の喪失といった印象を受ける


しかし、実はそうではない


ゲーム内において発狂ゲージが貯まるのは以下の状況である(見逃しがあるかもしれない)

  • メンシスの脳みそ邪眼に見られる
  • ほおずき邪眼に見られる
  • 星の子らに噛まれる
  • 瞳の苗床につかまれる
  • 教会の使い(啓蒙15以上)の十字架攻撃
  • 瀉血の槌の変形後L2攻撃後


わかりやすくするためにまずは邪眼に限って検討してみたい(その他の状況は別項)


邪眼をもつのはメンシスの脳みそほおずきである


ほおずきに関しては、メンシスの脳みそとの類似点や実際に巨大な瞳をもつこと、またメンシスの高楼でほおずきが2体いる場所は「邪眼橋」(アートワークスより)と命名されていることから、邪眼をもつと考えた




メンシスの脳みそに関しては、メンシスの脳みそがドロップする生きているヒモに根拠がある


生きているヒモ

メンシスが悪夢で得た巨大な脳みそは

確かに内に瞳を抱き、だが完全な出来損ないであった

その瞳は邪眼の類いであり、脳自体は腐りきっていた


考察32 内の瞳」(補遺:生きているヒモ)において、邪眼とは「虫」に寄生された瞳であると結論づけた。その瞳には獣性の根源たる「虫」が寄生しているのである


さて、メンシスの悪夢の各所には、壁に浮き出た瞳眼球に脚の生えたクモのようなオブジェクトが見られる


しかし、これらの瞳に近付いても発狂ゲージが貯まることはない。つまり狩人を発狂させるのは「瞳」ではなく「虫に寄生された瞳」、つまり邪眼に限られるのである


そして単なる瞳と邪眼差異は、その内部に虫が寄生しているか否かである


すなわち、邪眼に睨まれることで狩人が発狂するということは、瞳に寄生した虫が狩人の体内にいる何かを刺激しているのである


例えば「ゴースの寄生“虫”」のようにである


ゴースの寄生虫

このは「苗床」の精霊を刺激するという


このテキストから読み取れるのは「虫は精霊を刺激する」という観念である


※ゴースの寄生虫はその形状や性質から精霊の一種と考えられるが、寄生生物とせずあえて「虫」とネーミングされているところが示唆的である


結論を先に述べれば、発狂とは「虫」に刺激された精霊が活発化し、体内の「虫」を排除しようとした結果、狩人が獣血(虫)が変異した血の槍で身体の内側から貫かれ、ついに血液噴出させて大ダメージを受ける現象である


血の槍は女王アンナリーゼの技にもある。その血には劇毒(獣血の主)が含まれている


さて、繰り返すが啓蒙が高まる獣性発狂耐性下がる

なぜならば、刺激される精霊が多いほど(つまり啓蒙が高いほど)、虫を排除する力は増大する。すなわち発狂しやすくなるからである


逆に精霊と虫の力が拮抗しているのならば、精霊はなかなか虫を排除できない=発狂耐性が高いのである


つまり発狂耐性は二つの勢力のバランスに左右されるのであるが、しかし獣性が高くなったとしても啓蒙が下がることはない


啓蒙と獣性のバランスは啓蒙の増減のみによって決定される


このアンバランス(非対等)が何によってもたらされるのかは後述する


またあらゆる状態の虫が精霊を刺激するわけではない。精霊を刺激するのは「虫が発する特定の周波数の音(虫の声)」だけである(メンシスの脳みそほおずきと対峙した際に聞こえる

光は電磁波の一種であり特定の周波数をもつ


虫が声を発しようとすることは「獣の咆哮」に示されている


獣の咆哮

忌まわしい不死の黒獣、その力を一時的に借りる触媒であり

圧を持った獣の咆哮により、周囲のものを弾き飛ばす


つんざくその悲鳴は、しかし使用者の声帯が出しているものだ

人の内に、いったい何者が潜むのだろうか


使用者の声帯を借りて声を発している者こそが、「虫」である(ただし獣の咆哮は人の声帯を借りているので精霊を刺激する周波数にはならない)


また、頭の患者たちやアデラインが耳にしたように、精霊は湿った声を囁く。つまり精霊はは視覚や触覚ではなく主に聴覚によってコミュニケーションをとる生物なのである


邪眼に寄生した虫は、対象(敵対者)が視界に入るや歓喜(憎悪)の声をあげ、その声が精霊を刺激するのである(虫を鳴かせる必要がある)


刺激された精霊は活発化し、虫を排除しようとする。虫は体外へ排除される際に血槍に変異し、血槍は狩人の身体をつらぬき、最終的には発狂として狩人に大ダメージを与えるのである


狩人がHPにダメージを受けるのは、狩人の体力(HP)の基になっているものが「血液(獣血)」だからである。狩人は血液を大量に失うことで「生きる力(HP)」を失い、大ダメージを受けるのである


輸血液

血の医療で使用される特別な血液。HPを回復する

ヤーナム独特の血の医療を受けたものは

以後、同様の輸血により生きる力、その感覚を得る


以上が発狂のメカニズムである


つまるところ発狂とは人が発狂してるのではなく精霊が発狂している様を表現したものである


虫が同族の虫を刺激しているとも考えたのだが、そうすると啓蒙の高まりにより発狂耐性が下がることの説明がつかない(むしろ啓蒙により獣性が抑制されるのだから発狂耐性は上がるはずである)


※また精霊が精霊を刺激するということも検討したものの、純粋な獣血から構成される「瀉血の槌」を説明するのが難しく断念した。虫に寄生された精霊が同族の精霊を刺激するような声を発するというのは、瀉血の槌を除けば可能な仮説である



星の子らと瞳の苗床

狩人を発狂させるもののうち、星の子ら瞳の苗床は共に眷属である


眷属とは精霊に寄生された元人間のことである


星の子らは妊娠中の胎児が精霊に寄生されたものであり、瞳の苗床はDLCの実験棟で行なわれていたように、人間が苗床となったものである


元人間という点が重要である。ヤーナム民の血は獣血に汚染されているからである


要するに彼らは精霊に寄生された苗床であるが、同時に虫にも寄生されているのである


※メンシスの脳みそやほおずきはよく見ると、使者の身体を寄せ集めて作られている。使者を精霊と考えると、虫に寄生された精霊、という共通点が見いだせるかもしれない(ただしこれも瀉血の槌の扱いが難しい)


すなわち、攻撃の際には星の子らや瞳の苗床に寄生している虫が声を発し精霊を刺激しているのである


瞳の苗床のつかみ攻撃を受けると、「キーン」という不思議な音が聞こえる。これが虫の声(精霊を刺激する周波数の音)であろう


星の子らについては攻撃時に鳴き声を発するが、あるいはそれが虫の声とも考えられる(獣の咆哮との差異が難しくなるが)



教会の使い

長くなりそうなので簡単に済ませるが、教会の使いの十字架(狩人のマークに似た十字架)は、啓蒙が15以上あると赤いオーラをまとう


この十字架により狩人は発狂させられるが、このゲームにおいては赤は虫の色である


また光が振動(波)であるように、赤いオーラも特定の周波数を持っており、それは精霊を刺激する周波数なのである



瀉血の槌

次にかなりイレギュラーな存在である瀉血の槌のL2攻撃について検討する


精霊の発狂により宿主の体内から獣血ごと排除された鋭利な武器の形状をとる

の赤い色は「虫」の色である

これの性質を利用したのがブラドーの瀉血の槌である


瀉血の槌

はらわたの、心の底に溜まったを吸い

おぞましい本性を露わにする

それはまた、悪い血を外に出す唯一の方法だ

地下牢に籠ったブラドーは、そう信じ続けていた


瀉血の槌は悪い血つまり獣血を外に出すことで、虫の形状を変化させて武器として利用したものである

血液と共に虫が体外に排出されたことで鋭利な武器となる

また変形後L2攻撃は地面に先端を叩きつけて衝撃波を発生させる範囲攻撃であるが、使用すると発狂ゲージが貯まる



上述したように発狂とは、虫の音(声)に刺激された精霊が活発化することである


すなわち、虫の塊である先端部が叩きつけられたことで虫が苦悶の声をあげ、その虫の声(特定の周波数の音)に反応して、精霊が活発化するのである(あるいは衝撃波に虫の声に近しい周波数の音が含まれているのかもしれない)


※ちなみに連盟関連で「虫」を潰すことがあるが、これは虫が声を上げる隙を与えず踏み潰して殺しているので精霊は刺激されない。あくまでも精霊を刺激するのは生きている虫の声である(生きているヒモのように)


このように発狂を促す対象、例えばほおずき瀉血の槌の先端などには必ずがいて、その虫の声により精霊が刺激され発狂に至るのである


邪眼瀉血の槌L2の双方に発狂を促すような要因があるはずである。メンシスの脳みその光と音、ほおずきの、瀉血の槌の衝撃波、それらの共通点として「振動」(周波数、音)がそうなのではないかと考えたものである



鎮静剤

さて、鎮静剤により発狂ゲージが減少するのは、鎮静剤の原材料が人血だからである


鎮静剤

神秘の研究者にとって、気の狂いはありふれた症状であり

濃厚な人血の類いは、そうした気の乱れを沈めてくれる


それはやがて、血の医療へと繋がる萌芽であった


ここで名指しされているのは神秘の研究者であって獣性の研究者ではない


シンプルに考えるのならば、神秘の研究者のみ気の狂いを発症する理由は研究者が神秘を取り扱っているからであろう


神秘を取り扱うゆえに彼らは少なからず精霊寄生されており、その精霊が虫の声を聞いた際に刺激されて狂い出すのである


後述するが精霊は脳に宿るために人の精神に強い影響を与える。気の狂いとは精霊が狂いはじめたことで最初に現われる症状である


鎮静剤により気の狂いが静まるのは、獣血を摂取したことで体内の精霊と獣血の力のバランスが改善され、発狂が押しとどめられたからである(すべては二つの衝動の間の葛藤(バランス)であるである)



恐ろしい獣

啓蒙/獣性システムが示すように、二つの属性は絶妙なバランスのうえに成り立っている。これら二つの属性の間の葛藤が本作の根幹概念でもある


獣に変身したいという衝動は、私たちが皆持っている人間性という基本的な感覚と相反するものです。その人間性は一種の枷のようなもので、変身をその場に留める役割を果たしている。変身したいという衝動を固定している枷が強ければ強いほど、その枷が最終的に壊れたときの反動は大きくなります。その結果、あなたはより大きな生き物に、あるいはよりねじれた生き物に変身することになる。この二つの衝動の間の葛藤が、ここでは一つの概念となっています。初期にデザインされた獣のキャラクター、特にクレリック・ビーストは彼らのアイコンとなっています。これは、クレリックが最も恐ろしい獣であるという考えと結びついています。(インタビューより)


ここで「私たちが皆持っている人間性」と「人ならぬ神秘」とは相容れない概念ではないかと思われるかもしれない


だがここでの彼の論旨は「二つの衝動の間の葛藤を概念として表現したものが恐ろしい獣である」という本作の根幹部分に存在する観念(アイデア)のほうである


人間性という語句は、神秘と獣性の関係うまくぼかしわかりやすく説明するために持ち出されてきた用語であろう


作品内において「二つの衝動の間の葛藤が獣化を引き起こす」の二つの衝動に当てはまるのは「神秘と獣性」である(知的探究心と暴力衝動


獣性値の高い装備を着ることで狩人は獣化しやすくなるが、啓蒙を高めることで獣性値は抑えられるということは、すなわち神秘は獣化に対する枷として機能していることになる


さらにいえば、聖職者が最も恐ろしい獣になるのは、医療教会がゲーム内において最も神秘の取り扱いに長けた組織だからであろう


高い獣性を抑えるためには高い神秘が必要なのである。また逆に高い神秘さえ獲得すれば獣化しにくくなる


例えば狩人が獣性値の高い装備を着ていて、啓蒙取引などで啓蒙を失った場合、獣性ゲージが表示されて「一時的獣化」の状態に移行する


この過程は、枷が壊れることでその反動が現われるとする説明そのものである


啓蒙の値が高ければ、強い獣化衝動に抗うことが可能なのである


作中で啓蒙の値が高いと考えられる聖職者枷が外れることにより恐ろしい獣になるのは、このためである




聖血

ちなみに、ヤーナムの血の医療に使われる血には「精霊の卵」が含まれている。このことはエミーリアの説教にも表現されている


聖血を得よ

祝福を望み、よく祈るのなら

拝領は与えられん



ここに言われる祝福とは精霊に寄生されることである


夜空の瞳

精霊に祝福された軟らかな瞳


眼球の内部に精霊(軟体生物)の姿が見える


聖血血の医療の根源にある。それはつまり精霊の卵を含む血こそがヤーナムの血の医療の根源なのである


神秘に獣性を抑制する効果があると気づいた医療教会は、獣の病を撲滅するために精霊の卵を含む血をヤーナムの民に摂取させたのである


またこの聖血に獣性の虫が含まれていることも、エミーリアの説教に言われている


聖血を得よ

だが、人々は注意せよ

君たちは弱く、また幼い

冒涜の獣は蜜を囁き、深みから誘うだろう


聖血には冒涜の獣(獣性)も潜んでいるのである


獣が「蜜」を囁くのは、その本性が「虫」だからであろう。連想ゲームをするまでもなく、現実においても虫と蜜は深い関係にある(例えば受粉樹液に集う昆虫たち)




獣化

興味深いことに鎮静剤は「獣性ゲージ」も減少させる


この際の作用機序は、血に飢えて活発化した「」に人血の濃縮したものを投与したことで、虫の求血衝動が抑えられ獣化一時的に治まったものと考えられる


ブラッドボーンの舞台の大本にはゴシックホラークトゥルフホラーがある。また宮崎英高氏は吸血鬼ドラキュラの影響を口にしている


啓蒙と獣性はそれぞれ啓蒙がクトゥルフホラー獣性がゴシックホラーに属するものであり、であるのならば「獣性」が吸血鬼のように「血」を求めるのは当然のことである


これは獣の病に悩まされるヤーナムの民の飲血嗜好からもうかがえる


匂いたつ血の酒

投げつけると濃厚な匂いを放つ、熟成した血の酒

それは血に飢えた獣を強く惹きつける


輸血液

故にヤーナムの民の多くは、血の常習者である


つまり獣は血を好むのであり、その嗜好は獣の根源たる「虫」から来るのである


血に飢えた虫たちが血を得るために宿主を操って他者の血を奪おうと暴走する。これが人が獣化するメカニズムである


しかしながら獣化が軽度であれば、濃厚な人血の投与により虫は一時的に鎮静せられるのである




啓蒙と獣性

さてようやく本題に入る


啓蒙と獣性の関係性が啓蒙/獣性システムとしてゲーム内に落とし込まれていることは言うまでもない


啓蒙が高まれば獣性が下がり、逆に啓蒙が下がることで獣性が上がる


しかしながらこの関係性は対等なものではない。獣性値がいくら上がろうとも啓蒙の値が下がることはないからである


これは精霊と虫の力の優劣というよりも、人体における寄生部位の違いから発生するものである


大聖堂のローレンスの頭蓋のみが祀られたように、狂人の智慧のグラフィックが頭蓋骨であるように、またDLCにおいて苗床になったのが「頭の患者」であったように、精霊は人の脳に宿るのである(または脳液)



脳液

そして脳液とは、頭の中で瞳になろうとする

その最初の蠢きであるという



脳液を経て脳に寄生した精霊神秘の智慧を人の脳に注ぎ込む。より細かく言えば精霊の卵が孵化すると同時に人の脳に神秘が流れ込み、人は啓蒙を得る


このとき重要なのは精霊が寄生するのが脳(脳液)であるということである


脳は精神の座であり、人の意志決定を左右する器官であるが、悪夢の世界において「遺志(=意志)」とは、狩人を存在させる創造(存在)のエネルギーである


青い秘薬

それは脳を麻痺させる、精神麻酔の類いである


だが狩人は、遺志により意識を保ち、その副作用だけを利用する

すなわち、動きを止め、己が存在そのものを薄れさせるのだ


※青い秘薬のテキストから分かるように、遺志狩人の意志に制御されている。これに対し「○○の死血」の遺志死血に宿っており持ち主から切り離された遺志である(それゆえ第三者が獲得することができる)


つまり精霊は脳に宿ることにより、悪夢の世界における創造のエネルギー「遺志」を掌握しているのである


一方の虫が寄生するのは主に血液である。血液は脳にも流れているが、血液と脳液という棲む場所の違いにより完全な衝突にはいたらない(脳液は脳脊髄液と解釈した)


精霊に影響を受けた遺志により獣化は抑制される一方で、肉体と血液のみを掌握している「虫」精霊を抑制する力はない


宇宙的に見れば双方は対等に近い間柄であろうが、こと人体というフィールドにおいては、脳を掌握する精霊の優位は揺るがないのである


ただしその力が弱まれば、つまり啓蒙(神秘)が減少すれば遺志の力も減少し、代わりに獣性の力が増大するのである




一方で獣性がいくら高まろうとも啓蒙が下がることはない。これは体内でいくら獣血の虫が増えようとも、脳と遺志を掌握している精霊には影響を及ぼせないからである


まとめると、啓蒙と獣性が対等でないのは、啓蒙をもたらす精霊は脳液(脳)に宿ることで遺志を掌握しているが、獣性をもたらす血液(肉体)に宿るにすぎないからである



旧市街

啓蒙と獣性の複雑な関係性ゲーム内の出来事として描いたのが「旧市街の惨劇」である


発端である灰血病、その治療薬である白い丸薬、そして灰血病を引き金として蔓延してしまったという獣の病


これらの根っこの部分に存在するのが、精霊と虫なのである


灰血病に関する詳細は前回の考察(「考察41 灰血病」)参照のこと



蛇足

冒頭にも書いたが啓蒙と獣性の影響はゲームの広範に及ぶので、簡潔に説明するだけでも骨が折れる

考察に関しては、虫が精霊を刺激し精霊が発狂する、という部分はそれなりに満足しているが、虫の声が精霊を刺激するという部分にはあまり納得がいっていない

しかし、上でも書いたが邪眼と瀉血の槌L2、瞳の苗床のつかみ攻撃、星の子らの噛みつきに共通する要因がなくてはならない(それらは発狂ゲージを貯めるので)

その共通要因として「特定の周波数」(要するに音)以外に思い浮かばなかった

とりあえずなんとかまとまったものの、修正されるかもしれない