2020年8月27日木曜日

Bloodborne 考察まとめ2 聖血 追記:二つの聖血

青ざめた血

前回は「青ざめた血」について考察した

簡単にまとめると、青ざめた血とは儀式を暴いた際に現われる青ざめた血の空の色であり、月の魔物の別名であり、上位者の赤子を産むことの出来る者たちのであり、幼年期のはじまりENDにおいて狩人が到達する「青ざめた血」の流れる上位者のことでもある

その際に「青ざめた血」の理想的モデルとして医療教会に崇拝されたのが「聖血」であるとし、その聖血を女王ヤーナムの血と仮定したのだが、なぜ聖血が女王ヤーナムの血でなくてはならないのかは省略した

これは「まとめ」が冗長になることと、「青ざめた血」が狩人の物語に直接関与するものであるのに対し、「聖血」が物語のバックグラウンドに置かれているから、等々の理由があった(簡単に言うと長くなる)

そこで今回は書き残していた「聖血」そのものについて考察してみたい


古い血

聖血という語が示す概念は1つだけではない。この語にはいくつかの意味が重ねられている。また事実その血は「相反するものの結合」した複合物質である

そのうち古い血は聖血が示すものの1つである。というのも、エミーリアの説教において語られる「聖血」は英語版では「old blood」と訳されているからである


聖血を得よ
Seek the old blood.(教区長エミーリア)

つまり偽ヨセフカの「今度は、古い血を試すつもり」というセリフは「今度は、聖血を試すつもり」の意である

であるのならば、偽ヨセフカの治療によって「星界からの使者」になった患者は、「聖血(古い血)」以外の血(あるいは治療)によって変化したことになる

なぜならば、「今度は、古い血を試すつもり」のセリフが聞けるのは、何らかの治療により患者を星界からの使者にしたのことだからである

偽ヨセフカはまず「聖血」ではない他の治療を患者にほどこし、そのために患者は星界からの使者となったが、それに飽き足らず「今度は」聖血を使おうとしているのである

※偽ヨセフカの最初の治療については最下部「二つの聖血(追記)」で考察している


上位者の血

さて、古い血というと「古い上位者の死血」が連想される。しかし英語版のテキストには「Blood Echoes of an Old Great One.」とあり、上位者の「古い血」ではなく、「古い上位者」の血のことである

上位者として古いのであって、その血が古いとは書かれていないのである

骨炭装備にある「最古の番人」については、「その姿と魂を業火に焼かれ灰として永き生を得た」とあり、彼女たちに「」はない

また単に上位者の血古い血と呼んだのだとすると、まずロマ星界からの使者(大)エーブリエタース月の魔物ゴースは古くはなく、「古い」と形容する理由がない

またメルゴーメルゴーの乳母はメンシス学派がはじめて邂逅を果たしたのであり、医療教会の聖血彼らの血とすることは時系列的に不可能である。そのうえメルゴーには姿がなく血を持っていない」可能性すら示唆されている

※後述するがメルゴーに関しては生い立ちが複雑なので、ここではあくまでも狩人が遭遇した「泣き声の上位者」としてのメルゴーを指す

残るはアメンドーズであるが、確かに大聖堂にはアメンドーズの像が立ち並び、医療教会との関係の深さがうかがえる

またカレル文字「月」に「呼ぶ者の声に応えることも多い」とされ、それを裏付けるようにアメンドーズは教会に張り付いている姿がよく見られる

また椅子に座ったメンシス学派のミイラの近くにもアメンドーズが見られ、彼らはミイラの声に応えるかのように狩人の進行を妨害してくる(ヤハグル等において)

と様々な点において聖血がアメンドーズの血であってもおかしくはない

だが一方で、確かにアメンドーズの像は大聖堂に建ち並んでいるのだが、主祭壇に祀られているわけではないこと、またヤーナム大聖堂において聖血を注いでいるのが「女性像」であることなどから、聖血をもたらす者ではない可能性が高い

アーモンドの木(アメンドーズ)とエーブリエータス的な特徴をもつ女神像

アメンドーズの考察において、女性像の背後にあるのがアーモンドの木であり、アメンドーズを象徴しているという仮説を提唱した。そこからもわかるように、アメンドーズは決して主役ではない

医療教会において主神となるのはやはり聖血を注ぐ女神像の方であろう

この女神像に関しては、エーブリエタースの特徴も見られる(触手やローブ)。しかしながら聖歌隊によってはじめて見(まみ)えたエーブリエタースが医療教会の初期からの主神であるとは考えられず、したがってローレンスに聖血をもたらした者ではない可能性が高い(この点については、二つの聖血(追記)で述べている)

またエーブリエタースと見(まみ)えた後に女神像が作られたとするのも不可能である。なぜならばDLC狩人の悪夢において、この女神像は手術祭壇の下に隠されているが、手術祭壇があるのはルドウイークの後である

DLCは進むにつれて時間を遡(さかのぼ)っていく趣向が取り入れられている。つまりは医療教会最初の狩人ルドウイークの前にはすでにあの女神像があったと考えられるからである

加えて聖歌隊の誕生大聖堂の建設後かなり経ってからである

孤児院の鍵
大聖堂の膝元にあった孤児院は、かつて学習と実験の舞台となり
幼い孤児たちは、やがて医療教会の密かな頭脳となった

教会を二分する上位会派、「聖歌隊」の誕生である

他にエーブリエタースの先触れによりその一部が召喚され聖血をもたらした、ということも考えられるのだが、そもそも聖血による血の救い地下遺跡から持ち帰られた聖体が端緒である

かつてビルゲンワースに学んだ何名かが、その墓地からある聖体を持ちかえり
そして医療教会と、血の救いが生まれたのです(血族狩りアルフレート)
何らかの触媒によって召喚されたのではなく、聖体は聖体として物理的に持ちかえられているのである

まとめると、墓地から持ち帰られた聖体が医療教会とその血の救いにつながったのだから、聖体が持ち帰られたのは聖歌隊の誕生前のことである(聖歌隊の本体である医療教会創設より以前である)

つまり「遂に」聖歌隊が見えることのできた「エーブリエタース」を聖体とすることはこれもまた不可能なのである

イズの大聖杯
医療教会上位会派「聖歌隊」の礎となった、イズの大聖杯は
ビルゲンワース以来、はじめて地上に持ち出された大聖杯であり
遂に彼らを、エーブリエタースに見えさせたのだ


以上をまとめると、聖血(古い血)は上位者の血そのものではない

※個人的には女神像はエーブリエタースの像とするのが最も蓋然性が高いと思えるのだが、細部を詰めていくとどうしても矛盾が生じてしまう。この矛盾については最下部で「二つの聖血(追記)」として考察している


聖血

さてこれでようやく聖血について考えることができる。それは上位者の血でも古い番人の血でもない

それは墓地から持ち帰られた聖体によって生まれ、血の医療として神秘の力を持つと同時に、獣化の危険性も宿した血である

聖血を得よ
だが、人々は注意せよ
君たちは弱く、また幼い
冒涜の獣は蜜を囁き、深みから誘うだろう(教区長エミーリア)

聖血は血の医療の根源であり、ゆえにヤーナムを訪れた狩人にも輸血されたのである
※後述するが厳密には聖血そのものではなく、教会によって精製された聖血と成分が近しい血である

まさにヤーナムの血の医療、この特別な血液だけが
ずっと君を苦しめた、その病を癒やすのだから(血の医療者未使用セリフ)

よろしい。これで誓約は完了だ
それでは、輸血をはじめようか…なあに、なにも心配することはない
何があっても…悪い夢のようなものさね…(血の医療者)

狩人が見る「血の獣が炎によって撃退される光景」は、神秘が血を撃退したことを意味しているのである。、すなわち獣性、転じて獣を狩る者は、獣の蜜を跳ね返すことの出来る神秘の者でなくてはならないのである

血の獣が炎によって撃退されるシーン

これはまさしく試練である。血の試練を受けることで獣性に呑みこまれるか、あるいは獣性に打ち勝つ者であるかを判定されるのである

そして獣性に打ち勝ち、試練に合格した者のみが「狩人」となれるのである

ならば聖血には神秘とともに獣性も含まれていなければならない。なぜならば獣の病は人類全般の病気ではなく、ヤーナムの風土病であり、よそ者の主人公狩人が試練を受けるには、神秘だけでなく獣性も取りこむ必要があるからである

神秘と獣性の両方の属性を含んだ血、すなわちそれは「青ざめた血」のことである(前回の考察参照のこと)

そして青ざめた血を持つ者であり、かつ墓地におり、また聖体をもたらすことのできる存在が一人だけいる

トゥメルの女王、ヤーナムである


聖体

トゥメル系ダンジョンには「女王殺し」と呼ばれる古狩人が登場する
事実彼は女王を殺したのであろう。そして彼はプレイヤーが女王ヤーナムを倒したときと同じものを手に入れたのである

ヤーナムの石である

これがビルゲンワースに持ちかえられた聖体であり、古い血や聖血の源なのである

ヤーナムの石
トゥメルの女王、ヤーナムの残した聖遺物

女王の滅びた今、そのおぞましい意識は眠っている
だが、それはただ眠っているだけにすぎない…

テキストからは眠っている意識ヤーナムのものなのか、あるいは産み落とされた何者のものなのか判然としない

女王の滅びた今」とあることから後者のように思えるが、英語版では「彼女の恐ろしい意識」とあることから女王自身の意識のようにも読み取れる

Yharnam Stone
The Queen lies dead, but her horrific consciousness is only asleep, and stirs in unsetting motions.

また没イベントの一つに、このヤーナムの石がゴースの遺子として扱われるものがある(詳細は→Bloodborne 没データ「ヤーナムの石」)。加えてグラフィック的には子宮内の胎児のようにも見える



事実はどちらか? 

どちらでもありどちらでもない

ヤーナムの石は受肉しそこねたメルゴーの器であり、今そこに宿っているのは女王ヤーナムの意識なのである

メルゴーはおよそ尋常な生まれ方はしなかった。ゲーム上で彼は泣き声としてしか存在せず、その肉体はいっさい表示されない

なぜならばメルゴーは器(ヤーナムの石)に宿る前に「奪われた」からである(おそらく乳母によって)

残されたヤーナムの石は宿るべく意識を持たず、女王ヤーナムは生まれることのない胎児を身籠もり続けていたのである

やがて女王は女王殺しに殺され、その胎児(ヤーナムの石)はヤーナムの女王の意識を宿したまま奪われたのである

女王の意識はビルゲンワースが悪夢に取りこまれる過程で石から離れ、意識体としてさまようことになる。狩人が出会う女王ヤーナムは彼女の意識(遺志)である

さて、胎児に流れていたのは胎盤を通じて供給されるヤーナムの血である

それは「青ざめた血」であり、「地下遺跡を築いた古い種族」の王の血でもあった

トゥメルの汎聖杯
なおトゥメルとは、地下遺跡を築いた古い種族の名であり
神秘の知恵を持った人ならぬ人々であったと言われている

その神秘の知恵を持った古い種族であり、またその血には「劇毒」が含まれており、その劇毒の根源は「獣血の主」である

つまるところ女王ヤーナムの血は、神秘と獣性を統合した「青ざめた血」なのである


3本目のへその緒

ヤーナムの石が聖体であることで、メンシス学派がメルゴーの3本目のへその緒を入手した経緯が判明する

ヤーナムの石はメルゴーの器として使われるはずであった。しかしメルゴーは宿らず姿無きまま乳母に奪われたのである

残ったのは胎児(物理)である

しかしそれは上位者の赤子の器である
そして上位者の赤子ばかりが持つとされるモノがある

3本目のへその緒である

ミコラーシュヤーナムの石から3本目のへその緒を取り出し、奪ったのである


前回の「青ざめた血」や今回の「聖血」の成り行きをまとめた図が↓である

暫定的な図である


処刑隊医療教会のカテゴリーに入っているのは、アデーラやルドウイークイベントにおいて、「処刑隊」の装束が「教会装束」と認識されるからである。またアイテム倉庫に入った際のカテゴリー分けも「教会装束」に分類される

※また処刑隊装束は後の教会装束の基礎となった、とあることから処刑隊から直接に聖歌隊やメンシス学派につなげるべきかとも考えたのだが、枝分かれの位置によってそのあたりは表現した

聖歌隊とエーブリエタースについてはやや省略した部分がある。そのうちまとめようと思う



血の組成

その血に特別な効果を有する者たちがいる

娼婦アリアンナと血の聖女アデーラならびに血の聖女アデラインである

アリアンナの血
聖堂街の娼婦アリアンナの「施しの血」
彼女の血は甘く、HP回復に加え
一定時間スタミナの回復速度を高める

古い医療教会の人間であれば、あるいは気づくだろうか
それは、かつて教会の禁忌とされた血に近しいものだ

アデーラの血
医療教会の尼僧アデーラの「施しの血」
HP回復に加え、一定時間、さらにHPを回復し続ける

教会の尼僧たちは、優れた血を宿すべく選ばれ
調整された「血の聖女」である
その施しは、医療教会と拝領の価値の象徴なのだ

アデラインの血
実験棟の患者、アデラインの「施しの血」
HP回復に加え、一定時間、さらにHPを回復し続ける

アデラインは元々「血の聖女」であり
優れた血を宿すべく、教会の調整が施されている
それは1つの、有意なケースであったのだろう

またヤーナムでは輸血液にもHPを回復する力がある

ヨセフカの輸血液
ヨセフカの診療所、その女医に渡された輸血液
精製されたそれは感覚効果が高く、より大きなHPを回復する

精製の時間と手間からは、一般的なものではない
恐らくは、女医の自製によるものだろう

輸血液
血の医療で使用される特別な血液。HPを回復する

ヤーナム独特の血の医療を受けたものは
以後、同様の輸血により生きる力、その感覚を得る

故にヤーナムの民の多くは、血の常習者である

このうちで例外的な効果を有するのは「娼婦アリアンナの血」である
その血がHPを回復することは同じだが、スタミナの回復速度を高める、という効果だけは他の血には見られない特別なものである

血の聖女の血ならびに輸血液は医療教会の教義に則った「拝領」の系譜にある。一方で娼婦アリアンナの血はその医療教会が禁忌とした血に近しいものである

両者の差異は、スタミナの回復速度を高める効果があるか否か、という点に単純化できる

スタミナつまり持久力に関してはそのマークが緑色の水滴型であることから、「苗床化」による身体能力の増強、とかつて考察したことがある(「考察35 星見時計」




しかし娼婦アリアンナは苗床化しているというよりも、その対極に位置する血族である

なぜ虫を宿すアリアンナの血が「苗床化」すなわち神秘の持つスタミナへの関与効果を持つのかについては、彼女の出自に理由がある

しかしまずは「血の聖女」から順を追って説明していこう


血の聖女

端的にいえば、血の聖女の調整された血には「虫」がいない。より厳密に言えば、血の聖女の血では「虫」が孵ることができない

なぜならば、その血は聖血と近しい組成になるように調整された血であり、それはつまり「青ざめた血」に近づけた血だからである

神秘を血に混ぜることで「青ざめた血」に近づけていく。それが教会が施したという調整である

しかしながら、その人工的な「青ざめた血」は薄く、本物の「青ざめた血」にはなりえなかった。というのも教会が使った神秘とは、苗床から得られる「白い血」だったからである(これが灰血病の病原でもある)

しかし神秘の血は対立する「虫」が孵化するのを抑える効果はあった。それゆえに血を濃くすることができ、それはつまり高い獣性を秘めることが可能となったのである

獣性人を獣にすると同時に、人の肉体を頑強にし人ならざる力をもたらす

カレル文字「獣の抱擁」によれば、医療教会はその力に目をつけ制御する方法を探っていた

「獣の抱擁」
獣の病を制御する、そのために繰り返された実験の末
優しげな「抱擁」は見出された

試み自体は失敗し、今や「抱擁」は厳重な禁字の1つであるが
その知見は確かに、医療教会の礎になっている

「苗床」によって得られた「白い血」と、「獣の抱擁」によって得られた知見により、高い獣性を秘めながらも獣化を抑制することのできる血をもつ者たちが生まれたのである

それが血の聖女たちである

ゆえにその血は「獣性」に由来するHP回復(それはつまり生命力増強効果をもち、しかし急激な獣化は起こらない(虫の抑制)、という性質を持つのである

※狩人が血に酔う、というのは血に含まれる獣性に酔うことである


娼婦アリアンナの血

一方で娼婦アリアンナの血は「穢れ」ている。それはつまり虫によって穢れているのである。しかし女王ヤーナムがそうであったように、トゥメル人は虫の本来の宿主である。それゆえにトゥメルの血をひくカインハースト民も虫に対するある種の親和性があったのである(共生できる)

要するにカインハーストの血族天然の血の聖女なのである

人工天然血の聖女の差は効果にはっきりとあらわれ、それがスタミナの回復速度を高める、というものであることは上述した

人工の血の聖女は「白い血」と「赤い血」により調整されている
一方で天然の血の聖女は生まれながらに「青い血」と「赤い血」の混合血液を持っている

つまり「青ざめた血」である

しかしカインハーストの青ざめた血代を経ることで限りなく薄まっている。しかし薄まっているからといって、その血に効力がないわけではない

それがつまり「獣性(赤い血)」による生命力増強と、「神秘(青い血)」によるスタミナの回復速度上昇である

スタミナのマークが緑色の水滴型をしているのは先に述べた。これは苗床に流れる葉緑素の色であり、肉体が苗床化することで耐久性が増強することから、持久力が増強するのである

一見、緑色の水滴青い血とはなんの関係もなさそうに見える。だが、緑色の血を緑色たらしめるものは、結局のところ神秘である

神秘による変異はすなわち「左回りの変態」であり、スタミナを高める効果がある

「左回りの変態」
左回りのそれは、スタミナを高める効果がある

反対に「右回りの変態」HPを高める効果がある、つまり獣性による変異である

「右回りの変態」
右回りのそれは、HPを高める効果がある

まとめると、血の聖女の血がHP回復の持続効果を持つのは、白い血により獣性を押さえ込むことで高い獣性を秘めることができているからである

逆にアリアンナの血HP回復スタミナの回復速度上昇効果を持つのは、彼女の体に薄められた「青ざめた血」が流れており、その獣性によりHPが、神秘によりスタミナの回復速度が上昇するからである


白い血

ヤーナム人の血には「神秘」が含まれていなかった。それゆえに「神秘」を取り込もうと人工的な神秘「白い血」を聖女に接種させることで、その血を「青ざめた血」に近づけさせようとしたのである

しかし苗床の副産物に過ぎない白い血は、わずかながら神秘を含むほか、「虫」を抑制する効果しかなかったのである

そのうえ灰血病という獣の病の「引き金」にすらなったのである。なぜならば枷(かせ)が強ければ強いほど、それが外れたときに恐ろしい獣になるからである

変身したいという衝動を固定している束縛が強ければ強いほど、その束縛が最終的に壊れたときの反動は大きくなります。(インタビューより)

ヤーナムの風土病「獣の病」を根絶しようと、白い血は医療教会によって旧市街に流されたのである(詳細は海外のブラッドボーンコミック参照のこと)

それは一定の効果はあった。だが、そのわずかな抑制効果を持っていた白い血の反動で人々は変異しやすくなり、ついには獣化していったのである

だからこそ直接的な原因ではなく「引き金」と呼ばれるのである

白い丸薬
かつて旧市街を蝕んだ奇怪な病、灰血病の治療薬

もっとも、その効果はごく一時的なものにすぎず
灰血病は、後の悲劇、獣の病蔓延の引き金になってしまった

※白い血から精製される白い丸薬が解毒効果を持つのは、毒を発揮する虫、つまり獣性を神秘が抑え込むからである(神秘と獣性は対立的)



獣血

一方で、カインハースト民には先祖から受け継いだ薄まった「青ざめた血」が流れている。そこへ女王ヤーナムから「穢れ」がもたらされたのである

穢れとはヤーナムの血に含まれていたであり、代を経ることで弱まっていたとは違う、太古の強力な獣性を秘める獣血の主であった

本来は神秘と獣性の双方を統合しなければ完全な「青ざめた血」にならず、つまり特別な赤子を抱くことはできない。だが、血族の長アンナリーゼが求めたのは獣血を濃縮することであった

彼女が結局のところ血の赤子を抱けなかったのは、彼女の方法に問題があったからである。もしくは彼女は特別な赤子など欲しくなく、獣血を濃縮した果てに得られる「血の結晶」すなわち血の赤子のみを求めたのであろう(それが虫の遺志ならば)


聖血

以上が聖血にまつわる大まかな考察である

簡潔にまとめるのならば、聖血には神秘と獣性という2つの属性が含まれている医療教会はその2つを制御しようとして失敗。しかし副産物として苗床技術と血の聖女が誕生したのである

聖血神秘を含む血液であるがゆえに、風土病である獣の病を抑制する効果が確かにあった。しかし抑制はそれが外れたときに大きな力となって跳ね返ってくる。つまり白い血による治療がかえって獣の病を蔓延させてしまったのである

一方カインハーストにもたらされた「穢れ」虫と共に生きる一族を誕生(復興?)させた。彼らはトゥメルの血を引く者たちであったがゆえに「虫」を受け入れる体質を持っていたのである

その一族(血族)の長は「穢れ」を濃縮させることで「血の赤子」、すなわち「虫の赤子」を産もうとしている。だが、それは作中では達成されない

なぜならば特別な赤子を産めるのは、かつての女王ヤーナムがそうであったように、神秘と獣性を統合した血をもつ者のみだからである

だが、ヤーナムが産むはずであったメルゴーは器には宿らず、形なきまま奪われた。そして彼女は女王殺しに殺されるまでその赤子を宿し続け、殺されてからその意識はその器、ヤーナムの石に宿ったのである

奪われた赤子のプロットはヤーナム→ゴースと繰り返されている

ビルゲンワースに持ち帰られた聖体「ヤーナムの石」から「古い血」が採取され、それは「血の発見」となり進化の夢をもたらした

聖血に含まれれる神秘は「左回りの変態」として、また獣性は「右回りの変態」として人を変異させ、その進化の果てに「苗床」と「獣」が生まれたのである

神秘には獣性を抑える効果があり、また獣性にも神秘を抑える効果があった(啓蒙と獣性の関係)

その性質を見込んだローレンス血の医療によりヤーナムの風土病である獣の病を根絶しようとしたのである。神秘による獣性の抑制、また獣性を制御することを目指した実験は失敗に終わり、しかし苗床血の聖女という副産物をもたらしたのである

苗床から得られた低濃度の神秘「白い血」は医療教会によって旧市街の下水に流されたが(このあたり海外のブラッドボーンコミックを参照)、それは当初は純粋に獣の病を根絶するための医療行為だった(神秘により獣性を抑制しようとした)

だが、抑制(束縛)は解かれたときに強い反動となって人を襲う

低濃度の神秘「白い血」により血の白色化左回りの変態という人の変異が引き起こされ、その束縛が外れるやいなや、今度は右回りの変態、つまり獣化が引き起こされたのである

医療教会は強まった獣性をさらに強い薬、白い丸薬により抑えようとしたが、結局それは更なる獣性の暴走を招いたのであった

白い丸薬獣の病蔓延の引き金となり、人々は獣化し、旧市街は燃やされたのである

さて、ビルゲンワースにもたらされたヤーナムの石には上位者の赤子が持つとされる3本目のへその緒があった。それを手に入れたのがミコラーシュである。彼と彼のメンシス学派は3本目のへその緒によりメルゴーと邂逅、夢を現実にするために儀式を開き、赤い月を呼び寄せたのである


風土病「獣の病」について
聖血によってはじめて「獣の病」がもたらされたのではなく、ヤーナムには風土病としてもともと「獣の病」が存在していた。それはカインハーストの谷間に寄生虫が棲んでいることからも分かる

しかし聖血によってもたらされた「」は、いわゆる「獣血の主」であり、古代の根源的な力を秘めた「」である


二つの聖血(追記)

上の方で聖血をエーブリエタースの血とすると矛盾が生じると述べたが、この矛盾に関して新たな考察が得られたので追記する

これまで聖血=古い血としてきた。これは間違いではない。しかし聖血には古い血以外の新しい血も存在すると考えるのならば、聖血=エーブリエタースの血としても問題はない

おそらく偽ヨセフカは聖血と表される二種類の血を分別して「古い血」と呼んだものである。つまり、聖血には古い方と新しい方の二種類の血が存在しているのである

このうち偽ヨセフカが最初に使用し、患者を星界からの使者に変異させた血は「新しい血」である

新しい血にはエーブリエタースからの拝領、つまり彼女の神秘の血が含まれており、それを精製し血の医療に用いたのは「聖歌隊」であろう

古い血初期医療教会が主に用い、それはエミーリアの説教として伝えられている

一方で、古い血に飽き足らず聖歌隊は新たな聖血を精製したのである。それが新しい聖血である

この両者は成分的にはほぼ同じである。つまるところ「青ざめた血」であるが、エーブリエタースの血の方が鮮度が高く、また最近になって精製されたために「新しい血」と言われているのである。そして、それまで使われていた女王ヤーナム由来の聖血は「古い血」と呼ばれるようになったのである


蛇足

前回の青ざめた血と今回の聖血は1つの考察として挙げる予定であった。しかしあまりにも長すぎるのと、長すぎると修正するのが面倒くさくなるので分けて提示することにした

内容的には聖血→青ざめた血のほうが良かったかもしれない

聖歌隊とエーブリエタースや、ミコラーシュとメンシス学派など省略した部分も多い

また血の医療に使われる血と聖血との違いについて考察不足の印象がある
恐らく古い血(聖血)は、ウィレームやローレンス、また医療教会上層部にわずかに残っているのみであろう(ヨセフカも所持していた)

血の医療に使われる血は、本考察でも述べたように「青ざめた血」を目的として精製された模造品である。それは白い血と赤い血の混合物から精製されたものであり、量産品である

輸血液は濃い血液の赤というよりも、やや透明度が高い赤い液体である
これをさらに精製したのが「ヨセフカの輸血液」であり、その色は透明である

赤が象徴する獣性を抑制する力が強いほど、その液体には強い獣性が宿るのかもしれない

前回の「青ざめた血」と今回の「聖血」については動画にまとめる予定である

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