英雄アデルの物語
まず前提として、英雄アデルの物語はマルベーニが都合よく改ざん、脚色したものであるとする英雄アデルの物語を利用し、世界を自分の望む方向へ誘導しようとしたのである
実際のアデルの物語はDLCをプレイすればわかるように、バッドエンドである
また、ミノチによるアデル劇は、現実があまりに悲劇的すぎた結末だったために、少しでもそれを和らげようと真実を隠蔽したものであろう
金の瞳の一族
さて、この考察の結論から述べさせてもらうと、「レックスは金の瞳の一族の末裔である」
である
レックスは「どこにでもいる少年」ではなかったのか? という疑問を抱かれるかもしれないが、アルストにおいては「金の瞳をもつ人間」はどこにでもいる程度に多いのである。要するに程度問題になってくる。
例えば日本において「どこにでもいる少年」と言えば、黒髪に黒い瞳の少年を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、これが金髪碧眼の多い国、例えばドイツだったら事情が異なってくる。かの国においては「黒髪黒瞳の少年」は「どこにでもいる少年」ではない
つまり、周囲の環境によって「どこにでもいる」の基準が変わってしまうのだ
そしてアルストでは「金色の瞳をもつ人間」は「どこにでもいる」程度に「多い」のである
(ルクスリア王、マルベーニ、マルベーニの母親、レックス、ラウラ、アデル等、珍しいとはいえないレベルに多い)
これら金色の瞳をもつ人間の共通点としては「ブレイドと親和性が高い」というのが挙げられるだろう
天の聖杯と同調した人間は例外なく(といっても3人だけだが)金色の瞳を持っている(マルベーニ、アデル、レックス)
ある意味で、ブレイドと強い絆を結ぶことの出来る「印」あるいは「烙印」のようなものなのである
ではこの「金色の瞳」はどこからきたのか?
まずイーラ人ではないのは、作中のセリフから明らかである(イーラ人は碧眼)
また、インヴィディア人でもグーラ人でも、スペルビア人でもない
となると残りは一つである。「ユーディキウム」である(シヤに関しては情報が少ないので割愛)
このユーディキウムは作中において、マンイーター技術の発展した国とされている
マンイーター技術とは人とブレイドを細胞レベルで融合させた存在であるが、裏を返せばこれはブレイドイーター技術でもある
「人とブレイドの細胞レベルでの融合」という点において、マンイーターもブレイドイーターもそう違いはないのだ
つまりユーディキウムにおいて、ブレイドイーターがすでに誕生していたとしても不思議ではない
人がブレイドを喰らう、おそらく喰われたブレイドは金色の瞳を持つブレイドだったはずだ
そうして人とブレイドの融合したブレイドイーターは、基体が人であるがゆえに、伴侶を得て子を作れただろう
生まれた子供は、ブレイドの血を四分の一受け継ぐクォーターであり、その完全優性遺伝により金色の瞳を発現したはずである
こうして誕生した金色の瞳をもつ一族は、祖先にブレイドがいるがためにブレイドとの高い親和性を発揮する一族となったのである
ここでもやはり「どこにでもいる少年」でなくなる気がするが、しかしながら「金色の瞳をもつ人間」は「どこにでもいる程度に多い」ので、やはり「どこにでもいる少年」と表現しても問題はないのである
やがて金の瞳の一族は世界中に広がっていった。血を受け継ぐ者は残らず金の瞳をも受け継ぐゆえに、その数はかなりの速度で増えていったと推測される。その時期はおそらく500年前の聖杯戦争のさらに遙か昔であろう(種族に関係なく子を成せたと思われる)
その血脈の果てに、どこにでもいる少年レックスが位置するのである
またレックスはイーラの血を引く少年でもある
エルピス霊洞がイーラ王家の霊廟であることが明かされるが、その扉が開く理由として、イーラの血を受け継いでいるとするのが、最もシンプルであろう(墓守を新たに登場させるのはオッカムの剃刀的にあまりよろしくない)
ここでも「どこにでもいる少年問題」が登場するが、イーラの血はリベラリタスの住人ほぼすべてが受け継いでいると思われるので、リベラリタスにおいてはやはりレックスは「どこにでもいる少年」なのである
またレックスはアデルの血を引く少年でもある
レックスという名がラテン語で「王」を示すように、本作は貴種流離譚の一種であると考えるのが妥当であろう。イーラ本家ではなく、アデルをして「王」とするのは、ルクスリア王国がアデルの末裔を名乗っている(偽称であるが)ためである。本来であれば正統な王は、レックスなのだ(アデルの妻が妊娠しているという作中の情報が何かの意味をもつのであれば、その血を受け継ぐのがレックスであるとするのがシンプルだと思われる)
ここでも「どこにでもいる少年問題」が登場するが、アデルの血は「何の力も持たない」ので、「どこにでもいる少年」の範疇を超えてはいないのである。また理屈上はレックスはルクスリアの正統な王位継承者であるが、実際はルクスリア自体アデルが関わっていないのでレックスとは無関係である。よって、「どこにでもいる少年」以外の何者でも無い
アデルが天の聖杯と同調できたのは「金の瞳」の力ゆえであり、アデル自身の力ではない。そして「金の瞳」をもつものは、アルストには「どこにでもいる」程度に多い
まとめると、レックスは、
1.金色の瞳の一族の末裔である(しかしながら金の瞳をもつ人間は「どこにでもいる」程度に多い)
2.イーラの血を引く(しかしながら、リベラリタスの住人はほぼすべてイーラの血を引いているため、リベラリタスならば「どこにでもいる」程度の希少性しかない
3.アデルの血を引く(しかしながら、アデルの血は何の力も権利も有さない。よって「どこにでもいる少年」以上の力は持っていない
結論として、金の瞳の一族の血、イーラの血、アデルの血を受け継ぎながら、レックスは「どこにでもいる少年」以上の存在ではないのである
アデルの行方
第三の剣とホムラを封印した後、アデルはどこへ行ったのかシンプルに考える+レックスがアデルの血を引いていると考えると、まずリベラリタスではない。レックスの両親はイーラの民族衣装を着ており、リベラリタスの風俗とは異なるし、その温暖な気候とはそぐわない。
また鎖国中のルクスリアではない。グーラは温暖であり、隠れ住む場所もないことから可能性は低い。皇帝に統治され治安もわりとよさそうなスペルビアでもない。
とすると、残るはインヴィディアである
なぜミノチがインヴィディアにいたのか、それはおそらくインヴィディアがマルベーニの目の届きにくい国だったからであろう。つまり身を隠すには最適の場所なのだ
ホムラを封印した後、アデルが隠遁するにふさわしい場所だと思われる
おそらくアデルはその際には妻子を伴っていたとであろうし、数少ないイーラの生き残りを引き連れてきたと考えてもおかしくはない
こうしてインヴィディアの辺境にアデルの村が隠れ里のように誕生したのである
ルクスリアと同じく、この村でもアデルの血筋は主家として続いていっただろう(ルクスリアと違いこっちは本物のアデルの末裔だが)
ところでミノチは一人の孤児を保護している。イオンである。このイオンもまた金の瞳を持つ人間である
ミノチがイオンをことさら大事にしているのは、イオンもまたアデルの血を引く可能性があるからだろう
500年も経つとアデル村とミノチの繋がりはほとんど消えかけていたと思われる。その折にアデル村は戦火に巻き込まれる。スペルビアとの小競り合いか、あるいはマルベーニの刺客か。
アデル村は壊滅し、アデル直系の血を引くレックスの両親は、イーラ王家にゆかりのあるリベラリタスを目指したのだろう
一方、アデルの血を引くが庶民であるイオンはそのまま孤児となり、ミノチに保護されたのだ(あるいはミノチはアデル村のことを覚えていて、だからこそ積極的に孤児を保護したのかもしれない)
およそ500年という時間は、人が歴史を忘れ、現実が神話になるのに充分な長さなのだろう
作中では史実と物語が同時に語られるので、英雄アデル物語や聖杯戦争の何が真実で何が嘘であるのかわからなくなってしまう
おそらくそれは作中の人物も同じことで、500年も経つといろいろ忘れたり、思い違いをしたりしているのだ(ということにしておく)
以上、ゼノブレイド2の考察終わり
蛇足
そもそもDLCは考察するつもりはなかったのだが、金色の瞳の謎がどうしても気になったので考えてみた次第であるレックスの出生については、最もシンプルでわかりやすい仮説を採ったが、私個人としてはレックスが特殊な血筋ゆえに活躍できた、とするのは本意ではない
しかしながら、特殊な血を受け継いでいないただの少年、とするにはエルピス霊洞の封印が解けたことやリベラリタス出身者として選ばれている時点で多少無理があるように思われる。よって様々な血を受け継ぎつつも、「どこにでもいる」程度の希少性しかもたない少年としてのレックスを想定してみたものである
ブレイドイーターが子を作れたという仮説に関しては、金の瞳の人間とブレイドとの特別な関係を鑑みると、そうなのではないかという妄想に近いものである。もともとブレイドとの絆を結びやすい金の瞳の種族がどこかにいた、という仮説のほうがよりシンプルであるが、ユーディキウムと絡めたかったのでブレイドイーター説を採用した次第である
極論すれば最もシンプルなのは、金の瞳に意味はなくレックスはただの少年である、とする説であろう
ただしこの場合、なぜレックスがアデルの紋章の封印を解けたのか、両親がイヤサキ村にやって来たのはなぜか、なぜありえない再同調が起きたのか、唐突に出てきたアデルの妻子の情報は何なのか、といった点について考えなくてはならず、かえって複雑になってしまう気がするのである
すべてを偶然とするのももちろん可能であるし充分に蓋然性が高いと思う
が、とりあえず自分は考察をそれほど深めようとは思わなかったので、とりあえず出てきた情報をすべて繋げてみた、という次第である
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