星砕き
英雄の偉業と語られることの多いラダーンの星砕き。しかし結果的に妹であるラニの運命をも封じている
兄妹のうち、陰謀の夜以前からラニとライカードが共闘関係にあったことは、冒涜の爪にある
冒涜の爪
陰謀の夜、法務官ライカードは
ラニから謝礼として片鱗を貰い受けた
いつか来る冒涜の時、黒き剣のマリケスに
運命の死たる黒獣に挑む切り札として
一方でラニ、ライカード兄妹とラダーンとの関係性についての情報は乏しい
火山館にラダーンの肖像画があることなどから、兄弟間の関係は良好だったと思われる
一方でラダーンに対するラニの心情は不明な点が多い。自らの運命を封じたのが兄の星砕きであることは、つい最近になってようやくイジーが気づくという無関心ぶりである
軍師イジーとしたことが、こんなことを見落としていたとは!
貴公、よく聞いてください。カーリア王家の運命は、星によって動きます
カーリア王家正統の王女たるラニ様の、運命もまた同じはずです
そして、将軍ラダーンは星砕きの英雄
かつて流れる星に立ち向かい、打ち砕いたとき、星の動きは封じられた…
であれば、将軍ラダーンが死するとき、星はまた動き出します
きっとラニ様の運命も(軍師イジー)
ラダーンはラニの運命を封じようとして星を砕いたわけではないし、ラニの方も兄が自分の運命を封じたことにすら気づいていなかった
ラダーンが星を砕いたのは、降る星からサリアを護るためとされている
星砕きの戦い
ラダーン、サリアの護りとなり
唯一人星に対し、それを砕く(剣の碑)
星砕きの伝承
デミゴッドで最も強いとされた英雄は
降る星に一人で挑み、これを砕き
以来、星の運命は封印されたという
※星の運命とカーリア王家の運命が繋がっていることに何故気づかないのか…
結果的にラダーンの星砕きはラニの運命を封じ、彼女の陰謀を停滞させてしまった
誰が降る星を落としたのか?
星砕きの伝承に「降る星」と形容されていることから、サリアに落とされようとしていたのはアステールであろう
※隕石全般を降る星と表現したとも考えられるが、単なる隕石の場合は「隕石」という語句が使われていることが多い
アステールには、降る星→降る星の獣→降る星の成獣→アステール(枯れ)→アステールという成長段階があると思われる。これらを総称してアステールと呼ぶ
アステールの存在が確認されているのは以下の場所である
- エインセル河本流:アステール(枯れ)
- 腐れ湖(月光祭壇の地下):暗黒の落とし子、アステール
- アルター高原(王都外郭の外側):降る星の獣
- 聖別雪原(イエロ・アニスの廃墟):暗黒の星々、アステール
- ケイリッド(サリア結晶坑道):降る星の獣
- ゲルミア火山頂上:降る星の成獣
このうち永遠の都を滅ぼした暗黒の落とし子については、大いなる意志の関与があったことが示唆されている
ノクス僧のフード(軽装)
大古、大いなる意志の怒りに触れ
地下深くに滅ぼされた、ノクスの民は
偽りの夜空を戴き、永遠に待っている
王を。星の世紀、夜の王を
暗黒の落とし子の追憶
暗黒の落とし子、アステールの追憶
遥か彼方、光の無い暗黒で生まれた星の異形
それはかつて、永遠の都を滅ぼし
彼らから空を奪った、悪意ある流星である
※大いなる意志の怒りに触れた永遠の都は地下に滅ぼされている。一方で永遠の都はアステールが滅ぼし、彼らから空を奪った(=地下に落とされた)という。このことから、「大いなる意志がアステールを永遠の都に送り込んで滅ぼした」というストーリーが考えられる
暗黒の落とし子ではない他のアステールの位置を調べると、興味深いことがわかる
それらはすべてデミゴッドたちの領地に生息しているのである
リエーニエ(エインセル河本流):ラニ:カーリア城館(やや遠い)
アルター高原(王都外郭の側):モーゴット:王都ローデイル
聖別雪原(イエロ・アニスの廃墟):ミケラとマレニア:ミケラの聖樹
ケイリッド(サリアの結晶坑道):ラダーン:赤獅子城
ゲルミア火山頂上:ライカード:火山館
まるでデミゴッド一人に対してアステール一体を送り込んだような振り分けかたである
だが、アステールを送り込まれていない(確認されていない)デミゴッドが一人いる。リムグレイブの接ぎ木のゴドリックである
そしてラダーン撃破時、解放された流星はこの唯一空白となっていたリムグレイブに墜落するのである
つまるところリムグレイブを合わせれば、現存するすべてのデミゴッドに対してアステールが送り込まれたことになる
※ややこしいがリムグレイブに大穴を開けた星はアステールではない。サリアとリムグレイブに落ちるはずだった降る星(アステール)はラダーンに砕かれたからである。その際に同一の軌道を飛翔していた星々(隕石)が封じられた
※サリアの結晶坑道にいる個体は、それが降る星の獣(幼体)であることから、その後に再び送り込まれた比較的若いアステールであろう。
ではアステールを送り込んだのは、永遠の都を怒りによって滅ぼしたという、大いなる意志なのだろうか
破砕戦争が膠着状態に陥ったことで大いなる意志はデミゴッドたちを見放している
マリカの子たるデミゴッドたちは、エルデンリングの破片を得
その力に歪み、狂い、破砕戦争を起こし…
王なき戦いの末に
大いなる意志に、見放された(オープニング)
完全に膠着状態に陥ったのは、ラダーンとマレニアの最後の戦いの後であるから、ラダーンが星を砕いたのはそれより以前ということになる
※「王なき戦いの末」を最後の戦いの後、膠着状態に陥った時期と解釈。「末」とは「ある期間の終わり」や「時代の終わり」を意味する
地図断片:ケイリッド
将軍ラダーンと、ミケラの刃、マレニア
その最後の戦いの地として知られるケイリッドは
大地すべてが、朱く腐敗に染まっている
つまり、降る星が狭間の地に降り注いだのは、大いなる意志がデミゴッドたちを見放す前のことなのである
当時、デミゴッドたちは大いなる意志の怒りに触れたわけでもなく、見放されていたわけでもなかった
ならば大いなる意志がアステールを送り込む理由は存在しない
星を落とすことができたのは誰か?
大いなる意志説
降る星の獣(アステール)を永遠の都に送り込んだ実績がある。ただし怒りに触れておらず、また見放してすらいない状況で、デミゴッドたちにアステールを送り込む理由はない
サリアの魔術師説
サリアの魔術師たちが「永遠の暗黒(魔術)」を復活させていたという可能性も考えられる
光の無い暗黒から生まれた星の異形がアステールである。永遠の暗黒(魔術)を使用したことで、星を引き寄せてしまったとも考えられる
暗黒の落とし子の追憶
遥か彼方、光の無い暗黒で生まれた星の異形
それはかつて、永遠の都を滅ぼし
彼らから空を奪った、悪意ある流星である
サリアの魔術師説に対する反論として、ゲーム内で永遠の暗黒を使用してもアステールは現われない、ということが挙げられる
※ゲーム的な理由か、それとも真価を発揮していないだけかもしれない
また、たんに永遠の暗黒からアステールを呼びだしてしまい滅亡したのであれば、大いなる意志の怒りは無関係ということになる(つまり大いなる意志の怒りに触れて地下深くに滅ぼされたという話に齟齬が生じる)
ラダゴン説
エルデンリングは流れる星を律するという。であるのならば、エルデンリングを宿す幻視の器ならば、星を降らせることも可能であろう
流れる星をすら律し
命の灯を高らかに輝かす
エルデンリング
おお エルデンリング(デビュートレーラー)
この条件に当てはまるのはマリカとラダゴンである。このうちマリカはデミゴッドを我が愛し子と呼び、神にも王にもなれると宣言しているので、各デミゴッドにアステールを送り込んで滅ぼす理由はない
デミゴッド、我が愛し子たちよ
お前たちはもう、何者にもなれる。王であれ、神であれ(マリカの言霊)
残るはラダゴンである
ラダゴンが星を落とす動機としては、半身であるマリカがすでに次代の神に望みを託そうとしていたこと(つまりラダゴン共々用済みになる)、ラダゴンの望まない神が誕生しそうだったことなどが挙げられる
おお、ラダゴンよ、黄金律の犬よ
お前はまだ、私ではない。まだ、神ではない
さあ、共に砕けようぞ!我が半身よ!(マリカの言霊)
つまりラダゴンは、共に砕けて死のうとする半身のマリカも、新たな神や王になろうとするデミゴッドたちも看過することができなかったのである
以上のように、大いなる意志、サリアの魔術師、マリカ、ラダゴンのうちアステールを送り込む手段と動機を持ち合わせていたのはラダゴンだけなのである
ラダゴン説
ラダゴンは新たな神や王になろうとするデミゴッドたちに対して、降る星を送り込んだ
だがそれだけではない。降る星をラダーンに砕かせることでラニの運命をも封じようとしている
これはラニが神人であり、また黄金に対する夜の律を掲げていたからであろう(黄金律に対する最大の敵となる)
結果的にラダーンは星を砕くことで星砕きの英雄となったが、同時に妹の運命も封じてしまった
誰が最も得をしたか?
ラニの運命を封じることに成功したラダゴンである
陰謀の裏にラダゴンあり
レアルカリア
ラダゴンの暗躍が最もあからさまなのは、リエーニエである
戦争の英雄として女王と結ばれ、彼女にラダーン、ライカード、ラニを生ませた後に、すべてを棄ててローデイルに戻っている
ラダゴンの目的は、黄金と月、金と銀を融合させることで完全たる神人を生みだすことであった
ラダゴンの肖像
赤髪のラダゴンは
カーリアのレナラの夫として魔術を修め
女王マリカの夫として祈祷を修めたという
英雄は、完全たるを目指したのだ
黄金と月の融合のためにラダゴンは魔術を修め、レナラに琥珀の卵を贈って神人を生みだすことに成功した。だが生まれたのは黄金律ではなく夜の律を掲げる神人であった
ラダゴンにとっては失敗に終わったこの試みは、しかし次なる成果をもたらした
黄金律原理主義の祈祷には信仰だけでなく、知力も必要である
ラダゴンの光輪
必要能力:知力31、信仰31
黄金律原理主義とは魔術と祈祷の融合、言い換えれば黄金の律と夜の律の融合である(ラダゴンからすると、黄金律による夜の律の吸収)
※黄金と月の融合はマリカの発案だった可能性がある。マリカの言霊を小黄金樹教会で聞いた際にジェスチャー「外なる律」を獲得できるからである
黄金律の探究を、ここに宣言する
あるべき正しさを知ることが、我らの信仰を、祝福を強くする
内なる黄金の律と外なる夜の律の融合により、ついに黄金律を継ぐ神人が誕生する。それがミケラとマレニアという果実である
※ただしミケラへの期待は後に打ち砕かれる(後述する)
ゲルミア火山
法を司るべき法務官ライカード。そのライカードは黄金律や法と正反対の背律と冒涜の罪を犯す
黄金律と法の番人であり、またラダゴン王の子であることを誇っていた彼がなぜ突然、黄金樹と敵対する蛇の側についたのか
ゲルミア騎士の兜
かつて、法務官ライカードに仕えた騎士たちの兜
赤羽根の兜飾りは、ラダゴン王の子たる象徴である
ゲルミア騎士の鎧(軽装)
今はもう、誰も掲げない紋章が描かれている
覇王の雄心が、下卑きった貪欲に堕した時
彼らは、仕えるべき主を失ったのだ
闘士の兜
蛇は、黄金樹の反逆者であるとされ
人々は、その傷つく様を喜んだ
ライカードの決意についてタニスは次のように語っている
黄金樹は褪せ人に祝福を与えた
だがそれは、導きの使命に対して、とても小さい
…故に、褪せ人は力を漁り争う。そうすることを求められる
かつてエルデンリングが砕けたとき、大ルーンの君主たちが求められたように
我が王は、それに憤った。分け与えられたものを漁りあう、そんな浅ましい生き方など、受け入れられぬと
黄金樹が、神が我らを愚弄するならば、背律の冒涜を犯してでも、尊厳の反旗を翻す
それが我が王、ライカードの決意であり、火山館の意志なのだ(火山館の主、タニス)
これによるとライカードが背律の冒涜を犯すことを決意したのは、エルデンリングが砕けた後、破砕戦争の現実を身をもって体験してからのことである
その動機は、分け与えられたものを漁り争うことを強制されることへの反発であり、そうした神の愚弄に対して反旗を翻し、尊厳を取り戻すためである
しかしながらエルデンリングが砕かれる以前、陰謀の夜の時点で彼はすでに黄金律への反意を明確にしている
冒涜の爪
陰謀の夜、法務官ライカードは
ラニから謝礼として片鱗を貰い受けた
いつか来る冒涜の時、黒き剣のマリケスに
運命の死たる黒獣に挑む切り札として
エルデンリングが砕かれる以前からライカードは黄金律に対して不信と疑念を抱いていた。そして破砕戦争を経験したことで、ついに黄金樹への反旗を公然のものとしたのである
そして彼は大蛇となった。永遠に生き、喰らい、成長し続けるために
冒涜の君主の追憶
永遠に生き、喰らい、成長し続ける
そのために、ライカードは大蛇となった
我は知る。冒涜の道の遠き険しさを
罪を厭って歩めるものか
ライカードの大ルーン
そしてライカードは、冒涜の蛇に喰らわせたのだ
己が身と共に、偉大なる大ルーンを
ライカードが大蛇となったのは、破砕戦争の初期であると考えられる。タニスの証言に加え、火山館攻略戦の頃にはまだ彼には仕える騎士たちがいたからである
ゲルミア火山は、黄金樹の大地、アルター高原の西にある
破砕戦争で最も凄惨な戦いの舞台となった場所だ(ギデオン)
火山館攻略戦
穢れた者たち、疫病、冒涜
名誉なく、終わりもない惨戦(剣の碑)
…ライカード、我が主よ
これが、この穢れた戦場が、お前の望む冒涜ならば
私はもう、付いてゆけぬ
誰も、お前には付いてゆかぬぞ…(ゲルミア火山の幻影)
ライカードを喰らったのは、ゲルミアの失われた信仰で崇拝されていた古い蛇神であろう
蛇神の曲刀
古い蛇神の象られた曲刀
ゲルミアの、失われた信仰の祭具
生贄を捧げるために使われたとされ
敵を倒したとき、HPが回復する
黄金律と法を最も尊ぶべき法務官が冒涜の罪を犯す。この裏には黄金樹への不信と疑念、そして神に愚弄されたことへの憤懣があったことは上述した
黄金樹に反旗を翻すに際しライカードが選んだのは、蛇と同化することであった
なぜ蛇かというと、それが黄金樹の反逆者を象徴すること、そして「永遠に生き、喰らい、成長しつづける」ためである
冒涜の君主の追憶
永遠に生き、喰らい、成長し続ける
そのために、ライカードは大蛇となった
なぜ黄金樹への不信と疑念が「永遠に生き、喰らい、成長し続けようとする」ことに繋がるのか
逆説的に言えば、「永遠に生き、喰らい、成長し続けようとする」動機の根源には、永遠ではなく、成長できない現実があったからであろう
※喰らうというのは、永遠性と成長を達成するための手段なので、目的としては永遠と成長になる
つまりライカードはある時点で、永遠の女王マリカのもたらした永遠性が不完全であることに気付いたのである(陰謀の夜の前のこと)
黄金律の不完全性に行き着いた者としてはライカードの他に、女王マリカ本人とラニ、金仮面卿がいる
またラダゴンも黄金律の不完全性を自認していた一人である
女王マリカについては、黄金律の不完全性に気づいたことが、ゴッドフレイの追放や、死のルーンを盗み出す、という不可解な言動に繋がったと考えられる
そして魔女ラニは陰謀の夜を利用することで、黄金ではない夜の律を打ち立てようとしていた
現在の黄金律よりも、その方がよいと考えていたからである(つまり現在の黄金律は完全ではない)
生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥か遠くにあればよい
確かに見ることも、感じることも、信じることも、触れることも
…すべて、できない方がよい(魔女ラニ)
また金仮面卿は黄金律から視座の揺らぎを削除することで完全に至ろうとした
完全律の修復ルーン
それは、黄金律を完全にせんとする
超越的視座のルーンである
現黄金律の不完全は、即ち視座の揺らぎであった
人のごとき、心持つ神など不要であり
律の瑕疵であったのだ
ラダゴン(マリカ)はリエーニエの夜の律を取り込むことで黄金律を完全なものにしようとした(その結果が神人ラニや黄金律原理主義である)
これと同じ思考のもとに為されたのが、ライカードによる冒涜である
彼は黄金樹の不完全性に気づき、それにより黄金律そのものに不信と疑念を抱いたのである
その不信と疑念は、デミゴッドたちの尊厳を奪う破砕戦争が勃発するに至って頂点に達し、彼に背律の冒涜を侵させる決意を抱かせたのである
ライカードと古い蛇の出会い
ライカードと古い蛇の出会いは偶然ではなく必然的なものと考えられる。それは最初から仕組まれた接触だった
仕組んだのはラダゴンであろう
というのも、外戚(表向き)となったライカードにゲルミア火山の領地を与えたのは、エルデ王であるラダゴンだからである
ライカードの大ルーン
ライカードは、レナラとラダゴンの子の一人である
彼らは、ラダゴンが女王マリカの王配となった時
外戚としてデミゴッドとなった
ラダゴンはゲルミア火山に、冒涜の罪を侵すのに都合の良い古い蛇がいることを認知していて、あえて法を司る法務官ライカードに領地として与えたのである
慈悲なき裁判官、罪人を苛烈に処するライカードに対し、ラダゴンが用意したのは、黄金樹に対する最大の罪、冒涜の罪を侵させることである
慈悲なき裁判官にして、責問吏たちの長。蛇のように忌み嫌われた男(ギデオン)
重力の力を修めたラダーンに降る星を対峙させたように、法務官ライカードには冒涜の罪を対峙させたのである
その者が絶対の自負をもっているものに対して最大の試練を送る、それがラダゴンのやり口なのである(重力の力に対する降る星、法に対する罪)
※重力の力とは重力を操る力である。重力の力に対する最大の試練は、落ちてくる星として表わされた
ラダーン
ラダゴンは冒涜の罪をライカードに唆した一方で、ラダーンにはエルデンリングが砕ける前から干渉し、みすぼらしい痩せ馬を与えた
星砕きの追憶
赤獅子の将軍は、重力の使い手でもあった
若き日、ラダーンはそれをサリアで修めた
みすぼらしい痩せ馬と、ずっと共にあるために
ラダゴン王の子たる象徴、赤獅子たるを誇るラダーンにとって、ラダゴンから与えられた痩せ馬は、ずっと共にあらねばならぬ運命の馬であった
赤獅子騎士の兜
将軍ラダーンと共に戦った騎士たちの兜
赤髪の兜飾りは、ラダゴン王の子たる象徴であり
自らが赤獅子たるを誇る、たてがみである
その痩せ馬はまた英雄ラダーンの憐憫をかき立てるような存在であった
つまるところ痩せ馬とは、ラダーンを弱体化させるためにラダゴンが与えた、枷だったのである
※ラダーンが重力を学んだことで枷は枷でなくなったが
ラニ
ラダゴンはラニに対しても、その力を削ぐ策謀を巡らせている
上述したように、ラダーンに降る星を砕かせることで、結果的にラニの運命をも封じたのである
星を律することすらできるエルデンリングを宿すラダゴンならば、星を封じることも可能だったのではないか、と思うかもしれない
降る星がサリアを襲った時期にもよるが、それを破砕戦争前と想定するのならば、マリカの妨害によりラダゴンは完全にはエルデンリングの力を掌握しきれていなかったと考えられる
また降る星がサリアを襲ったのがエルデンリングの破砕後であると想定すると、エルデンリングが砕けたことで星を律する力も限定的であったと考えられる
いずれの時期にしろ、すべての星をラダゴンが律することはできず、降る星を各デミゴッドたちの領地に降らせることがせいぜいだったと思われる
ラダゴンの目論見どおり、ラダーンの星砕きにより星が封じられてから再び運命が動き出すまでの長い期間、ラニは無為に過ごすこととなった
ミケラとマレニア
当初ラダゴンはミケラに最も大きな期待を寄せていたと考えられる
その期待は幼きミケラに祈祷を贈られるという結果に繋がった
三なる光輪
黄金律原理主義の祈祷のひとつ
それは、幼きミケラが
父ラダゴンに贈った祈祷である
ラダゴンもまたミケラに対して祈祷を贈りかえしている。だが、ミケラは黄金律原理主義を捨てた
ラダゴンの光輪
黄金律原理主義の祈祷のひとつ
父ラダゴンの、幼きミケラへの返礼
しかし、幼きミケラは原理主義を捨てた
それが、マレニアの宿痾に無力だったから
無垢なる黄金、そのはじまりである
ミケラは自らの聖樹に宿り、黄金律原理主義とは異なる無垢金の律を打ち立てようとしていた
聖樹を護るのはラダーンと同等の強さを誇るマレニアである
またラダゴン自身はエルデンリングの修復、もしくは黄金樹に囚われたマリカと同体であるため、黄金樹から動くことはできない
そこでラダゴンは一計を講じた。モーグを唆し、ミケラを誘拐させたのである
モーグは地の底で外なる神、真実の母に見えた時、呪われた血を愛するようになった
血の君主の追憶
それは、呪われた血に力を与える
外なる神との交信の祭具でもある
真実の母は、傷を望んでいるのだ
血授
地の底で、傷を望む真実の母に見えた時
モーグの呪われた血は、炎となった
そして彼は、生まれついた穢れを愛したのだ
真実の母が望んでいるのは「傷」である。ミケラでは無い。なぜモーグは真実の母が望む傷だけではなくミケラを求め、王朝の誇大妄想を抱くようになっていたのか
真実の母ではない、別の第三者による誘惑があったからであろう
ラダゴンはモーゴットにそうしたように(後述する)、モーグを唆(そそのか)すことでミケラの聖樹からミケラを誘拐させたのである
※最大の自負に対する最大の試練を送る原理:真実の母の力を得たモーグにとって最大の試練となるのは、永遠の赤子(ミケラ)を得ることである
そしてこのことが、破砕戦争最後の戦いとなるマレニアとラダーンの対決へと繋がる
ラダゴンの思惑どおりマレニアとラダーンは相討ちとなり、破砕戦争は完全な膠着状態に陥る
この状況はラダゴンにとって理想的なものであった。なぜならば誰も神になれないし、誰も王になれないからである
神であり、エルデの王であるラダゴンにとって、この状況が永遠に続くことが理想なのである
モーゴット
ラダゴンのもっとも忠実な駒となったのがモーゴットである。彼に対しては、忌み王という無意味な称号を与えることで自尊心をくすぐり、支配下に置くことに成功している
忌み王の追憶
モーゴットの呪剣
異様に変色した歪み刃の剣
忌み王、モーゴットの得物
彼は確かにローデイルの王であった。だが、その称号が無価値であることは、狭間における真の王が「エルデの王」と呼ばれることからも明確である
モーゴットの大ルーン
忌み王が、黄金の一族として産まれたこと
そして、確かにローデイルの王であったことを
ローデイルの王が「まともな王ではない」ことは、狭間の地の共通認識である
王なき戦いの末に
大いなる意志に、見放された(オープニング)
モーゴットはラダゴンに操られるがまま、破砕戦争において多くの英雄たちを狩った
英雄とは、王たる野心を抱く者たちだからである
忌み鬼のマント
破砕戦争において、数多の英雄を狩った忌み鬼は
黄金樹に挑み、王たる野心を抱く者たち
そのすべての悪夢である
黄金樹に挑み、王になろうとする者、その最大の敵はエルデの王ラダゴンである
エルデの獣
このようにラダゴンは破砕戦争が起きる遥か以前から、おそらく彼が誕生した直後から暗躍し、ある一つの目的を達成しようとしてきた
またその目的はラダゴンとして生じる以前、すなわちエルデの獣の段階からすでに目論まれていたものである
狭間に送られたエルデの獣はエルデンリングとなった。そして幻視の器に宿ることで世界を司る神となった
しかし、エルデンリングには「運命の死」が組み込まれていた
本来、神は永遠に死ぬことはない。だが狭間を支配する神であるにも関わらず、エルデの獣(エルデンリング)は死ぬ
神の遺剣
永遠に死ぬことのないはずの
神の遺体から生まれる剣
※ムービーでは神の遺剣はラダゴンの肉体が変化して生まれる。そして神の遺剣はエルデの追憶と交換できる。つまるところ両者は同一存在である
運命の死の存在は、自らが大いなる意志の眷獣に過ぎないという事実をエルデの獣に突きつけ続けるものであった
神であるのに上位存在に従属しなければならない。この状況に対してエルデの獣は憤懣を募らせていったのである
そこでエルデの獣は幻視の器を利用して、運命の死を取り除くことを求めた
エルデの獣は大いなる意志に反逆し、その支配から逃れたかったのである
※運命の死の封印により生じた様々な不測の事態により、マリカはエルデの獣に不信を抱き始め、多くの陰謀を画策した
神殺しの物語
支配者からの解放という思想は、女王マリカやラニにも共通する思想であり、また作中の最も大きなテーマでもある
支配者からの解放とは、言い換えれば神殺しの野望である
造物主たる神を殺すことで被造物は自由となる。これは様々な物語の主題として描かれてきたテーマである
例えばカレル・チャペックの『ロボット』(R.U.R.)
※カレル・チャペックはチェコの作家である。ブラッドボーンではチェコの名前が多く登場した。またDSシリーズで有名なハベルもチェコ名である
ミルトンの『失楽園』も神殺しの構造を持っている。神を殺そうと悪魔が神に反逆する話(失敗するが)
またフレイザーの『金枝篇』に描かれる「王殺し」も神殺しの系譜にある
『金枝篇』に記された王殺しとは、王を殺した者が次の王となる宗教儀礼のことである
DSシリーズやエルデンリングにおけるプレイヤーの物語は『金枝篇』に近い。ブラッドボーンは『ロボット』の影響も見受けられる(人形)
やや話が逸れたが、褪せ人や女王マリカ、ラニと同じようにエルデの獣も支配者からの解放、すなわち神殺しを目指したのである
狭間の地における支配者と被支配者の関係性は、大いなる意志を頂点として、褪せ人まで続く大いなる連鎖のようになっている
大なる意志→エルデの獣→女王マリカ、ラダゴン→デミゴッド→褪せ人
最低位にいる褪せ人がより上位にいる支配者(王)たちを殺すことで、自らが王となる。それがエルデンリングの物語であり、これは王殺しの物語、そして神殺しの物語である
それとは別にエルデの獣の視座から見ると、エルデの獣も同じように支配者からの解放を求めようとしていたことがわかる
つまるところエルデの獣は運命の死を取り除くことで、大いなる意志の支配から逃れ、永遠の神になりたかったのである
ラダゴン
ラダゴンとは、大いなる意志に逆らうエルデの獣の反逆心が幻視の器に宿ったものである
マリカによってエルデンリングが砕かれた後も、エルデの獣たるラダゴンは神と王の座に固執しようとした
そのためにラダゴンは、新たに神や王になりそうな者たちの動きを封じていったのである
その結果、破砕戦争は膠着状態に陥り、ラダゴンの思惑どおりとなった
それでもなお新たな神と王を求める大いなる意志は、褪せ人を呼び寄せる。しかしエルデの獣(ラダゴン)は褪せ人を拒絶する
拒絶している限り、エルデの獣(ラダゴン)は神であり王でいられるからである
そしてラダゴンは褪せ人にも誘惑を囁く
百智のギデオン
ラダゴンの囁きをその百耳で聞いたのがギデオンである
それは女王マリカの遺志としてギデオンに伝えられた
百智の兜
無数の目と耳が散りばめられた兜
百智卿、ギデオン=オーフニールの装束
知とは、自らの無知を知ることであり
知ることの終わりなきを知ることである
だが、女王マリカの遺志に触れた時
ギデオンは恐れてしまった
あるはずのない終わりを
知ることの終わりを恐れるギデオンに対し、マリカの遺志は知ることの終わりを予感させるものであった
ラダーンやライカードと同じ原理(重力に対する降る星、法に対する冒涜の罪、知に対する知の終わり。絶対の自負に対して最大の試練を送る)を巧みに刺激され、ギデオンは知ることの終わりに恐怖するようになる
褪せ人は神を殺せぬ、王とはなれぬ。神や王になってしまったら知ることの終わりが訪れる。だから達せられてはならぬのだ
マリカ(正体はラダゴン)は褪せ人が足掻き続けることを望んでいる。褪せ人がエルデの王になることは達せられるべきではない
…ああ、やはり君だったか
エルデンリングに見え、エルデの王になるのだな
…しかし、残念だ
その意志はよい、だが、達せられるべきではないのだよ
女王マリカは、私たちに望んでいるのだ
ずっと、足掻き続けることをね
…私は、識っているぞ
褪せ人は、王とはなれぬ。たとえ、君であっても
…人は、神を殺せぬのだ
ギデオンの言葉は、神と王で在り続けようとするラダゴンにとって最も都合の良い内容である
神殺しの主題
神殺しという主題はエルデンリングの物語の中心を貫いている
褪せ人は狭間の地の外から到来し、神的存在(デミゴッドなど)を殺しながら、徐々に世界の中心へと近づいていく
世界の中心にあるのは黄金樹であり、また永遠の女王マリカという神である
やがてマリカも、それより上位の神的存在に従属していたことが明らかになっていく
マリカより上位にいるのはエルデの獣であり、マリカとエルデの獣の暗闘がエルデンリングの破砕に繋がったことを知る
だがそのエルデの獣さえも大いなる意志の眷獣に過ぎない
エルデの獣に邂逅し、神を殺した褪せ人はそこで途方に暮れる
世界の外部から中心へと王や神的存在を殺しながら進んできた褪せ人は、中心に何もないことに気づくからである
物語の中心にいるはずの大いなる意志の不在。その欠落感を永遠に満たせぬまま、褪せ人はゲームを終える
これはソウルボーン(+SEKIRO)にも見られる「中空構造」である
物語と世界の中心をあえて中空にすることで、物語が永遠に終わらない円環的構造を生みだしているのである
※中空に至った褪せ人は再び最初の地点に戻って2周目を始める
またこの構造は世阿弥のいう「秘するが花」の効果を生じさせ、プレイヤーに対し、何か尋常で無いものを体験したという感覚を与えるのである
一心の龍殺しのが良かったです。エルデンリング発売当初にクリアして2周目始めないまま放置しました。いつかはと思っていましたが、Seedさんの考察さえ2−3周は読んだのにエルデンリングやってないです。考察さえあればDLCも買わずに済みました。
返信削除