2017年4月6日木曜日

ダークソウル3 DLC ASHES OF ARIANDEL, THE RINGED CITY解説

DLC1とDLC2を貫く主題

新しい世界(絵画)を創造するための旅
DLC1と2のストーリーを総合すると上記のようになる

新しい世界を創るために必要なもの

  • 画家
  • 顔料

「…火を知らぬ者に、世界は描けず」(フリーデ撃破後の画家)
「火に惹かれる者に、世界を描く資格は無い」(同上)

画家

お嬢様のこと

顔料

素材となるのは、暗い魂(ダークソウル)

DLC1:ASHES OF ARIANDEL

新しい世界を描くために、画家は「火」を見なければならない
だが火は教父アリアンデルの血によって抑え込まれている
それが可能なのは灰がフリーデ一人しかおらず、その火勢が弱いからだ

 アリアンデルが苦しんでるのは、灰でもあるフリーデのせいである。苦しみの原因がフリーデであることを理解しながらもアリアンデルはそれを許し、一方フリーデはアリアンデルの苦痛を愛おしく思っている…あるいは嗜虐的な悦びを見出している
 フリーデが灰の英雄に倒された時、アリアンデルは彼女を復活させるために火を熾す。それが世界を燃え立たせると知りながら

そこへ奴隷騎士ゲールの要請を受諾した灰(プレーヤー)がもう一人あらわれる
二人目の灰は囚われていた画家を解放し、浄化の炎を熾そうとする

「いつか灰はふたつ、そして火を起こす」(フリーデ戦のアリアンデル)
「やはり君には、灰には、火が相応しい」(同上)
フリーデとプレーヤーの灰が合わさることで生まれた火により、絵画世界は浄化される

 絵画世界が燃えてなくなるのではなく、おそらく深みの聖堂でゲールが手にしていた腐った切れ端が燃え尽きる。そのことで絵画世界は元の世界から完全に切り離される

キャンバスの前に戻った画家はこうつぶやく
「…火の音が聞こえる…きっともうすぐ見える」(フリーデ戦後の画家)

これで絵画を描く画家の準備は整った
あと必要なのは顔料となる暗い魂だけである

DLC2:THE RINGED CITY

暗い魂を求めて奴隷騎士ゲールは輪の都を目指す
彼が灰の英雄(プレーヤー)を誘ったのは、自分が英雄ではなく、画家のもとに帰れないことを知っていたからだ。顔料をお嬢様に届ける者が必要だったのだ。

「彷徨える奴隷騎士、赤頭巾のゲールは絵画世界の顔料のため、暗い魂の血を求めた。だがゲールは、自らが英雄でないと知っていた。暗い魂は彼を侵し、帰ることはないだろうと」(奴隷騎士ゲールのソウル)

果てしない旅と戦いののち、ゲールはついに輪の都にたどり着く。

「果てしない旅と戦いにより各所が歪み、血に錆びついており酷使により壊れやすい」(連射クロスボウ)
「奴隷騎士ゲールの大剣。ずっと共にあった唯一の武器。元々は処刑用の断頭剣であったが歴戦により、その刃は大きく欠け血と闇に染まりきっている」(ゲールの大剣)

だが、小人の王たちの血は、顔料としては使い物にならないものだった

「ゲールが小人の王たちに見(まみ)えたとき、彼らの血は、とうの昔に枯れ果てていた。そして彼は、暗い魂を喰らった」(暗い魂の血)

怒りに身を任せたのかあるいは確信があったのか、ゲールは小人の王たちを、その暗い魂を喰らいはじめる。

やがて暗い魂の血がゲールの虚ろに生じる
「奴隷騎士ゲールの、虚ろに生じた暗い魂の血」(暗い魂の血)

暗い魂(ダークソウル)の化身と化したゲールは、遅れてきた灰の英雄に討伐される

暗い魂の血を得た灰の英雄はそれをお嬢様へ渡す
「これで私は、世界を描きます」

お嬢様は灰の英雄の名をつけた世界を描く
「…ありがとう。私はその名で、世界を描きます」

「ずっと寒くて、暗くて、とっても優しい画」
「きっといつか、誰かの居場所になるような」

彼女は帰ることのないゲールの帰還を待ち続ける
「…ゲール爺も、いつか帰ってくるのかしら」
「新しい画が、お爺ちゃんの居場所になるといいな…」

DLCの主役

DLCにおいてプレーヤーはいわば脇役である
主役にふさわしいのは奴隷騎士ゲールのほうだろう

帰ってこられぬことを知りながら、彼は顔料を求めて長く厳しい旅に出る
そうまでして彼を駆り立てたものは何だろう?
彼はそれを語ろうとしない

ただ、お嬢様の描くであろう新しい世界の絵のために、彼は死の旅に出るのである
自らを犠牲とし、その身の内に暗い魂の血を宿し、自らを討たせることで彼はその目的を遂げるのである

そうして創られるのは、誰かの居場所となるような優しい世界である

彼はお嬢様のためでもなく、自分のためでもなく、ただ他者に対する慈しみの感情によって、自らの身に世界で最も邪悪な、穢れたものを宿すのである

この自己犠牲によって、穢れの極致であったダークソウルが尊いものへと反転する

それこそが、人間が人間であり続けるための条件「人間性」である

人間性とは、神を崇めることではなく、聖なるものを尊ぶことでもなく、ただ他者のためにその身を犠牲にしてもかまわないという、その行為こそが体現するものであり、そうすることでしか生きていられない、小さき人にこそ宿るものである

小人の王たちのそれが枯れ果てていたのは、虚栄に浸り、権威に溺れることで、人間性が失われていたからだ。

神が人間性を暗い魂とさげすみ、恐れるのは、神にはそれが理解できないからだ
グウィンは人間性を理解しようとしなかった。理解することもできなかった。神々にとって尊いものとは栄光に照らされていなければならないからだ

ここにきてダークソウルというタイトルの意味が初めて明らかになる
暗くて陰鬱な、残酷で残虐な物語を紡ぎながら、これは紛れもなく人間賛歌である

人間賛歌
これが自分なりのダークソウルの答えである

「人間性=ダークソウル」という考えに至る前はゲールに代わるラスボスを待望していたこともあるし、そういった記事をいくつか書いた

だが今はもうその考えはない

なぜならば、ダークソウルという物語のラスボスとしてゲール以外のボスは考えられないからだ

「プレーヤーに倒される」というボスとしての宿命を完遂しながらも、彼は倒されることで初めて完全無欠の「ダークソウル」を体現する

「ダークソウル」というRPGのボスとしてこれ以上ふさわしい存在は考えられるだろうか

プレーヤーは確かに奴隷騎士ゲールに勝利しただろう。だが、それは「かりそめ」の勝利に過ぎない。ゲールの望みであった「人間性」によって描かれた世界は、お嬢様によって描かれようとしている

きっと絵画が完成するところは明らかにされないだろう。絵画の完成は=プレーヤーの絶対的な敗北を意味するからだ

あるいは絵画の完成を阻止することが、プレーヤーに残された最後の――。

1 件のコメント:

  1. うっわ。これはかっこいい…
    ダークソウル=人間性=愛
    って言ってたのも納得

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