隻狼が俵藤太であったように、丈はそのままヤマトタケルであろう(Wikipedia)
その生涯は英雄譚というより、悲話としての色合いが濃い(特に古事記は)
簡単にまとめると、父天皇に恐れられ疎まれたヤマトタケルは西征を命じられ、続けて東征を命じられる。これらの命令は要するに追放であり、ヤマトタケルに「死ね」というのと同義であった(古事記では「父は私に死ねというのか」と口にしている)
ヤマトタケルは危機のたびに女性に助けられ命令を果たしてゆくが、伊吹の山で神の化身である大蛇と遭遇して病気に罹ってしまう。病の身でどうにかして故郷に帰ろうとするも旅の途上で客死。白鳥となって天へ昇る
典型的な「貴種流離譚」パターンである。丈のたどった道程もほぼ同じようなものであろう
丈もまた父(つまり竜)に疎まれ、追放同然の身で葦名にやって来たと思われる。おそらく、その粗暴さが父の怒りを買ったのであろう。もしかすると大桜の枝を折ったのも丈だったかもしれない(仙郷の異変はその頃に起きたとも考えられる)
秘伝・渦雲渡りによれば、丈もまたヤマトタケルと同様に少年の身で故郷を離れている
秘伝・渦雲渡り
遙か遠く、源の水の流れ出ずる方角
大きな渦雲が見える
それは源の渦。この技の名の由縁でもある
源の渦を望む、己が主
その小さな背中が、巴にとっては全てだった
そうして葦名の国に来たヤマトタケルであったが、追放された身であるがゆえに故郷への思いは募ったであろう。追放されて来たので、帰る方法も分からない。ゆえにどうにかして仙郷に帰る方法を探り、そうして戻ろうとするのである
だが丈はヤマトタケルと同じように病気に罹ったようだ
丈様の咳は、ひどくなられるばかり
仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ
せめて竜胤を断ち、人に返して差し上げたい(「巴の手記」)
どこかで神の化身と遭遇したのかもしれない
結局「不死斬り」が手に入らず、丈は病気で亡くなったと思われる
「丈様の竜胤もまた…そなたと共に、生きるのだ」(桜雫を九郎に渡したときのセリフ)
桜雫
不死の契約成らざる時に、
引き換えに残ると伝わる桜色の結晶
回生の力を、一回分成長させる効果がある
不死の契りをやり直し
新たな回生の力を授かるには、
竜胤の御子の助けが必要だろう
ヤマトタケルと同様に故郷に帰ることならず客死するのである
そして白鳥となったヤマトタケルと同じように、丈は桜雫となるのである
桜雫は「丈様の竜胤」であり、「不死の契約成らざる時」つまり、竜胤の御子としての丈が死んだ時に、それでも「常しえ」の竜胤だけが残ったものである
丈は常桜を仙郷より持ち帰っている
常桜の花
古い記憶の中で咲いていた、常桜の花
丈が仙郷の名残として持ち帰り、
接いで咲かせた花である
山梨県の実相寺境内に神代桜(じんだいざくら)という桜が植えられている。この神代桜、ヤマトタケルが東征の際に植えたと言われている(Wikipedia)
樹齢1800年~2000年という常桜という名に相応しい桜である
桜と言えば、仙郷に咲いている桜は二種類あり、一つはシダレザクラである。これは神代桜と同じ種、エドヒガンザクラの変種である
もうひとつはおそらくヤマザクラではないかと思われる
他に植物としてはフジ、アヤメ、スイレン、梅花藻などが確認される
※丈が持ち帰った常桜に関して
持ち帰るということは、一度は仙郷に行けている
だが、仙郷に帰ろうとしている時にはすでに桜が存在している
人返りには、常桜の花と不死斬りが要る
なれど、花はあれども不死斬りはない
仙峯上人が、隠したのであろう
竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…(『巴の手記』)
ということは、持って帰ったのは最初に葦名に到来した時のことであろう
つまり、丈は仙郷の外で生まれ、仙郷へ行き、追放されるようにして葦名に来た後に仙郷へ帰ろうとしている、となる(もしくは「持ち帰り」という言葉が不正確か)
以上のことから、竜胤の御子の作られ方が推測できる
竜胤の御子というのはどうやら人として生まれるらしい。人のうちから特に選ばれた者に「常しえ」の竜胤(おそらく竜の血)を与える(注ぎ込む、注入する?)ことによって、竜胤の御子に成ると思われる(九郎が「なぜ私が選ばれたのか」的なことを言っていた記憶がある)
これらのことから、竜の御子とは竜の血に適性のある人間であると思われる(耐性の無い人間はナメクジ化する…のかもしれない)
桜雫が竜胤の御子を経由してしか使えないのも、普通の人間は竜の血に対する耐性が無いからである(耐性のある竜胤の御子だけが、それを体内に取り込み、竜胤の力を行使することができる)
このことから桜雫の正体が推測できる
桜雫と似たアイテムに竜胤の雫がある
竜胤の御子から、稀に零れ落ちるもの
竜胤から溢れ出す力が、竜の御子の体で濾過されることによって無害となって零れ落ちるものが、竜胤の雫である
ほのかに桜色の光を発するがほぼ無色透明な雫が、濃い桜色に染まったものが桜雫である。この雫を桜色に染めたものこそ、竜の血(竜胤)である
ほぼ無色透明の雫に赤い血が混じり桜色になったのである
桜雫が示すように、たとえ竜胤の御子が死のうとも、竜胤の力は「常しえ」に残ってしまうのである。よって九郎は不死斬りによる死では不十分で、竜胤を消滅させる不死断ちを望んだのである
この竜の血を消滅させる儀式が不死断ちであり、竜の血を中和するものこそ桜竜の涙なのである
血というのは、憎悪や呪いを象徴する忌まわしいものである。一方、涙や花は浄化や昇華を象徴するものである
血という忌まわしいものを、涙や花という美しいもので浄化する、という思想が不死断ちや人返りの儀式の根底にはあるのではないだろうか
さて、桜雫は竜胤の雫に竜の血が混じったものであると上で述べた
桜雫
不死の契約成らざる時に、
引き換えに残ると伝わる桜色の結晶
雫とはつまり結晶である。つまり、桜雫は血と石でできている
そして竜胤を浄化するために必要なのが桜竜の涙と常桜の花である
血に対応するのが涙であり、石に対応するのが花である
不死断ちの儀式では、竜の血を浄化することはできるが、石を浄化することはできない
それは水生村の住人にできた「お宿り石」のように竜胤の御子の体内に残るであろう
その石が残る限り、竜胤の御子は竜胤ではなくなるが、人に返ることはできないのである
人返りの儀式では、血と石を両方とも浄化する涙と花がある
ゆえに、竜胤の御子は人に返ることができるのである
蛇足
また、話が横道にそれてしまった
竜の血に適性のあるものが御子となり、適性の無いものはナメクジ化するのではないかと推測されるが、いまのところこれと言って確かな論拠はない。桜竜あるいは仙郷の考察をするときに考えたいと思う
初めまして。
返信削除つい先ほどこのブログのことを知ったばかりでかいつまんでしか見れていませんが
もの凄く奥深くまで考察されていて感嘆しきりです。
丈の桜雫ですがこれはまぼろしお蝶を倒したときに得たものだと記憶しています。
自分はお蝶が持っていたことから丈とお蝶は不死の契りを結ぼうとして失敗したのではないかと思っています。
そしてお蝶は不死が諦めきれず再び今の御子である九郎を拉致して不死の契りを強要したのではないかと。
この辺りにつきまして何か考察されているのであればご意見頂けると幸いです。
あ、考察15に書かれていましたね。
削除失礼しました。
竜胤の御子の作られ方について、とても面白い考察だと感じました。竜の血の摂取の仕方についてですが、以前どこかで葦名の水には桜竜の血が混ざっている可能性があると耳にしたので、適性のある人物が葦名の水を一定数飲むことで後天的に竜胤が発生するのかもしれませんね。
返信削除源の水と葦名の水の違いはあまりよくわかっていませんが、単純に濃さだとすれば、貴人や水生の住人がそれらを飲もうとするのは竜の力を身に宿そうとしているのも目的のひとつと考えることもできます。