酒を振る舞う
仏師
エマ
一心
仏師
葦名の酒を振る舞う
隻狼:茶だ仏師:……スン
うまそうな茶じゃ。もらうとするか
…染みる…
こいつを飲んでると、エマの父を思い出す
隻狼:エマ殿の父上…とは
仏師:道玄…
あいつは稀代の薬師だった
そして、絡繰りにも明るい
…いや、絡繰り馬鹿の域か
ちと、ふざけたやつだが、儂の恩人よ…
ああ… お前さんの恩人でもあるぞ
隻狼:どういうことだ?
仏師:腕を失った儂に、道玄が作ってくれた
今は、お前さんの左腕にある、そいつをな
もっとも、義手作りも、始めは思うようにいかず…
幾度も、幾度も、作り直してくれた
くくく…
隻狼:どうした
仏師:忍義手を、まともに動かす習練じゃと言ってな…
エマ二せがまれ、独楽やら何やら、彫らされたものじゃ
そうしたことを重ね、忍びの牙と呼べる、代物となった
いわば、忍義手は… 道玄の忘れ形見じゃ
隻狼:忘れ形見
仏師:…ああ… ずいぶんと経つ
……
忍びを捨てた儂じゃが
それだけは、捨てられなんだわ
どぶろくを振る舞う
隻狼:酒を持ってきた仏師:もらうとしよう
…ううむ…
………むう…
隻狼:む… 口に合わぬか
仏師:…いや、うまい
…プハァー!
じゃあ傷がうずくのよ
隻狼:その左腕か
仏師:ああ、この酒を好きな御方に…
くく…斬り落とされたのじゃ
隻狼:それは…
仏師:一心様よ
隻狼:…何故、一心様が
仏師:………
…斬って…くださったのじゃ
…プハァー!
飲まれかけた、儂のためにな…
隻狼:何に、飲まれかけたのだ?
仏師:…修羅
隻狼:………
仏師:…まあ、信じるか信じないかは、お前さんしだいじゃが…
せいせい気をつけな
修羅の影にな…
猿酒を振る舞う
隻狼:酒を持ってきた仏師:…猿酒か
…カー…、相も変わらず辛い酒だ
だが、これが懐かしい
隻狼:良く、飲んでいたのか
仏師:猿どもの棲む谷
そこで、忍び修行をしておった
隻狼:…一人か
仏師:…いや。二人で、じゃな
儂らは、はぐれ忍び…
まともな師は、もはや、おらなんだ
ゆえに、落ちれば死ぬ谷で
ただひたすらに、駆け、跳び、刃を交える…
そのような修行を重ねた
…じき、猿と変わらぬほどには、動けるようになったわ
…修行に飽きると、儂はこの猿酒を飲んだ
そして、あやつの、泣き虫の指笛を聞いた
隻狼:泣き虫…?
仏師:変わった指輪があってな…
それをはめて、指笛を吹くと…
谷に… 悲しげな音が、響き渡るのじゃ
不思議と儂は、その音が好きでな
よう、吹いてもらったものよ
竜泉を振る舞う
隻狼:酒を持ってきた仏師:ほう、竜泉か… 随分と上物だ
もらうとしよう
…実に染み入る…
…やはり、これじゃ
よく、道玄と、飲み交わしたもんだ…
エマに、酌をしてもらってな
隻狼:エマ殿とは、長い付き合いなのか
仏師:ああ、ずいぶん前に…
戦場(いくさば)で拾った
隻狼:…戦場
仏師:じーっと、ずーっと、握り飯を睨んできてな
面倒だから、くれてやった
そしたら、何やらついてきてな…
それから…
………
フンッ、何だ彼んだあって…
共に葦名に厄介になることになった
道玄の養女になったのも、その時よ
………
ま、どこだろうが
忍びといるよりゃ、よほど幸せじゃろう
エマ
葦名の酒を振る舞う
隻狼:酒を
エマ:あら…
せっかくです、いただきましょう
…はあ… おいしい
薬師をしていると、こうして飲む以外にも
お酒を使うことがあります
隻狼:清めなどか
エマ:はい、他にも
痛みが耐えられぬ者に飲ませたり、ですね
ですが、まだ子供の時分には、お酒の匂いが苦手でした
隻狼:子供のころから、薬師の手伝いを?
エマ:はい。師の… 道玄様の、お役に立ちたかった
兄弟子たちと、競って患者の手当をしたものです
この時勢です。矢傷や、刀傷を負った者も多かった
隻狼:………そうか
エマ:………
隻狼:どうした
エマ:いいえ
それから、時折、忍びの者も参りました
一度… とても、困った患者が
隻狼:どう、困ったのだ
エマ:なかなかに、喋らぬのですよ
どこが痛いのか、どれほど痛むのか…
それが分からぬので、閉口しました
隻狼:そうか
エマ:…まるで、他人事のような物言い
隻狼:何だと?
エマ:いいえ、何でも御座いません
どぶろくを振る舞う
隻狼:これを、お主にエマ:あら…
一心様が、お好きなお酒ですね
いただきましょう
…はぁ… おいしい
隻狼:………
エマ:………何か
隻狼:ん?
エマ:何か、話してください
隻狼:…一つ、聞きたい
エマ:はい
隻狼:剣の師は、誰だ?
エマ:剣…? 私は、薬師ですよ
隻狼:誰だ?
エマ:…一心様です
…ですが、ほんの嗜みです
隻狼:お主の剣気… とても、嗜みとは思えぬ
何のためだ
エマ:人は、斬りません
隻狼:…人は、斬らぬ?
エマ:はい。人を斬りたいなどは、露ほどにも
ただ、鬼など出れば、斬りたいと思っています
隻狼:鬼…?
エマ:ふふっ、本気に取らないでください
ほんの、戯言です…
猿酒を振る舞う
隻狼:酒をエマ:あら、これは…
クスクスクス… 猿酒ではありませんか
隻狼:何がおかしいのだ
エマ:まずは、いただきますね
…かぁ…か、辛い…
ええと… そう、お猿…
私は、猿には何かと、縁深いのです
隻狼:猿と?
エマ:はい。何せ、私は猿に拾われた子です
隻狼:………
エマ:…信じて、いませんね
………幼き日
戦場跡に、一人
私は、呆然と立っていました
隻狼:………
エマ:何も… 泣くことも、怒ることもできず
ただ、呆然と…
そうしたら、猿が、握り飯を食っていた
隻狼:猿がか…
エマ:はい、それは旨そうに
うらめしいと、思いました
そうしたら、今度は猿が、握り飯をくれたのです
とても、うまかった…
隻狼:親切な、猿だ
エマ:ふふ… まことに、親切な猿でした
竜泉を振る舞う
隻狼:酒を持ってきたエマ:あら、竜泉ですね…
いただきましょう
…はぁ…
………まったく
隻狼:どうした?
エマ:いいえ、この竜泉を一心様が手に入れると…
葦名の城に… わらわらと、人が集ってきて
騒がしい、酒宴が始まるのです
そういう時は、道玄様を置き去りに
城の裏手など、散策しておりました
隻狼:城の裏で、何を?
エマ:………そう、ですね
源の渦(うず)を
隻狼:それは何だ
エマ:遠く、源の水の流れ出ずる方角…
そちらの方に見える、大きな渦雲(うずぐも)です
渦雲は雷を、纏っています
弦一郎殿は、良く刀を振るっていたものです
その雷の渦雲を、睨みながら…
隻狼:………
一心
葦名の酒を振る舞う
隻狼:酒を一心:おう、気が利くな!
どれ…
…ぷはぁ…。良い酒じゃ!
勝ち戦のときは、こうして飲んだものよ
葦名衆の、みなでな
隻狼:国盗り戦の、葦名衆…
一心:カカカッ、国盗りか…
盗られたものを、盗り返したまでよ
隻狼:それは…
一心:元々、この葦名は…
我ら葦名衆が、暮らす地じゃった
源から流れ出ずる水
それを、こよなく愛する民じゃ
…ぷはぁ…。ゆえに酒も、うまあいっ!
…じゃが、我らは異端、そして弱い民じゃった
当然に蹂躙され、服従を強いられた
ずっと、長い年月な…
源の水を、祀ることすら許されぬ
カカカッ、そのざまでは…
うまい酒を飲んでも、真には酔えぬ
隻狼:…だが、世が乱れた
一心:ああ…
日本(ひのもと)の乱れが… この人死に絶えぬ、戦の炎が…
一度(ひとたび)は好機となり、国盗りを果たした
だが… 今は、死地にある…
…ハッ、皮肉なことよ
どぶろくを振る舞う
隻狼:これを一心:お主… 儂のやった酒を、儂に飲めと言うのか…
カカカッ、気に入った! もらおう!
…ぷはぁ…。やはり、これじゃあ!
ときに、お主…
弦一郎は、どうじゃった?
隻狼:どう、とは…
一心:刃を交えたのじゃろう
隻狼:ただ、強かった
そして… 異様な技を
一心:ほう
隻狼:巴の雷とは、いったい…
一心:カカカッ、それはのう
弦一郎の師の技じゃ
なかなかに、面白かったであろう
隻狼:師とは…
一心:巴… あれほどの遣い手は、そうはおらぬ
まるで、舞いのように、あの女は戦う
あやつの瞳を覗いておると…
水底に引き込まれるような、心地がしたものよ
カカカッ、見惚れて、斬られそうになるなど…
この一心、長く生きたが、あの一度のみじゃ
猿酒を振る舞う
隻狼:酒を一心:おう、隻狼! 気が利くのう
おおっ、猿酒ではないか
…カー! 火を吹くとは、このことよ!
お主、この酒の別の名を、知っておるか
隻狼:知りませぬ
一心:知らぬか
こいつはな、修羅酒とも言う
…昔、儂は…
修羅を… いや、修羅の如きものを、斬ったことがある
隻狼:それは、一体…
一心:斬り続けた者は、やがて、修羅となる
何のために斬っていたか…
それすら忘れ、ただ斬る悦びのみに、心を囚われるのじゃ
お主の目にも、修羅の影があるぞ
隻狼:………
一心:せいぜい、儂に斬られぬよう
肝に銘じろ
隻狼:…は
猿酒を振る舞う(梟撃破後)
隻狼:酒を一心:おう、隻狼! 気が利くのう
おおっ、猿酒ではないか
…カー! 火を吹くとは、このことよ!
お主、この酒の別の名を、知っておるか
隻狼:知りませぬ
一心:知らぬか
こいつはな、修羅酒とも言う
…昔、儂は…
修羅を… いや、修羅の如きものを、斬ったことがある
隻狼:それは、一体…
一心:斬り続けた者は、やがて、修羅となる
何のために斬っていたか…
それすら忘れ、ただ斬る悦びのみに、心を囚われるのじゃ
お主の目にも、修羅の影があるぞ
そう、思っておった
隻狼:………
一心:じゃが、それは、消えたようじゃ
修羅が出れば、儂が斬ってやるところじゃった
カカカカカッ!
竜泉を振る舞う
隻狼:これを一心:ほう! 竜泉か!
でかしたぞ、隻狼!
…ぷっはぁー! たまらぬ!
カカカッ、この竜泉を儂が手に入れると…
かぎ付けた、馬鹿者どもが
飲ませろと集ってきたものじゃ
隻狼:馬鹿者ども…
一心:酒飲みながら、十文字槍を手放さぬ馬鹿者に…
人の酒を幻術でかすめとる、馬鹿者
盃片手に、作りかけの義手をいじっておる、馬鹿者
それから…
でかい図体で、すぐに真っ赤になる、見かけ倒しの梟もな!
隻狼:それは…
一心:カカカッ、お主の養父もまた、馬鹿者じゃったわ
竜泉を振る舞う(梟撃破後)
隻狼:これを
一心:ほう! 竜泉か!
でかしたぞ、隻狼!
…ぶっはぁー! たまらぬ!
カカカッ、この竜泉を儂が手に入れると…
かぎ付けた、馬鹿者どもが
飲ませろと集ってきたものじゃ
隻狼:馬鹿者ども…
一心:酒飲みながら、十文字槍を手放さぬ馬鹿者に…
人の酒を幻術でかすめとる、馬鹿者
盃片手に、作りかけの義手をいじっておる、馬鹿者
それから…
でかい図体で、すぐに真っ赤になる、見かけ倒しの梟もな!
隻狼:それは…
一心:お主の養父も、馬鹿者じゃった…
馬鹿者どもに…
………
隻狼:はっ…
酒各種
葦名の酒
葦名の酒が入った徳利
酒とは、振る舞うものである
源から流れ出ずる
清らかな水で作られた酒は、
葦名の民に広く愛されている
どぶろく
白く濁ったどぶろくの徳利
酒とは、振る舞うものである
葦名一心も愛した、この濁り酒は、
実に濃醇である
一方、悪酔いしやすいことでも知られる
どぶろく(一心がくれたもの)
一心がくれた、白く濁ったどぶろくの徳利
酒とは、振る舞うものである
この濁り酒は、実に濃醇である
一心は、その濃く深い味わいが好きだ
一方、悪酔いしやすいことでも知られる
猿酒
木のうろに溜まった酒
酒とは、振る舞うものである
猿が木のうろに隠しておいた果実が
かもされて、偶然に酒となることがある
火を吹くほどに辛いが、
それも味わいと、愛飲する物好きもいる
竜泉
澄みきった酒の入った徳利
酒とは、振る舞うものである
竜泉は、葦名の杜氏が作る至高の酒
葦名の米の、その豊穣を
源からの水が、あますことなく引き出すのだ
この酒の味を語るのに、
御託はいらぬ、飲めば分かる
梟撃破後に一心に猿酒と竜泉を渡すとセリフが若干変化しますよ
返信削除情報ありがとうございます。さっそく撮りに行ってみようかと思います。
削除エマが仏師の快気祝いにくれる葦名の酒は微妙にテキスト違いがあります(記憶が正しければ「エマがくれた」が先頭に付くだけですが…)
返信削除また、一心がくれたどぶろくを他の人に渡した後に他のどぶろくを一心に渡すと、「儂のやった酒を、儂に飲めと言うのか」のくだりがなくなります。
情報ありがとうございます。次の周回で確認します
削除一心へのどぶろくは別パターンも確認したのですが、テキストがほとんど変わらなかったので見送ったのですが、テキストを確認して追加しておきます
梟撃破後、一心に竜泉を渡したときのセリフの末尾「馬鹿者どもに… ………」「はっ…」とは、何を示しているのでしょう
返信削除「(仲良し)馬鹿者どもに(入っていたのに 裏切るとは残念)」というのが自然そうですが、狼の了解し決意したような返事と噛み合わず
酒を渡す前、梟撃破後の初回会話で「不死断ちを阻むもの(梟)をよく斬った」という旨 話しているので、一心も 父殺しを気の毒に思っているのは間違いないところですが…
シードさんは どのようにお考えでしょうか?
(各考察につながらないような質問ですみません)