クリアしたので本格的にWikiを解禁してトロコン完了
正確には実績コンプリート |
本作ではトロコン作業というものは存在せず、ダンジョンなりボスなりギミックなりを解くことで必要なアイテムは揃えられる
なので“作業”という感覚はまったくなく、本編よりも濃い時間だったかもしれない
※王都のグランサクスの雷は黒き剣のマリケスを倒す前に回収したほうが良い
レビュー
情報の波
ラニイベントの時にも感じたのだが、本作の濃い部分は本編ではなく脇道ルートにこそ詰まっている
前回のレビューでストーリーは分かりやすいが平坦と言ったが、それは本編にかぎったことであり、やはり意図的なものであったという確信が深まった
これはおそらくストーリーが分かりにくいという過去作の感想を踏まえてのものであろう
つまり本編ルートを進んでいくかぎり、プレイヤーに提示される情報のほとんどは「王となれ」に必要なものに絞られ、それ以外の情報はきわめて巧みに抑制されているのである
これが過去作との最大の相違点である
例えばDSシリーズでは、火を継ぐ過程であふれるほどの周辺情報が提示される
その結果、情報の波に飲み込まれたプレイヤーは「アレは何だったの?」という疑問符をいくつも頭に浮かべながらクリアしていくことになる
本作ではプレイヤーに提示する情報をコントロールすることで、この困った事態を回避し、「王となれ」というメインストーリーそのものは本編を進めれば理解できるようになっている(マリカとラダゴンの種明かしさえしてくれる)
本作のメインストーリーが平坦だと筆者が感じたのは、過去作にあった「本編には直接関係のない情報の波」が少なかったからである
分かりやすさを優先させるのであれば、この手法は必然的なものであろう
膨大な周辺情報の波にもみくちゃにされるのを好むプレイヤーもいるだろうが、大多数の人は頭に疑問符を浮かべながらゲームを終えるに違いないからである
二重構造
その代わりと言ってはなんだが、本編クリアに関係のない脇道ルートには濃い話が揃っている
つまり本作の情報伝達は、本編の「王となれ情報」と、脇道の「深掘り情報」という二重構造になっている
この二種類の情報層は完全に分離しているわけではなく、様々な部分で接触しており、プレイヤーはその接触部から相互の情報層を往き来することができるようになっている
例えば本編で少しだけ言及される人物や出来事が気になったら、脇道ルートを進むことで、それに関する情報が得られるようになっているのである
この点で本作は百科全書というかWikipediaというか、非常にシステマティックな構造をしている
またこの二重構造は過去作における「本編とDLC」の関係に近い
例えばダークソウルでは、本編でわずかに言及されていたアルトリウスがDLCに登場し、ブラッドボーンでは本編の謎の多くはDLCで一定の答えが提示されていた
本作では本編とDLCの二段構えをより洗練させ、本編の情報量を適切に絞ると共に、脇道ルートには謎とその答えがしっかりと用意されているのである
こうした二重構造は戦闘システムとも共通するもので、遺灰を使ったカジュアルな戦闘もあれば、遺灰を縛るシビアな戦闘もあるように、プレイヤーは本編の分かりやすいストーリーを追うこともできれば、より深いストーリーのある脇道を進むこともできるのである
※本編とは別に裏ボス的なダンジョンやボスが用意されているのは、JRPG的とも言える(FFシリーズなど)
サブルート
脇道とは具体的には、ラニルート、マレニアルート、フィアルート、ライカードルートなど、クリアに必須でないルートのことである
※脇道というとやや語感が悪いので、以降はメインルートに対するサブルートという語を用いることにする
サブルートの最大の特徴は、過去のDSシリーズとよく似ていることである
メインルートでは「○○へ行き○○をしてこい」というような目的がはっきりしているが、サブルートではこれらが明示されることは少ない
プレイヤーは必ずしも行く必要のないエリアを、何があるのかも分からずに探索していくことになるのである
この感覚が非常に過去作に近い
膨大な量の情報がプレイヤーを飲み込み、ふとした瞬間に秘密の一端が明らかにされ、容赦のない真実がプレイヤーの前に厳然と立ちはだかってくるのである
具体的にそれは、想像もしていなかった絶景や、人跡未踏の秘境を冒険しているようなわくわく感、一筋縄ではいかない多くの困難、そして最後に到達するおぞましくも美しいモノとなって現われる
確かにマレニアルートなどは敵は強力だし数の暴力も感じられるし、落下死も多い。筆者も何度も挫折しそうになった
あとから振り返ると楽しかったという記憶はあるのだが、その時は楽しさというよりも、はっきり言えば「怒り」をたぎらせている状態である
だが、それこそがフロムゲーである
その圧倒的な暴力の嵐に対し、何かに強いられて挑むのではなく、自らの意志で挑み、勝利することがプレイヤーの最大の喜びである
※前回のレビューで尖った部分が失われた的なことを書いたが、サブルートを見る限りそれは失われてはいないので訂正する
「困難とそれを乗り越えた先にある達成感」という言葉はサブルートにこそ最大限に当てはまるものである
その点で筆者の評価はメインルートよりもサブルートの方がはるかに高い
メインルート
ただしメインルートも悪いというわけではない。むしろ分かりやすく整理されている分、メインルートの方を好むプレイヤーも多いだろう
特にラスボスのBGMと演出はデビュートレーラー以来、本作に魅了されてきた者としては格別なものがあった
またメインルートのボスたちはどれも正統派の傑物揃いで、本作をボスを倒していくゲームと捉えるのならば、メインルートもまた傑作である
一点だけ気になる点がある。メリナがあまりストーリーに関与してこないことである
彼女はあくまで進行を補佐する役割に過ぎず、彼女自身の意志の発露があまり見受けられなかった
もちろんフレーバーテキストや会話をよく読めばもっと深く理解できるかもしれない
しかしながら、分かりやすさを重視した本編ルートにしては、やや演出が控えめだったかなと思う
あるいは彼女が強く出過ぎた場合、本編ルートを「やらされている感」が強くなるので削ったのかなと思わなくもない
上述したように、「○○に行って○○してこい」が続くと強制感が出てくるからである
とはいえ彼女も過去作の火防女程度には活躍(?)するし、ヒロインの座をラニに奪われた感はあるものの、重要な場面で見せ場もある
ただ、何というかちょっと惜しい。もう少し過去作の火防女のような自己犠牲的な面を強調していれば印象に残ったのかもしれない
総評
より多くの層にアピールするために、情報量を絞り明確な目的のあるメインルートと、必須ではないサブルートに分けたことが、結果的に本作を重層的な作品に仕上げている
これは瓢箪から駒なのか、あるいは計画通りなのか、おそらく後者であろう
いずれにせよこの二重構造が過去作との最大の相違点であり、それぞれのルートが半ば独立したことで、情報量は凄まじいながらも全体として理解しやすいという、脅威の作品になっている
遺灰を含む戦闘システムにしても、全ボスをソロで倒している人がいる以上は、最終的にはプレイヤーの選択に委ねられている
プレイヤーのスキルに合わせた攻略が出来る、という意味で、海外で騒がれていたイージーモード導入に対するフロム的な一つのアンサーなのかなと思わなくもない
また一方で、より高難易度を望むプレイヤーに対しては、より強力なボスたちが用意されている
同様にゲームをクリアするだけならば、比較的わかりやすいメインルートを攻略することで可能である
しかもそれで不足ならば、フロム成分が凝集されたサブルートまで用意されているという大盤振る舞いである
まるでフロムゲーの満漢全席である
多くの人が美味しく味わい、楽しかったで終わることのできるゲームである
これを「神ゲー」と呼ばずに何と呼べば良いのか
メインルートを攻略した人にはぜひサブルート、とくにマレニアルートを攻略してほしい。そして苦しみ、もがいてほしい
その時、筆者がいう「神ゲー」の意味が分かると思う
もはや神ゲーの神はこの次元の神ではなく、理解不能の「外なる神」である
マレニアルートは地獄でしたが、そこから読み解ける背景ストーリーが素晴らしく、攻略して良かったと思える出来でした。
返信削除今作は本当に神ゲーだと思います。
仰る通り、今作プレイ中は怒りが湧いている時間が多かった(ぶっちゃけ今も)ですが、いずれ良い思い出になる気もしています。
返信削除Lv1 完ソロ(協力プレイ、遺灰禁止)プレイ、がんばります。