DLC
これまでの傾向としてエンディング後を描いたDLCは存在しない。発表済みのダークソウルシリーズ、ブラッドボーンのDLCでは、本編とわずかに関連するものの時空の異なる世界が舞台であった例えばDS1では本編でほのめかされた程度であったアルトリウスの時空が舞台であり、DS2では本編では語られない闇の飛沫と王の物語が語られ、DS3では本編の背後に隠されていた禁足の地を冒険するという趣向であった
ブラッドボーンでは、狩人の誕生とその秘密に関わる悪夢の地をさまよい、本編より古い時代の陰惨な出来事をかいま見たのであった
これらの傾向を考慮すると、もしSEKIROにDLCが出たとしたら本編のエンディング後を描くのではなく、本編と微かに関連するが本編ではほとんど触れられていない出来事、あるいはほのめかされただけの出来事にフォーカスを当てるものと思われる
神の世界
ではそれが具体的に何かというと、丈と巴の物語であろうSEKIROでは思い出の品を備え「拝んで祈る」と記憶から世界を創造してくれる便利な仏様がいる(あと巫女も)
ゆえにもし、丈と巴の思い出の品(それは鈴の形をしていると思うが)を手に入れることができれば、彼らの記憶をもとに世界を創造し、その世界を隻狼が冒険することも可能であろう
※鈴に関しては葦名流伝場の階下にある竜の像についた大きな鈴が怪しいと思う
ボス候補としては、巴と戦ったことが記録に残っている「葦名一心」は登場する確率が高い。また、仙郷に住んでいた丈が葦名に降りる事態に陥ったことを考えると、その異変が起きるまえの全盛期桜竜もいるかもしれない
となると、舞台は崩壊前の源の宮となろうか。ただし本編で源の宮の大部分の場所は明らかになっていることから、磐座を介して全くの別世界へワープすることも考えられる
※もし源の宮が登場するとしたら水没する前の姿かもしれない
別世界とは、全盛期桜竜の司る仙郷である。そこはおそらく、桜竜の故郷と似た世界であろう。故郷を追放された者が故郷と同じような環境を異郷に構築することはよくあることだ(桜竜の記憶をもとに作られた竜の故郷その場所ということも考えられる)
※桜竜の故郷については諸説あるとは思うが、以下の「続編」の項で触れる
以上が架空のDLCにおける「神の世界」の部分である
SEKIROは神の世界と人の世界という二つの世界が並存しているということは、過去の記事でも述べている
上述した全盛期源の宮、あるいは仙郷が神の世界を描くのだとしたら、人の世界を描くDLCもあると思われる
人の世界
人の世界のDLCとして考えられるのが、「薄井の森」である梟の本名が「薄井右近左衛門」であり、うらわかきお蝶が修行を積んだ森である
その森は、霧とまぼろしで満ちており、幻術を修めるにはまたとない場所である(「まぼろしクナイ」)
また薄井の森には、正体つかめぬ猛禽が棲むという
なかでも霧がらすは捕らえた者はいないという(「霧がらすの羽」)
その霧がらすはぬしであり、つまり土地神である(「ぬし羽の霧がらす」)
また梟、お蝶、霧がらすと、翼があり飛翔する生物の名がついていることから、おそらくは「川蝉」もまた薄井の森に関係していると思われる
つまり薄井の森を舞台とするのならば、若き日の梟、うら若きお蝶、川蝉とその関係者と思われる「飛猿」こと仏師をも登場させられるのである(鈴を使い過去に飛んだという前提)
霧とまぼろしに満ちた森であるのならば、隔離空間として登場させるのに都合がよく、また本編にはテキスト以外では登場していないという関係上、どのような事件が起ころうとも本編とは無関係で通すことができるのである
※主人公は飛猿その人かもしれないし、仏師の記憶を元に作られた世界かもしれない
まことに都合の良い場所である
まとめると、SEKIROのDLCでは二つの世界を旅することになると予想される
一つ目は「かつての源の宮(含む仙郷)」であり、二つ目は「薄井の森(過去)」である
続編
続編、それも1の物語を引き続くならばという条件付きのSEKIRO2である前提としては「竜の帰郷」エンディングの後ということになる
では、西へ旅立った揺り籠と竜の忍びの旅路を描くかというとそれはないだろう。というのも、旅をするとなると出発点と終着点を設定しなければならないが、その場合、一度通った場所に戻る必然性がなくなる
つまり、どれだけマップを作り込もうとも使い捨てになってしまうのである
これは徹底的にマップを作り込んで探索させるというフロムソフトウェアの思想と相反する気がするのである
また、広大なオープンワールドを移動させることで旅の雰囲気を出す方法も考えられる(RDR2のように)が、フロムソフトウェアの開発規模からいって難しいのではないかと思われる。そしてやはりマップの作り込みという方法と相性が良くない
とするとやはり、SEKIROと同じようにフィールドをある程度の広さに限定し、その中でタスクをこなしていくスタイルを取るのではないかと思われる
であるのならば、すでに旅はほとんど終えているはずである(出発地点だとしたらエンディングに至れない)
問題は舞台となる場所である
そこはおそらく竜の故郷に近い場所であろう
この竜の故郷については諸説あり、私個人としては深海の底にある神殿(竜宮)という考察もしたことがある
ただ、深海とするとそこに至るまでの移動手段がなさそうなのと、深海を舞台にして果たして楽しいかというと、楽しくはなさそうである
やはり竜の忍びらしく、鍵縄を駆使してびゅんびゅんと飛び回るような地形が良いであろうと思う
現実的に考えると舞台は地上であり、かつ鍵縄を駆使できるような高層建築や高い地形のある場所が適していると思われる
このうち中国の都のような巨大な都市は舞台として選ばれないであろう(開発リソース的にも)
となると、高低差のある土地、例えば峻険な山奥。しかし無人の大自然ではなく人工物もわずかに存在し、人も住んでいる場所となる(店などを考えると)
崑崙山
候補としては第一に天竺(インド)の山奥が挙げられる。しかしながら玄奘三蔵の旅した唐の時代は過ぎ去り、SEKIROの舞台はそれから約1000年後の明朝の時代である。その頃のインドではすでに仏教は完全に衰退しており、西遊記を再現しようにも仏教の聖域はとうの昔に無くなっているそしてそもそも桜竜は仏教系なのかという疑問もある
不老不死の神仙(竜胤)や不老不死を得た仙人(ミヤコビト)の思想は、仏教というよりも、道教のそれである(道教自体が仏教からの影響を受けているが)
道教では東の海の果てに蓬莱山があるとされ、西の果てに崑崙山があるという
東の蓬莱山を仙郷と考えるのならば、西にあるのは崑崙山であり、竜の故郷があるという方角と一致するのである
またSEKIROの世界に見られる陰陽道の思想はもとをたどれば道教のものであり、陰陽道で使用される「符」や鬼の使役、五行思想なども道教由来である
つまり道教には、源の宮や仙郷で見られる宗教的文化のほぼすべてが含まれているのである
上で桜竜は故郷の環境を再現したのではないかという説を述べた。桜竜の膝元である源の宮にそれが反映されていると考えると、源の宮に見える道教思想は桜竜の故郷のものだった、と考えられるのである
つまるところ、竜の故郷とは道教における神の山「崑崙山」となる
この崑崙山がいかなる場所かは、Wikipediaを読んでもよく分からない
しかしながら、崑崙は『山海経』にも登場する山である
山海経といえば、奇怪な神々、怪物群がこれでもかと登場する書物である
例えば燭陰(しょくいん)という神は
『北海の鍾山(しょうざん)という山のふもとに住む神で、人間状の顔と赤い蛇のような体を持ち、体長が千里におよぶとされる』(wikipedia)
他にも
鹿蜀(ろくしょく)
その状馬の如くで白い首、その文(あや)は虎の如くで赤い尾、その声はうたうよう。
九尾狐
その状は狐の如くで九つの尾、声は嬰児のよう、よく人を食う。
彘(てい)
その状は虎の如くで牛の尾、その声は犬がほえるよう。
蠱雕(こちょう)
その状は雕(わし)の如くで角があり、その声は嬰児のよう。
英招(えいしょう)
神。神の状は馬身で人面、虎の文あり、鳥の翼をもち、四海をめぐる。
等々、奇妙な神や怪物の宝庫である
こういった奇妙な世界にある崑崙には西王母が住んでいるという
西王母とは
『西王母とは、西方にある崑崙山上の天界を統べる女性の尊称である。天界にある瑶池と蟠桃園の女主人でもあり、すべての女仙を支配する最上位の女神。』(Wikipedia)
である
西王母は漢代に入ると神仙思想と結びつき、やがて道教へと受け継がれた
その道教の影響を受けた仙郷が東の海の果てにあり、それを蓬莱山とするのならば、西にあるという竜の故郷とは崑崙山のことであろう
つまりもしSEKIROの続編が出るのならば、それは崑崙山を中心としたエリアであり、山海経に登場するような異形異類の神や化け物たちの跋扈する世界なのではなかろうか
※もちろんちょくせつ「崑崙山」の名や化け物たちの名は採用しないだろう
さて、この項の最初に「1の物語を引き継ぐならば」と条件をつけた
しかしながら、シリーズとなったダークソウルでは主人公が直接続いた作品はない
世界観はなんとなく共通するけれども、前作とは直接には関係のないストーリーが展開されている
けれども、「最初の火の炉」や火防女、またグウィンドリンや王たちの化身など、前作や前々作と共通する、あるいは彷彿とさせる場所や人物が登場する
こうした前例を踏襲するのならば、SEKIRO2の主人公は「隻狼(狼)」ではないであろう
けれども、竜胤の御子や竜の忍び(伝説の)、揺り籠といったSEKIROと共通するような概念なり存在がそこには登場し、プレイヤーはそのゲームがSEKIRO2であることをすんなりと理解できるものになるかもしれない
出雲
さて、SEKIROは固定主人公なので、前例を踏襲せず主人公は隻狼のままかもしれないそうした主人公継続の前提で妄想すると、いきなり海を渡って大陸へというのはプレイヤーの心情的にも物語の展開的にも考えにくい
北国(公式サイトに一心が「北国の雄」として紹介されている)から西へ向かったと考えると、日本列島全土がほぼ範囲内になるが、そのなかから個人的に可能性が高いと思うのが「出雲」である
出雲は言わずと知れた神話の地であり、大和朝廷との関係も考えると得体の知れぬ異形の神を祀っていても不思議ではない
また、葦名の白蛇の社にかけられた注連縄のかけ方が出雲と同じ珍しいかたちであることや、落ち谷に痕跡が確認できる製鉄場の日本における最も古い形が出雲にあったことなどを考えると、葦名と出雲とはなぜか共通点が多いのである
そしてなにより、出雲には葦名城に劣らぬ難攻不落の名城「月山富田城」がある
残念ながら標高の高い山はないが、代わりに海がある
異形の存在が海岸に漂着、または上陸することは、ブラッドボーンDLCや蛭子神話、またラヴクラフトの『インスマウスの影』でもお馴染みである
海は山と同じく、古代の人間にとって異郷であり、そこからは神や神に近い何者かがやってくると考えられていたのである
桜竜も「故郷を放たれ、この日本(ひのもと)に流れ着いたもの」(変若の御子)と言われることから、雲に乗って来たのでなければ、日本海側の海岸に漂着したものと考えられる
しかしながら、「故郷を放たれ、日の本に流れ着いたもの」が一体だけであるとは限らない
その神もまた故郷を放たれ出雲に流れ着き、そこに根付いたのかもしれない
葦名と出雲とは奇妙なほどによく似ている。中央から離れた辺境にあり、中央とは異質の信仰が残り、製鉄を行っていたと思われるふしがあり、難攻不落の名城がある
さらに言えば、SEKIROを開発する際にかき集めた資料を再利用できる、という利点もある。これは時間的にも人件費的にもかなりの節約になるはずである
また出雲であれば、古代出雲大社をモチーフにすることが可能である(その本殿は高さ48、または96メートルもあった)
フロムソフトウェアの巨大建築への情熱は過去作をプレイすれば理解できるかと思う。そのフロムが古代出雲大社本殿のような巨大建築を見逃すであろうか
北にある山の葦名、西にある海の出雲
日本とは言うまでもなく島国でり火山国でもある。山と海がそろって初めて日本を十全に描いたことになるのかもしれない
蛇足
もしDLCがあるのだとしたら、過去の傾向からいって竜の忍びルートのその後を描くのではなく、おそらく源の宮の深部や竜の故郷、それから薄井の森に焦点が当てられるだろうまた続編で竜の忍びルートが描かれるかもしれないが、前例を考えると可能性は低い。けれども竜胤や竜の忍びは引き続いて登場し、西にあるという竜の故郷が描かれるかもしれない。また主人公が継続するのならば、2の舞台は出雲であろう
程度のことを書くつもりが冗長になってしまった