ミディールはどこから来たのか
ミディールの概要でも述べたが、彼は神によって育てられ、闇を喰らう使命をもたされた古竜の末裔である
闇喰らいのミディールのソウル
古い竜の末裔ミディールは、神に育てられ
朽ちぬが故に、永遠に闇を喰らう使命をもった
神がとうに滅びた後も、忘れることはなかった
神がとうに滅びた後も使命を忘れることなく闇を喰らい、そのために闇に侵され、最後は輪の都に戻ってくる
闇を喰らうその竜は、それ故に闇に侵され、最後にこの街に戻ってきました(フィリアノールの騎士、シラ)
問題はミディールがどこから戻ってきたのか、ということである。より厳密に言えばミディールはどの時代のどの場所から戻ってきたのか、という問いになる
ミルウッドの森には深淵の竜の足跡があるが、ミルウッドの森がいつの時代に存在したものかは判然としない
ミルウッドの大弓
それはミルウッドの騎士たちが
仇敵たる、深淵の竜に対する武具であったという
ミディールがいつの時代に存在していたのか、については「闇喰らいのミディールのソウル」にある、「神がとうに滅びた後も」という一文以外には手がかりはない
では、「神がとうに滅びた後」とはいつのことなのであろうか
フィリアノールの眠り
少し話は逸れるが、フィリアノールの眠りが破られた後、世界はその様相を一変させる
このとき、フィリアノールはすでにミイラ化しており死んでいる。つまり「神がとうに滅びた後」に当てはまることになる
しかしながらそう考えると大きな矛盾が生じる
というのも、フィリアノールの眠りが破られた後も、シラは生きているからである
彼女は神の末、公爵の娘であることを自称し、ミディールとも友人であるという
私も神の末、公爵の娘、シラ。そして、ミディールの友人です(フィリアノールの騎士、シラ)
シラの言を信じる限り、彼女が生きている限りは、「神がとうに滅びた後」は決して実現されない
恐らく作中における歴史の最後に位置する砂漠エリアでさえ、ミディールのやって来た「神がとうに滅びた後」に適合しないのである
この矛盾に対する仮説は二通り考えられる
もっともシンプルなのは、ミディールはシラが灰の英雄に殺された後の、そのさらに遥か先の未来からやって来たのだ、と考えることである
ただし、灰の英雄がフィリアノールの眠りを破った後では、彼女の夢である輪の都は存在していないのだから、戻ってくることは不可能である、と思われるかもしれない
しかしながら、灰の英雄がそうできるように「篝火」を使えば輪の都に戻ることは可能である
そして事実、ミディールは「戻ってきた」と表現されている
神の末
もうひとつの仮説はややこしいのだが、ミディールのやって来た時代を作中の範囲内に留めることができる
そもそも上でシラは神の末であることを“自称し”、と述べたように、この矛盾は彼女の言葉を信じる限りにおいて生じる
アイテムテキストと異なり、NPCのセリフには虚偽が含まれていても問題はない。物語において登場人物は真実を述べなくてはならない、というルールは存在しないからである
※アイテムテキストはそれとは異なり、ある意味で作者の言葉であるので、虚偽は含まれないという前提が必要である
シラの素性について記しているのは「シラの鎧」である
シラの鎧
フィリアノールの騎士、シラの装束
古い由来には珍しい女性用の鎧
白銀の胸当てに金糸のショール
緑衣のスカートを組み合わせたそれは
王女の侍女、そして王族の末裔に相応しく
控えめだが上品な美しさを持っている
またシラの頭冠にあしらわれた「バイバルの真珠」も彼女の素性をほのめかしている
シラの頭冠
フィリアノールの騎士、シラの頭冠
繊細な銀細工に、バイバルの真珠があしらわれている
さて、この2つのアイテムテキストには、シラが神の末であるということは記されていない
ここに記されているのは、王女の侍女であり、そしてバイバルの真珠のあしらわれた頭冠を被る、王族の末裔ということだけである
彼女は神の末ではなく、王族なのである
冷たい谷の踊り子の例から言って、王族は神の一族ではないのか、と思われるかもしれない
しかしながら、彼女が王族であるのは、彼女の父が公爵だからである
公爵の娘も自称に過ぎないが、こちらは矛盾が生じないので、虚偽であると断定できない
またバイバルの真珠のあしらわれた頭冠を被っていることからも、彼女の父が確かに公爵、白竜シースであることが推測されうるのである
分け与えられた王のソウル
シースはグウィン王に与して古竜を裏切り
後に公爵として王の外戚となったとき
その偉大なるソウルを分け与えられた
王の外戚、つまり“王族となったシース”の娘であるから、彼女は王族なのである。だが、彼女はあくまでも竜の娘であって、神ではないのである
よってミディールのやって来た「神がとうに滅びた後」の時代とは、フィリアノールが彼女の“夢”を残して死んだ以降の時代、ということになる
竜
前段でシラは公爵シースの娘であるから王族である、と述べた
これを素直に解釈するのならば、シラは竜の娘になるので「竜族」ということになる
しかしながら王族の地位にあるだけならば、シラが竜族である必要は無い
というのも義理の娘であっても、公爵の娘であり王族である、という状況は可能だからである
つまりシラは生物学的に竜の末である必要はないのである
ゲームキャラクターとしてのシラは雷への耐性がやや高い
一方、竜族は雷を弱点としている
雷の槍
雷の槍は珍しい雷属性の攻撃力を持つため
魔法や炎に強い対象にも有効となる
特に竜族には、大きな威力を発揮するだろう
もしシラが生物学的にシースの娘であったとしたら、雷への耐性は持っていないはずである
聖女
DS1において、白竜シースは聖女をさらって何かの実験を行っていた
その失敗作が書庫塔の底部にうごめくスキュラたちである
聖女の成れの果て |
彼女たちは蛇に似た怪物に変異しているが、蛇は竜のなりそこないであるとされる
貪欲な金の蛇の指輪
竜のなりそこない、蛇を象った金の指輪
発見力を高める
白竜シースが何かを造ろうとして、その失敗作が蛇なのだとしたら、彼が造ろうとしていたのは「竜」であろう
聖女から竜を造ること、それが白竜シースの目的のひとつだったのである
ただし上述したように、聖女竜の完成形をシラとすることはできない。なぜならシラは竜の最大の弱点である「雷」へのやや高い耐性を持っているからである
シラ
ここで整理しよう。アイテムテキストからは、シラがフィリアノールの侍女であること、王族の末裔であることは確定している
また頭冠にあしらわれたバイバルの真珠から、公爵である白竜シースとの関連も疑われる
そして神の末であるかはやや怪しいが、竜の末でないことは確かである
さて、戦闘中HPが減るとシラはエストを飲むが、エスト瓶は古来より不死と共にあり、また不死人の宝でもある
エスト瓶
鈍い緑色のガラス瓶
不死人の宝
篝火でエストを溜め、飲んでHPを回復する
古くより、不死の旅は篝火を巡り
エスト瓶はいつも旅と共にあった
エストのかけら
古来エスト瓶は不死と共にあり
これは砕かれた希望なのだろう
要するにシラは「不死人」である
その大きさからも分かるように(神族は例外なくプレイヤーより大きい)、シラは神族でも竜族でもなく、人、それも不死人なのである
彼女はシースが王の外戚になるためにグウィンに贈った娘たちの一人であり、そのグウィンから侍女として末娘に遣わされた一人なのである
※おそらくシースが不死のウロコの研究の果てに発狂する前の時代のことであろう
ミディールの友
シラがことさら「ミディールの友」を強調する理由はなんであろうか。そもそも竜を友と呼ぶに至る経緯はどのようなものであろうか
ミディールは神に育てられたことは、テキストに記されている
闇喰らいのミディールのソウル
古い竜の末裔ミディールは、神に育てられ
朽ちぬが故に、永遠に闇を喰らう使命をもった
神がとうに滅びた後も、忘れることはなかった
そして最後には古い約束を守るために、輪の都に戻ってきている
この戻ってきたという言葉には、かつて竜は輪の都に在住していたことが含意されている
古い約束はその際に結ばれたものであろう
古い約束に従い、王女の眠りを守るために
…貴方に、その竜を倒して欲しいのです
彼のすべてが闇に侵され、約束すらも忘れてしまう、その前に(フィリアノールの騎士、シラ)
さて、輪の都には火の時代の終わりまで「深淵の沼」が残っていた
輪の都は、ミディールが喰らうべく使命づけられた「闇」が、世界の終わりの時まで存在している場所なのである
闇を喰らわねばならないミディールが、輪の都の深淵の沼を諦めて外の世界に旅立つ、というのはやや腑に落ちない話である
かつての輪の都には深淵は存在しなかったのだ、とすることも可能かもしれない。しかしながら、大昔の竜狩りに列した輪の騎士のフードは深淵に浸されている
輪の騎士のフード
彼らは、深淵に浸された黒布を被り
またその目を幾重にも覆う
火の封がすべての
見えざるものをかき消さぬよう
それは、神々への小さな抵抗である
竜首の盾
かつて輪の騎士たちは
神々の要請に応じ、竜狩りに列した
だがそれは、決して謳われなかった
また神々への小さな抵抗、とあるように輪の騎士のフードが深淵に浸されたのも、神々が存在していた時代のことである
つまり、輪の騎士が竜狩りをしていた時代から、輪の都には深淵が存在したのである
よってミディールは闇を喰らうという使命を棄ててまで、外の世界へ旅立った、ということになるが、それにはそれ相応の出来事がなくてはならない
少し話は逸れるが、シラは奇跡「雷の矢」を使用してくる。それは竜の瞳を射抜いたという逸話をもつ奇跡である
雷の矢
神々の時代、数少ない女騎士たちが
竜狩りに用いた奇跡
雷の弓を引き絞り、雷の矢を射る
槍に比べて射程距離に優れ
彼方から竜の瞳を射抜いたともいう
美々しい物語には、誇張が付き物だ
これと符合するように、闇喰らいのミディールの両眼は閉ざされている
またシラはミディールの棲む闇の谷の場所を知っており、さらに白霊として助力してくれる(助けにならないが)
以上を鑑みると、かつてシラはミディールと戦い、輪の都から追放した考えられるのである。古い約束とはその時に交わされたものであろう
シラがミディールを友と呼ぶのは、かつて刃を交えその実力を認めたからである(少年マンガ的な)
雷の矢を使ったのは女騎士たちである。つまり騎士道を貴ぶ彼女たちにとって、実力のある相手は敵であると同時に、敬意を払う対象でもあったのである
両眼をシラに射抜かれた後、ミディールは王女の眠りを守るという誓約を立てて(あるいは言い聞かせられて)、輪の都から追放されたのである
しかしやがて彼は闇に侵され、古い約束以外のことを忘れてしまったのである。そして最後は約束に導かれるように輪の都に戻ってきてしまったのである
ここで王女の眠りを守るために輪の都に近づかない、という約束が、王女の眠りを守るために輪の都に行かねばならない、というふうに反転してしまっている
シラの言うように、確かにミディールは古い約束に従い、王女の眠りを守るために、輪の都に戻ってきたのである
ただしそれは、シラからすれば憂慮すべき状況である。なぜならば、王女の眠りを守るためにミディールを旅立たせたというのに、戻ってきてしまったからである
そしてミディールのすべてが闇に侵され、約束すらも忘れてしまった時には、彼は必ずフィリアノールの眠りを妨げることになる
というのも、フィリアノールの持つ「殻」のなかにこそ「闇」は封じられているからである(詳細は次回)。闇を喰らう使命を持つミディールは必ずや殻に触れ、そして眠りは破られるのである
蛇足
動画用に急いで書き上げた下書き的な考察。修正するかもしれない
一応、シラの王族という言葉は小人の王の王族という解釈も可能だと思います。
返信削除それならば、不死人であることが自然に説明がつきます。
ただし、シースとの関連が弱くなりますが。