シリーズ考察2で考察したダークソウルを再び取り上げる。Reとあるのは、考察2への反論的考察だからである
大樹
はじまりの火は何を燃やしていたのか、という根本的な謎がある
この謎に対する答えを直接示したのが、DS3のラストステージ「最初の火の炉」である
まさしく、最初の火が燃えたのはこの場所なのである。そしてこの場所とは、巨樹の切り株である
であるのならば、はじまりの火はこの大樹を燃やしていたのである
考えてみれば、オープニングに登場する「存在」のなかで燃えそうなのは大樹だけである
古い時代
世界はまだ分かたれず、霧に覆われ
灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった
霧は燃えず、岩も燃えないだろう。朽ちぬ古竜もまあ燃えるとはいいがたい。だが大樹ならば炎によって容易に燃やされるであろう
実際、最初の火の炉の大樹ほど大きくない大樹は、イザリスの魔女と、混沌の娘たちの巻き起こす炎によって燃えている
はじまりの火が何によって点火されたのか、という点についてはいまだ明瞭な結論が得られていない
だが、そのはじまりの火が何を燃やしていたのかはこれではっきりした
大樹である。それはいわゆる世界樹と呼べるような樹であった
王のソウル
大樹は燃やされ、その火によって世界に差異をもたらした
だが、いつかはじめての火がおこり
火と共に差異がもたらされた
熱と冷たさと
生と死と
そして、光と闇と
そして闇から生まれた幾匹かが炎に惹かれ、王のソウルを見出すことになる
そして、闇より生まれた幾匹かが
火に惹かれ、王のソウルを見出した
この火は大樹を燃焼させて燃え上がる炎である。大樹の枝々は燃え上がり、そして燃え尽きて地上に落ちる
ダークソウルの世界ではソウルは生命の源である
人間性
ソウルが生命すべての源であるなら
人のみにある人間性とはなんなのか?
生命が死んだ時、そのソウルは世界へ放出されることになる(この段階ですでに生と死の差異は生まれている)
大樹は燃え、その命は尽きた。燃え上がる大樹の枝々からこぼれ落ちたのが大樹のソウルである(植物も生命である)
闇から生まれた幾匹かが火の側で見出したものこそ大樹のソウル、すなわち王のソウルである
大樹のソウルはこぼれ落ちた衝撃からか、あるいは燃え尽きた順番にソウルが漏れていったからか、分割された状態で幾匹かに見出された
※分け与えられた王のソウルにあるように、王のソウルは分割することができる
彼らは王のソウルにより王の力を得た
最初の死者、ニト
イザリスの魔女と、混沌の娘たち
太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち
彼らのソウルを集めることで火を継ぐことができるのは、王のソウルの本性が樹木だからである(樹木は燃える)
それは並のソウルでは不可能なのである。火継ぎが可能なのは大樹に由来する王のソウルだからである
ダークソウル
そして四つ目のソウルを見つけたのが誰も知らぬ小人であった
そして、誰も知らぬ小人
…かつて火のはじまり、貴公ら人の先祖は
古い王たちの後に、四つ目のソウルを見出した
闇のソウルだ(闇撫でのフラムト)
大樹が燃えたが一部は不完全燃焼を起こし、それは冷えて黒い炭となった
それは炭ではあるが、大樹に由来する大樹のソウルを秘めている。大樹に由来する黒いソウル、ダークソウルである
小人はダークソウルを断片化し、人はそれを受け継いでいる
※宮崎英高氏は「ゲームの食卓」において、小人はダークソウルを見つけそれを断片化した。人類はその魂の断片を持っている、と明かしている
しかしあまりに断片化が進み、それは王のソウルとしての使用に耐えないほどに小さくなってしまっている
王のソウルたる資格の1つは大きさにある
お主が、大王グウィンを継ぐには
偉大なソウルでその器を満たさねばならぬ
だが、かの王のソウルは、際だって巨大なもの…
よって、王の器を満たしうるソウルを持つものは、幾人もない(王の探求者フラムト)
四人の公王やシースに分け与えられた王のソウルと比較にならないほど、ダークソウルは小さく断片化しているのである(人の数ほど)
※奴隷騎士ゲールが人の中のダークソウルを集めるのではなく、輪の都の小人の王たちにそれを求めたのも、王のダークソウルと呼べるものは、小人の王たちにしか残されていなかったからであろう
だが、それはダークソウル。闇に違いはない
闇からは生命が生まれる。そしてまたそれは炭であるがゆえに、燃える
人間性
闇から生まれたのは「人間性」である
人のみがもつという人間性は、人にのみ受け継がれた闇から発生するのである。他の生物は闇を持っていない。なぜならば闇は小人が見つけ人にのみ受け継がれたものだからである
その闇から発生した人間性は、闇が炭であるがゆえに「炭の精」とも呼べるものである
大樹に由来する炭の精であるから、人間性を篝火に捧げると火の勢いがますのである
薪の王たちは、王のソウルを燃焼させ、また時にはダークソウルを燃焼させて火継ぎを行なってきた。それは王のソウルが大樹に由来するソウルだから可能なことである
しかしやがてソウルは燃え尽き「灰」が残される
火の無い灰、とは大樹のソウルを失った薪のことである。彼らは王のソウルと共に薪として燃やされ、あるいは薪にもなれず燃え尽きて、灰になったのである
というのも王のソウルとは大樹のソウルだからである。それは植物の相を持つがゆえに薪になることができ、また燃え尽きると灰になるのである
篝火の化身である火防女には、人間性とその闇が蓄積していく。人間性は火防女の魂を喰い荒し、闇は小さな虫を生む
火防女の魂
火防女とは篝火の化身であり
捧げられた人間性の憑代である
その魂は、無数の人間性に食い荒らされ
不死の宝、エスト瓶の力を高めるという
というのも、闇から生まれた者は火に惹かれ、ソウルを見出すやそれを奪おうとするからである
そして、闇より生まれた幾匹かが
火に惹かれ、王のソウルを見出した
Est
エスト瓶は「熱」を溜める瓶ではない
エスト瓶は緑色の瓶と表現されるように、植物の力を秘めた瓶である
エストの英名EstusはEstにラテン語風のusがついたものであろう
Estはゲルマン祖語の anstiz(「恵み、感謝」)から派生した語である
Estが意味するものは多い(「意志、同意、賛成、恩寵、気前、気前の良さ、恵み、優しさ、愛、良い喜び、調和、リベラルギフト、贅沢」)
このうち基本的に第一義とされるのが grace 恩寵である
それは大樹の恩寵なのである
大樹の恩寵とは、つまるところ「果実」である
※ソウルとエストの名前が異なることは、そのふたつが違うものであることを示している。
篝火によって燃やされた人間性は大樹のソウルと闇に分解され、大樹のソウルはエストという果実を生み出す
そして果実(エスト)はエスト瓶に溜められ、闇は火防女に溜まっていくのである
すなわち、篝火は人間性を浄化するための装置である
人間性は火によって大樹のソウルと闇に分けられ、清浄な大樹のソウルは「エスト(恵み)」としてエスト瓶に溜められ、不死のHPを回復する秘宝となるのである
エスト瓶
ソウルは生命すべての源である
人間性
ソウルが生命すべての源であるなら
人のみにある人間性とはなんなのか?
だとしたら、生命力を回復させるエスト瓶に入っているのは「ソウル」、あるいはそこから得られる「恵み」であろうであろう
それが何のソウルかと問われたら、人間性に含まれるソウルである。そして人間性を生んだ闇に含まれるソウルである。さらには闇を発生させた火のソウルである。さらにそれをさかのぼった大樹のソウルなのである
火防女の魂はエスト瓶を強化させるという
火防女の魂
その魂は、無数の人間性に食い荒らされ
不死の宝、エスト瓶の力を高めるという
火防女とは篝火の化身である。つまり火防女の魂とは、篝火の魂ということになる
魂とはすなわちソウルである
篝火のソウルとは、はじまりの火によって燃えた大樹のソウルである
ところでソウルは錬成することで、その特質を凝固させた特別なアイテムを作ることができる
錬成炉
この炉で異形のソウルを錬成することで
その特質を凝固させた特別なアイテムが作られる
エスト瓶とは大樹のソウルによって錬成された特別なアイテムである
エスト瓶
火防女の魂から、その緑瓶は生まれる
彼女たちは、生きて篝火を守り
死してなお、その熱を守り続けるのだ
DS1において錬成炉の代わりとなるのが、火防女の身体である
大樹のソウルによって錬成された緑色の瓶に、大樹のソウルの「恵み」を溜める。大樹のソウルは生命の源であり、それを飲むことでHPを回復することができる
そしてまた、燃え続けている小さな大樹とも言える火防女の魂は、さらなる錬成によりエスト瓶を強化することができるのである
火防女の魂
アイテムとして使用することもできるが
その場合エスト瓶は強化されず
人間性を得、HPを回復し、火防女の魂は失われる
火防女の魂をアイテムとして使うとHPを回復するのは、それが大樹の魂でもあるからである
不死が人間性を使うと生身に戻れたりHPが回復するのは、そもそも人が闇に形を与えられたものだからである
かつて光の王となった者は、
人という名の闇を封じ込め…
そして人は、仮初の姿を得た(アン・ディール)
人間性と人間とは別の相にあるが、本性的には同じ闇の生命体である。人間性とは人が人である条件であると同時に、闇の精霊である
蛇足
自分の考察に対する反論である。自分の仮説への反論が次から次へと浮かんで来るときが考察していて最もスピーディーでスリリングで面白い瞬間である
そしてそんなときに今まで見逃していた最も単純な結論が唐突に浮かんでくるのである
しかしながら、では考察2が完全に間違いだったかというと、そうではないと今も思う
ヴァンクラッドが話すように、ダークソウルには光と闇の相克というテーマが表現されていると思うからである
火を以って闇を統べる
それはふたつを諸共に、引き受けること
それを成す者こそが…(ヴァンクラッド)
これはブラッドボーンの神秘に関する設定と同じ構造なのではないか、と思う
つまり、ブラッドボーンの神秘は人智を越えた上位者の智慧であったり、上位者の神秘的な能力である
これは間違ってはいない
だが考察を進めていくと、その神秘の人間界における根っこにあるのが、得体の知れない軟体生物たちであることが判明していく
この時点で神秘とは、唯物論的な、つまり単なる物理的現象(寄生虫による寄生)の産物に帰着するのである
今回も同じことで、光と闇の相克それ自体は間違っていないのだが、そのうちの闇を詳しく見ていくと、大樹が燃えた炭という物理的現象に行きつくのである
形而上学的なきらびやかな思想を追っていくと、やがて還元主義的な冷たい現実が突きつけられる。そういうことなのかもしれない
かつて意識とは魂なる形而上学の奇跡であるとされたものが、現在では脳神経の興奮によって生み出される副次的な所産とされるように…
ダークソウルの考察記事、面白かったです。
返信削除その中での、はじまりの火、王のソウル、人間性、エストこれらを木にまつわる物理的現象として捉えた際の考察では大樹の種子について、省かれているような気がしました。私が考察を読んで思い浮かんだのは燃える事で発芽する植物の種子です。人間性は燃える事で発芽するユーリカ等の植物の種子の精とも言えるかもしれません。
もしくは、キノコ人と神の雷の力の考察から人間性に想像を働かせるならば。
それは人間性とは人に宿る冬虫夏草のような物ではないか。これは雷の力が菌に由来するというシードさんの考察から着想を得た物で、DS3の高壁立つ亡者の木やDLCの天使の本体からも連想できます。
ダークソウルと人間性は自然現象としてのこの2つ特徴を持つ存在だと考えられます。
はじまりの火の始まり、大樹の点火。
それは世界が自身を拡張したいという意思で始まったと考えます。
霧と灰色の岩と大樹と古の龍それら巨大で不動で無限の存在だからこそ、矮小で、多動で有限である対の存在を欲したのかもしれません。
付け加えで、説教者の語る食餌の時は光の王のソウルを闇のダークソウルが食らう事を示して、自然現象である日食を連想させて、その時生まれる光と闇の相克の輪こそがエルデンリングであり、DSの世界を一新し新たな世界一端を見せたのかもしれないと妄想しました。
大変興味深いコメントありがとうございます
削除大樹の種子については完全に見落としていました
火によって発芽する種子というのはとても優れた視点ですね
火が盛んになると闇もまた濃くなる、というアンディールの言葉とも符合します
ただ、どちらかというと種子は人ではなく、発生源の不明瞭な「巨人」なのかなぁという印象も抱きました
巨人の木の実の種
朽ちた巨人は大樹へとその姿を変えた
死は終わりではなく、生きとし生ける者は
再生の環のなかにある
冬虫夏草はブラッドボーンのウィレーム学長にも重ねられますし、人を超越した者、そして人を超越させるモノのイメージとして選択されるのかもしれませんね
世界が意志によって始まったとする点にも同意です
消してしまったのですが、ブラッドボーンと設定を統合した項で、意志による世界創世を書いた記憶があります
食餌の時を日蝕とする解釈はとても腑に落ちるものです
というのも、日蝕は世界中の神話で、「怪物によって太陽が喰われる」というふうに理解されているからです
同時に日蝕は北欧神話における世界終末の際の光景でもあります(狼スコルによって太陽が吞みこまれる)
ダークソウルによる光の食餌、と解釈することはDS3の世界が置かれた状況と合致します
自然界で唯一火が起こるとしたら、雷だと相場が決まっていますよ。
返信削除確かにそうですが、隕石もワンチャンないでしょうか
削除ブラボだと、雷獣パールと恐ろしい獣はよく分からん立ち位置なんですよね
そして、エーブリエタースは上から落ちてきた隕石を拝んでるようにも見える