2021年4月12日月曜日

Dark Souls シリーズ考察4 カリム

カリムは白教信仰の盛んな国である。しかしカリム公アルスターに代表されるような薄暗い側面もあわせもっている


血咬みの指輪[DS1]

カリム公アルスターが作らせたと言われる

独特の「咬み指輪」の1つ


その製法にはよからぬ噂もつきまとうが

確かな効果があり

血咬みの指輪は、装備者の出血耐性を高める



血咬みの指輪[DS3]

カリムに伝わる「咬み指輪」のひとつ

出血耐性を高める


柔らかな石に不吉を感じるものか

その製法は禁忌であるという

聖職者だけが、それを弄ぶのだろう



カリム伯、カリム公

余談だが、アルスターはカリムだったりカリムだったりする


解呪石

半ば頭骨が溶け込んだ灰色の石

カリム伯アルスターの秘宝の1つ


一般に公侯伯子男とあるように、爵位の序列的には「」が上である。しかし英語版を見ると、カリム伯は「」を意味する Earl of Carim(ショーテル)や、Earl Astor(アストラの槍 DS3)と記されるのに対して、カリムの方は Sir Arstor of Carim(血咬みの指輪)と記されている


公が公爵の意味ならば、Duke あるいは prince と綴られるはずなので、騎士や準男爵の称号である Sir と呼ばれるのはおかしい


英語のSir Arstor of Carim を訳すならば「カリムの騎士アルスター」あるいは「カリムの男爵アルスター」になる


よって、アルスターはもとはカリムの騎士か準男爵だったものがやがて伯爵にまで上り詰めた、とも考えられる


しかしながら、カリムの騎士が作らせた、とは違和感の覚える表現である。ということでより貴族的な準男爵であったとするのが自然と思う


どちらにせよ、カリムのアルスター卿が作らせた、というニュアンスでとらえるのがいいかと思う


ただし、「Sir」は17世紀までは「聖職者」の称号としても用いられていた(参考


DS3の血咬みの指輪に、その製法は禁忌であり聖職者だけがそれを弄ぶ、と言われているのは、このためかもしれない


血咬みの指輪[DS3]

その製法は禁忌であるという

聖職者だけが、それを弄ぶのだろう


ここで重要なのは聖職者だけが弄ぶ、と表現されていることである(作ることができるではない)


つまりアルスターは爵位をもつ聖職者であり、聖職者であるがゆえにその製法を知っており、(その製法を弄び)人に指示して作らせたことになる


なお英語版「アルスターの槍」では、Earl Arstor the Impaler と記されていることから、アルスターが串刺し公と呼ばれたのは伯爵時代のことである


串刺し伯ではなく串刺し公としたのは、そちらのほうが語感が良いからかもしれない



カリムの白教

いきなり話が逸れたが、カリムにはアルスターに代表されるような薄暗い一面があり、一方で白教信仰の篤い国でもある


モーンの兜

大司教の使徒モーンを象ったものであり

特に兜は、司教座に並ぶ石像の頭部そのものである


モーンの大槌

カリム大神殿の魔除けを象ったものであり

使徒モーンの異形の怒りを宿している


カリムにはカリム大神殿という巨大な神殿があり、司教座も置かれている。その司教座に並んでいるが異形の形をした石像である


この異形の頭部、グラフィックでは「竜体化」した人によく似ている



少なくともDS1の時代において、白教の主神はロイドとされる。であるのなら、司教座にならんでいるこれらの石像は、信徒としての理想(モーン)に到達した姿、あるいは主神ロイドの姿そのものなのではないだろうか


もし仮にカリムの白教において、竜体化した姿が理想であるとするのならば、カリムの白教の正体は「古竜崇拝」である


さて、ロイドとはケルト語系の言語では「灰色」を意味する名前である


灰色とは、古の時代の色である


古い時代

世界はまだ分かたれず、霧に覆われ

灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった


灰色なのは岩だけではなく、[岩と大樹と、朽ちぬ古竜]にかかっているとしたならば、灰色で竜の姿をしたそれは「古竜」である


つまりロイドとは灰色の古竜だったのである


朽ちぬ古竜は完全性の象徴であるがゆえに、ロイドの剣の指輪のようにHPが最大(完全)である際に加護が得られるのである


ロイドの剣の指輪

白教に仕える騎士に与えられる指輪

主神ロイドの法の剣を象っている


HPが最大のとき、攻撃力を一時的に高める


だが白教のロイド崇拝は、今や廃れて久しい

カリムの司祭たちは声高に主張する

ロイドは傍系にすぎず、主神を僭称したのだと



不死狩りの英雄

白教の中のロイド崇拝が廃れたのは、端的にいえば灰色(ロイド)では黒を抑えきれなくなったからであろう


ロイドの騎士たちは本来は不死狩りをする英雄であった


ロイドの護符

主神ロイドの騎士が不死人を狩るときの道具

効果範囲内でエストによる回復をできなくする


人の世界では、不死人は呪われた化け物であり

不死を狩るロイドの騎士は英雄ですらある


その英雄は、この祝福された護符により

不死の回復だけを封じ、正々堂々と戦うのだ


火が陰ったことで闇が勢力を増し不死が増え黒教会のようなものまで登場してくる始末


ついに灰色のロイド崇拝は捨てられ、信者たちはより純化した白、あるいは(深みや不死)へ傾倒していったのである


カリム(Carim)は南アルタイ地方の言葉で「ハーフ」を意味する。白と黒のハーフであったカリムがやがて灰色であることを捨て、白と黒へ分化していったのであろう


カリムの不死狩りの伝統は、DS3において「亡者狩りの大剣」として受け継がれている


亡者狩りの大剣

仮面の騎士が振るい続けたという大剣

亡者たちの脳裏に刻まれた恐怖の記憶


亡者に対して特に効果が高い


亡者狩りの大剣呪腹の大樹のソウルを錬成することで作ることができるが、呪腹の大樹のソウルにより作られるもう一つの武器が「アルスターの槍」である


いうなればカリムの二面性、白教の不死狩りアルスターによる残忍性を呪腹の大樹は兼ね備えているのである(それがあらゆるものが流れ着いた結果であれ)



ロイド信仰

白教のロイド崇拝、と言われるように、白教は多神教である


灰色のロイドを筆頭に、白のグウィン、明るい赤のフラン(ケルト語で明るい赤)、グヴィネヴィア(白い、美しい、神聖な)や、グウィンドリン(Gwendolenで白い輪や白い弓。また月の女神に由来する名)等々


このうち灰色のロイドが主神とされたのは、白教に根強く残る古竜崇拝の名残りである


グウィンはもともと闇から生まれた幾匹かのうちの1匹であった。その1匹が王グウィンとなったのは、はじまりの火に王のソウルを見出し、王の力を得たからである


要するに王グウィンという存在は闇と王のソウルに由来し、言うなれば闇と王のソウルが王グウィンの生みのである


さて、はじまりの火が最初に燃やしたのは灰色の大樹であった


最初の火の炉、すなわちはじまりの火が灯った最初の炉である

霧に覆われた未分化の世界において存在したと言われる、灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜。これらは兄弟的存在であり、言及される順番的には灰色の岩が長兄、大樹が次兄、朽ちぬ古竜が末弟である(生命ではないので厳密には兄弟とは言えないが)


さて、はじまりの火を灰色の大樹の燃えたものとすると、グウィンの見つけた王のソウルとは、もとは灰色の大樹のソウルであったと考えられる


王のソウルを集めることが「」の王に繋がるのは、それが元は大樹のソウルであったからである


すなわち、グウィンの両親は闇と灰色の大樹ということになる


よって朽ちぬ古竜はグウィンの叔父となるのである



白教の司祭の指輪

グウィン王の叔父、主神ロイドの使徒である


叔父とは

父親や母親(養父母や再婚相手を含む)の弟、ないし妹の夫(叔母婿)にあたる男性、祖父母の養子や再婚相手の息子、父母の養親の実の息子で、父母より年少の者を指す語。(wikipedia)




カリムの騎士と聖女

話をカリムに戻す


カリムには聖女と騎士の物語が伝わっている


モーンの鎧

カリムの騎士は、生涯一人の聖女に仕えるという

かつてモーンが、ある女神に仕えたように


このモーンは女神クァトの従者であり、

女神クァトとのあれのこれの後にモーンは大司教の使徒になったという


モーンの指輪

モーンとは、女神クァトの従者であり

後に大司教の使徒になったという

全ての弱き者を慰める力として


モーンが伝えたのは、女神クァトを巡る死の物語である


治癒の涙

モーンは女神クァトの従者としても知られ

これは彼女を巡る死の物語であるという


彼女の死」を巡る物語ではなく、彼女を巡る「死の物語」である


英語版では以下のような文章になっている


Caressing Tears is a tale of the many deaths surrounding the goddess Caitha, of whom Mrne was a known follower.


治癒の涙は、モーンが信奉者として知られていた女神Caitha(クァト)にまつわる多くの死の物語である。


多くの死の物語である。そのうちにクァト自身のものが含まれている可能性もあるが、しかし彼女自身も多くの死に見えたことになる


赤い涙石の指輪

それは女神クァトの、悼みの涙であるという

そして涙とは、死の側でこそ美しいものだ


青い涙石の指輪

それは女神クァトの、哀れみの涙であるという

そして涙とは、死の側でこそ美しいものだ


女神クァトが流した悼みと哀れみの涙は、それらの死に見えたときに流されたものであり、英文では決して彼女の死のみに限定していないのである



悪神

女神クァトは慈愛の神とされる一方で、悪神という評判もあった


クァトの鈴[DS2]

涙の神クァトの加護を受けた聖鈴

闇術専用の触媒で、奇跡には使えない


涙の神クァトは、哀しみに寄り添う

慈愛の神という位置づけが一般的だが

一部では人を絶望の運命へと導く

悪神とされている


クァトの二面性を聖職者たちも認識しており、しかも秘匿している


クァトの鈴[DS3]

女神クァトの加護を受けた聖鈴

カリムでも一部の聖職者のみが持つもの


奇跡触媒としては珍しい理力補正を持ち

偶然にも闇に近い奇跡と相性がよい

大主教の名において、それは秘匿され

また固く許されていない


クァトの鈴はDS2では闇術専用とされ、DS3でも闇に近い奇跡と相性がよいとされている


このことから、クァトはたんなる聖女というだけではなく、闇の部分も併せ持っていたことがわかる


よって、彼女を巡る死の物語とは、彼女(聖女)を巡る死(闇)の物語なのである



イリーナとイーゴン

聖女と闇の物語はDS3において、イリーナとイーゴンの物語として繰り返されている


暗く、何も見えず、闇が私を噛むのです

ずっと、ずっと、虫たちが、私を噛み苛むのです(カリムのイリーナ)


イリーナの遺灰[DS3]

イリーナは弱い女であった

その弱さが彼女をカリム聖女たらしめ

そして全てを裏切ったのだ


弱さこそがイリーナをカリム聖女たらしめた。逆説的にいえばカリム聖女は闇を恐れなくてはならないのである(結果的に悲劇に終わろうとも)


それは最初の聖女が闇を恐れることなく、闇を受け入れてしまったからであろう


それ故に、教会は彼女の闇の部分を禁忌とし、固く秘匿したのである


モーンが伝えたのは、理想像としての女神クァトである。秘匿された闇のクァトは殺害されたと思われる。奇跡の物語さえあれば、実物は必要ないからである


モーン(Morne)という名前には、古フランス語で「弔うために」や英語で「喪に服する」という意味がある



もう一つの物語

あるいは、クァトは殺されかけたものの生き延びたのかもしれない。白教教会から追放された彼女を受け入れてくれるのは、追放者のための地「エレーミアス絵画世界」であろう


深い沈黙[DS2]

追放された聖職によって編み出された闇術

屈辱と嫉妬の中で生み出されたこの術は

暗い情念の塊である


沈黙の禁則[DS1]

黒髪の魔女ベルカの伝える秘儀

効果範囲内ですべての魔法が使えなくなる


沈黙の禁則[DS3]

ロンドール黒教会の奇跡


闇のクァトはそこで「黒髪の魔女ベルカ」となり、やがて罪の女神ベルカになったのである


※この仮説では女神クァトの物語はかなり古い物語となる。女神クァトと言われるように神々の気配がまだ濃厚だった時代のことである



Caitha

クァトの英名はCaithaというやや奇妙なものになっている(ちなみにベルカはVelkaである)


もしクァトという音を英語に当てはめようとすると、Quatとするのが自然かと思う


Quatという語は、古英語では「汚物」を意味し、中世英語では「報復」や「罰の行為」を意味する語である


因果応報[DS1]

黒髪の魔女ベルカの伝える奇跡


罪とは罰せられるべきものであれば

を定義し、を執行するのが

罪の神ベルカの役目であろう


クァトは受けた屈辱の報復を行なうために信仰を捨て罪を定義し罰を執行する罪の神ベルカとなったのである。彼女は借りを返さなくてはならなかったのである


ちなみにVelkaはフィンランド語で「債務」を意味する名である


またCaithaからaを抜いたCaithはアイルランド語で「摩耗」「消費」、スコットランドゲール語で「過ごす」「廃棄物」「浪費家」等の意味がある。Caithの形容詞形はcaithteであり、「使い古した」「過去」という意味である


要するにクァトもCaithaも「汚物」や「廃棄物」といった負の意味を持ち、それは「使い古した」「過去」であり、「報復」や「罰の行為」を行なう者でもあるのである


そしてベルカは、罪という債務を罰として返す必要があるのである



黒教会

さて、ベルカのタリスマンが信仰によらず理力を奇跡の糧とするのは、彼女が白教への信仰を捨てたからである


ベルカのタリスマン[DS1]

神の奇跡をなす触媒

罪の女神ベルカのそれは彼女の黒髪であり

信仰によらず理力を奇跡の糧とする


彼女にとって罪とは人のうちにある闇を見ようとしないことであり、罰とはその闇を直視させること、すなわちそれはロンドール黒教会として結実したのである


ベルカの罰はDS3において成就する。すなわち法王サリヴァーンの登場である


サリヴァーンはアリアンデル絵画世界出身である


冷たい武器[DS3]

若き魔術師サリヴァーンが

絵画を去る前に残した魔術のひとつ


そしてベルカの罰はついに白教の主神に至ったのである


法王サリヴァーンのソウル

イルシールの法王サリヴァーンは

旧王家の主神を廃聖堂に幽閉し

ついには神喰らいに供したという


この法王サリヴァーンのソウルによって錬成されるのが

裁きの大剣罪の大剣である




ロンドール黒教会

DS1の沈黙の禁則は魔女ベルカの伝える秘儀とされる


沈黙の禁則[DS1]

黒髪の魔女ベルカの伝える秘儀

効果範囲内ですべての魔法が使えなくなる


しかしDS3ではそれは、黒教会の奇跡となっている


沈黙の禁則[DS3]

ロンドール黒教会の奇跡


カリムのうちにあった白い部分、すなわち白教。そのうちにあった黒い部分、すなわちクァトの闇。その追放された果てに罪の女神ベルカとなり、やがてロンドール黒教会に結集したのである


灰色であったカリムが白と黒に分かれ、白い部分はロイド信仰を捨てて白く純化した白教に。そして黒い部分は罪の神ベルカを経てロンドール黒教会に至ったのである


ここにあるのは、灰色(カリム)が(白教)と(黒教会)に分かれるという、色によるある種の言葉遊びである


モーンとクァトの物語がイリーナとイーゴンの物語として繰り返されていることは上述した


しかしDS3にはもう1つ聖女と騎士の物語が繰り返されている


フリーデと騎士ヴィルヘルムである


…申し訳ございません…

貴女の騎士でありながら…

…エルフリーデ、様…(騎士ヴィルヘルム)


カリムの聖女と騎士の白い物語がイリーナとイーゴンであるのならば、フリーデとヴィルヘルムの物語は、カリムの聖女と騎士の黒い物語である


蛇足

これまでのシリーズ考察はそれなりに気に入っているのだが、もっとシンプルに説明できる仮説を思いついたので近いうちに全面的に書き直したいと思う



4 件のコメント:

  1. カリム考察面白く読ませていただきました。
    考察からアルスター公を妄想すると白教という権力から騎士の職を与えられ、表の仕事・不死狩りと咬み指輪に由来する裏の暗殺業により地位を確立した騎士貴族あるいは聖騎士のような存在だと感じました。そして、世界の果てにまで伝わる名と咬み指輪と薄暗い逸話の武器からクァトを巡る多くの死にもアルスター公は関係がありそうですね。
    クァトとモーンとベルカを聖女(女神)、騎士、魔女と要素を抜き出すとアルバの物語とも読み取れると思いました。
    灰色の髪?のクァト(母)から白が抜かれて、黒髪ベルカ(娘)が残ったような色の考
    察も出来るかと思いました。

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    1. ありがとうございます

      アルスターは謎の多い人物です。串刺し公と呼ばれるぐらいなので、多くの死にかかわっていると思います

      より騎士として解釈するのなら、アルスターにも聖女がいたように思えます。白のモーンに対して黒のアルスターの構造と、白い聖女と黒い魔女の構造も見えてくるのかなと考えました

      クァトの物語を聖女、騎士、魔女の物語ととらえると、モーンとアルバは対照的な選択をしていますね

      モーンは聖女(女神)の元に残り、アルバは騎士の座を捨て魔女の元へ去りました

      騎士の選択の違いが、罪の女神ベルカと生きる意味を知ったジャーリーの違いになってくるのかもしれません

      なんとなく色による言葉遊びというか設定構築が重要になってくるような予感があります

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    2. 追記です

      聖女と騎士の物語は恐らくロートレクと女神フィナでも繰り返されていますね

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  2. 白と灰色といえば、シースは「うろこのない白竜」であって「灰色の古龍」ではありませんね

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