火継ぎの儀式
さて、暗い魂の血は絵画世界を描くための顔料である
暗い魂の血
奴隷騎士ゲールの、虚ろに生じた暗い魂の血
アリアンデルの「お嬢様」が
絵画世界を描くための顔料となる
画を描くという行為はDS1の火継ぎの儀式の裏返しである
DS1では火を継ぐことが目標とされ、そのために王たちのソウルを集める。火を継ぐとは世界を更新するとであり、それは新たな世界を創造することに等しい
一方のDS3DLCでは、画を描くために王のダークソウルが必要だったのである。どちらも「王のソウル」であり、ここでいう画を描くとは世界を創造することである
…かつて火のはじまり、貴公ら人の先祖は
古い王たちの後に、四つ目のソウルを見出した
闇のソウルだ(英語版 The Dark Soul.)(闇撫でのカアス)
すなわち火を継ぐことと画を描くことは、双方とも新たな世界を創造することに等しい儀式なのである
しかし火によって創造された世界がグウィンの望む光の世界であるのに対し、ダークソウルによって創造される世界は、火を知り、しかし火に惹かれない画家が、ダークソウルという顔料を用いて描かれる世界である
…火を知らぬ者に、世界は描けず
火に惹かれる者に、世界を描く資格は無い…
大丈夫、忘れてないよ、お母さん…(画家 DS3)
つまり火だけでは不足なのである。新しい世界を描くには火とダークソウルの双方が必須であり、それによってはじめて画家の望む世界が描かれるのである
ではこの画には、灰の名を付けます
ずっと寒くて、暗くて、とっても優しい画…
きっといつか、誰かの居場所になるような(画家 DS3)
火と冷たい闇のソウルによって生み出された世界は、寒くて、暗くて、とっても優しい世界である(闇のソウルが冷たいことについては「不死」参照のこと)
冷たいというほど低温ではなく、闇というほど暗くはない優しい世界、すなわち火とダークソウルを画家の内で統合した世界である
火を以って闇を統べる…
それはふたつを諸共に、引き受けること
それを成す者こそが…(ヴァンクラッド)
それを成す者こそが、新しい世界を創ることができるのである。そしてそれはDS3DLCに登場した画家であった
その世界は光のソウルと闇のソウルを共存させた人間性と同一の組成をしており、故に優しい世界なのである
深淵の主マヌスのソウル
それは尋常のソウルではなく
どろりとして生あたたかい、優しい人間性の塊である
深淵
しかし優しいはずの人間性はひとたび暴走すると災厄を引き起こす
深淵の主マヌスのソウル
マヌスは、古くとも明らかに人であった
人間性を暴走させ、深淵の主となった後も
ずっと寄る辺、あの割れたペンダントを求めていた
人間性が暴走して生まれた深淵の構成要素は人間性である
黒炎(DS3)
深淵より生じる黒い炎は
陰を生まず、何者も分かたないという
それは人間性の火であると
つまり深淵とはマヌスから溢れ出た膨大な量の人間性が溜まったものである
それはマヌスの人間性であるがために、マヌスを主とし、また人間性であるがゆえに、どろりとした液体状をしているのである
しかしこの深淵は人間性とは異なり、光が存在しない
深淵には光を喰らう性質があるからである
騎士アルトリウスが、これを留めに向かいましたが
英雄とて、所詮は闇を持たぬ者
いずれは深淵に飲まれ、闇に食われてしまうでしょう(霊廟の守人エリザベス)
騎士アルトリウスは、グウィンの四騎士でありその本性は神族である。神族は闇を持たない光の存在であり、故に闇に弱く、対抗することができないのである
深淵の主となったマヌスの人間性や深淵自体からも同じように光が失われていったのである。黒炎が陰を生まないのは、深淵に光がないからである
人間性は熱と冷たさ、生と死、光と闇によって構成されている。深淵から光が失われたことで、深淵を構成するのは熱と生と死、冷たさと闇になる
どろりとして生あたたかく優しい、しかし陰の生じない深淵は「熱と生と死、冷たさと闇」によって構成されているのである
マヌスの死後、闇から落し子が生まれ落ちている。彼女たちはマヌスの人間性の闇の部分、すなわち「憤怒」「孤独」「恐怖」「渇望」が生命の形をとったものである
なぜなら人間性は生と死を含む生命そのものでもあるからである
深み
さて、火継ぎを繰り返すうちに世界から熱が奪われていった。この影響が顕著に表れたのが「アリアンデル絵画世界」や「冷たい谷のイルシール」である
アリアンデルに火を、アリアンデルに火を
火を起こす灰を(奴隷騎士ゲール)
腐れを焼く、特別な火だ(奴隷騎士ゲール)
DS3の覇王ウォルニールの時代にはまだ深淵があったようだが、深淵からも次第に熱が失われていった
これにより深淵は「生と死、冷たさと闇」によって構成されることになる
深みである
熱を失ったアリアンデル絵画世界に虫が湧いたように、熱を失った深みにも蟲が湧くようになったのである
蝕み
深みに潜む蟲たちは、小さな顎に牙を持ち
瞬く間に皮膚を裂き、肉に潜り込む
それは激しい出血を伴うという
深みの加護
深みは本来、静謐にして神聖であり
故におぞましいものたちの寝床となる
それを祀る者たちもまた同様であり
深い海の物語は、彼らに加護を与えるのだ
深みが水に関連付けられるのは、どろりとしていた深淵からの影響である
深海の時代
そしてついにエルドリッチは陰った火の先に、深海の時代を見た
エルドリッチのソウル
彼は陰った火の先に、深海の時代を見た
故に、それが遙か長い苦行と知ってなお
神を喰らいはじめたのだ
深みに潜んでいた蟲たち(生命)も住むことができない深海
それは生と死を失った深みである
深みから生と死が失われ、そこは「冷たさと闇」によって構成されることになる
深海の時代である
深海が水と関連付けられるのは、そのはじまりが深淵にあるからである
さて、冷たさと闇といえば、人が受け継いだ闇のことである。エルドリッチもまた新しい世界を創造しようとしたのかもしれない
冷たさと闇の世界に光である神は必要ない。だからこそ彼は神を喰らいはじめたのである
画家
しかしながら、画家と決定的に違うのは火を知ろうとしなかったことだ
画家の母親が言ったという火を知らぬ者とは、エルドリッチのような者のことなのだろう。実際、彼の求めた深海の時代は、生命のまったく存在しない虚無の世界にすら感じられる。彼には世界を描くことができなかったのである
…火を知らぬ者に、世界は描けず
火に惹かれる者に、世界を描く資格はない…
火に惹かれる者とは、グウィンを代表とする神族ならびに薪の王たちのことなのだろう
火を知り、それに惹かれない者が、ダークソウルによって描く世界こそ、画家とその母親が求めた、ずっと寒くて、暗くて、とっても優しい世界なのである
その世界とは、火とダークソウルの双方を引き受けることによって創造される世界である
それは光と闇を止揚し、高い次元において統一した世界である
すなわち光と闇の弁証法により創造される世界である
そして世界を創造するのはいつだって「意志」なのである
蛇足:はじまりの火を燃やすもの
はじまりの火の模造品である篝火の薪は不死人の骨である
帰還の骨片
篝火の薪は不死人の骨であり
その骨は稀に帰還の魔力を帯びる
骨となって尚、篝火に惹かれるのだ
実際に燃えているのは骨の中の「人間性」である
さらに細かくいえば、「人間性」に含まれる「光と熱の部分」である
というのも、もし仮に人間性がダークソウルそのものだとしたら、人間性を持たないグウィンが薪の王になれるはずがないからである(人間性は人のみにある)
闇を受け継いだのは人であり、神は闇を受け継ぐどころか恐れて火の封すら施している
よってグウィンが薪の王になるためには、闇以外の燃料が必要なのであり、つまるところはじまりの火を燃やしているのはダークソウルならびに闇ではない
闇やダークソウル以外のものがはじまりの火を燃え立たせているのである
それは神グウィンが持つ「光と熱のソウル」であり、それはつまり王のソウルである
光と熱のソウルは「火の封」として人間にも与えられ、人間は与えられた火を闇と統合させ、人間性を作り出した
その人間性に宿る「火」が炎を燃え立たせているのである。一方で同量含まれる闇は篝火の化身である火防女に溜まっていく
はじまりの火は、ダークソウル以外の王のソウルによって燃える。なぜなら王のソウルとは、灰色の大樹に由来するソウルだからである
だが炎が盛れば盛るほどに、闇は濃くなっていく
やがて王のソウルが尽きて火が消えたとき、残されるのは闇だけである
しかし遠い先、いつか意志がふたたび「火」を灯す
ずっと深みがなんなのかわからなかったのですが、やっとしっかりした解釈を知ることが出来たと感じます。
返信削除深海もこれなら綺麗につながりますね。
3プレイしただけだと唐突だったものですから、助かりました。
ありがとうございます
削除深淵、深み、深海とすべてさんずいの「深」が付きますから
なにか関係があるのではないかなと思って考察してみました
今後の課題はもう少し暴走した人間性について切り分けができたらいいなと思います
クトゥルフマニア エルドリッチ説
返信削除深海=クトゥルフ だけが好きで、火=エンタメを知らないマニアには、絵画世界=傑作は描けず、
火=エンタメ に惹かれるだけで、深海や闇=クトゥルフを持たない普通の人には、絵画世界=傑作を描く資格が無い
画家ちゃんも狩人も、正体は宮崎ちゃんだったとはたまげたなぁ
実際、創作論と解釈するのも面白そうですね
削除宮崎氏の好きなコンテンツ(デビルマンとかベルセルク等)はどれも「深海や闇」に例えられそうな、ドロドロとした黒いものを内包しています
ただベルセルクもそうですが、闇一辺倒ではなくて「黄金時代編」のようにキラキラと輝く部分も描かれているんですよね
男性の心にある女性姓をアニマといいますが、DS3の画家は宮崎氏のなかにあるアニマなのかもしれません(『蒼天航路』の許褚のうちに「可憐なはな垂れ姑娘」がいるように)
深淵の考察面白かったです。この考察で画家に関して思い浮かんだ事があります。それは「画家のお嬢様」こそがはじまりの火の炉でダークソウルを見出だした小人の末裔ではないか。
削除ダークソウルに侵された血を素にした顔料で世界を描く力?を持つ存在であり、絵画の刷新を阻むフリーデやヴィルヘルムが殺せず幽閉するしかないという事。画家が黒教会にとって御旗と言うべき小人の末裔ではないのか。
加えて記事でも取り上げられた「火に惹かれる~」の箇所より小ロンドや輪の都に幽閉された小人の王たちを指して、それらと袂を別った小人の集団がいたのです。そして、「火を知らぬ」とは画家の母親や画家より前の世代が絵画世界に引きこもったまま火による差異を知らず、世界を作れなかった原因の反省とも取れます。
あと、画家をよく観察すると目が赤く瞳が縦に長く首筋には鱗らしき物が見えます。これは小人は古竜の末なのか、ダークソウルの力なのか、よく分かりません。シードさんはどう思われますか?
追加でもう1つ、カリムの白教、青教、灰の古竜信仰、黒教会等の色で統一されたDSの宗教観を考えると白教の白とはキャンバスを示している。それは灰色だった世界が拓かれて様々な色が生まれた光景を見た存在がそう名付けたのかもしれません。
ありがとうございます
削除画家の素性については、所在地が絵画世界であることや身体的特徴から、半竜プリシラの血を引く者ではないかと考えています
元々DS1のプリシラはヒロインとして考えられていて、様々な要因で今の位置に納まったものです。シリーズの最後にそのプリシラの血縁をヒロインに据えることで、けりをつけたのかもしれません
また、色はDS世界では重要かと思います。考えてみれば色そのものが差異のようなもので、白い光が様々な色を内包しているのは虹からも分かりますね。白教とはただの白ではなく、全ての色を内包する色という意味もあるのかもしれません
上のコメント、間違えて返信の欄に投稿してしました。すみません
返信削除個人的には深みの宣教師であるあの太っててトゲ棍棒を持った人の唱えている言葉を解読してみるとなにか情報が得られるかと思います。投稿たくさんでうれしいです。体を壊さないようにお過ごし下さい。
返信削除聖堂の教導師ですよね?
削除『ベルセルク』のモズグスに似ている
リスニングは能力的に難しいので、そこは他の方の力を借りることにして、何らかの手段で文字情報が得られれば解読してみたいと思います
最近の投稿が頻繁なのは、1つの考察を3つくらいに分けているのも要因かもしれません
あと画像関係が少ないというのもあるかもしれません(文字による考察は頭の中のそれをアウトプットするだけなので)
よってグウィンが薪の王になるためには、闇以外の燃料が必要なのであり、つまるところはじまりの火を燃やしているのはダークソウルならびに闇ではない
返信削除↑
このグウィンってとこ間違えてません?プレイヤー(主人公)かと。
複雑な話なので私の指摘が間違ってるかもしれません