女神フィナ
グウィネヴィア(Guinevere)の古い形にGwenhwyvarがある
Gwenhwyvarはアイルランドの「Finnabair」に正確に対応する名前で、「Finn」は「白い、美しい、神聖な」を意味する
寵愛の兜
女神フィナの寵愛を表現した
「抱かれ」騎士ロートレクの兜
Finnabairは「白い霊」を意味する名であり、これはグウィネヴィアが幻(白霊?)であったことに対応する
火防女を殺害したロートレクがあの場所にいたのは、グウィネヴィアの寵愛を得ようとしたからである
しかし彼自身もまた、グウィネヴィアが幻であったと知っていたのかもしれない。彼が得ようとした女神フィナは白い霊を意味する名であるからである
また寵愛の指輪には女神フィナについて「運命的な美しさ」を謡われると記されている
寵愛の指輪[DS3]
「運命的な美しさ」を謡われる
女神フィナの寵愛の指輪
英語には the fatal beauty of Guinevere(グウィネヴィアの運命的美しさ)という表現があるという
このことからも、女神フィナはグウィネヴィアと同一神であると考えられる
無名の王の本名
太陽の光の王女はグウィネヴィア、陰の太陽はグウィンドリン
太陽を冠する二人の共通点を考えたとき、名前に「Gwyn」という言葉が関連付けられることに気づく
すなわちGuinevereは古くはGwenhwyvarと綴り、Gwen-はGwynと同じ「白い」を意味する
またグウィンドリンはGwendolenが語源と思われ、ここでもGwynと同じ意味をもつGwenが使われている
※ちなみにGwendolenの「-dolen」は輪(ring)や弓(bow)を意味する言葉である。そしてグウェンドレンという名は月の女神に由来するものと考えられている
※余談だが、グウェンドレンはウェールズの伝説ではアーサー王が恋に陥る妖精の名前であり、魔法使いマーリンの妻の名前でもある
とすると、太陽の光の長子も「Gwyn」あるいは「Gwen」の含まれる名前、あるいは同じ「白」を意味する名前を持っていたと思われる
Gwenの含まれる名前としては、アーサー王伝説にも登場する「ガウェイン(Gawain)」がそうである
Gawainの語源については、ケルト語起源のgwalch(Hawk、鷹)とgwyn(白)の合成語であるという説もある
とはいえ、グウィネヴィアとグウィンドリンと並べてみると「ガウェイン」は異質な感が否めないし、白い鷹というのも唐突である
語感で統一するのなら、グウィネヴィアの古い形の名前である「Gwenhwyvar」(グウェンフウィヴァル)とするのもありかと思うが、この名前は女性名である
あるいは単純にグウィンの息子という意味で「マクグウィン」、グウィネヴィアの変形「ゲイナー」、同じ白を意味するゲール語「Finn」、GwenをさらにさかのぼってWeid- ウェイド、等々
意味からいえば、ゲール語のクネード(Cinaed)やカナフ(Cainnech)も考えられる。クネードは「火から生まれた者の意」であり、カナフは「白い、金髪の」といった意味がある
しかしどれも決め手に欠ける
フィリアノール
一方、DS3DLCにはフィリアノール(Filianore)というグウィンの娘が登場する
Fillianoreをトールキンの人工言語「シンダール語」と解釈すると、「洞窟(複数形)」を意味するFilliと、Anor(e)(「太陽」)の合成語となり、訳すと「洞窟の太陽」という名前になる
しかしながらこれではやや意味不明である
トールキンの別の人工言語「クウェンヤ」には firyanor という単語があり、直訳すると「人の土地」である
firy はphirが元の形であり、「死すべき者(人間)」という意味がある。また、anorはクウェンヤでもAnarの形で「太陽」を意味する
Fili をFiry の変化と解釈し、また anor を「土地」ではなく「太陽」と解釈するのならば、Firyanore = 「人間の太陽」という意味なり、これは作中の設定とも符合する
※しかしややアクロバティックな解釈の感じは否めない
追記
フィアノールではなく、フェアノール(Fëanor)と読むと、FEA「精神」とNAR「火」という意味になる。精神の火あるいは火の精神となろうか
こちらも作中設定に符合するような名前である
Anor
やや強引ながら、娘のフィリアノールも「太陽(火)」の名がつくことになる。そしてそれはシンダールやクウェンヤ語における「太陽」である
ということは、太陽の長子にもシンダール語やクウェンヤ語の「Anor or Anar」という名が冠されていた可能性はあるかもしれない
太陽の長子、転じて「太陽の息子」を現すクウェンヤ語には「Anarion」がある。これは、そのままAnar(太陽)と息子を示す接尾辞「-ion」の合成語である
作中では太陽は Anor の綴りであることから、もし仮にそのままの名前で登場するのであれば「Anorion アノリオン」という名前になったと考えられる
トールキンの小説においてアナーリオンはエレンディル王の息子であり、またイシルドゥアの弟である
イシルドゥア(Isildur)は「 Isil (月)の dur(しもべ)」という意味がある
つまりアナーリオンとイシルドゥアは、「太陽と月」という対照的な名前なのである
太陽と月の対照性は、アノール・ロンドすなわち「太陽の道(天国、港)」と、冷たい谷のイルシール(Irithyll)、すなわち 「Ir (When), Ithyl(Moon)」で「月の時」としても示されている
※ルーシエンの歌の最初のフレーズに「irithilammeneruchin」という文章があり、「月が私たちにとってエル(Eru)の子供たちであるとき」と訳される
グウィンドリン
グウィンの息子のうちにも、月の名を持つ末子「グウィンドリン」が存在する。とすると、それに相対するのは太陽の名を持つ長子ということになろう
ただし上にも書いたように、アナーリオンはエレンディル王の次男である。これは「太陽の長子」という表現と矛盾する
しかしながら、グウィンドリンは「末子」であり「娘」として育てられている
グウィンドリンのソウル
グウィン王の末子たる彼のソウルは
使用により莫大なソウルを獲得するか
他にない武器を生み出せる
月光の長衣
棄てられたアノール・ロンドを守る
陰の太陽グウィンドリンの長衣
その月の力から、娘として育てられた彼の衣装は
極めて薄い魔力の衣であり
物理的な防御力はまったく期待できない
太陽の長子を長子にするために、月は娘にされまた末子にされたとも考えられる
ヨルシカ
話は脱線するがヨルシカ(Yorshka)は、クウェンヤ語の Yor(血液)とSik(短剣)の合成語で、「血の短剣」という名前なのかもしれない
※hとaは語源的に変化しやすいイメージ
彼女の兄がヨルシカという名と共に贈ったという聖鈴。その聖鈴によって放たれるのが「暗月の剣」や「暗月の光の剣」、すなわち血の復讐である
暗月の光の剣
暗い月の奇跡は、即ち復讐の物語である
だが騎士団総長ヨルシカはその意味を知らず
ただ兄の面影に、彼の物語を語るだろう
復讐の意味は剣だけが知ればよい
太陽
さて、では太陽の長子の本名は「アノーリオン」であるか、というとそう簡単には断定できない
というのも、月がイシルドゥアではなくグウィンドリンであるように、太陽もアノーリオンではなく、別の名前がつけられていると考えられるからである
これで振り出しに戻ったことになる
原点に立ち返れば、太陽の長子は追放されるときに残していったものがある
太陽の光の剣である
太陽の光の剣
空っぽの大王の棺に備えられたそれは
神を追われた彼の、別れの言葉だったろうか
彼にとって太陽の光の剣を置いていくことが「別れの言葉」を意味したと考えると、それは彼にとって非常に重要な意味をもつものであるに違いない
受け継いだ大雷の力は無名の王として振るっているので、大雷の力ではない。また、剣槍も無名の王として振るっているので違う
神を追われた時、彼が失った唯一のものは「名前」である
つまり太陽の光の剣を別れの言葉として備えて(供えての誤記?)いったのは、それが彼の名前を暗喩するものだったからである
太陽の光の剣を返上するという行為は彼にとって親からもらった名前を返上することに等しい意味をもっていたのである
そしてそれは二度と会うことはない、という強い別離の意志を示したものである
さて、英語版では太陽の光の剣は「Sunlight Blade」である
そしてSunlightのウェールズ語形は「heulwen(フェールウェン)」である
この Heulwen という言葉は haul (太陽) と gwen (白)の合成語である
すなわち、他の兄妹と同じようにGwenという言葉が入り、しかもその白は「太陽の白(光)」である
太陽の光の剣は自らの名を暗喩するがゆえに、彼は父親に対しその反逆(古竜との同盟)の意志として、与えられた名を置いていったのである
DS3DLCでは、闇霊やNPCの何人かは「名前」を失っている
この世界において名前は他者との差異を示す重要なものとして扱われている
太陽の長子はあえて名前を捨てることにより、その覚悟と意志をグウィンに伝えたかったのであろう
そして彼はその強い意志を貫き、新しい名前をもたず、最後の最後まで「無名の王」として振る舞ったのである
蛇足
仮に太陽の長子の名を「フェールウェン」としても、やはりグウィネヴィアやグウィンドリンと語感が異なる点は避けられない
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