2021年5月3日月曜日

Dark Souls シリーズ考察9 北の不死院

北の不死院は「選ばれた不死」を選別するための装置である


巡礼者の大鍵

北の不死院の本堂の奥扉を開く

選ばれた不死の巡礼者の大鍵


選ばれた不死とは、巡礼とは

何を意味するのだろうか


巡礼者の大鍵を入手するためには「不死院のデーモン」を倒さねばならず、倒した者だけ巡礼へと旅立つことができる


この良く出来た選別装置を作った国は不明である。わずかにオープニングで「この国」とあるだけである


ダークリングは呪われた不死の証

だからこの国では

不死はすべて捕らえられ、に送られ

世界の終わりまで、に入る


世界の終わりまで牢に入るはずが、北の不死院には別の目的があることが、巡礼者の大鍵のテキストによって明らかにされる


それが上でもいった「選ばれた不死選別システム」である



大カラス

選ばれた不死を巡礼の旅に送り出すのは「大カラス」である




選ばれた不死は、この大カラスによって北の不死院からロードランに運ばれるわけであるが、その初回時にのみ特別なムービーが流れる


崖際に“立っている“不死を掴んでロードランに運ぶのである


実は二回目以降の北の不死院では、不死は卵のように丸くなる必要があり、大カラスは不死を卵として認識している節がある


これはロードランから北の不死院に戻る時も同様である


つまり初回の運搬では、大カラスは不死をとしてではなく、何らかの目的のもとに運んでいることになる


何らかの目的、あるいは何者かの意思と言い換えてもよいかもしれない


カラスは本作においてベルカと密接な関係にある



このベルカの鴉人はインタビューによれば「女神ベルカの信者が、強い妄執によって肉体が変異してしまった姿」である



選ばれた不死を大カラスに運ばせたのは、カラスの女神であるベルカの意思なのかもしれない


絵画世界にはカラスそのものもいる


二回目の不死院

ロードランから不死院に戻るといくつかの変化が起きている


黒騎士が2カ所に配置され、最初に入っていた牢には「おかしな人形」を所持した遺体が置かれている


また亡者となったアストラの上級騎士とも遭遇する


他にも「錆びた鉄輪」が落ちていたり、床が抜けてはぐれデーモンと戦うはめになる


このうちはぐれデーモンゲームスタート時からそこにいるのが見える


またアストラの上級騎士も初回イベントの続きとみれば、いるのはおかしくはない


錆びた鉄輪も最初からそこに置かれていたとも考えられる(初回時にはそこに行けないが)



おかしな人形

しかし「おかしな人形」とそれを持った遺体の存在は何らかの意図がなければありえない事態である


主人公が最初に入っていた。そこに新たな遺体が現れ、その遺体が「おかしな人形」を持っているのである


ということは時系列的には、主人公が選ばれた不死として不死院を離れた後に、「おかしな人形を持った人物(Aとする)」が不死院にやって来た。あるいは投獄されたことになる


Aはどこからやって来て、なぜおかしな人形を持っているのか?


まずAは何者なのか、について考えてみたい


おかしな人形

あまり見ない奇妙な形、奇妙な格好の人形


ある伝承によれば、忌み者だけがこれを持ち

世界のどこにも居場所なく

やがて冷たい絵画の世界に導かれるという


おかしな人形の説明によれば、おかしな人形とは忌み者だけがこれを持ち、とあるので、Aは「忌み者」であることになる


そして忌み者は「絵画世界」(エレーミアス絵画世界)に導かれるという


※ちなみに主人公は「おかしな人形」を入手して絵画世界に入ることから「忌み者」であると思われるが、プリシラに「私たちの仲間では、ないのでしょう?」「ここは静かで、皆優しげですが あなたの世界ではないのでしょう?」と冷たくあしらわれる。厳密には忌み者でないのかもしれない


ということは、考えられる最もシンプルなストーリーは次のようなものである


ダークリングの現れた不死を投獄したら、その不死は忌み者でたまたまおかしな人形を持っていた


実のところ不死院にまつわる数々の事象を考慮に入れないのであれば、これが最も納得のいく答えである



心折れた戦士の証言

しかしながら、不死院にまつわる事象の欠片を拾い集めると、より大きな全体像が見えてくる


最初の欠片は心折れた戦士の証言である


おかしな人形を持っていたA、と思われる者が心折れた戦士に目撃されている


いや、あのがな

丸くなった人を掴んで、どこかに飛んでいったんだ(心折れた戦士)


烏が飛んでいった先はプレイヤーと同じく北の不死院であろう


そしてその時、北の不死院の巡礼の大扉は、選ばれた不死によって開かれていた


Aは、不死院に到着し、さまよった挙げ句にプレイヤーの入っていたに追い詰められ、そこで死んだのである


この人物が何者でどこからやって来たかについては、忌み者であり、火継ぎの祭祀場から不死院に飛んできた、としか答えられない


※絵画世界から脱出してきた、とも考えられるがそれを裏づける情報は今のところ発見できていない



黒騎士

そこで重要になってくるのが、黒騎士の存在である


なぜ2体の黒騎士は不死院に現れたのか。そのうちの1体は、なぜおかしな人形のある牢屋の前に立ち塞がっているのか


時系列的には黒騎士もまた、選ばれた不死がロードランに旅立ってから不死院に現れたことになる


それまでどこかに隠れていた、ということも考えられるが、隠れていた「はぐれデーモン」の姿はゲームスタート直後にも確認できることから、もし最初から黒騎士がいたとすればどこかに姿が確認できたはずである


すなわち黒騎士は、選ばれた不死がロードランに旅立った後に現れたのである


それはまるで、火継ぎの祭祀場から大カラスに運ばれてきたA追ってきたかのようなタイミングである


そしてそのうちの1体は、「おかしな人形」のある牢の前に立ちはだかっているのである


同じ構造が、グウィンのいる最初の火の炉の前に立ちはだかる黒騎士としても認められる


黒騎士には今も微かに忠誠心が残り、故にグウィンを護ろうとしているのである


おかしな人形の前に立ちはだかる黒騎士も、グウィンへの忠誠心を反映したものと考えられる


おかしな人形によって導かれるのはエレーミアス絵画世界であるが、そこには神々さえ恐怖した「生命狩りの力」が閉じ込められている


生命狩りの鎌

エレーミアス絵画世界に閉じ込められた

純白の半竜プリシラのソウルから生まれた鎌


神々さえ恐怖した生命狩りの力を持つが

半竜ならざる者がその力を振るえば

その力は使用者にもはね返ってしまう


そして「おかしな人形」とは「生命狩りの力」に至るための必須アイテムである


つまり黒騎士は神々の脅威となるものを人から隔離しているのである


そして彼らがそれを破壊しない(破壊できない)のは、「忌み者だけがそれを持ち、絵画世界に導かれる」というシステムを作ったのが彼らより上位の神々だからである


神々とはおそらくグウィンドリンであろう


生命狩りの鎌[DS3]

エルドリッチは暗月の神を喰らい

遅々としたその中に夢を見た

密かに隠した、白い娘の夢を


宮崎英高氏はインタビューで、白教という主流の信仰とは別に、ひっそりとグウィンドリン、月の側の秘儀的な信仰もあり、その信徒は隠れ潜んでいる、と述べている


女神ベルカ鴉人忌み人罪と罰といった関連する概念から察するに、絵画世界グウィンドリン側の領域である(「暗月の剣」は罪人を誅することが使命)


もとはグウィンの騎士である黒騎士にとって、グウィンドリン側の領域は足を踏みいれることのできない禁域なのであり、当然それに関連する物品に手を出すこともできないのである


もっと端的に言えば、その製作におそらくは神々が関与している「おかしな人形」を破壊したのならば、それは神々を蔑ろにする「」になる。グウィンの騎士たる黒騎士が罪を犯すわけにはいかない



絵画世界

絵画世界とは生命狩りの力を持つプリシラを閉じ込める領域である


またそこは、「何らかの理由で尋常の世界を追われた者たちの棲み処」(インタビューより)であり、ベルカの鴉人もそれに含まれる


その鴉人は上でも述べたが女神ベルカの信者である


彼女(彼?)たちが復讐の証をドロップすることから、彼女たちは罪人を誅する暗月の剣の騎士に近い役目も果たしていたようである(DS3では銀騎士がドロップ)


これは、ベルカの役目が罪を定義し、罰を執行することと関連すると考えられる


因果応報

罪とは罰せられるべきものであれば

罪を定義し、罰を執行するのが

罪の神ベルカの役目であろう


すなわち「絵画世界」は「忌み者」、「女神ベルカ」、「カラス」、「罪と罰」といった諸概念の複合的な領域である


一方の不死院も「大カラス(鴉人=ベルカ)、「錆びた鉄輪(罪人)」、「おかしな人形(忌み者)」というふうに、絵画世界と類似した構成概念が認められるのである


錆びた鉄輪

かつて罪人をつなぎとめた鉄の輪っか

ひどく錆び付き、うっすらと血汚れている


 

選ばれた不死

冒頭で不死院とは「選ばれた不死選別システム」と述べたが、その目的については触れなかった


北の不死院がベルカと関連深い場所であるのならば、考えられる目的は「罪を定義し、罰を執行する」ことであろう


まずとは「神々や誓約を蔑ろにする」ことである


罪人録

罪の女神ベルカの管理する記録帳

罪人とは、神々や誓約を蔑ろにした者たちであり

いつか暗月の刃に倒れる運命にある


神々とは狭義には「グウィンとその一族」のことであり、彼らを蔑ろにすることが、この世界においてはなのである


であるのならば、グウィンの火継ぎが終わろうとしている現状を放置していること事態が神に対する罪である


火の衰えるままに任せれば、やがて神々は力を失い消滅することになる。それは神々を蔑ろにしているに等しい


そしてこの現状を看過している者たちこそ、この世界における罪人たちなのである


具体的にいえば、火が衰えているにもかかわらず、新たな薪として王のソウルを差し出さない者たちのことである


最初の死者ニト混沌の苗床、そしてグウィンから王のソウルを分け与えられた者たちのことである


王のソウルを見出した者たちは「」であって「神々」ではない。グウィンのソウルを分け与えられたシースにしても、神々の外戚ではなく、「王の外戚」と言われている


分け与えられた王のソウル

シースはグウィン王に与して古竜を裏切り

後に公爵として王の外戚となったとき

その偉大なるソウルを分け与えられた


すなわち不死院とは、神々を蔑ろにする罪人王たち)を誅するために用意された「不死選抜システム」なのである


この「不敬な王たちを罰し、その王のソウルをもって火を継ぐ」という構造は、DS3のシナリオと同じ構造である


全体的にDS3DS1を換骨奪胎して再構成したような構造をもっているが、そのメインシナリオもまたDS1を踏襲したものなのかもしれない



巡礼

以上により巡礼者の大鍵にある謎かけの解答が得られる


巡礼者の大鍵

選ばれた不死とは、巡礼とは

何を意味するのだろうか


選ばれた不死とは、王たちを殺害しうる力を持った不死であり、巡礼とは王たちを巡って王のソウルを集めることである


それは女神ベルカの意思であり、またフラムトの野望と一致したのである



蛇足

絵画世界の「何らかの理由で尋常の世界を追われた者たちの棲み処」という性質は、不死院と重なるものである

不死もまた人間の世界を追われた者たちであり、不死院は牢獄であると同時に避難所でもある

絵画世界と不死院の類似性は、絵画世界がダークソウルのプロトタイプ版のマップだったという事情からのものかもしれない(不死院最後に作られたマップである)

チュートリアルマップとして不死院を作る際に、絵画世界にあった「中間領域性」を引き継いだものとも考えられる

神の領域であるロードランに到達するためには、まず人と神との中間領域を通過しなければならず、神の世界と僅かにずれている絵画世界は、人と神の世界の中間にある不死院類似した性質を有することになる




4 件のコメント:

  1. 1と3の火継ぎは、大きなソウルを集めて最初の火炉へ赴き最初の火に燃料を足す…という似たようなものでした
    そして3の作中で3の火継ぎは「最古」の火継ぎの再現と表現する一文がある。
    しかし1で主人公より前に行われるグウィンの火継ぎは、「ソウルを他人に分けてから自分一人の残りカスのソウルで燃料になる」というものだった
    つまりグウィンの火継ぎは「最古」ではなく、前にすでに3と同じ形の火継ぎが行われた…?
    そもそもグウィンがこれから世界を照らす自己犠牲で燃料になりに行くのに、自分のソウルを分けて燃料の量を減らすという行動も疑点があると思います
    火継ぎの儀式…まだまだ裏がありそうですね

    あと古龍であるシースが王の外戚というのも考察できる要素多すぎますね…絵画に隠される「半竜」、シースの被造物の月光蝶と同じBGMを使われる暗月の神…その暗月の神の下半身は蛇…蛇は竜のできそこない…ああぁ脳が疲れるぅ

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    1. 薪の王になるためには、王のソウルを宿していることが条件になるのかなと思います
      グウィンの王のソウルもそうですし、小人たちの闇のソウルも王のソウルの一種なのかもしれません

      グウィンはおそらく自分で終わりではなく、王のソウルを分けた者たちが火を継いでくれるのを期待していたのだと思います

      しかし結局王のソウルを分け与えられた者たちや王のソウルを持っていた者たちは、火を継ぎませんでした

      結果としてDS1のような状況になったのだと思われます
      グウィンが見栄っ張りの嘘つき(シャラゴア)と言われるのは、素直に助けを求められなかったからなのかなという悲哀を感じます

      太陽の明るい神々の系譜の裏に、陰の太陽(月)の暗い神々の系譜がありますね

      もしかすると月の系譜の始祖はシースと不義をなした者なのかもしれません
      あるいはそれは、グウィンの王妃なのかなと思います(候補としてはベルカ)

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  2. (まず、これは韓国語をGoogle翻訳機を通じて日本語に翻訳したものなので、文章がおかしいかもしれませんが、ご了承ください。)

    ベルカに関する考察に役立つ情報として、
    ゲーム内のコードネームでは、彼女はドラゴンと表現されるみたいです。
    6370, 6370, Oswald of Carim, DragonOracle
    ドラゴンの神官

    https://bloodborne.wiki.fextralife.com/file/Bloodborne/dark_souls_enemy_name_game_data_table.pdf
    https://github.com/Dece/DarkSoulsDev/blob/master/Resources/Databases/DkS_data_NPCs.csv
    (ここでは
    薪の王と闇の王をようなもので表現することも興味深い点です。
    拠点·大墓 地の王の探索者(フラムト)
    深淵·大墓 地の王の探索者(カアス)
    恐らく地の王様とは木の王様でもあるのではないかと思います。
    何かキングスフィールド3が思い出されます)

    また、フラムトのソウルに交換してくれるシステムで、ベルカの刺剣の交換ソウルの数値は5000で、ドラゴンウェポンと同じです。

    個人的に彼女は 最初の火と関連が深いのではないかと考えています。
    チェコ語でVelkaは大きいもの、偉大なものであり、
    「ロード·オブ·ザ·リング」の妖精語で「Velka」は「炎」という意味のようですね。
    https://twitter.com/Girion_stray/status/1221419058433679361
    https://eldamo.org/content/words/word-1030826975.html

    また別のものとしては…

    因果応報
    罪とは罰せられるべきものであれば
    罪を定義し、罰を執行するのが
    罪の女神ベルカの役目であろう

    古い太陽の指輪
    熱のこもった不思議な石の指輪
    ダメージを受けると稀に爆発し、反撃する
    装備者自身は爆発の影響を受けない
    人はいつかその行いの報いを受ける
    善いことも悪いことも


    ...

    すでに知っているでしょだが
    オドンはDemonみたいですね。

    https://bloodborne.wiki.fextralife.com/Bloodborne+Internal+Enemy+ID+List
    Chapel Dweller
    DemonsFanatic

    オドンの崇拝者がDemonの崇拝者としてコードネームに残っているようですね。
    Demon->Deon->Oedn->Oedon
    こんな言葉遊びになるのが、という気もします。
    http://acid-bakery.com/text/archive/love_souls/great-ones03.html
    最近はAcid様の考察を久しぶりに読みふけってびっくりしました。
    その文の書き出しと仕上げが素晴らしかったと思います。

    (+
    AmygdalaのコードネームFalse Godは邪神の意味も持つのではないかとも思っています。)

    Acid様とシード様の考察は日本のソウルシリーズ古刹の宝物だと思います.
    二方は是非、今後も継続健康な体に無事を願っています。より多くの偉大な考察を続け行かれることを期待しています^^

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    1. あっ、すでに使用した素材ですね。
      不誠実(False)な神
      "邪"悪な偽りを吹き込むような"神"

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