2021年5月7日金曜日

Dark Souls シリーズ考察10 幻想のオーンスタイン

DS1で戦ったオーンスタインは幻想だった、とする理論がある


調べたかぎりでは4年前にはredditに理論が投稿されており、他の多くの理論で引用されるなど、その影響力は今もかなり大きい


理論の中核になっているのが、DS3の竜狩りの鎧関連の情報である


竜狩りの兜

「竜狩り」オーンスタインの名で知られる

黄金獅子の兜。雷の力を帯びた神代の甲冑


竜無き時代、廃聖堂を守ったという騎士は

だが無名の王を追い、その地を去ったという


本物のオーンスタインがDS1で倒されたというのならば、無名の王を追って去ったという「竜狩り」オーンスタインの存在が矛盾する


その矛盾を解消すべく提唱されたのが、オーンスタイン幻想説である


また、DS1のアノール・ロンドで戦うオーンスタイン&スモウ(以下 O&S)、このうちオーンスタインは幻想であり、スモウだけが本物とすることで概ねのコンセンサスは得られているようである


これはスモウが廃聖堂を守った最後の騎士とする「スモウの大槌」の記述による


スモウの大槌

廃聖堂を守った最後の騎士

スモウの名で知られる異形の大槌


選ばれた不死(DS1)がO&Sと遭遇した時にはすでにオーンスタインは廃聖堂を去っており、そこにいたのは本物のスモウと、幻想のオーンスタインだったのである


スモウを廃聖堂を守った最後の騎士、とする記述を裏づけるものであるし、またオーンスタインが幻想であったのならば、DS3の「竜狩りシリーズ」の記述とも矛盾しない



オーンスタインのソウル

これに対して非幻想派からよく言われるのが、オーンスタインは自らのソウルを落とすのだから幻想ではない、とする意見である


この反論に対して幻想派は「オーンスタインのソウル」のテキストを根拠として説明を試みている


曰く、オーンスタインのソウルはグウィンから与えられたものであるので、オーンスタインから取り出して幻想と合成させることも可能だった、と


日本語版プレイヤーなら思わず「ん?」と首をかしげたくなる主張である


まずはオーンスタインのソウルの日本語版テキストを引用してみよう


オーンスタインのソウル

棄てられたアノール・ロンドで聖堂を守る

「竜狩り」オーンスタインのソウル


特別な存在は特別なソウルを有する

グウィン王の四騎士に数えられた者のソウル

使用により莫大なソウルを獲得するか

他にない武器を生み出せる


このテキストによれば、オーンスタインのソウルは「グウィン王の四騎士に数えられた者のソウル」という結論しか出てこない


グウィン王から与えられた、という説明は一切でてこないのである


不思議に思って英語版のテキストを確認すると奇妙なことが判明した


以下はDark Souls Wikiからの引用である


Soul of Ornstein

Soul of Ornstein, Dragonslayer Knight who guards the cathedral in the forsaken city of Anor Londo.

Special beings have special souls. Lord Gwyn granted this soul to his four most trusted knights.

Use to acquire a large amount of souls, or to create a unique weapon.


これをDeepL翻訳したのが以下である


オーンスタインのソウル

見捨てられた街、アノール・ロンドの大聖堂を守る

竜殺しの騎士、オーンスタインの魂。


特別な存在には特別な魂がある。

グウィン卿が、最も信頼する4人の騎士に与えた魂です。


大量のソウルを手に入れるためや、ユニークな武器を作るために使用する。


なんと英語版ではオーンスタインのソウルは、グウィン王から与えられたソウルなのである


そのソウルは元はグウィン王のものであり、オーンスタインは廃聖堂を去る際に置いていった。それをグウィンドリンが幻想と融合させ、DS1のオーンスタインになった、というのが幻想派の主張である



誤訳か意図的なものか

元々のテキストが日本語なのか英語なのかは分からない


しかし翻訳する過程ニュアンスが失われてしまったり、意図しない意味が付け加わってしまうことは、あらゆる翻訳についてまわる宿命のようなものであろう


仮に日本語を真とするのなら、英語版のテキストは誤訳ということになる。しかし、完全な誤訳なのかというと、そうともいえない


グウィンが一族に力を分け与えたことは事実だからである


薪の王グウィンのソウル

偉大なる太陽の光の王にして

最初の火を継いだ薪の王グウィンのソウル


その力の多くは神々に分け与えられ

また最初の火の薪として灰になってしまったが

それでもなお大王のソウルは

尋常ならざる力を秘めている


大王の王冠

最初の火を継いだ薪の王グウィンの王冠


最も強いソウルの王グウィンは

火継ぎを前にその力を一族に分け与えた

一族は数多く、それでも残されたこの王冠は

何の力も帯びぬ、ただグウィンの象徴であった


神々やグウィンの一族にオーンスタインが入るかという問題が生じるが、とにかくグウィンは数多くの一族に力を分け与えている


逆に英語版が真であり日本語版が偽であるとしよう


オーンスタインのソウルは確かにグウィン王から分け与えられたものであり、そのソウルは入魂、脱魂が自在の便利な道具のように扱える(可能性がある)



分け与えられた王のソウル

これと類似の現象として「分け与えられた王のソウル」がある


分け与えられた王のソウル

闇に堕ちた四人の公王のソウル

火の時代の最初に見出された王のソウルの一部


かつて四人は小ロンドの偉大な指導者であり

特にグウィン王に見え、公王の位を授かり

その偉大なるソウルを分け与えられた


それは一部といえ、王の器を占めるに足るものだ



分け与えられた王のソウル

「ウロコのない」白竜シースのソウル

火の時代の最初に見出された王のソウルの一部


シースはグウィン王に与して古竜を裏切り

後に公爵として王の外戚となったとき

その偉大なるソウルを分け与えられた


それは一部といえ、王の器を占めるに足るものだ


これらのソウルはグウィン王から直接に与えられたものである


四人の公王やシースがそれを第三者に渡したという事実はなく、選ばれた不死がこのソウルを手に入れるためには、対象を殺害しなくてはならなかった


それらを倒し、ソウルを奪うことは

世界の蛇が認める、正しい行為なのじゃ(王の探究者フラムト)


つまりオーンスタインのソウルを手に入れるには、オーンスタインを殺すしか方法がないのである


しかしながら、公王やシースは敵対的であったがゆえにそれを温和に渡すことを拒否し、殺害されるしかなかったのだ、と考えることもできる


けれども、もし仮に己のソウルを渡すことができるのだとしたら、なぜルドレスは王のソウルを渡すことをせず、苦しいと分かっている玉座に戻ったのであろう


彼は苦しいことを知って、それでもなお自ら玉座に戻っている。もし仮に対象を生かしたままソウルを抜くことができたのならば、ルドレスはそうしていただろう


…ああ、熱い、骨が燃えている、苦しいんだ…

…助けてくれ。殺してくれ…

…嫌だ、嫌だ。こんなのは辛すぎるよ…

…熱いよ、助けてくれよ…(クールラントのルドレス)


加えてそもそもオーンスタインのソウルは王のソウルではない、という相違点がある


王のソウルは特別な武器を作成することができない。それは王の器に入る王のソウルとしての用途しかないのである


しかしオーンスタインのソウルは、それを使って竜狩りの槍を作成することができる。これはその本性がグウィンから与えられた王のソウルではなく、オーンスタイン個人のソウルだからであろう


またソウル全般の性質として、ソウルを抜かれた対象は「死ぬ


例を挙げるとすれば、DS1の火防女アストラのアナスタシアの魂や、DS3のロザリアのソウルがある


ロザリアのソウル

残された彼女の体にこれを戻せば

母は再び命を得、動き出すだろう


これらの例から推測するに、オーンスタインからオーンスタインのソウルを抜いた場合、やはり「死ぬ」のではないだろうか



ソウルの分割

ただし、グウィンがソウルを分け与えたように、また小人が闇のソウルを分割し、それが人間に受け継がれたように、ソウルは分割することで第三者に分け与えることが可能である


グウィンは彼のソウルすべてを脱魂したのではなく、あくまでもその一部を分割することで分け与えたのである


この方法ならば本人にもソウルが残るためにソウルを抜かれた者が死ぬことはない


オーンスタインもまたそのソウルの一部を残して去ったと考えることは可能だろうか


オーンスタインのソウル

棄てられたアノール・ロンドで聖堂を守る

「竜狩り」オーンスタインのソウル


特別な存在は特別なソウルを有する

グウィン王の四騎士に数えられた者のソウル

使用により莫大なソウルを獲得するか

他にない武器を生み出せる


オーンスタインのソウル(英語版)

見捨てられた街、アノール・ロンドの大聖堂を守る

竜殺しの騎士、オーンスタインの魂。


特別な存在には特別な魂がある。

グウィン卿が、最も信頼する4人の騎士に与えた魂です。


ここにはオーンスタインのソウルを分割したという話は出てこない



幻想のオーンスタイン

そろそろまとめに入ろう


結論から述べれば、DS1のオーンスタインが幻想か実体であったかは分からない


確かなのはオーンスタインを倒した際(最初にスモウを倒しパワーアップしたオーンスタインを倒した際)、「オーンスタインのソウル」を入手することができるというこである


ダークソウルシリーズにおけるソウルは、その持ち主の存在を規定するものである


王のソウルを持った者はになる。また特別な存在特別なソウルを有し、倒れたときにそのソウルを残し、それは特別なアイテムとなる


この世界では肉体は単なる容器に過ぎず、存在の本性を規定するのはソウルなのである


すなわち、ソウルが実で肉体が虚である


容れ物が何であれ、特別なソウルを宿していれば、それは特別な者なのである


つまるところ、幻想か実体かはそれほど重要ではない


DS1のオーンスタインがソウルを落とした。この事実が彼が実際にオーンスタインであったことを明瞭に証しているのである


逆説的にいえば幻想であれゴーレムであれオーンスタインのソウルが宿っているのならば、その存在は真のオーンスタインなのである


これまで触れてこなかった幻想説を今回取り上げたのは、オーンスタイン幻想説は根拠のないものではなく、一定の根拠があって提唱されているものである、ということを述べたかったからである


筆者としての判断は今のところ保留である。幻想説の根拠を理解したうえで、否定はしない、というスタンスである



ソウルの残滓

DS2ではDS1で倒したはずのボスたちのソウルが再び現れる


それはかつてあった強大なソウルの残滓であるが、その土地に影響を及ぼし、篝火の熱のランクが上がることで姿を現す


古き王のソウル

名を禁じられた者のソウル


かつて在った強大なソウルの残滓

長き時を経てもこの地に影響を及ぼしている


使用により莫大なソウルを獲得するか

大いなる力を生み出せる



例え倒されてソウルを奪われても、そのソウルの残滓は消えず、再びソウルの形を成すこともあるのである


DS1で倒されたオーンスタインのソウルもそのようにして再構成され、再びオーンスタインとなり、そうして無名の王を追っていったのかもしれない



無数の世界

これまでは議論をシンプルにするために、あえて多世界解釈には触れなかった


導きの言葉

彷徨える者たちのために伝えられる奇跡

他世界からの助言を多く表示する


目に見えない無数の世界はわずかに重なりあう

異なる時と場所で彷徨い続ける者たちは

微かな言葉に互いの望みを託す


貴公と俺の世界も、いつまで重なっているか、分からない(太陽の戦士ソラール)


宮崎氏は「ゲームの食卓」で、ソラールは自分の世界の火を継ぐ、と述べている


DS3の舞台は、宇宙が収束していく過程でこれらの無数の世界が対消滅し、あるいは融合して生じたわずかな残骸である


あらゆる可能性が存在し、しかしやがて闇へと収束していく過程で世界には様々な「あり得たかも知れない状態」が現れ、それは時に知っている過去と違う状態になる


その一端がオーンスタインだったのであろう

※またハベル本人の聖遺物(遺物)もそうである



蛇足

この議論は「多世界解釈」をとするかとするかにより、解釈が分かれる。確かに多世界解釈を可とすると「何でもありの世界」となってしまいそうで抵抗感がある


また多世界を前提にせずDS1からDS3までのストーリーを一連なりの伝承にしたい気持ちもよく分かる


幻想説が根強いのはこういった事情によるものであろう


しかし幻想説には課題が多いことも確かである。そもそも対象を生かしたままソウルを(分割するのではなく)抜く業を誰も知らないということが挙げられる(ロザリアやアナスタシアは死んでいる)


次に挙げられるのは、オーンスタインのソウルのテキストは日本語版が正しいのか英語版が正しいのか断定できないことである


日本語版によればそれはオーンスタインの特別なソウルであり、代替のきかないものである。英語版ではグウィンから与えられたソウルなのでオーンスタインから脱魂することができるかもしれない


もうひとつ不可解な点として本文では取り上げなかったが、「獅子の指輪」がある


DS1でオーンスタインを倒すと獅子の指輪を取得することができる。その獅子の指輪は選ばれた不死とともに火継ぎにより燃えているはずである


しかしDS3ではイルシールの宝箱から「獅子の指輪」を取得することができる


つまり獅子の指輪は二つあったことになる。としたら、それを所持するオーンスタインも二人いたことになる


この獅子の指輪は幻想にはできない


※グウィン王の火継ぎを追った銀騎士は灼けて黒騎士に変化している。しかしDS3の獅子の指輪には焦げたところは認められない

3 件のコメント:

  1. 最後がちょっとよくわかりません
    その理屈ならユニーク装備品は全て燃え尽きてることになりませんか
    1と3に両方道具が出てくるユニーク装備の持ち主は全て二人いることになります
    獅子の指輪は必ず入手するアイテムではないので取らなかったからとかは成り立ちませんし

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    1. ご指摘ありがとうございます

      無数の世界のうち、DS1で火継ぎを選んだ場合は
      すべてのユニークアイテムが燃え尽きると思います

      ですのでDS3残っているのは他の世界に残されていた指輪となります
      あるいはDS1で獅子の指輪を取らなかった世界の指輪となります

      要するに多世界解釈をするのならばユニーク装備の持ち主は
      世界の数だけ存在することになります

      多世界解釈をしなかった場合、2つのユニークアイテムをどのように説明するのか、という問題が起きるということですね

      削除
  2. 無印の時点でオンスタは廃聖堂守るか無名の王を追うかで葛藤してて
    迷ってる内に主人公来たのが 普通のダクソ無印
    オンスタ出てった後に主人公来たのが ダクソ3世界線ダクソ無印

    ゲームとしてのダクソ無印ではオンスタ倒すの必須だけど物語上は必須じゃないし(王の器、王のソウル、グウィン討伐、火継ぎENDだけあればいい)
    世界線分岐って理解でいいんじゃない

    獅子の指輪問題はオンスタ倒すにしてもオンスタ→スモウの順で倒せば獅子の指輪手に入らないのでダクソ3まで残る可能性出ますね

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