大いなる意志
大いなる意志は黄金の律を確立するために、黄金の流星とエルデの獣を狭間に送った(黄金の律の考察参照)
そして両者が融合することでエルデンリング(黄金の律)となり、ついに生命として分かたれた(黄金の流星とエルデの獣の考察参照)
しかし生命が誕生すると同時に苦痛、絶望、呪い、あらゆる罪と苦しみもまた生じてしまった
…すべては、大きなひとつから、分かたれた
分かたれ、産まれ、心を持った
けれどそれは、大いなる意志の過ちだった
苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ
それらはみな、過ちにより生じた(三本指の言葉を伝えるハイータ)
ここには生きることは苦である、というDSシリーズから続く仏教的思想の系譜が見られる(生と死の輪廻という「苦」からの解脱を目指すの仏教である)
これに対し、生まれてきたこと自体が過ちであり、リセットしようというのが三本指の思想である(反出生主義)
ただし生を過ちと見るのは三本指から見た生命現象への評価であり、大いなる意志の評価とは別かも知れない
大いなる意志は生命を生じさせることが、最大の苦痛である死を生じさせることを認識していたと思われる
というのも、死のルーンはもともとエルデンリングに含まれていたからである(運命の死は聖属性)
死のルーンとは、即ち運命の死
黄金の律のはじまりに、取り除かれ、封じられた影(指読みのエンヤ)
死のルーンは黄金律のはじまりに取り除かれたが、その封印を望んだのはマリカである
黒き剣の追憶
マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった
マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み
後にそれを裏切ったのだ
マリカが死のルーンを取り除いたのは、大いなる意志の意向によるものだったのかは明らかではない
エンヤは死のルーンを再び解き放つことを大なる意志は決して許さないだろうと述べているが、これは彼女の臆測であり大いなる意志の真意ではない
死のルーンとは、即ち運命の死
黄金の律のはじまりに、取り除かれ、封じられた影
それを再び解き放つなど…
…指様は、いや大いなる意志が、決して許さないじゃろう
というのも、マップ上に表示される祝福の導きは、黄金樹を焼き、運命の死を解放するために、褪せ人を巨人の火の釜に導いているからである
金色の祝福の導きは、巨人の火の釜を指している |
また大いなる意志は褪せ人に祝福をもたらすことにより生き返らせることができる
つまり死のルーンを除去しなくとも、任意の生命体を永遠に生き続けさせることが可能である
であるのならば、大いなる意志が死のルーンを除去する理由は乏しい
むしろそうした生殺与奪の権を掌握する大いなる意志から解放されるために、マリカは永遠を望んだのではないかと思われる(輪廻からの解脱を目指した)
そもそもエルデンリングの修復のためには黄金樹を焼かなくてはならないのだから、大いなる意志が死のルーンの解放を拒否するとは考えにくい
エンヤの言葉を信じるのならば、大いなる意志は死のルーンの解放を決して許さないが、死のルーンを解放することによってはじめて可能となるエルデンリングの修復を望んでいることになり、自家撞着に陥ってしまう
この自家撞着が二本指をフリーズさせた直接の原因であろう。二本指は大いなる意志を正しく理解できていなかったのである
これがギデオンをして、指も黄金樹もとうの昔に壊れていたと悟らせた故である
王たる聖防護
二本指との長き対話の後、ギデオンは悟った
すべて、とうの昔に壊れていたのだ
老いさらばえた震える指も、黄金樹も
大いなる意志としては死のルーンを解放することはエルデンリングの修復に繋がるため、むしろ望んでいることなのである(それは祝福の導きの光によって示されている)
※修復後に再び死のルーンを除去するつもりだった、とも考えられるが、各種ENDにおいて死のルーンが再び取り除かれたという情報はない
エルデの獣
大いなる意志は生命現象が死を内包すること、生と死の両方が揃ってこそ生命であることを理解していた
そうでないのなら、黄金の流星からあらかじめ死を取り除いた状態で狭間に送っているはずだからである(本考察では黄金の流星=生命の坩堝説を採用している)
エルデの流星の描写からも分かるように、黄金の流星は赤味を帯びていた。つまり黄金は過去のいつかの時点で赤味を失ったのである
いつか、については明言されていないものの、エルデンリングから取り除かれた運命の死が「赤味」を帯びていることから、死のルーンが取り除かれた時がそれであると考えられる
マリケスの振るう運命の死は赤い |
またエルデンリングになったというエルデの獣は体内に星雲を宿したような姿をし、黄金系の祈祷と星系の魔術の両方を使用してくる
エルデの獣には星雲(星々)が宿っている |
エルデの獣とアステールの星雲系の魔術。厳密にはエルデの獣のそれは黄金と星雲が融合している |
これはエルデの獣が生と死、すなわち黄金と月(星)の律を宿しているからである
この姿はラダゴンが祈祷と魔術を学んだ結果とする見方もできる。しかしながら、ラダゴンが魔術を学んだのは完全たるを目指した結果である
ラダゴンの肖像
赤髪のラダゴンは
カーリアのレナラの夫として魔術を修め
女王マリカの夫として祈祷を修めたという
英雄は、完全たるを目指したのだ
すなわちエルデの獣の完全たる姿とは、黄金と月(星)を内包した姿ということになる
エルデの獣が具現するという黄金の律(広義)とは、生と死の両方が合わさってはじめて実現される律なのである
※死の無い生は生にあらず、生の無い死は死にあらず
毒霧
毒に生きる者たちは、腐敗を知っている
それは、誰にでも平等に訪れる生のための死
すなわち輪廻の理である
生命の律
大いなる意志は黄金の律を望んでいた。だがそれは不死たちの世界を創ることではない
大いなる意志の望んでいた黄金の律とは、輝ける生命の律である
この律は黄金と月(星)、すなわち生と死が停滞することなく巡り続けることで実現される生命の律である(輪廻)
生と死の循環が停滞することで生命はその輝きを失う(それは本編で朱い腐敗や死に生きる者として表現されている)
そして、はじめようじゃないか。輝ける生命の時代を
エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!(マリカの言霊)
エルデンリングから運命の死を取り除いたことで停滞→外なる神の介入→朱い腐敗が生じ、取り除いたはずの運命の死からも死に生きる者たちが生じてしまう
これを是正しようとしたのが女王マリカでありラダゴンであった
だが両者はついにそれを果たせず、世界は膠着状態に陥り、そして大いなる意志はデミゴッドたちを見放した
母から種火となる使命を与えられ、世界を修復しようとするメリナは次のようにいう
…狭間の地を、ずっと見てきた
この世界には、修復が必要だと思う
…そして、分け隔てない死が
…ねえ、貴方
大罪に向かう、準備はできた?(火の頂)
壊れた世界には修復が必要であり、また分け隔てない死も必要である
世界の修復はエルデンリングを修復することにより為される。だがそのほかに分け隔てのない死も必要なのである
そして分け隔てない死がもたらすのは、輝ける生命である
この世界がいかに壊れ、苦痛と絶望があろうとも
生があること、産まれることは
…きっと、素晴らしい(メリナ)
輝ける生命とは、世界がいかに壊れ、苦痛と絶望(死)があろうとも、産まれ、生きていこうとする存在である
冷たい夜の律
黄金の律には生と死が包含されている。生と死が合一することではじめて生命は輝ける生命となるのである
黄金律のうち、生を象徴するのが“狭義の黄金の律”である(黄金の律の考察で述べたように黄金律という言葉には無数の黄金律が含まれる)
また黄金律のうち、死を象徴するのが冷たい夜の律である
これは指によってラニが神人に選ばれていることからも示唆されている
冷たい夜の律は狭義の黄金律と対になる律であるが、巨大複合概念としての黄金律(広義の黄金律)に包含される律のひとつなのである
冷たい夜の律を掲げるラニが指によって神人に選ばれたのも、それが広義の黄金律の内部にあるからである
そもそも冷たい夜の律が完全に黄金律と対立する律であるのなら、大いなる意志に従う“指”が神人として選ぶ理由がない
これには指には神人として産まれた者を選択する権限しか付与されておらず、掲げている律に関しては不問なのだ、とする反論も可能であろう
しかしもし仮に、大いなる意志の意図にそぐわない律を掲げる神人がいたとしたら、影従がその神人を殺してしまえば済むはずである(あらかじめ二本指に指示しておけばよい)
だが影従がおのれの主に危害を加えるのは、神人が二本指の傀儡になることを拒んだときのみである
このルールがある以上、大いなる意志は冷たい夜の律の存在を容認していると考えられる
そして大いなる意志がそれを容認しているのは、冷たい夜の律もまた広義の黄金律に内包される律だからである
あるいはここに儀礼的闘争(例:追儺、節分)を見出すこともできるかもしれない
たとえば大いなる意志に反する律を持った神人は必ず敗れなくてはならず、最初から勝者は黄金の律に決まっているという、いわば出来レース的な闘争である
非黄金律の神人は、二本指の傀儡として黄金律を持った神人に敗れることが決まっており、その出来レースを断った神人は影従に殺されるのである
だがかつて黒い月が無数の星を従えていたように、黄金律(狭義)以外の律が確立されていた時代もあると考えられることから、出来レース説はなかったと思われる
ここでラニの言葉が重要になってくる
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ(魔女ラニ)
彼女が言うように、冷たい夜の律は“黄金”ではない。しかし“律”ではあるのである
つまるところラニは自らの律を黄金ではないと言っているのであって、黄金律であることを否定しているわけではないのである
※ここで「黄金」が「黄金律」と言われないのは、「黄金律」としてしまうと、冷たい夜の律も広義の黄金律である、という設定と矛盾が生じるからである(これはプレイヤー側ではなくゲーム側の設定と矛盾する)
これは続けられるラニの言葉によっても強調される
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ
…私はそれを、この地から遠ざけたいのだ
生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥か遠くにあればよい(魔女ラニ)
生命と魂が“律と共にある"としても、とは生と死、すなわち黄金と月(星)はEND後も律と共にあることを示している
また、それは遥か遠くにあればよい、とは取り除いて封印するのではなく、干渉できないほどに遠くに離れることを意味している
この点で、停滞→腐敗をもたらした運命の死の封印とは決定的に異なっている
生と死、すなわち黄金と月(星)は律と共にあるけれども、互いに干渉できないように隔絶する
そのことによって輝く生命の律(黄金律)は成立しながらも、生の世界と死の世界は交わらなくなる
それは生と死のバランスが崩れることがなくなることであり、つまるところ循環が停滞することがなくなるのである
ラニEND後、狭間の地は輝く生命の世界となる
しかしそれまでの狭間の地とは異なり、その世界には霊体や還樹システムは存在しない
生命は死ぬとその魂は宇宙の遙か遠く離れた場所へ行くが、狭間の地からはそこは見えず、赴くこともできず、干渉もできない
狭間の地の生命は絶対的な死を克服することはできない。しかし止まることのない生と死の循環が続いていくのである
そしてそれこそがエルデンリング、すなわち輝ける生命の円環なのである
腐敗の律
腐敗の律もまた黄金の律(狭義)に連なるものである
毒の刃
毒に生きる者たちは、腐敗を知っている
それは、誰にでも平等に訪れる生のための死
すなわち輪廻の理である
腐敗とは生のための死、すなわち生と死によって定義される生命の律である
他にミケラの無垢金も黄金の律(狭義)である
よってラニ世代に選ばれたミケラ、マレニア、ラニのうち、ミケラとマレニアは黄金(生)、ラニは非黄金(死)の律であったと考えられる
天秤
宮崎氏はエルデンリングに大きなインスピレーションを与えた本として「永遠の戦士シリーズ」(Wikipedia)を挙げていた(Edge Magazineのインタビュー)
筆者の印象では大いなる意志はこの物語に登場する天秤とよく似ている
宇宙の天秤
コズミック・バランス。一方に『法』、もう一方に『混沌』を乗せ、釣り合いを取る、宇宙の法則の根源的な存在。宇宙の手(コズミック・ハンド)と呼ばれる存在が支えているとも言われるが、その正体は不明である。 (Wikipedia)
永遠の戦士とは、この天秤から派遣され、法と混沌のバランスを取る存在である
永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)は、『天秤』(『法』と『混沌』の均衡を保つ存在)の代理として、法と混沌のバランスが崩れた際にどちらかの側に顕現し、バランスを取るために戦う戦士であり、永遠に転生を繰り返すことを宿命づけられ、多元宇宙のサイクルすべての転生を戦いに捧げる存在として書かれている。 (Wikipedia)
エルデンリングにおいて法と混沌は生と死として表現され、崩れすぎたバランスを調律する者として褪せ人が呼び戻される
大いなる意志と褪せ人の関係性は、天秤と永遠の戦士の関係性によく似ていると思うのである
また天秤は、繁栄している種族の停滞を感じ取ると、その種族から恩寵を奪い、次の種族を繁栄させたりもする
これなども、デミゴッドを見捨てて褪せ人に祝福を与えた大いなる意志の行動と通じるものがある
また永遠の戦士シリーズには永遠の都タネローンという、本作の永遠の都のモチーフになったと考えられる都市が登場している
永遠の都ノクローンはNOX+clone、crone(王冠)の造語という説もあるが、NOX+タネローンという可能性もある
その他、シリーズによっては永遠の戦士が複数の女王たちに振り回されたり、空飛ぶ都市が登場したりとエルデンリングをプレイした後で読み返すとさまざまな共通点に気付くかもしれない
律に関連したことで自分が考えたのはギデオンの存在です。
返信削除ギデオンはセルブスと知り合いであり、二人が初めて出会ったのはおそらくレアルカリア内か魔法に関連するような場所だと考えられます。
そしてギデオンは魔法と共に祈祷を使います。
ギデオンが魔法を修練したりすることに関連した場所にいて高度な魔法と祈祷を共に使っていると考えると他にその条件に当てはまるキャラとしてラダゴンがいます。
ギデオンは永遠の知識を得ようとしていたため女王マリカの永遠から遠ざかる意志をよく思っておらずラダゴンのように祈祷と魔術を共に習得することで黄金律やその他の永遠の律にふさわしい新しい王になろうと考えていたのではないでしょうか。それゆえに褪せ人から得たデミゴットの情報から祈祷や魔術を習得し最終的に褪せ人の前に立ちはだかったのではないかと思いました。