2021年1月28日木曜日

Bloodborne 考察まとめ10-2 オドン(伝承編)追記:ゴースあるいはゴスム

モチーフ編ではオドンのモチーフをオーディンと仮定して考察を展開した


今回はそれにより得られた考察により、作中の伝承がどのように説明できるのかを考察したものである



月光の聖剣

さて、月光の聖剣は青い月の光を纏う


月光の聖剣

かつてルドウイークが見出した神秘の剣

青い月の光を纏い、そして宇宙の深淵を宿すとき

大刃は暗い光波を迸らせる


それは彼だけの、密かに秘する導きだったのだ


オドンの狩人としてルドウイークが求めたのは、師と同じ力、すなわち青い光だったのである。何よりオドンの狩人である彼を導けるのはオドンだけである


ああずっと、ずっと側にいてくれたのか

我が師

導きの月光よ…(ルドウイーク)

 

しかしその青い光にはオドン粒子が含まれている

寄生虫の卵という粒子である


青い月光を見続けた彼の眼に寄生虫が寄生し、光の小人が見えるようになったのである


「導き」

目を閉じた暗闇に、あるいは虚空に、彼は光の小人を見出

いたずらに瞬き舞うそれに「導き」の意味を与えたという

故に、ルドウイークは心折れぬ。ただ狩りの中でならば


寄生虫であってもそれはオドン由来の神秘の寄生虫である。神秘の寄生虫がもたらす啓蒙が獣性を抑制することは、啓蒙/獣性システムからも明らかである


ルドウイークの心が折れなかったのは、眼の寄生虫がもたらす啓蒙により、獣性を退けていたからなのかもしれない


※月光の聖剣はファンサービスではなく、オドンという設定を剥き出しのまま出してきた可能性がある


ちなみにオーディンにはスレイプニルという愛馬がいる。足が6~8本あるとされ、非常に速く走る名馬である


ルドウイークの足の数は分岐をどう解釈するによるが、8本あるように見える



ゲールマン

ゲールマンが月に祈ると月が青い光を帯び、直後に青い光による大爆発が起きるのは、主であるオドンに祈ることによりオドンの力を召喚しているからである


通常時は月は白~黄色である

ゲールマンが祈りを捧げると月は青く発光する

そして最後には青い光の爆発が起きる

この爆発もまたゲールマンが狩人すなわちオドンの戦士であるために行使できる力なのである



エーブリエタース

またエーブリエタースと聖歌隊空を見上げ星からの徴を探しているという


聖歌装束

見捨てられた上位者と共に空を見上げ、星からの徴を探す

それこそが、超越的思索に至る道筋なのだ


そのエーブリエタースのいる嘆きの祭壇の上方からは「青い光」が降り注いでいる


この青い光には波であるオドン粒子であるオドン寄生虫の卵)が含まれる。聖歌隊はこのうち「波」の側面だけをすくい取ろうとしているのである


しかし波と粒子を分離するのは不可能である


それゆえに彼らは光そのものを見ないことにしたのである。彼らが目隠し帽子をかぶるのは、光を見ないようにするためである



月見台の月

乳母の月見台から見える青白い月には奇妙な点がある



月見台から見下ろすと、は遙か彼方に見える山脈の手前にある


つまりこの青白い月は現実の月ではなく、地上すれすれにまで降りてきた月のようなものなのである


この月を呼び寄せたのは「メンシス(月)学派」である


ヤハグルのメモにはこうある


狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている

秘匿をやぶるしかない(隠し街ヤハグルのメモ)


一読するとこれは「赤い月」を指しているように思える。しかし、赤い月を呼び寄せたところで、世界が獣に塗れるだけである


それはミコラーシュの思想とは真逆である


我らに瞳を与え、獣の愚かを克させたまえ(ミコラーシュ)


つまり、メモに言われた「」とは「赤い月」のことではない

そしてメモは月が一つであるとも言っていない


つまるところ、月は2つあったのである


2つの月とは、赤い月と青ざめた月である


彼らの目的は、メルゴーの泣き声を餌にして青い月と赤い月という2つの月を呼び寄せることだったのである


目的が達成されたあかつきには、青い月と赤い月が融合を果たし、全世界に青ざめた血の空が広がり、夢が現実となり、神秘と血が交わって無数の上位者の赤子が誕生し、同数の3本目のへその緒が得られ、人々は3本目のへその緒により、「瞳を得る」のである


儀式はもうすぐ終わる

夢が現実に、我らに瞳をもたらすのだ!(ミコラーシュ未使用セリフ)


そしてまた青く光る月は、青く輝く湖とも、神秘の光を湛える宇宙とも呼ばれるのである


泥に浸かり、もはや見えぬ

宇宙よ!(ミコラーシュ)



ゴースあるいはゴスム

※動画のコメント欄に、ミコラーシュが祈っているのはオドンではなくゴースあるいはゴスムなのではないか、という指摘をいただいたのでそれに関する補足


「ゴースあるいはゴスム」の英文は「Kos, or some say Kosm...」である

このうちのKosmを「Kosmos, Kosmic→Cosmos, Cosmic→宇宙」と解釈する説がある


この説に従うのならば、ミコラーシュはゴースと共に「宇宙(Cosmos)」に祈っていることになる


またこれは海外ではほとんど通説のようになっている説であるが、実は開発の初期段階において、今エーブリエタースと呼ばれているボスは「Kos」と呼ばれていた

※残念ながら確固たるソースは見つけられなかったが、海外の有力考察者たちのなかでは通説のようになっている


つまるところ、Kos, or some say Kosm...を以上の解釈により読み替えるとしたら、次のようになる


ああ、エーブリエタース、あるいは宇宙

我らの祈りが聞こえぬか


エーブリエタースは宇宙の娘であり、宇宙とはオドンのことである


よってさらに読み替えるとしたら


ああ、オドンの娘、あるいはオドン


になるのである。つまりミコラーシュはオドンの娘とオドンに対して瞳を授けてくれと祈っていることになる



青ざめた月

3本目のへその緒にある「青ざめた月との邂逅」とはオドンとの邂逅のことである


3本目のへその緒(古工房)

すべての上位者は赤子を失い、そして求めている

故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし

それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ


青ざめたと青ざめた似て非なるものである


青ざめた月がオドンであるのに対し、青ざめた血は神秘と獣性の入り交じった血をもつ月の魔物のことを指しているからである


青ざめた月との邂逅により、狩人と狩人の夢がはじまったとは、オドンとの邂逅により、オドンの戦士である狩人が生まれ、そして狩人の夢というヴァルハラ宮殿に連れてこられたことを言ったものなのかもしれない


使者とは狩人を狩人の夢に連れてくる者、すなわちフロム解釈によるヴァルキューレなのかもしれない



月の香りの狩人

主人公の放つ香りに言及するNPCが数名存在する(孤独な老婆も未使用セリフで言及しているが今回は省略する)


血の女王アンナリーゼ

…貴公、訪問者…月の香りの狩人


オドン教会の住人

…ん、あんた…もしかして、獣狩りの…狩人さんか?

すまない、香のせいで、匂いがわからなかった

ここは安全だ。獣避けの香もしっかりと焚かれてる


偽ヨセフカ

…あら、月の香り

あなた、どうやって入り込んだのかしら?


ヤーナム市街の少女(妹)

…あなた、だあれ?

知らない声、でも、なんだか懐かしい臭いもするの


ガスコイン

匂い立つなあ…

堪らぬ血で誘うものだ


娼婦アリアンナ

あら、あなた、おかしな香り

でも、よかったわ。獣も血も、そういう匂いはうんざりなの


まずガスコインについては血の臭いに反応していることが、実装セリフと未使用セリフの繋がり方で分かる

…どこもかしこも、獣ばかりだ(実装セリフ)

堪らない、血の匂いじゃないか…(未使用セリフ)


主人公狩人の放つ香りが獣や血の匂いではないことは、アリアンナのセリフからも明らかである 


でも、よかったわ。獣も血も、そういう匂いはうんざりなの


獣や血の匂いではないからこそ、「でも、よかったわ」と安堵の言葉を漏らすのである


やや場違いなのはオドン教会の住人である


オドン教会の住人

…ん、あんた…もしかして、獣狩りの…狩人さんか?

すまない、香のせいで、匂いがわからなかった

ここは安全だ。獣避けの香もしっかりと焚かれてる

 

狩人は獣避けの香によって分からなくなる匂いを放っているようである


獣避けの香とは、獣が危険を感じて近寄ろうとしない匂いである。すなわちこのゲームにおける獣性の反対の属性、神秘の香りである


その獣避けの香が焚かれているのが「オドン教会」であることは意味深である


アンナリーゼ、偽ヨセフカ、アリアンナ、少女(妹)に関しては、カインハーストの血を引いていることから、オドンの狩人の匂いが分かると考えられる


少女については、父親また祖父が獣狩りの狩人であったことから、その匂いに反応したとも考えられる


ということで月の香り、とはっきり表現したのはアンナリーゼと偽ヨセフカである


さて、上述したがオドンとは青ざめた月である(厳密には月を青く染める


そして狩人はオドンの戦士として獣狩りの夜に送り込まれる。そのオドンの戦士の香りを彼女たちは月の香りと表現したのである


なぜならば「月の香り」とは、青ざめた月の放つ香りであり、月を青く染める青い光の香りであり、オドンの香りだからである


オドンの戦士であるが故に狩人は月の香りを纏っているのである


極めて濃密な獣血をもつ血族たちには、その神秘の匂いははっきりと月の匂いとして感じられるのである(このことから、偽ヨセフカの血は純潔に近いとも考えられる)



オドンのカレル

オドンは青い光であるという。しかしながら、オドンのカレル文字は「赤」(血)で描かれている。(「導き」や「瞳」などは青い光で描かれている)


また滲む血は上質の触媒であり、それこそが姿なき上位者オドンの本質である、という文面からは、滲む血=オドンというような印象を受ける


「オドンの蠢き」

人であるなしに関わらず、滲む血は上質の触媒であり

それこそが、姿なき上位者オドンの本質である

故にオドンは、その自覚なき信徒は、秘してそれを求めるのだ


しかし姿なき故に声のみの存在であると言われるオドンが血液、つまり物質であるはずはない(光には質量はない)


「姿なきオドン」

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ

上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり

その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める


端的に言えば、オドン関係のカレルが赤く描かれるのは、姿なき故にオドンを宿した宿主を描くしかないからである


オドンとは血の遺志のことでもあるからである



2 件のコメント:

  1. 毎回楽しく読ませていただいております。
    他者様の考察ですが、「姿なき」オドンは、「形として認識できない」イズに漂う粉塵であり、その粉塵は手当たり次第に生き物に感染するカビのようなものではないかとするものがありました。
    seedさんの粒子状の卵説と組み合わせ、オドン協会の獣除けの香はイズの粉塵に由来するものであり、それ故獣は近寄らず、秘匿が破られたことで卵が孵り(オドンの力が顕現し)、オドンとアリアンナの赤子が出来るに至ったと考えると個人的に合点がいきます。
    これからも考察楽しみにしています。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます

      イズの地は宇宙に触れていることから
      オドンの強い影響がうかがえます

      イズの汎聖杯
      「聖歌隊」によれば、イズの地は宇宙に触れている
      故に上位者たちは、かつて超越的思索を得たのだと

      またエーブリエタースが宇宙の娘と言われるように
      宇宙をある種の上位者と考えることも可能かと思います

      そしてその上位者はアリアンナの赤子イベントから推測するに
      オドンであると思われます

      私としてはオドン粉塵説については肯定も否定もできません
      そこは個々人の解釈次第になると思うからです

      「宇宙は空にある」という聖歌隊の気づきが重要になってくるのかもしれませんね

      削除