2021年2月27日土曜日

Bloodborne 考察まとめ11-1 ビルゲンワース(語源編)

名前

過去の考察でも述べたが、名前には非常に重要な情報が秘められている


しかし、結局、私はすべての名前を選びます。私が監督したタイトルはいつもそうだった。もちろん、名前はあなたが描きたい世界の非常に重要な部分ですが、それ以上に、私は名前を思いつくのが大好きです。私はちょっとしたネーミングオタクだと思います。それは私にとっていつも楽しいです。私は、単語の起源、表現でどのように聞こえるか、地域の考慮事項など、すべてを考慮します。(インタビューより)


本作に登場するNPCの名前は、ネーミングオタクを自認する宮崎氏が決定したものなのであり、その決定は、語源、響き、地域性などを考慮に入れてなされたものなのである


何度も引用している文章だが、理由も無しに語源を追求しているわけではないということを最初に触れておく



ビルゲンワースという地名

ビルゲンワースの英名は Byrgenwerth である


このうち後半部のWerthは、イギリスの地名に詳しい者であれば、Worthを連想するであろう


Worthは「囲い」や「定住」を意味する古英語の「worð」に由来する言葉である(Werth History, Family Crest & Coats of Arms)


しかしながらWorthとWerthは o と e が異なるうえ、英国系の名前をもつガスコインを異邦人として扱っていることからも分かるように、ビルゲンワースから見ると英国は異国である


その異国の慣例的な命名法を用いるのはどうにも腑に落ちない


ヤーナムが中欧をモチーフにしていると考えられることからも、唐突にイギリスの慣例や姓が地名として登場するのは違和感を覚える


実のところWerthはWorthとは直接的には関係がない(語源的にはあるかもしれない)


Werthとはれっきとしたドイツ語であり、その意味は「排水前は河口や河岸の湿地だった川中島や耕地」(『ドイツの河岸地名Werderとその場所の微地形』PDF)である


それによると、ドイツ中部の河岸地名にはWerthという名前の場所が多いのである


異字同語地名である Werder, Werd, Wörth, Ward, なども挙げられているが、その語義は「島、半島、湿地間の水害のない微高地」であり、水と関係の深い場所につけられる名前なのである


いうまでもなくビルゲンワースの建物は、月前の湖の岸辺に建っている


つまるところByrgenwerthのWerthの語義は「囲い」や「定住」ではなく、「島」「半島」「微高地」を意味するのである


ワースの部分だけを訳すのならば「ビルゲン島」や「ビルゲン半島」「ビルゲン河岸」「ビルゲン干拓地」という意味になろうか


大量の水は、眠りを守る断絶であり、故に神秘の前触れである

求める者よ、その先を目指したまえ(カレル文字「湖」)


カレル文字にあるように、ビルゲンワースは大量の水の先を目指したのである。その前哨基地として相応しいのは湖岸に突き出したような半島、または島である



Byrgen

さてByrgenwerthのWerthが判明したところで「byrgen」の考察に移りたいと思う


結論から先に述べれば、byrgenとは『散文エッダ』に登場するビュルギル(byrgir)の泉からとられた地名である(語尾のgirとgenの差異は後述する)


『散文のエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」11章で、ヴィズフィンルを父とするヒューキとビルという名の二人の子供たちが高い地位へ置かれた。彼ら二人はビュルギル(Byrgir、古ノルド語で「何かを隠す者」の意[3])の泉から歩いて来たが、二人はセーグ(Sæg)という桶をシームル(Simul、古ノルド語でおそらく「永遠の」の意[4])という天秤棒で運んでいた。マーニは彼らを地上から取り上げ、彼らは今や天をマーニに付き従っており「それは地上からも見る事ができる」[5]。(Wikipedia)


※北欧神話と本作の関連についてはオドンの考察参照のこと


Wikipediaによれば、ビュルギル(byrgir)とは古ノルド語で「何かを隠す者」の意であるという


その語義通り、学長ウィレームは湖に秘密を隠していた


月見台の鍵

ビルゲンワースの二階、湖に面した月見台の鍵


晩年、学長ウィレームはこの場所を愛し、安楽椅子に揺れた

そして彼は、湖に秘密を隠したという


また、月前の湖にいたロマが儀式や月を隠していたことは各所のメモに記されている


ビルゲンワースの蜘蛛が、あらゆる儀式を隠している

見えぬ我らの主も。ひどいことだ。頭の震えがとまらない(オドン教会のメモ)


あらゆる儀式を蜘蛛が隠す。露わにすることなかれ

啓蒙的真実は、誰に理解される必要もないのだ(ビルゲンワースのメモ)


狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている

秘匿を破るしかない(隠し街ヤハグルのメモ)


さて、神話に登場する「ヒューキ」と「ビル」という二人の子供たちは、月相(満ち欠け)の擬人化である


北欧神話におけるヒューキ(古ノルド語: Hjúki、おそらく古ノルド語で「快復する」の意[1])とビル(古ノルド語: Bil、文字通り「その瞬間」の意[2])は、天を横切る月の擬人化であるマーニに従う子供の兄妹である。彼らは13世紀にスノッリ・ストゥルルソンが書いた『スノッリのエッダ』にのみ認められる。学説では二人を取り巻く特性から、彼らが月のクレーターあるいは月相を体現している可能性があり、ゲルマン系のヨーロッパの民間伝承に関連するとしている。ビルはヨーロッパのドイツ語圏に伝わる民間伝承に認められる農業に関連する存在のビルヴィス(英語版)と同一視されている。(Wikipedia)


神話ではビュルギルの泉から歩いてきた二人が、高い地位、つまり月に上昇させられたという


本作における「月」とは「宇宙」と同義であり、そこは上位者の住む「悪夢」でもある(「月の落とし子エーブリエタース」参照のこと)


月に上昇させられた、とはすなわち「上位者」になることと同義であり、それと符合するように、月前の湖には上位者ロマが住んでいる



byrgirからbyrgenへ

しかしながら、byrgirとbyrgenとは語尾の二文字が異なっている


girからgenへの変化の合理的な説明は可能だろうか


まずbyrgirはスウェーデン語やノルウェー語などの北欧語では「byrge」と記される


Vidfinn (fornvästnordiska Viðfinnr, ”skogsjägare”[1]) är i nordisk mytologi far till barnen Bil och Hjuke, som kidnappades av månguden Måne då de var på väg från brunnen Byrge med en så, som de bar på axlarna med såstången Simul. Detta berättas i Snorres Edda, Gylfaginning, kapitel 11. Snorre skriver: ”De barnen följer Måne, såsom man kan se från jorden.” Det kan alltså röra sig om en bild som syns på månen.[2](Wikipedia)



古ノルド語やスウェーデン語、ノルウェー語はおなじ「インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派"北"ゲルマン語群に属する言語」であり、Byrgeの意味も同義(「何かを隠す者」)である


またドイツ語は「インド・ヨーロッパ語族・ゲルマン語派の"西"ゲルマン語群に属する言語」であり、おなじインド・ヨーロッパ語を祖にもつ近しい言語である


これらスウェーデン語とドイツ語には名詞の格によって語尾が変化するという共通する特徴がある


簡単にいうと単数形から複数形にすると語尾が変化するのである


スウェーデン語の名詞には共性名詞と中性名詞の二種類ある


このうち中性名詞を複数形にする際に、単語の語尾が母音だった場合、語尾に n をつけることになっている


中性名詞で単数形が母音で終わるものは、複数形はその末尾の母音の後に-nを加える。(例:äpple (リンゴ)/äpplen)(Wikipedia)


※つまりByrgeを複数形にするとByrgenになる


また単数名詞を不定形から定形に変化させる際にも、語尾にenをつける場合がある


例:brevet(手紙)→breven(定形の手紙)


スウェーデン語では、たとえば英語で「定冠詞」と呼ばれているものに似た働きをする語はあるが、それは独立した語ではなく、名詞の後ろにつける接辞である。この接辞は共性名詞単数では-enまた-n,中性名詞複数では-etまたはtという形をとる(例:flaskan (ビン) brevet)。複数形につくときは文法性でなく複数形の語尾によってそれぞれ-na,-a,-enなどがつく(例:flaskorna(ビン),breven (手紙))。名詞にこの接辞のついた形を定形といい、つかない形を不定形という。 (Wikipedia)


本作に登場するByrgenwerthの場合には、Byrgeを定形化してByrgenにしたものとも、「何かを隠す者」という名詞を複数形に変化したものとも考えられる(つまり「何かを隠す者たち」になる)


おなじゲルマン語系のドイツ語でも名詞を複数にした際に語尾に n や en がつくことがある


複数型の語尾には、-(無語尾), -e, -er, -(e)n, -sの五つのパターンが存在する。(Wikipedia)


例:Schule(学校)→Schulen(学校:複数形)

例:Funke(火花)→Funken(火花:複数形)

例:Biologe(生物学者)→Biologen(生物学者たち:複数形)

例:Auge(目)→Augen(目:複数形)


Byrgeにこの規則を適用すると以下のようになる


Byrge(何かを隠す者)→Byrgen(何かを隠す者たち)



Byrgenwerth

以上の考察を組み合わせるとByrgenwerthの語義が明らかになる


Byrgen=何かを隠す者たち

Werth=島、半島、干拓地、河岸


Byrgen+Werth=何かを隠す者たちの島(半島、干拓地、河岸)である


より文学的に表現するのならば「隠秘者たちの孤島」という感じになろうか


その孤島は神秘を隠す水の際にあり、(半)島にある学び舎には隠秘者たちが住んでいたのである


そして「何かを隠す者たち」の名に相応しく、合い言葉の番人はビルゲンワースそのものを隠し、その学長ウィレームは湖に秘密を隠し、白痴の蜘蛛ロマは儀式を隠していたのである


神話ではByrgeの泉から来た二人の子供たちが月に誘われて神的存在になったとされる(上で引用したヒューキとビルの神話を参照のこと)


神話をトレースするように、Byrgenwerthにある月前の湖には、月(悪夢あるいは上位者オドン)によって上位者となったロマが棲んでいる


あるいは月前の湖のロマと嘆きの祭壇のロマとは兄妹なのかもしれない



禁域の森

禁域の森の底にはカレル文字「深海」が落ちており、また周囲には広範囲に水たまりが広がっている


これは過去に禁域の森の底部に水が溜まっていた期間があったことを示している


ということは、その期間ビルゲンワースは前方の湖と後方の湿地帯によって島のようになっていたのである


ビルゲンワースの語義が「隠秘者たちの島」と名づけられたのは、こういった理由からなのかもしれない


蛇足

ByrgirからByrgenへの変化は単にドイツ語風の響きを選んだとも考えられる

「~~ゲン」とつくとドイツ語風に聞こえるからである

いろいろと最もらしくgirからgenへの変化を説明してみたものの、言語学的な素養や教養はまったくないので、正しいかも分からない

その点、Byrgirをドイツ語風の響きにしたらByrgenになった、という説ならばシンプルかつ明解である

2021年2月20日土曜日

Valheim 鉱石を運搬する話

 Valheimレビューで、鉱石を持ってワープ出来ないことにやや不満があると述べたが、それは間違いであった


実際に本腰を入れて鉱石を運搬してみると、これが非常に面白いのである


手順としては以下のようになる

  1. 本拠地までの道をならす
  2. 上陸地点に設けた仮拠点にカートを用意
  3. 輸出港から鉱石を積み込んで出航
  4. 上陸地点で鉱石をカートに積み直す
  5. 本拠地までの道を運搬


今回たどった経路が以下の図である


※ストーンサークルの左上にある「犠牲の石」付近が本拠地である

出発点は船着き場として建造したものの、やたらと大規模な漁師館のようになってしまった拠点である


中庭に面した屋根付きのポータルエリアが便利

ということで鉱石を積載して出発


海の表現がとても秀逸である



星空とユグドラシルの枝


上陸地点からはカートで進む


荷物の重さがそれほどでもなかったので登れた

本拠地が見えたときにはある種の感動さえ覚えた




運搬した鉄を何に使ったかというと、屋内の改装である


床下収納にした大型チェストがお気に入りである(歩行の邪魔にならない)


最初に作ったこの屋敷だが、今となっては手狭なのと海が遠いことから、近々船着き場に本拠地を移転する予定である


銀の精製が済み次第、また船で輸送を行なう予定である


風向き次第で南側の進路を取る可能性も


難易度について

前回、マルチ前提の難易度と書いてしまったが、事前の準備をきちんと行なえばソロでも大骨は倒せる


  1. 毒耐性を上げる蜂蜜酒を造る
  2. 鉄装備一式を揃える(無強化でも可)
  3. 可能であれば、鉄メイス(大骨に特攻)と小型楯を用意(スキルは上げたようがいいかもしれない)
  4. 大骨と戦う場所の近くにポータルを設置
  5. 毒耐性蜂蜜酒を飲んで戦闘開始
  6. 毒液は無視。大骨の攻撃をパリィして反撃。一撃離脱でも可
  7. 危なくなったらポータルを使って逃げ、拠点で回復しつつ戦う
  8. 大骨のHPは回復しないので時間をかければいつか倒せるはず
  9. ログアウトして別ワールドに逃げるのもよい


雪山

沼の次は雪山なのだが、正直沼の方がきつかった


雪山も凍結防止の蜂蜜酒を造る必要はあるが、銀は数が掘りやすく銀装備一式がすぐに揃う(マントと胴に耐寒性能upがついてる)


ストーンゴーレムもツルハシで攻撃することを知っていれば大して強くない


沼を越えたご褒美という感じのエリアなのだろうか。成長を実感させてくれるような難易度バランスは素晴らしい


蛇足

前回のレビューにおいて、鉱石ワープと難易度への言及が的外れだったので、その訂正も含めて記事にしたものである

ストーリー的にもシステム的にも、ボスを倒すことが目的のひとつであるが、このゲームの面白さは寄り道にあると思われる

あまり急いてボスを倒し尽くすと、逆に飽きが早いのかも知れない


2021年2月16日火曜日

Valheim ヴァルヘイム レビュー

 ヴァルヘイムとは一言でいうと、北欧神話を舞台にしたサバイバルクラフトゲーである


※詳細はSteam参照のこと


※現在のところアーリーアクセス(EA)、つまり開発途上のゲームであり、遊べるのは実装された範囲までである


レビュー

まずグラフィックの質が高い。ここでいう質とはフォトリアル至上主義とは無縁のグラフィックの美術的センスのことである


筆者にはフォトリアルなグラフィックは必ずしもゲームの質に貢献しないという持論がある


まるで現実のような精緻なグラフィックをゲーム上に構築したとしても、ゲームとしての土台が傾いていれば、名作にはなりえないのである


その点ヴァルヘイムのゲーム容量は1GB程度であり、世間一般で言うところと高グラフィックはとうてい望めない


しかしながら、ゲームをプレイしているうえで世界に没入できているという感覚は、フォトリアルを追求したゲームよりヴァルヘイムのほうがはるかに大きい


風が明示的に表現されている


低ポリゴンを最新エフェクトにより美麗に魅せるという手法は、あえて類似ゲームを挙げるとすれば、ゼルダの伝説Botwに近いだろうか


正直なところ、BOTWの独特な“味”を表現できるのは日本のメーカーだけだと思っていたが、良い意味で裏切られた思いである


世界の諸物は単なる物として置かれているのではなく、プレイヤーに関連する「出来事」として提示され、そうした出来事の総体が世界を創り出しているのである


ヴァルヘイムはNPCはほとんど登場せず(商人とカラス、トール、森の謎人ぐらいか)、草原に廃屋が点在するような空疎にさえ思える世界である


だが、そこで筆者が感じたのは世界そのものから立ち上る濃密な存在感である


大地はクワにより掘り起こされ、木々はオノによって切り倒され、鉱物はツルハシによって砕かれる


吹き抜けるカゼは眼に映り、アメは体を濡らし、シカの鳴き声がこだまする


世界に自分ひとりだけのような寂寥感と、かつて人がいた気配だけが漂う廃屋


世界の美しさと汚らわしさ、自然の恩恵と過酷さ、わずかに示されるストーリーが、世界そのものへの興味を引き立てていく


奇をてらわず、あからさま過ぎず、それでいて人間の五感をひかえめに刺激するような表現が、プレイヤーを世界の深いところまで没入させるのである


正直なところ、Elden Ringに密かに期待していた要素が少なからず実現されていて驚いている



世界

北欧神話には本来は9個の世界しか存在しない。本作の10個目の世界ヴェルヘイムはつまりオリジナル設定ということになる

※あるいは、ヴァルハラ(戦死者の館)とヘイム(国)を合わせて、戦死者の国という意味なのかもしれない


※空を見上げると巨大なユグドラシルの枝が見える。このダイナミックな表現法はゼノシリーズを彷彿とさせる

あるいはラグナロク後に神々が再会を果たす場所「イザヴェル(輝く野)」のイメージも含まれているのかもしれない


ラグナロク後には海中から緑の美しい大地が浮かび上がるとされるが、本作の海に浮かぶ無数の島々のビジュアルイメージと合致するからである


※世界はランダム生成されるので多少の相違はあるかもしれないが、配信など見ても多くの島に分かれているようである


とはいえまだオーディンは生きているようなのでラグナロク後ではない。あくまでモチーフはモチーフである


ヴァルヘイムは名前やストーリーから推測するにヴァルキュリア(戦乙女)とヘイム(古ノルド語で「国」の意)の合成語のようである


戦で命を絶たれた戦士Valkyriesにより、あなたの魂は10個目の北欧の世界「Valheim」へ運ばれた。混沌とした生き物と古代の神々に囲まれたあなたは、オーディンの古代の宿敵を倒し、「Valheim」に秩序をもたらす任務を負う。(Steamのストアページ「このゲームについて」)


ただし「戦で命を絶たれた戦士Valkyries」とあるように、ヴァルキュリアの設定そのものも変更されているのかもしれない(翻訳の問題も?)



難易度

ソロだと難易度がかなり高い。草原→黒い森→沼→雪山→平地という攻略順なのだが、サクサク進めるのは「沼」までであろう(ボスは強い)


※ソロでも5番目のボスまで倒せるようである


沼で「鉄」を入手することで石材建築まで可能になるのでその先は無理に進まなくてもいいかな、というのが個人的な感想である


というか鉄の必要量が尋常でないので進めない…



建築

攻略拠点ともなり、休息もできる家を建築するのがこのゲームの定石である


休息することでスタミナ回復速度上昇のバフが付与される。基本的にはこのバフが付与された状態で探索することになる


休息するためには焚火と寝床が必要であるが、雨が降ると焚火は消えてしまうし、といって家の中に焚火を置くと煙が充満して死んでしまう


そのあたりをクリアする効率的な家として下の2つをよく使う


3x3の小さな小屋である


5chのValheimスレで見かけて参考にした家


あくまでも一時的な攻略拠点である


また家には快適度がある。快適度は鹿皮などを敷くと上がり、快適度1につきバフ時間が1分延びる


本拠地はやや大きめの屋敷を作り、チェストを並べておくと戦利品の整理がしやすい


短い丸太を使って横ではなく縦に並べる方法もある



食事

食事を摂ることで最大HPとスタミナが増える

このゲームはレベルというものがなく、HPとスタミナは食事の質により確保される


食事を何も取らなければゲーム終盤でもHPは25程度である


草原などに生えているベリーやキノコや、生肉を焼いて食べることで60~80程度まで上昇する。HP100程度あれば黒い森のボスの攻撃も耐えられるはずである


廃屋などにある「蜂の巣」は弓で撃つことで破壊でき、女王蜂を入手することができる


女王蜂と木材で養蜂箱を作ることができ、定期的にはちみつを入手することができるようになる。そのまま食べてもいいし、中盤以降は醸造酒を作るために必要になる



戦闘

棍棒系の武器と弓を持てば大体の敵は倒せる


棍棒系は黒い森のスケルトンなどに特攻があり、また沼のボスにもよく効く。


トロールは弓を引き撃ちすることでノーダメージで倒せる(盾が強くなればパリィ)


連続攻撃するとすぐにスタミナが枯渇してしまうが、パリィを混ぜていくことで素早くMOBを倒せ、またスタミナも維持しやすい




総評

開発途中であるが雑な部分はほとんどない。ゲームのレベルデザインからUI、成長曲線等、とても丁寧に作られていることがわかる


聞くところによると開発者は5名とのことである


小規模であることが奏功したのか、意味のないシステムをゴテゴテと飾り付けることはせず、シンプルにバランスと面白さを追求していったようであり、そこには引き算の美学のようなものすら感じられる


そうして要素を削っていったことで濃密な世界が誕生するというのも面白い


おそらく主導している人物のビジョンが明確なのであろう。感覚ではなく論理を重視する人物(簡単にいうと「面白いゲームを狙って作れる人」)であり、その点からいえば開発が迷走する心配はなさそうである


基本的にマルチ前提の難易度なので、ソロでかつ腕に自信がなければ沼の攻略に手を付けるまでを目安にプレイするといいかもしれない。その後は難易度が上昇し、多大な労力を要求される(鉄集めとか)


鉱物を所持してワープすることができないため、カーゴや船で運搬するか、あるいはワールド間運搬という裏技的な技で運ぶしかないのがやや不満である


アップデートで遊びやすくなったら進めるということも検討しつつ、建築しながらのんびり過ごすのも良いかもしれない


あくまでも開発中ということを頭に留めおいて、途中まで遊んでみるつもりならば、2000円という低価格ということもあり、オススメである


2021年2月3日水曜日

Bloodborne 雑文 アルフレート

考察ではなく「雑文」である

 

名前の語源から判断すると、カインハーストはドイツ系である


まず女王アンナリーゼがアンナ+ルイーゼの合名であり、ドイツ人の名の例として語源事典などに載っている


エヴェリンもまたドイツ名である。エヴェリンは銃の名であるが、テキストに「女性名を冠されたこの銃は」とあるように、人の名前でもある


さて、ブラッドボーンのNPCの中にはドイツ名を持つ者が他に2名いる


アルフレートとエミーリアである


アルフレートは金髪碧眼であり、いわゆるドイツ系(ゲルマン系)の特徴を有している



またエミーリアは銀髪に近いプラチナブロンドである




そしてまた女王アンナリーゼも金髪である



つまるところアルフレートとエミーリアは名前もそして身体的特徴もカインハーストの係累であることを示唆しているのである



孤児

カインハーストの係累であるアルフレートとエミーリアが現在のような地位にあることには、彼らもしくは彼らの祖先が孤児院に引き取られたことが関係している



孤児院の鍵

大聖堂の膝元にあった孤児院は、かつて学習と実験の舞台となり

幼い孤児たちは、やがて医療教会の密かな頭脳となった


ローゲリウス率いる処刑隊による粛正は「血族」のみが目的である。そのため血に穢れを持っていない者たちは見逃されたか、保護されたと考えられる


ほとんどの大人は血族となっており殺害されたであろう。しかし子供たちの多くは保護されたのである


おそらく血族になるためには「成人」である必要があったからである


このルールは萩尾望都の『ポーの一族』からの影響があると考えられる(『ポーの一族』では成人にならないと一族に加わることができない。しかしエドガーが14歳で一族にされてしまったことから、悲劇の物語がはじまる)

※宮崎英高氏が萩尾望都の作品群に影響を受けていることは「デラシネ」からも見て取れる


血族が遺伝によって伝わるのでないことは、血族に加わるためにはアンナリーゼと契約を交わさなくてはならないことにも示されている


血族名鑑

カインハーストの血の女王

アンナリーゼと契約を交わした血族たちの赤革の紳士録


古くから、すべての血族の名が記されている


つまりカインハーストの民であっても、血の契約をする前ならば血は穢れていないのである


保護されたカインハーストの孤児たちは医療教会の頭脳となり、やがて聖歌隊を組織したのである


言ってしまえば医療教会の上層部とは、カインハーストの血を引く者たちの集団である


ヨセフカや偽ヨセフカが金髪であるのも、ユリエが碧眼(頭髪はない)であるのも、医療教会の上層部にカインハーストの血を引く者たちがいるからである


あるいは初期の狩人にはカインハーストの者たちが多かったのかもしれない(ヘンリエッタなど)


こうしたカインハーストの血を引く集団の最後尾にアルフレートとエミーリアはいるのである


兄妹

アルフレートとエミーリアがカインハーストの血を引く者だったとして、なぜこの二人だけが獣狩りの夜に活動していたのか


本作には同じ構図が繰り返される特徴がある。赤子を奪われる母であったり、獣の病により滅ぶ都市であったり、人類の冒涜とそれに対する上位者の呪いなどである


アルフレートとエミーリアと同じような構図を持つキャラクターとしては実験棟の兄妹が挙げられる


脳液

かつて、兄は医療者を志し、妹はそのため進んで患者となった

結果夢のような神秘に見え、兄妹は幸いであった


ここに描かれるのは目的に邁進する兄と、それを支える妹という構図である


これはそのまま処刑隊として目的を果たそうとするアルフレートと、彼を支えるために医療教会を維持しようとするエミーリアに当てはめられるのかもしれない


ただしアルフレートとエミーリアが兄妹であるとするには根拠が薄弱であるので、実験棟の兄妹の繰り返し、とするには弱いかもしれない


しかしながら、2人が医療教会によって育てられた、ちょうど同じぐらいの年齢の男女であることは確かであろう


また、2人は作中ではほぼ同じタイミングで登場する。かたや行く手を阻む敵として、かたや協力者として、まるで対照的に登場するのである


この対照性を意図的なものと解釈するのであれば、二人は同じコインの裏表、すなわち双子である



アルフレート

アルフレートがローゲリウス師を列聖の殉教者として祀るために動いていることには疑いはない


見てください! あなたのお蔭で、遂に私はやりましたよ!

どうです!素晴らしいでしょう!これで師を、列聖の殉教者として祀れます!


しかしこれほど喜悦していたアルフレートはカインハーストから戻るやいなや、聖堂街にあるローゲリウス像の前で自決しているのである


目的を果たしたことで生きる意欲を失ったとも、また殉死したとも、自分が獣血に侵され始めていることに気づいたとも考えられる


アルフレートの瞳孔はやや混濁気味のように見える。瞳孔の崩れや蕩けは、獣の病の兆候である

獣の病に罹患したことに気づいたアルフレートは獣化する前に処刑隊として自らを処理したという説である


しかし、やや気になるのがアルフレートのセリフである


如何にお前が不死だとて、このままずっと生きるのなら、何ものも誑かせないだろう!


誑(たぶら)かす、とはやや場違いな言葉である(誑かす:だましまどわす、あざむくの意)


いったい女王は誰を誑かそうとしたのであろうか


はじめローゲリウスとも考えたのだが、どう考えてもローゲリウスは誑かされているように思えない


誑かされているのだとしたら、ローゲリウスは封印を解いて女王を解放したであろう


しかし実際にはローゲリウスは最後まで女王の間を閉ざし続けていたのである


余談だが、ローゲリウスがミイラ的な姿なのは、血を完全に失うことで穢れた血に侵されないようにするためである


血に宿る獣血の主にとって、ひからびたローゲリウスは操ったり獣化させることのできない存在である


そうであるのならば、女王が誑かしたのは「アルフレート」である


カインハーストの血を引くアルフレートは、不死の女王アンナリーゼから見れば我が子も同然である


故に彼女はアルフレートに事実を伝えたのである


我が一族の末裔よ、と


そして、なぜ我らが宿敵の側にたち同胞を傷つけるのか、と


一方、処刑隊の教義をたたき込まれてきたアルフレートにとって、その事実はもっとも恐ろしいものであった


散々に罵倒し嫌悪し、憎悪してきた相手と自分が同族であることなどとうてい受け入れられないのである


彼はアンナリーゼの言葉を「誑かし」と判断し、不死と知りながら彼女を肉片に変えたのである


なぜなら肉片になれば喋ることはできないからである


そして彼はローゲリウス像の前まで戻ると激しい苦悩の果てに自決したのである


なぜならば、女王アンナリーゼを肉片に変え口を封じるという行為こそが、アルフレートの迷いを示しているからである


もしアンナリーゼの言葉を完全に否定できるのであれば、彼はアンナリーゼを肉片にする必要はないのである


しかしアルフレートはそうせずに、不死と知りつつ口を封じたのである。まるで彼女の口から不都合な真実が語られる事を恐れるかのように


そのことに考え至ったアルフレートには自決するしか道は残されていなかったのである


なぜならば、いくら否定しようとも彼の心は自分がカインハーストの民であることを否定しきれなくなっていたからである(その意味ではアンナリーゼに誑かされている)


血族の自分が血族を狩る処刑隊であるという矛盾に、半身が引き裂かれた彼は、ついに自決するに至ったのである


このとき彼はローゲリウス像の前で自決しているが、これはローゲリウスに対して二心がないことを示すやり方である(殉死とも言えるが)


すなわちアルフレートは自ら死んでみせることで処刑隊への忠誠を示したのである

2021年2月2日火曜日

Bloodborne 考察42 月の落とし子エーブリエタース

前回のオドンの考察(モチーフ編、伝承編)では、オドンの正体がオーディンであること、その多面的な性格を受け継いでいること、エーブリエタースの父親がオドンであると考えられることなどを述べた



このうち「青ざめた月」としてのオドンとエーブリエタースの関係について考察したのがこの記事である



月の落とし子

月の落とし子とは宇宙の娘、エーブリエタースの「内部名」(Bloodborne WIki)である


星界からの使者は「月からの使者」であり、星の子らは「月の幼生」である


つまり内部的には、月は星界や宇宙と同一のものとして考えられているのである


さて、エーブリエタースは月の落とし子である。つまり、その父親は月であることになる


オドンの考察ではオドンには青ざめた月としての側面があると述べた


ここにオドン(月)→エーブリエタース(月の落とし子)という大いなる鎖が見出せるのである


また星界からの使者(月からの使者)をや星の子ら(月の幼生)もまた、オドンにより眷属となったものと考えられるのである


すなわち眷属とは「オドンの眷属」のことである


空仰ぐ星輪の幹となった苗床たちや失敗作たちもまた眷属である。


「苗床」

実験棟の患者、アデラインにもたらされたカレル

人ならぬ声、湿った音の囁きの表音であり

星の介添えたるあり方を啓示する


この契約にある者は、空仰ぐ星輪の幹となり

「苗床」として内に精霊を住まわせる

精霊は導き、更なる発見をもたらすだろう


星、とはオドンのことである。オドンの介添え(世話人)である彼らは星の光を宿す精霊により苗床となり、その星の光の力ゆえに眷属となったのである


眷属とは、青い光(月光)としてのオドンの影響を受けた者たち、とも考えられる



ミコラーシュ

※この項は次項「ゴース」で反論するための仮説である

さて、月の名を持つ「メンシス学派」の主催者ミコラーシュが祈るのはゴースあるはゴスムである


ああ、ゴース、あるいはゴスム

我らの祈りが聞こえぬか

白痴のロマにそうしたように

我らに瞳を授けたまえ(ミコラーシュ)


祈っているのはゴースあるいはゴスムであって、月ではない


この矛盾は開発の初期段階において、エーブリエタースがゴースと呼ばれていたことに由来するものである


アルファバージョンを復元した動画によって、エーブリエタースの先触れが「ゴースの先触れ」という名前だったことが明らかになっている


つまりミコラーシュは現在のゴースに呼びかけているのではなく、開発の初期段階のゴース、すなわち今のエーブリエタースに呼びかけているのである


なぜならエーブリエタースは宇宙の娘であり、月の落とし子であり、その父親はオドンであり、その本性の1つは「メンシス(月)学派」が崇拝する「月」だからである


また「あるいはゴスム(Kosm…)」は通説のように、Cosmosのことである(C→Kの変化はギリシャ語読み、あるいはチェコ語読みしたことによるものである)


Cosmosとは「Ebrietas, Daughter of the Cosmos」というように、そのまま宇宙のことである


そして宇宙は月と同一視されているのだから、その父は月であるオドンということになる


ミコラーシュの本意を汲み取って彼の祈りを翻訳するのならば、「ああ、エーブリエタース、あるいは宇宙」となるのである


さらにこれを内部名に沿って訳すのならば「ああ、月の落とし子、あるいは月」となり、最終的な形としては「ああ、オドンの落とし子、あるいはオドン」になるのである


ミコラーシュが祈っているのは、オドンの娘たるエーブリエタースと宇宙たるオドンなのである


要約するのならば、ミコラーシュの祈りに見える錯綜は、開発中の名前変更が引き越した混乱の残骸なのである



ゴース

ミコラーシュの不可解な言動を名前変更による混乱、と結論づけてもよいのだが、しかしミコラーシュの祈りを矛盾を抱えたまま残すとは考えにくい


本当にミコラーシュの祈りがゴース(現在の)に捧げられていると考えることは不可能なのだろうか


端的に言ってエーブリエタースとゴースは置換可能な存在である


両者ともにオドンの落とし子とも考えられるからである


双方とも深海生物的な上位者であり、そして共に大事なものを失っている。ゴースは赤子であり、エーブリエタースはおそらく嘆きの祭壇にある「ロマに似た甲虫」であろう


双方ともに酷似した姿をしているが、嘆きの祭壇の甲虫は月前の湖のロマよりも足が長いなど形態的な相違がある


ここで暗示されているのは、ロマに似た上位者の赤子を産むのは月の落とし子であること、その赤子は成体になれずに死ぬということである


ゴースとエーブリエタースは本作でもおなじみの構図を繰り返している。「赤子を奪われる母」の構図である


誕生した赤子の類似性から、ゴースとエーブリエタースは同じく宇宙の娘、すなわち月の落とし子であると考えられ、父親はやはりオドンである


また神話によくある話であるが、彼女たちの赤子の父親もオドンである(血が濃くなりすぎるが故に赤子は生まれなくなったのだろうか)


以上のようにエーブリエタースとゴースは置換可能であり、両者は共に月の落とし子であるが故に、ミコラーシュの祈りは、矛盾や開発中の混乱によるものではなく、正当なものである


つまり、ミコラーシュは正しく「今のゴース」に祈りを捧げているのである


なぜならそのゴースは「月の落とし子」であるが故に、ゴスム(Cosmos)と共に祈られているのであり、彼の祈りはまさしく「オドンの落とし子とオドン」に捧げられているからである


※そもそもエーブリエタースは聖歌隊の本尊である。ライバル会派の本尊に祈りを捧げるというのも不自然である



エーブリエタース

さて、上述の考察を取り入れるのならば、エーブリエタースは死んだ我が子の亡骸の前にひざまずき、空を見上げ星の徴を待ち望んでいることになる


彼女の祈りを成就させるような奇跡的な力を持つのは「宇宙」そのものともいえる「オドン」だけだからである


つまり、彼女は我が子の復活を願って祈っているのである。生きていた時の状態に戻そうと祈っているのである


しかしその祈り、つまり上位者の祈りが何を引き起こしたかというと


時間を巻き戻す力を亡骸に与えたのである



死んだ子の時間は巻き戻されず、その力を行使する聖体となってしまったのは皮肉なことである


エーブリエタースは非常に醜い姿をしている。だがその祈りは心からのもので、宇宙はその美しさに一片の奇跡を持って応えたのであろう


結局のところ、私が使用する創造的なエネルギーを提供するのはこれらのものです。たとえば、心からの祈りの美しさ。それは私にインスピレーションを与えるようなものです。ですから、Bloodborneに見られるもの、つまり陰気さ、救いの欠如、狂気などは、私自身のやり方でそれらも尊敬していると思います。そこには美しいものがあります。(インタビューより)



蛇足

没データの扱い方についてはいつも悩む

本編に採用されなかった没データを考察の根拠として利用するのは間違いとするべきなのか、あるいは設定はそのままだが諸事情により(表現が直接的すぎなど)封印したと判断するのか、その基準が曖昧だからである

今回もまたエーブリエタースが元々ゴースという名前であったという没設定から論を展開したものである

没設定から考えるのならばミコラーシュの祈りは、設定が没になったことで整合性がとれなくなった典型、と言えるものである

しかし、そこからさらに一歩考えを進めてみると、ミコラーシュが実は正しいことを言っていたのではないか、という結論にたどり着いた

ミコラーシュのセリフは本編の伝承によっても解釈できるものであり、それは設定変更による矛盾の残滓ではないのである(これも解釈しだいだが)


2021年1月28日木曜日

Bloodborne 考察まとめ10-2 オドン(伝承編)追記:ゴースあるいはゴスム

モチーフ編ではオドンのモチーフをオーディンと仮定して考察を展開した


今回はそれにより得られた考察により、作中の伝承がどのように説明できるのかを考察したものである



月光の聖剣

さて、月光の聖剣は青い月の光を纏う


月光の聖剣

かつてルドウイークが見出した神秘の剣

青い月の光を纏い、そして宇宙の深淵を宿すとき

大刃は暗い光波を迸らせる


それは彼だけの、密かに秘する導きだったのだ


オドンの狩人としてルドウイークが求めたのは、師と同じ力、すなわち青い光だったのである。何よりオドンの狩人である彼を導けるのはオドンだけである


ああずっと、ずっと側にいてくれたのか

我が師

導きの月光よ…(ルドウイーク)

 

しかしその青い光にはオドン粒子が含まれている

寄生虫の卵という粒子である


青い月光を見続けた彼の眼に寄生虫が寄生し、光の小人が見えるようになったのである


「導き」

目を閉じた暗闇に、あるいは虚空に、彼は光の小人を見出し

いたずらに瞬き舞うそれに「導き」の意味を与えたという

故に、ルドウイークは心折れぬ。ただ狩りの中でならば


寄生虫であってもそれはオドン由来の神秘の寄生虫である。神秘の寄生虫がもたらす啓蒙が獣性を抑制することは、啓蒙/獣性システムからも明らかである


ルドウイークの心が折れなかったのは、眼の寄生虫がもたらす啓蒙により、獣性を退けていたからなのかもしれない


※月光の聖剣はファンサービスではなく、オドンという設定を剥き出しのまま出してきた可能性がある


ちなみにオーディンにはスレイプニルという愛馬がいる。足が6~8本あるとされ、非常に速く走る名馬である


ルドウイークの足の数は分岐をどう解釈するによるが、8本あるように見える



ゲールマン

ゲールマンが月に祈ると月が青い光を帯び、直後に青い光による大爆発が起きるのは、主であるオドンに祈ることによりオドンの力を召喚しているからである


通常時は月は白~黄色である

ゲールマンが祈りを捧げると月は青く発光する

そして最後には青い光の爆発が起きる

この爆発もまたゲールマンが狩人すなわちオドンの戦士であるために行使できる力なのである



エーブリエタース

またエーブリエタースと聖歌隊は空を見上げ、星からの徴を探しているという


聖歌装束

見捨てられた上位者と共に空を見上げ、星からの徴を探す

それこそが、超越的思索に至る道筋なのだ


そのエーブリエタースのいる嘆きの祭壇の上方からは「青い光」が降り注いでいる


この青い光には波であるオドンと粒子であるオドン(寄生虫の卵)が含まれる。聖歌隊はこのうち「波」の側面だけをすくい取ろうとしているのである


しかし光の波と粒子を分離するのは不可能である


それゆえに彼らは光そのものを見ないことにしたのである。彼らが目隠し帽子をかぶるのは、光を見ないようにするためである



月見台の月

乳母の月見台から見える青白い月には奇妙な点がある



月見台から見下ろすと、月は遙か彼方に見える山脈の手前にある


つまりこの青白い月は現実の月ではなく、地上すれすれにまで降りてきた月のようなものなのである


この月を呼び寄せたのは「メンシス(月)学派」である


ヤハグルのメモにはこうある


狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている

秘匿をやぶるしかない(隠し街ヤハグルのメモ)


一読するとこれは「赤い月」を指しているように思える。しかし、赤い月を呼び寄せたところで、世界が獣に塗れるだけである


それはミコラーシュの思想とは真逆である


我らに瞳を与え、獣の愚かを克させたまえ(ミコラーシュ)


つまり、メモに言われた「月」とは「赤い月」のことではない

そしてメモは月が一つであるとも言っていない


つまるところ、月は2つあったのである


2つの月とは、赤い月と青ざめた月である


彼らの目的は、メルゴーの泣き声を餌にして青い月と赤い月という2つの月を呼び寄せることだったのである


目的が達成されたあかつきには、青い月と赤い月が融合を果たし、全世界に青ざめた血の空が広がり、夢が現実となり、神秘と血が交わって無数の上位者の赤子が誕生し、同数の3本目のへその緒が得られ、人々は3本目のへその緒により、「瞳を得る」のである


儀式はもうすぐ終わる

夢が現実に、我らに瞳をもたらすのだ!(ミコラーシュ未使用セリフ)


そしてまた青く光る月は、青く輝く湖とも、神秘の光を湛える宇宙とも呼ばれるのである


泥に浸かり、もはや見えぬ湖

宇宙よ!(ミコラーシュ)



ゴースあるいはゴスム

※動画のコメント欄に、ミコラーシュが祈っているのはオドンではなくゴースあるいはゴスムなのではないか、という指摘をいただいたのでそれに関する補足


「ゴースあるいはゴスム」の英文は「Kos, or some say Kosm...」である

このうちのKosmを「Kosmos, Kosmic→Cosmos, Cosmic→宇宙」と解釈する説がある


この説に従うのならば、ミコラーシュはゴースと共に「宇宙(Cosmos)」に祈っていることになる


またこれは海外ではほとんど通説のようになっている説であるが、実は開発の初期段階において、今エーブリエタースと呼ばれているボスは「Kos」と呼ばれていた

※残念ながら確固たるソースは見つけられなかったが、海外の有力考察者たちのなかでは通説のようになっている


つまるところ、Kos, or some say Kosm...を以上の解釈により読み替えるとしたら、次のようになる


ああ、エーブリエタース、あるいは宇宙

我らの祈りが聞こえぬか


エーブリエタースは宇宙の娘であり、宇宙とはオドンのことである


よってさらに読み替えるとしたら


ああ、オドンの娘、あるいはオドン


になるのである。つまりミコラーシュはオドンの娘とオドンに対して瞳を授けてくれと祈っていることになる



青ざめた月

3本目のへその緒にある「青ざめた月との邂逅」とはオドンとの邂逅のことである


3本目のへその緒(古工房)

すべての上位者は赤子を失い、そして求めている

故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし

それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ


青ざめた月と青ざめた血は似て非なるものである


青ざめた月がオドンであるのに対し、青ざめた血は神秘と獣性の入り交じった血をもつ月の魔物のことを指しているからである


青ざめた月との邂逅により、狩人と狩人の夢がはじまったとは、オドンとの邂逅により、オドンの戦士である狩人が生まれ、そして狩人の夢というヴァルハラ宮殿に連れてこられたことを言ったものなのかもしれない


使者とは狩人を狩人の夢に連れてくる者、すなわちフロム解釈によるヴァルキューレなのかもしれない



月の香りの狩人

主人公の放つ香りに言及するNPCが数名存在する(孤独な老婆も未使用セリフで言及しているが今回は省略する)


血の女王アンナリーゼ

…貴公、訪問者…月の香りの狩人よ


オドン教会の住人

…ん、あんた…もしかして、獣狩りの…狩人さんか?

すまない、香のせいで、匂いがわからなかったよ

ここは安全だ。獣避けの香もしっかりと焚かれてる


偽ヨセフカ

…あら、月の香り…

あなた、どうやって入り込んだのかしら?


ヤーナム市街の少女(妹)

…あなた、だあれ?

知らない声、でも、なんだか懐かしい臭いもするの


ガスコイン

…匂い立つなあ…

堪らぬ血で誘うものだ


娼婦アリアンナ

あら、あなた、おかしな香り…

でも、よかったわ。獣も血も、そういう匂いはうんざりなの


まずガスコインについては血の臭いに反応していることが、実装セリフと未使用セリフの繋がり方で分かる

…どこもかしこも、獣ばかりだ(実装セリフ)

…堪らない、血の匂いじゃないか…(未使用セリフ)


主人公狩人の放つ香りが獣や血の匂いではないことは、アリアンナのセリフからも明らかである 


でも、よかったわ。獣も血も、そういう匂いはうんざりなの


獣や血の匂いではないからこそ、「でも、よかったわ」と安堵の言葉を漏らすのである


やや場違いなのはオドン教会の住人である


オドン教会の住人

…ん、あんた…もしかして、獣狩りの…狩人さんか?

すまない、香のせいで、匂いがわからなかったよ

ここは安全だ。獣避けの香もしっかりと焚かれてる

 

狩人は獣避けの香によって分からなくなる匂いを放っているようである


獣避けの香とは、獣が危険を感じて近寄ろうとしない匂いである。すなわちこのゲームにおける獣性の反対の属性、神秘の香りである


その獣避けの香が焚かれているのが「オドン教会」であることは意味深である


アンナリーゼ、偽ヨセフカ、アリアンナ、少女(妹)に関しては、カインハーストの血を引いていることから、オドンの狩人の匂いが分かると考えられる


少女については、父親また祖父が獣狩りの狩人であったことから、その匂いに反応したとも考えられる


ということで月の香り、とはっきり表現したのはアンナリーゼと偽ヨセフカである


さて、上述したがオドンとは青ざめた月である(厳密には月を青く染める光)


そして狩人はオドンの戦士として獣狩りの夜に送り込まれる。そのオドンの戦士の香りを彼女たちは月の香りと表現したのである


なぜならば「月の香り」とは、青ざめた月の放つ香りであり、月を青く染める青い光の香りであり、オドンの香りだからである


オドンの戦士であるが故に狩人は月の香りを纏っているのである


極めて濃密な獣血をもつ血族たちには、その神秘の匂いははっきりと月の匂いとして感じられるのである(このことから、偽ヨセフカの血は純潔に近いとも考えられる)



オドンのカレル

オドンは青い光であるという。しかしながら、オドンのカレル文字は「赤」(血)で描かれている。(「導き」や「瞳」などは青い光で描かれている)


また滲む血は上質の触媒であり、それこそが姿なき上位者オドンの本質である、という文面からは、滲む血=オドンというような印象を受ける


「オドンの蠢き」

人であるなしに関わらず、滲む血は上質の触媒であり

それこそが、姿なき上位者オドンの本質である

故にオドンは、その自覚なき信徒は、秘してそれを求めるのだ


しかし姿なき故に声のみの存在であると言われるオドンが血液、つまり物質であるはずはない(光には質量はない)


「姿なきオドン」

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ

上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり

その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める


端的に言えば、オドン関係のカレルが赤く描かれるのは、姿なき故にオドンを宿した宿主を描くしかないからである


オドンとは血の遺志のことでもあるからである



Bloodborne 考察まとめ10-1 オドン(モチーフ編)

はじめに

前回の「考察まとめ10 オドン」が追記に次ぐ追記によりカオスになってしまったので、モチーフ編と伝承編に分けた


長くなるので「モチーフ編」としたが、本考察の正式なタイトルは「オドンのモチーフをオーディンと仮定した場合の一考察」である


オドンの不可思議な性質を、オーディンという多面的な神を軸にして考察するものであり、あくまでも仮定であり決定でないことを先に述べておく


こうした事情からクトゥルフ神話に関してはまったく触れていないか、言及はわずかである



オドンという名前


本作における名前の重要性は宮崎氏がインタビューで明らかにしている


しかし、結局、私はすべての名前を選びます。私が監督したタイトルはいつもそうだった。もちろん、名前はあなたが描きたい世界の非常に重要な部分ですが、それ以上に、私は名前を思いつくのが大好きです。私はちょっとしたネーミングオタクだと思います。それは私にとっていつも楽しいです。私は、単語の起源、表現でどのように聞こえるか、地域の考慮事項など、すべてを考慮します。(インタビューより)


本作に登場するNPCの名前はネーミングオタクを自認する宮崎氏が決定したものなのであり、その決定は、語源、響き、地域性などを考慮に入れてなされたものなのである


作中でも重要な存在であるオドンという名前にも、宮崎氏のこだわりが反映されているはずである


オドンの「語源」とは何か、オドンという語にはどういった「響き」が感じられるか、またオドンという名前にはどのような「地域性」が見いだせるのか


これらの疑問に対する一つの解釈として、「オドン=オーディン説」を軸にして考察を展開したのが本考察である



オーディン

さて、オドンは多面的かつ複雑な存在であり一面的な解釈を拒むようなところがある


こうしたオドンの多面性はモチーフの多面的な機能を受け継いだものである


オドンのモチーフとは、オーディンである


オーディンには170以上の別名やあだ名があるという。オーディン自身がすでに多面的な機能をもつ神である


しかしその機能をすべて挙げていくと考察が冗長になるので、ブラッドボーンに関連する要素だけを挙げていく



1.吊された神

オーディンはユグドラシルの樹に自らを九夜のあいだ吊すことでルーン文字の知識を獲得したという


このことから、オーディンは「吊された者の神」(絞首刑にされた者の神)とも言われ、後のタロットカード「吊された男」のモチーフにもなる


この吊された男と同じ構図を持っているのが「狩人の徴」である


そのうえ狩人の確かな徴は、「ルーン」であるともいう

 

狩人の確かな徴

狩人の脳裏に刻まれた逆さ吊のルーン

これを模し、よりはっきりとしたヴィジョンを可能にする呪符


逆さ吊であり、またそれはルーンである。テキスト的にも図像学的にも、狩人の徴が表わしているのはオーディンなのである


つまるところ、狩人の徴(ルーン)とはオーディンの徴なのである


また狩人の徴は、アイルランドで用いられる「眠りのルーン」を上下反転させたものと類似している(『エッダ』147ページ。訳注2)


この物語の中で眠りのルーンを解くことができないようにしたのが、オーディンである


※もし仮に作中にカレルの死体があったとしたら、それは首を吊られているか逆さ吊りにされているはずである(旧市街などに逆さ吊りにされた遺体が見られるが関係は不明)



2.ワイルドハント

ワイルドハントとは以下のようなものである


伝説上の猟師の一団が、狩猟道具を携え、馬や猟犬と共に、空や大地を大挙して移動していくものであるといわれている(Wikipedia)


このワイルドハントの首領にして猟師たちを率いるのが「オーディン」である


そしてまたこの狩猟団は次のような災厄をもたらすとされる


この狩猟団を目にすることは、戦争や疫病といった、大きな災いを呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、死を免れなかった[2]。他にも、狩猟団を妨害したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて冥土へ連れていかれたといわれる[5]。また、彼らの仲間に加わる夢を見ると、魂が肉体から引き離されるとも信じられていた(Wikipedia)


オーディンの徴(狩人の徴)を持ち、夢に囚われ、赤い月の夜(ワイルドハントの夜)に「狩り」をしなければならない狩人(猟師)とは、まさしくこの狩猟団の猟師の一人である


※関係ないがウィッチャー3にもワイルドハントは登場する


また、オーディンに祝福された戦士を「ベルセルク」という。狩人がしばしば獣の力を利用し、一時的に獣化しさえするのは、オーディンの戦士「ベルセルク」の性質を受け継いだからである


これが狩人が狩人と呼ばれ、オーディンの徴を持ち、夢と関わり、一時的に獣化する力をもち、災厄に巻き込まれなければならない理由である



3.メルクリウス

オーディンとローマ神話のメルクリウスを同じ神としたのが1世紀のタキトゥスである(『ゲルマーニア』)


またメルクリウスはヘルメスとも同一視されるが、ヘルメスは錬金術の祖とされる神である


メルクリウスはマーキュリーとも読み、錬金術において水銀を意味する(水銀の英名はmercuryである)


水銀とオドンの関係は主にカレル文字に登場している


「姿なきオドン」

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ

上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり

その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める


「オドンの蠢き」

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ

「蠢き」とは、血の温もりに密かな滲みを見出す様であり

狩人の昏い一面、内蔵攻撃により水銀弾を回復する


その水銀弾とは、水銀に狩人自身の血を混ぜたものである


水銀弾

通常の弾丸では、獣に対する効果は期待できないため

触媒となる水銀に狩人自身の血を混ぜ、これを弾丸としたもの


狼男や吸血鬼を殺す場合、使われるのはふつう「銀の弾丸」である


しかし本作では銀ではなく「水銀」である


なぜならば、オーディンの戦士である狩人はまたメルクリウスの戦士でもあり、メルクリウスの力を象徴する「水銀」の力を行使できるからである


水銀はオドンのすべての側面を説明するわけではないが、しかしメルクリウスとしての一面を示したものなのである



4.オーズ(オド、オード)

オーズは北欧神話の女神フレイヤの夫である(Wikipedia)


長旅に出ることや、オーズ/フレイヤ、オーディン/フリッグという名前の類似からオーズをオーディンと同じ神とする説がある


オーズとフレイヤの2人には、主神オージン(オーディン)・フリッグ夫婦と少なくない共通点がある。たとえば、オーズとオージン、フレイヤとフリッグ(別名フリーン)というふうに名前が似ていること。オーズとオージンがともに旅に出ることが多いこと。また、戦死者は半分がオージンのものになるが、残る半分をその妻フリッグではなくフレイヤが持っていく。これらのことから、オージンとフリッグがそれぞれオーズとフレイヤという名で信仰されていた時期があったか、もしくは、それぞれの若い年代の名前であったと考える研究者もいる(wikipedia)


さて、オーズという名前には「激情」という意味の他に「不思議な酩酊に満たされた者」という意味もある(『北欧とゲルマンの神話事典』)


本作には「酩酊」というラテン語の名前を持つ者がいる


エーブリエタースである


彼女の父親が誰かは分かっていないが、彼女は見捨てられた上位者と呼ばれ、そして見捨てた者を探すように宇宙を見上げ続けている


彼女を見捨てた者が彼女の父親であるとするのならば、彼女は父親の名を受け継いだのである


そして彼女が見捨てられたのは、父親が「長い旅」に出たからである


その父親とはオーズつまり狩人の首領であるオドン(オーディン)のことである



5.好色

女嫌いとも女たらしとも呼ばれるオーディンであるが、実際に彼は女神フリッグの他に女巨人との間に子供を何人も作っている


※賢者の血から造られた霊酒を飲むために女性をたらし込んだりもしている


予言者に「愛息バルドルの仇を討つためにはリンダを言う女に息子を産ませなければならない」と告げられたオーディンは、リンダを狂乱させることで望みを叶える


狂乱と妊娠は偽ヨセフカやアリアンナに見られた症状である


※好色というのはギリシャの主神であるゼウスとも共通する(参考→ダナエ)



6.オドの力

吸血鬼による吸血現象を説明する説の一つとして「オド」がある


吸血鬼は吸血が目的で血を吸っているのではなく、犠牲者のもつ「オド」を吸っているのだというのである


オドの力を提唱したのは、カール・フォン・ライヘンバッハ(1788~1869年)である(Wikipedia)


オーディンにちなんで「オド」と名づけられたこの神秘的なエネルギーは、宇宙に存在するものすべてのものから発出している物質であるという


ドイツのカール・フォン・ライヘンバッハは、宇宙に存在するすべてのもの(特に星々や惑星、水晶、磁石、人間など)から発出している物質が存在すると考え、北欧の神オーディンにちなんで「オドの力」と名づけた[1]。オドの力には重さも長さもないが、計測可能であり、観察可能な物理的効果を及ぼすことができるとした(wikipedia)


この物質は重さも長さもない、磁気のようなものであるという(光も磁気の一種である)


カール・フォン・ライヘンバッハは1845年に、 電磁界とよく似た特性を示す「オドの力」と呼ばれるフィールドの理論をドイツの一流の学術誌の1つ『薬学及び化学の年報(Annalen der Chimie und Pharmacie)』で発表した。オドとはもともと様々な結晶構造を持つ物体から発散されているいまだ知られざる自然の力で、ライヘンバッハは、オドは磁極のように互いを引きつける力の特性を有しており、また、磁極もオドと関連する極性を有しているとし、オドが人間の身体に水晶の力に似た極性を生み出すことを発見したと主張した。ライヘンバッハの主張によれば、身体の生命力には磁石のような極性があり、身体の左側が負で右側が正である。さらにライヘンバッハは、オドが「動物」や「植物」からも発散されており、太陽や月などの星々からも発散されていると発表した。(wikipedia)


※「右回りの変態」ならびに「左回りの変態」は生命力のもつ極性(左側が負、右側が正)をモチーフにしたものとも解釈できる


同時代フランスの魔術師エリファス・レヴィは『大いなる神秘への鍵』の中でオドについて以下のように述べている


「すべてこれらの驚異は、ヘブライ人ならびにフォン・ライヒェンバッハ男爵がオドと呼び、われわれがマルティネス・パスクヮリス一派とともに星の光と名づけ、ミルヴィーユ伯が悪魔、錬金術師たちがアゾットと呼んだ、さる比類のない動因によって成就されるのである」(『吸血鬼幻想』種村季弘)


また種村季弘によれば、オドは錬金術でいう飲める金(Aurum Potabile)である。そして金のヘブライ語の語源は光(アウルム)である


人間はこのような宇宙的な光につつまれており、吸血鬼はこの光を吸うのだという


生ける屍である吸血鬼がオドの力を欲するのは、オドが生命力そのものだからである


さて、エーブリエタースならびに聖歌隊が待ち望む「星の徴」を「星の光」と解釈するのならば、光とはすなわち「オド」のことである


そしてオドとは元をたどれば、やはりオーディンなのである



7.ヤームナヤ文化

オーディンは北欧神話の主神である(諸説あり)


その北欧神話を伝承してきたのはゲルマン系の民族であるが、彼らの発祥地はドナウ川とウラル山脈の間に広がる広大な地域である(これも諸説あり)


そこに栄えた文明を「ヤームナヤ文化」という(wikipedia)※ヤムナ文化ともいう


ヤーナムとヤームナヤ、似ているがモチーフであるかは断定できない


だが本作にも強い影響を与えたと思われる『フィーヴァードリーム』という吸血鬼小説がある


この小説に登場する吸血鬼(夜の人々)の故郷は同じウラル山脈付近であるとされている



オドン

オドンとは上述したようなオーディンの様々な側面を組み合わせて創造された神格である


それはワイルドハントの夜に狩猟団を率いて狩りを行ない、獣化や水銀や生殖と密接に関わり、また神秘学的に言えば、「宇宙の光」である


ブラッドボーンにおいてもそれは、赤い月の夜に狩人を率いて狩りを行ない、獣化や水銀や生殖と密接に関わり、「宇宙の光」であるものである


この宇宙の光とは星の光(徴)であり、また月を青く染める光でもある


ゲールマンが両手を広げると月が青い光に染まり次の瞬間大爆発を起こすが、オーディンの徴を持つ狩人が祈る対象は「オーディン」すなわち「オドン」である


月が青い光に染められる

しかしながら、オドンは姿なき故に声のみの存在である


「姿なきオドン」

人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ

上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり

その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める


故に月そのものではない


それは物質としての月ではなく、月を青く染めているもの、つまり「青い光」である


あるいは宇宙のまるい穴から見える青い光の世界を「青ざめた月」と表現したものとも解釈できる


青い光は宇宙からの神秘の光であり、月を青く染めるが無形であり、また「声」でもある


なぜならば「声」とは空気の振動、すなわち波であるが、光もまた「波」だからである


※姿なきオドンは英語版では「Formless Oedon」である。Formlessとは「形のない」や「無定形の」といったニュアンスである


また上位者の声とは、「見える」ものなのである


ああっ! あああっ! それが、形なのですね

導きよ、あなたの声が見えました。はっきりと歪んで、濡れています(実験棟の患者アデライン)



オドンの粒子

※この項は「考察まとめ10 オドン」のコメント欄にいただいたぽ氏のオーディン粒子説がもとになっている


光は科学的には粒子の性質も併せ持つ


オドンである青い光もまた波と粒子の性質を併せ持っている


けれどもオドンは「姿なき」存在であったはずである。波の側面はともかく粒子は物質のように思える。これはどういうことか?


オドの力を提唱したカール・フォン・ライヘンバッハによれば、オドの力は重さも長さもない磁気のようなものであるという


重さも長さもない、つまり姿がないのである


このように青い光のうち「声(波)」はオドンである。だがオドンには粒子の側面も存在する


それは「オドン粒子」と呼べるものである


光の粒子がフォトンと呼ばれるように、またボーズ粒子がボソンと呼ばれるように、そして音子がフォノンと呼ばれるように、素粒子には特有の命名規則がある


つまり「種類+オン」である(この命名規則の理由は筆者には不明である)


オドン粒子、すなわち「オーディンの粒子」をこの命名規則に従って命名するのならば、「オドン」という「響き」になるのである


(このオドン粒子説はぽ氏のコメントを参考にさせていただいた。ありがとうございます)



遺志

さてオドンが青い光でもあるということはすでに述べた


しかしそれではオドンを説明するのに不十分である


上で吸血鬼は血と共にオドを吸うのだと述べた。つまりオドの力は血に宿っているのである


本作においても血に宿る神秘的エネルギーが存在する


遺志である


遺志は狩人の力となる神秘的エネルギーであり、遺志を力に変えることが夢に依る狩人の能力でもある(人形を介して)


死血の雫

夢に依る狩人は、血の遺志を自らの力とする

使者に感謝と敬意のあらんことを


遺志は血に宿り、そして声を響かせている


英語版で血の遺志はBlood echoと表記される。echoとは「こだま」や「反響」を意味する英単語である


すなわち「声」である


要するに遺志とはオドンの一側面であり、モチーフであるオーディンのオドの力としての側面を受け継いだものなのである(ただしそれもまた一側面に過ぎない)


カレル文字「月」が更なる血の遺志をもたらすのは、遺志としてのオドンと青ざめた月としてのオドンの繋がりによるものである



隻眼その他

神話によればオーディンは隻眼であるという。知識を与えてくれるミーミルの泉の水を飲むために、巨人に片目を渡したからである


本作に当てはめるのならば、神秘を獲得する代わりに瞳を失う、つまり瞳が寄生虫に寄生されることを意味するのである


故にシモンは両目を包帯で覆っているのである


聖歌隊が目を覆うのも同じ理由からである。思索による超越的思考の獲得を目指していた彼らにとって、寄生虫のもたらす神秘を得ることは邪道だったのである


より神話的に解釈するのならば、空に浮かぶ月こそがオーディンの失われた片眼なのかもしれない


またミーミルは後に首をはねられるが、オーディンがそれに防腐処理を施し、ことあるごとにその首に相談しに言ったという


ローレンスの頭蓋が聖体であるのは、そういったモチーフがもとあるからなのかもしれない


さて、またオーディンは賢者クワシールの血から造った霊酒を飲むために、巨人の娘を篭絡し寝床を共にしたという


この霊酒を飲んだものは誰でも詩人や学者になれたとされるが、本作において聖血が神秘の知識をもたらすことは、これに由来するのかもしれない



まとめ

以上のようにオドンには多面的な性質・機能が付与されているが、これらのいくつかはオーディンに由来するものである


神としてのオーディンは上位者としてのオドンとなり、宇宙の光としてのオーディンは青い光(波・粒子)としてのオドンになったのである


また猟師を率いるオーディンは狩人を率いるオドンとなり、オーディンの猟師たちが狩りをするワイルドハントは、狩人が狩りをする赤い月の夜となったのである


そしてオドの力としてのオーディンは、遺志としてのオドンになったのである


※クトゥルフ的な要素を加えるのならば、アゾットをアザトースと見ることも可能かも知れない