黄金樹の影
前々回の考察で、黄金樹の影とは黄金樹の物理的な影であると同時に、黄金樹の薄暗い側面(闇・呪い・死・霊)を指し示したものであると述べた
そして黄金樹の影(霊体)説を展開し、DLCの舞台を霊界やそこから続くアルルの野(楽園)と結論づけた
黄金樹の影とは霊体であり、それは今は霊界を通ってしか行くことのできない、死者たちの楽園にそびえている
その黄金樹の影はもう一本の大樹に絡みつかれた状態にある
過去の考察では狭間の地の黄金樹と死王子の関係性から、このもう一本の大樹をゴッドウィンの魂が変異したもの、と仮定した
ゴッドウィンの魂は樹木竜となり、黄金樹を噛み砕き、絞め殺そうとしているのだと
その際に、ではなぜゴッドウィンは黄金樹を襲っているのか、については言及しなかった(考察が長くなったのと、よい仮説が思い浮かんでいなかった)
今回はなぜゴッドウィンは黄金樹の影に絡みついているのか、について考察してみたい
災いの影
エルデンリングにおける「影」という言葉の使用法は幅広いが、そのうちの一つに、神人の影というものがある
戦鬼の鎧
古い伝承によれば、狼は神人の影であり
バルグラムもまた、そういうあり様を望んだ
黒き剣の追憶
マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった
マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み
後にそれを裏切ったのだ
ブライヴの鎧(軽装)
ブライヴは、ラニの影従であった
たとえ運命に背いてでも
決して裏切らぬ、味方であった
影従とは神人に与えられる特別な従者であるが、神人が二本指に逆らった時には災いの影となる
…そして私は、二本指を拒んだ
死のルーンを盗み、神人たる自らの身体を殺し、棄ててでも
私は、あんなものに操られたくはなかったのだ
…それ以来、私と二本指は、お互いを呪っている
災いの影とは、あやつの刺客なのだよ(魔女ラニ)
黄金樹の影を、神人の影の文脈で解釈するのであれば、黄金樹の影とは黄金樹に対する災いの影のこととなる
黄金樹に対する災いの影とはすなわち、画像にある黄金樹を絞め殺そうとする大樹のことであろう
この正体がゴッドウィンの変異したものである、という考えは変わっていない
ただし影を災いの影と解釈するのであれば、ゴッドウィンが変異したのは樹木竜ではなく、巨大な獣(黄金樹の獣、大狼)となろう(影従の獣)
黄金樹の獣
ではゴッドウィンはなぜ大狼と化して黄金樹を襲っているのであろうか
この点に対する答えは、ソール城砦の幻影が語っている
…おお太陽よ!ソールの冷たい太陽よ!
どうか、蝕まれ給え
魂無き骸に再誕をっ…!(ソール城砦、日蝕教会の幻影)
…申し訳ありませぬ、ミケラ様
まだ、太陽は蝕まれませぬ。我らの祈りが弱いばかりに
貴方の友は、魂無きままなのです…
…もう、見ることは叶わないでしょう
貴方の聖樹を(ソール上屋上の幻影)
大狼と化したゴッドウィンが襲っているのは、正確には黄金樹そのものではなく、「黄金樹の霊体」である
エルデンリングにおいて霊的なものは基本的に「冷たい」性質をもつ
霊火のトーチ
冷たい霊火を燃やす、金属製の松明
地下河を彷徨う、落ちる鷹の兵団の兵装
探索の果て、火種を失くした兵団は
仲間の骨を燃やし、冷たい霊火を手に入れた
そして彼らは、永遠の地下の住人となった
ヘルフェンの尖塔
専用戦技「滅びの霊炎」
剣を振り、その刀身に霊炎を纏わせる戦技
霊炎は魔力属性のダメージを与え
また、とても冷たい
つまりソールの冷たい太陽とは霊体の太陽のことであり、幻影はその冷たい太陽が蝕まれることを望んでいる、ということになる
そして冷たい太陽が完全に蝕まれた時に、ゴッドウィンは再誕するという
さて、DLCの画像に戻る。画像には黄金樹の影とそこに絡みつく大狼(災いの影説を採用するのならば)が描かれている
黄金樹の影とは黄金樹の霊体のことである。それは冷たい黄金樹のことである
その冷たい黄金樹を噛み砕き、絞め殺そうとしているのが大狼(黄金樹の獣)である
黄金樹の影とそこに絡みつく大狼の関係性は、冷たい太陽とそれを蝕むものの関係性に等しい
すなわち、大狼と化したゴッドウィンは黄金樹の霊体を蝕み、それを喰らうことで再誕を為そうとしているのである
そして上述したように、黄金樹の影を災いの影の文脈で解釈するのであれば、ゴッドウィンは大樹ではなく大狼に変異したことになる
両者の関係性を要約すると、太陽を飲み込む大狼、となる
これは北欧神話の最終戦争ラグナロクにおいて魔狼フェンリルの子、狼スコルが太陽を飲み込む構図と同一である
※黄金樹の影に絡みつくものを大狼として考えてみると、どことなくバーサーカー化して鎧に飲み込まれたガッツ(『ベルセルク』)に似ているようにも見える
赤線が「黄金樹の獣」 |
再誕
さて、ソール上の幻影は「魂無き骸に再誕を」と祈っている
…おお太陽よ!ソールの冷たい太陽よ!
どうか、蝕まれ給え
魂無き骸に再誕をっ…!(ソール城砦、日蝕教会の幻影)
魂無き骸とは、歩く霊廟に納められたデミゴッドのことでもあるが、まず第一にゴッドウィンのことであろう
魂のみを殺されて霊界に追放されたゴッドウィンは、同じ霊体である黄金樹の影を喰らう(蝕む)ことで同化し、その力を持って再誕しようとしているのである
なぜならば黄金樹は完全に死んでいるわけではなく、いわば仮死状態であり、それは褪せ人がエルデンリングを修復することで、復活するからである
この点で黄金樹の影とゴッドウィンの魂は置かれている状況が少し異なる
再誕する可能性をもつ黄金樹の魂を蝕み同化することで、完全に死んでいたゴッドウィンは狭間の地に再誕することができるのであろう
ミケラの旅
大狼と化したゴッドウィンの魂が黄金樹の影(魂)を喰らおうとしている
そう仮定した場合、ミケラはゴッドウィンの再誕を助力するために霊界に来たか、あるいは正しく死なせるために霊界を訪れたと考えられる
…申し訳ありませぬ、ミケラ様
まだ、太陽は蝕まれませぬ。我らの祈りが弱いばかりに
貴方の友は、魂無きままなのです…
…もう、見ることは叶わないでしょう
貴方の聖樹を(ソール上屋上の幻影)
黄金の墓標
デミゴッド最初の死者たる
黄金のゴッドウィンを弔う墓標剣
少年の静かな祈りが込められている
兄様、兄様、正しく死んで下さいな
どちらにせよミケラは友を救うために霊界に赴いたことになる(ただしミケラの旅が無残な結果となることは、過去作のDLCをプレイした人なら分かるかと思う)
また幻影によれば、太陽が蝕まれ友が再誕した暁には、ミケラの聖樹は復活すると言われている
黄金樹の魂を乗っとったゴッドウィンは、エルデンリングの修復と同時に狭間の地に再誕する。しかしその際に魂の依り代となるのは黄金樹ではなく、ミケラの聖樹となるのであろう
おそらくそれはミケラの計画だったのであろう
醜く育った聖樹を救うためには黄金樹の魂をミケラの聖樹に宿し、ミケラの聖樹を本物の黄金樹にする必要があった
ゴッドウィンがこの計画にどれほど加担していたかは分からない。だが彼は陰謀の夜に魂のみを殺され、そして霊界へと追放された
※あるいは陰謀の夜そのものがミケラの干渉により仕組まれたとも考えられる
霊界へ到達したゴッドウィンは黄金樹の魂を喰らうことで、黄金樹と同化しようとしたのである
暗い魂の血
ゲールが小人の王たちに見えたとき
彼らの血は、とうの昔に枯れ果てていた
そして彼は、暗い魂を喰らった
黄金樹の魂を喰らうゴッドウィンの試みは停滞、あるいは失敗に終わった
…申し訳ありませぬ、ミケラ様
まだ、太陽は蝕まれませぬ。我らの祈りが弱いばかりに
貴方の友は、魂無きままなのです…
…もう、見ることは叶わないでしょう
貴方の聖樹を(ソール上屋上の幻影)
しかしそれでも自らの聖樹を諦めきれないミケラは、自ら霊界へと赴くことにしたのである
ただしそこには兄を正しく死なせようという、彼なりの贖罪の念も含まれていたかもしれない
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