エルデの獣
過去の仮説では黄金の流星とエルデの獣が統合されることでエルデンリングが創造された、とした
その際には黄金の流星を第一質料、エルデの獣をその魂と仮定した
しかしながら狭間の地を錬金術師の坩堝(素材を混ぜ合わせる鍋)と見るのならば、黄金の流星を硫黄、エルデの獣を水銀とし、王たる硫黄と王妃たる水銀の混合によりエルデンリング(賢者の石)が精製された、としたほうが錬金術的にはシンプルである
硫黄+水銀→坩堝→賢者の石
黄金の流星+エルデの獣→狭間の地→エルデンリング
実際のところエルデの獣の外見はエルデンリング的な全身黄金というわけではなく、黒っぽい半透明の組織によって形作られている
もちろん内部に見える中枢神経系は黄金であり、エルデンリングとの密接な繋がりは明らかである
しかしそれは黄金の流星と融合した後に、あるいはもっと単純にエルデンリングになった後に獲得された性質であるとも考えられる
というのも、最初から生と死の両方を兼ね備えていたとすると、黄金の流星と共に送る必要がないからである(エルデの獣単体でエルデンリングになれる)
大いなる意志がエルデの獣と”共”に黄金の流星を送ったことを重要視するのであれば、その二つにはそれぞれ違った役割があったと考えられる
そして黄金の流星はその名の通り黄金=生命(黄金の律により生命は幸福を謳歌できる)なのだから、エルデの獣は黄金ではなく別の物を担当していたことになる
すなわちエルデの獣の当初の属性は黄金に象徴される生命ではなく、星や月に象徴される死だったのである
エルデの獣は狭間に到来した当初は現在の姿ではなく、黄金成分を含まない黒い半透明の身体の内に星々のきらめきを宿しているような姿をしたと考えられる
錬金術師たる大いなる意志が、生を象徴する黄金の流星と死を象徴するエルデの獣を狭間という「坩堝」に送り込み、それらを撹拌することで造られたのが賢者の石たるエルデンリングだったのである
エルデンリングの創造神話を錬金術師による賢者の石の精製のアナロジーと考えるのであれば、エルデの獣を死(水銀)と解釈する方がよりシンプルである
またこの説は黄金の流星を第一質料、エルデの獣をその魂と見ることとは矛盾しない
黄金の流星とエルデの獣の統合した後には、やはりエルデの獣は第一質料の魂としての役割を果たしたと考えられるからである
つまり、黄金の流星を律することで黄金の律を確立させる、という役目である
この仮説に難点があるとすればエルデの獣は「獣」なのだから、生物(生命)であることは否定できないのではないか、という点である
しかしながら、ファルム・アズラの獣人に代表されるように「獣」は生命ではなく死に属する存在である(ファルム・アズラは霊廟でもある)
アズラの獣人の遺灰
ゆっくりと、空に崩れゆく遺跡
ファルム・アズラの獣人たちの霊体
それは、古竜を祀る巨大な霊廟であり
選ばれた獣人の武器は雷を帯びている
また獣の司祭の古き名がデミゴッドの死を意味した、とあるように作品の設定的にも獣は死の属性にある
グラングの獣爪
かつてグラングは、恐ろしい獣であったという
古き名が、デミゴッドの死を意味するほどに
この設定はグラングが運命の死をその剣に封じたからなのだが、その設定の根幹には獣は死の属性に連なるというメタ設定があるように思われる
※要するに運命の死を封じるに相応しいキャラクターとして獣の司祭が選ばれたのは、獣が死に属するという創作者の側の前提があるからなのではないか
また神人に与えられる影従の獣は、神人が二本指の傀儡たるを拒んだ時、恐ろしい呪いとなるとされ、それは「運命」であると言われる
ブライヴは、二本指がラニ様に与えた従者。決して裏切ることない影
だが、ラニ様が神人として、二本指の傀儡たるを拒んだとき
…影は狂い、ラニ様にとって恐ろしい呪いとなるのです
…それは運命。ブライヴの意志など、何の意味も持たないでしょう
苦しいことですが、封じておくしかないのです。ラニ様のために(イジー)
ここで言われる「運命」とは神人の死を意味している。影従の獣もまた死に連なる者なのである
よってこう結論づけられる。本作における「獣」は死に属するものであり、その祖であるエルデの獣もまた死に属するものである
そしてエルデンリングとは、生を象徴する黄金の流星と死を象徴するエルデの獣の統合により生じた生と死の円環である
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