エルデンリングを再プレイ中にDLCについて考えたこと
影
DLCのタイトル「Shadow of the Erdtree」を直訳すると「黄金樹の影」となる
※関係ないが「ワンダと巨像」の海外名は「Shadow of the Colossus」である
この「影」という単語が指し示す代表的な概念が次の2つである
- 死のルーン
- 神人に与えられる影従
死のルーン
このうち死のルーンは本編内にも登場しており、その最も大きな欠片は黒き剣のマリケスに封じられていた
死のルーンとは、即ち運命の死
黄金の律のはじまりに、取り除かれ、封じられた影(エンヤ)
黒き剣の追憶
マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった
マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み
後にそれを裏切ったのだ
また陰謀の夜に盗まれた死のルーンは狭間の地の各地に散逸し、そこからやがて死の根が伸びることとなる
本編を振り返ってみると、死のルーンの主題がとりわけ大きく扱われていることがわかる
例えばロジェールを発端とする陰謀の夜の調査、そして最後はラニイベントに繋がっていく
つまり「黄金樹の影」の“影”を死のルーンと解釈した場合、本編でかなりの尺を割いて描かれた死のルーンの物語を繰り返すことになってしまう
これはDLCとして相応しいかというとやや疑問である
影従の獣
もうひとつ“影”が示すのが、神人に与えられるという影従の獣である
黒き剣の追憶
マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった
マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み
後にそれを裏切ったのだ
イジーによれば、ブライヴはラニに与えられた影であり、二本指の刺客でもあるという
ブライヴは、二本指がラニ様に与えた従者。決して裏切ることない影
だが、ラニ様が神人として、二本指の傀儡たるを拒んだとき
…影は狂い、ラニ様にとって恐ろしい呪いとなるのです(イジー)
…それ以来、私と二本指は、お互いを呪っている
災いの影とは、あやつの刺客なのだよ(ラニ)
また古い伝承によれば、狼は神人の影であるという
戦鬼の鎧(軽装)
古い伝承によれば、狼は神人の影であり
バルグラムもまた、そういうあり様を望んだ
影従の獣とは、二本指が神人に与える従者であり、神人が逆らわないようにする監視者である
また影従の獣は“狼”である
未登場の影従の獣
現世代には3人の神人がいる。ラニ、マレニア、ミケラである。ということはつまり、影従の獣も3体いることになる
※宵眼の女王はマリカ世代の神人と考えられる
ラニの影従はブライヴとして本編に登場している。しかしマレニアとミケラの影従は未登場である
このうちミケラはDLCのコンセプトアートに登場しているうえに、外なる神からの干渉を防ぐ道具まで造りだしている
大いなる意志を外なる神の一柱と解釈し、ミケラの針を二本指への反逆と解釈するのであれば、ミケラの影従は災いの影となってミケラを襲うはずである
しかしながらDLCのタイトルは「黄金樹の影」であって、「神人の影」ではない。そして黄金樹に影従の獣がいるという話はない
だが、ミケラが聖樹に宿り、新たな黄金樹になろうとしたことは、テキストから明らかである
ミケラは聖樹に宿ろうとした
だが完全な宿りを前に、何者かが聖樹を切開し、幼子を奪った(ギデオン)
聖樹紋の大盾
しかし、聖樹は醜く育ち
美しい聖樹は見果てぬ幻想となった
これを「ミケラという聖樹の物語」と理解すると、DLCの黄金樹の影とはミケラの影従と解釈することも可能であろう
しかしミケラの聖樹は醜く育ってしまっているのだから、コンセプトアートに描かれている黄金樹とは別物であるとも言える
とはいえ、ミケラの聖樹が醜く育ってしまったのは現在のことであり、過去のある時点でそれが黄金樹のようであった可能性は否定できない
後述するがDLCの舞台候補として考えられるうちの「過去」であれば、これらの条件が整うことになる
またDLCの舞台を「夢の世界」とするのなら、現世において枯れてしまった聖樹が、夢の世界ではトリーナの加護のもと見事に黄金樹となったと考えることも可能であろう
ミケラの影従にとって、すでに失敗した現世のミケラの聖樹を枯らす必要はない。災いの影となって滅ぼすべきは、夢の中に逃げ込んだミケラと、そこに聳える黄金樹なのである
※ミケラの黄金樹は二本指から離反したものである。ミケラは黄金律原理主義も見限っている
コンセプトアートに描かれた黄金樹は、一本の黄金樹に何か巨大なものが絡みついているようにも見える
黄金樹を締め上げ、殺そうとしている巨大な生物。これこそがミケラの影従が災いの影となった姿なのかもしれない
そしてそれは、巨大な狼である。巨大な狼による終末戦争という図式は北欧神話に見られる最も有名なテーマであろう
また北欧神話のラグナロクにおいて太陽を飲み込むのも狼であった
…おお太陽よ!ソールの冷たい太陽よ!
どうか、蝕まれ給え
魂無き骸に再誕をっ…!(幻影)
舞台
DLCの舞台として個人的に予想しているのが、「未来」、「過去」、「冥界」、「夢の世界」である
未来
未来については、コンセプトアートの世界観が、北欧神話におけるラグナロクの終了後、生き残った神々が集うというイザヴェル(輝く野の意)にイメージが近いことからの予想である
ただし本作はマルチエンディングであり、狂い火の王エンディングを選んだ場合と整合性がとれなくなるのが問題点である
過去
過去については、コンセプトアートにミケラの姿があること、DS1のDLCでは過去世界を旅したことなどからの推測である
本編においてミケラは神人眠りの繭で眠っている。この描写を「真」とするのなら、コンセプトアートに描かれたミケラはまだ神人眠りの繭に入るまえの状態であり、つまり過去ということになる
冥界
冥界については過去に詳細に考察したので詳細は省く。テキストに登場するのみの領域であり、また黄金樹の影の“影”を死のルーンに類するものと考えた場合、死に近しい領域なのではないか、とする考察である
夢の世界
ミケラと同体と思われるトリーナが夢の世界の女神であること、また夢の世界であれば、神人眠りの繭に眠るミケラの実体との整合性がとれることなどから、最も可能性が高いのではないかと思う
つまりミケラの実体はあくまでも神人眠りの繭に眠る人物であるが、その精神は夢の世界に逃げたとする仮説である
この仮説では神人眠りの繭のミケラとコンセプトアートに登場するミケラに矛盾は生じない
また夢の世界の神であるトリーナの設定を利用することも可能である
※フロムの某氏がエルデンリングのDLCについて、ブラッドボーンを例に挙げていた。ブラッドボーンのDLCの舞台は「悪夢」である
発売前のインタビューにおいて宮崎英高氏はエルデンリングに影響を与えた創作物として、マイケル・ムアコックの『エターナル・チャンピオンシリーズ(永遠の戦士シリーズ)』の名を上げていた
※その影響は、例えば「永遠の都」がある。永遠の戦士シリーズには永遠のタネローンという永遠の都のような場所がある
夢に関しては『真珠の砦』が夢の世界が舞台となっている(以下引用)
「真珠の砦」において、魔術とは「夢を実現する可能性」であると言われている
ただしここでいわれる「夢」とは、われわれが想像する将来の夢や睡眠時に見る夢とはやや異なる
永遠の戦士シリーズにおける夢とは、ある意味でもうひとつの現実である。端的に言えば多元宇宙のひとつである
魔術とはつまり、そうした多元宇宙の力を今いる世界に呼び出す力である
DLCが夢を舞台としているのなら、その夢は上記のような領域である。そこはもうひとつの現実であり、物理法則の異なる異世界なのである
※これらのことから本編で絶大な威力を発揮する状態異常(出血、冷気、毒)などは、効果を下げられている可能性がある
蛇足
X(旧Twitter)のアレがアレで(よく分かってない)、更新告知が面倒くさい。もともと機能していたとは言えない状態だったが今後をどうしたものか
とりあえずURLなしで告知はしようと思う。それとは別に告知する必要がない程度に更新頻度を増やすかもしれない。ただそうなったとしてもエルデンリング以外の話題になるかと思う
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