前回の考察で「エルデンリングには全ての律が含まれてる」、という仮説を立てたが、その際に夜の律については詳細を述べなかった
これは夜の律については考察途上だったのと、夜の律に言及すると横道にそれて戻ってこれなくなるからである
今回は「エルデンリング=全律説」の夜の律に関する補足であると共に、夜の律そのものを考察している
夜の律
さて、前回の考察では二本指は大いなる意志と交信し、その解釈をもとに神人を選抜すると述べた
各二本指の解釈はさまざまであり、二本指の数だけ次代の律を背負う神人が選ばれる
そして選ばれた神人たちが争い、勝ち抜いた者の掲げる律が次代の律となる
夜の律も大枠はこの筋書きに沿っている
だが他の律と異なるのは、夜の律を掲げるラニが神人としての身体を捨て、二本指と大いなる意志の支配から脱却したことである
…そして私は、二本指を拒んだ
死のルーンを盗み、神人たる自らの身体を殺し、棄ててでも
私は、あんなものに操られたくはなかったのだ
…それ以来、私と二本指は、お互いを呪っている
災いの影とは、あやつの刺客なのだよ(魔女ラニ)
またラニは大ルーンを棄てたとされている(ただしこれは伝聞である)
円卓は、居場所を探り続けているのだ
大ルーンを棄てたとされる、ラニ以外の3人の居場所をな(百智卿、ギデオン)
この段階でラニは上記の「神人戦争」からも「破砕戦争」からも逸脱した存在となっている
ラニの目的
神人としての身体を捨て、二本指と大いなる意志の支配から脱したラニは次のように述べる
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ
…私はそれを、この地から遠ざけたいのだ
生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥か遠くにあればよい
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ
…そして私は、律と共に、この地を棄てる
それでも、付いてきてくれるのだろう?ただ一人の、私の王よ(魔女ラニ)
そしてエンディングでふたたび姿を現わす
私は誓おう
すべての生命と、すべての魂に
これよりは星の世紀
月の理、千年の旅
すべてよ、冷たい夜、はるか遠くに思うがよい
恐れを、迷いを、孤独を
そして暗きに行く路を
さあ、行こうか
…永遠なる、私の王よ(魔女ラニ)
このとき、それまでエルデンリングを宿していたマリカは消滅する
マリカの身体は黄金の粒子となって消える |
だがエルデンリングは消滅していない
というのもエルデンリングは世界を定義するルール=律そのものだからである
※エルデンリングが「世界を定義する神秘的な要素、ルール、リズム」であることは、発売前のIGNインタビューによって明かされている
ラニの夜の律が確立されているからには、エルデンリングは存在しているのである。そしてエルデンリングがマリカの次に宿った幻視の器こそ、ラニである
しかしラニはすでに大いなる意志の支配から脱している。このことが重要な意味を持つ
神人の身体のままでは二本指や大いなる意志の支配から逃れることができない。それはエルデンリングを砕いたマリカが黄金樹に囚われたことから明らかである
だがラニは大いなる意志の支配から脱している。つまりラニは大いなる意志の意志に反して、エルデンリングを狭間の地から遠ざけることが可能なのである
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ
…私はそれを、この地から遠ざけたいのだ
生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥か遠くにあればよい
夜の律をこの地から遠ざけたい、というラニの言葉はすなわち、エルデンリングを狭間の地から遠ざけることを意味している
なぜならばエルデンリングが近くにある限り、生命は歪んでしまうからである
ラニはおそらく現在の狭間の地の問題の根源が、生命と魂がエルデンリングと近すぎることにあると考えている
生命と魂を守るためにエルデンリングを狭間の地から遠ざける。それがラニの目的であった。ゆえにラニはすべての生命と魂に千年の安寧を誓うのである
私は誓おう
すべての生命と、すべての魂に
これよりは星の世紀
月の理、千年の旅
すべてよ、冷たい夜、はるか遠くに思うがよい
恐れを、迷いを、孤独を
そして暗きに行く路を
さあ、行こうか
…永遠なる、私の王よ(魔女ラニ)
そしてまたすべてに対し、冷たい夜にはるか遠くを思え、と命ずる。恐れ、迷い、孤独、暗きに行く路。これらはラニとその王が辿る路であると共に、夜の律が規定する、生命が死んだ後に辿る路なのかもしれない
夜の律
夜の律は歴史の最初からエルデンリングに組み込まれていたのだろうか?
おそらく夜の律がエルデンリングに組み込まれたのは最近の出来事である。具体的には、「外なる律」を求めたマリカがリエーニエに侵攻した後のことであろう
黄金律の探究を、ここに宣言する
あるべき正しさを知ることが、我らの信仰を、祝福を強くする
幸せな幼き日々、盲信の時代は終わる
同志よ、何の躊躇が必要だろうか!(マリカの言霊)
※この言霊を聞いた後にジェスチャー「外なる律」を取得
リエーニエに侵攻したマリカの半身ラダゴンは、レナラと結ぶことで残されていた「夜の律」を取り込むことに成功する
そうして夜の律はエルデンリングに取り込まれ、ラニとして結実した。ラニは夜の律の具現である(そのラニを二本指が神人として選んだ)
ラニが本編で目指していたのは、夜の律を含むエルデンリングを大いなる意志から解放することである
そのためにラニはまず神人たる自分の肉体を殺した。そのままでは二本指や大いなる意志に逆らえないからである
このときラニの魂が雪魔女を模倣した人形に宿ったのは、老いた雪魔女こそが本来、夜の律を宿す幻視の器だったからであろう
雪魔女のローブには毛皮のマントが付いているが、この毛皮は狼の毛(もしくは狼の毛を模したもの)と思われる。本作において狼は神人に与えられる影従の獣とされる
雪魔女のローブ |
ブライヴの鎧のマント |
雪魔女の毛皮のマントが影従の獣の毛を利用、もしくは模したものであるとしたら、それを着用していたのはその主たる神人(あるいは神)であろう
要するに夜の律は元来はエルデンリングに含まれていない別種の律だったのが、ラダゴンの介入によりエルデンリングに吸収され、その律の一つになったのである
夜の律の源流、黒い月説
ただし、さらに夜の律の源流をさかのぼるのであれば、ノクステラの黒い月に行き着くものと思われる
ノクス剣士の冠
大古、大いなる意志の怒りに触れ
地下深くに滅ぼされた、ノクスの民は
偽りの夜空を戴き、永遠に待っている
王を。星の世紀、夜の王を
ノクステラの月
永遠の都、ノクステラの秘宝
「伝説のタリスマン」のひとつ
それは、彼らが失くした黒い月を模している
ノクステラの月は、無数の星を従えていた
このノクステラの黒い月をエルデンリングに属する存在(黄金樹のような)と考えるのであれば、夜の律はそもそもがエルデンリングに内包されていたものということになる
かつて狭間の地は夜の律と黒い月によって支配されていたが、やがて大いなる意志によって滅ぼされ、夜の律はそれを宿した神と共にどこかへ消えた
これに該当する文明はファルム・アズラである。ファルム・アズラとは「青い灯台」の意であり、青は夜の律の色でもあるからである
また青は雪魔女の肌の色でもあり、ファルム・アズラを去ったという神が雪魔女であったと解釈することもできるかもしれない
夜の律の源流、偉大なる星団説
夜の律をエルデンリングと別系統の律と想定することもできる(ただし黒い月のあたりからはほぼ同じ経緯をたどる)
ラニがいうには夜の律は「星と月」の律であるという
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ(魔女ラニ)
エルデンリングになったエルデの獣は黄金の流星と共に狭間の地に飛来している
エルデの流星
最古とされる黄金樹の祈祷
「伝説の祈祷」のひとつ
無数の黄金の流星を生じ、周囲を攻撃する
かつて、大いなる意志は
黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り
それが、エルデンリングになったという
だが夜の律は黄金ではないのだから、黄金の流星を源流とみることはできない
夜の律の源流は魔術のそれと同様に、滅びてしまった偉大なる星団にあったと考えられる
滅びの流星
ルーサットの垣間見た源流は
偉大なる星団、その終焉の瞬間であった
その時、彼の全ても壊れてしまった
偉大なる星団が滅び、星々の欠片が狭間の地に降り注いだ。そして星団のあった領域には光の無い暗黒が残された
創星雨
それは、輝石の魔術のはじまりとされる
星見の垣間見た源流は、現実となり
この地に、星の琥珀が降り注いだのだ
彗星アズール
アズールの垣間見た源流は、暗黒であった
彼はその深淵に心奪われ、また恐怖したという
このとき無数の星を従えたノクステラの黒い月も狭間の地に飛来する。この黒い月が司っていたのが、月と星の冷たい夜の律であろう
ノクステラの月
それは、彼らが失くした黒い月を模している
ノクステラの月は、無数の星を従えていた
夜の律の源流
これ以降は、夜の律の源流を黒い月とした説とほぼ同じ経緯を辿る
夜の律と黒い月より狭間の地を統べていたファルム・アズラは、やがて大いなる意志の怒りに触れたことで黒い月を砕かれ、地下に滅ぼされる
メモリ・ストーン
それは、かつて永遠の都が見上げた
黒い月の欠片であるという
幻視の器であった雪魔女は夜の律を宿したまま狭間の地をさまよい、やがてレナラと出会う。レナラは満月の魔術と夜の律の思想を継承、学院を魅了する
レナラの満月
女王レナラが、その幼き日に出会い
後に学院を魅了した、美しい月である
その後、侵攻してきたラダゴンと結ばれたレナラはエルデンリングに取り込まれた形の夜の律を生みだす。ラニである
幼きラニはレナラに連れられて老いた雪魔女と出会い、暗月を継承する
夜の律が大いなる意志に囚われていることを知ったラニは、大いなる意志からの解放を目指して陰謀の夜を画策。自らの肉体を殺し、その影響から脱する
そしてラニは二本指を殺害することで完全な自由を実現し、夜の律と共に狭間の地から去る
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ
…私はそれを、この地から遠ざけたいのだ
生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥か遠くにあればよい
確かに見ることも、感じることも、信じることも、触れることも
…すべて、できない方がよい
だから私は、律と共に、この地を棄てる
それでも、付いてきてくれるのだろう?ただ一人の、私の王よ(魔女ラニ)
この時点でも夜の律はエルデンリングに含まれたままである。つまりラニはエルデンリング(律)を宿した状態で狭間の地から離れようとしたのである
「生命と魂は、律と共にある」、とは「生命と魂は、エルデンリングと共にある」と言い換えることもできる
生命と魂がエルデンリングの近くにあると、その強い影響により歪んでしまう(デミゴッドのように)
よって生命と魂からエルデンリングを遠ざけることにより、歪みを防止し、生命と魂があるべき姿でいられるようにしたかったのである
ラニが現状の問題をエルデンリングが生命と近すぎるからと捉えているのはなぜか、それが大事ですよね。
返信削除エルデンリングはほぼ=エルデの獣であり、その意志がマリカの肉体の主導権を握っているのがラダゴンです。
であれば、ラダゴンがレナラに対して行ったことを考えるとラニがエルデンリングのような上位者的存在が生命に干渉することを嫌ったというのはうなずける話です。
考察の通り狼は神人に与えられる影獣ですが、なぜしろがね射手たちはそんな狼を半身と呼ぶのかと考えたときに、また彼女らが模倣の特性を持つ雫から生まれたであろうことを考えたときに、彼女らは神人を模倣しているのだろうなと思うわけです。
そんな存在がリエーニエで銀の雫から生まれておりカッコウからまともな生命ではない失敗作と呼ばれているということを考えると、同じく銀の雫を起源とするレナラの秘術は神人を作るためにラダゴンに利用されていたと考えられ、そうするとラダゴンがレナラに婿入りしたこと、神人作りの成功例のラニが夜の律であった途端にラダゴンを捨てたことがすっきりと腑に落ちます。
つまりラニは、エルデンリングが生命の近くにあると生命のためのエルデンリングであったはずが、いつの間にかエルデンリング側によって生命が都合のいいように操作されてしまう、それを嫌ったのではないでしょうか。
そしておそらくマリカも同じような理由でラダゴンと対立したのではないか、と考えたりします。