2022年11月30日水曜日

書評 『Elden Ring Official Art Book』 『小説ダークソウル』

Elden Ring Official Art Book

ざっと流し読み


Volume Ⅰ

Ⅰに記載されているのは、オープニングプロモーションアートその他のアート狭間の地のコンセプトアート褪せ人とNPCとその衣装デザインである


オープニングはそのままゲームのオープニングで使用されているイメージである


ゲームのオープニングからキャプチャしたもの


プロモーションアート発売前に使用されていたイメージである。騎士ヴァイク神肌の使徒ゴッドフレイ戦鬼の鎧(バルグラム?)のイメージである


「その他」のアートは恐らく初出と思われる


槌を振るう金髪の男(背中のヒビ割れの形状からラダゴンと思われる)


男が槌を打ち付けているのは石舞台(切り株?)に突き刺さる楔(くさび)のようなもの


後のページ(317)では、この石舞台(切り株?)はさらに巨大な何かに突き刺さっているようにも見える(つまり石舞台そのものが巨大な楔型


正面から見た上半身裸のマリカのイメージ(センシティブな部分は描かれていない)


赤毛のラダゴン(上半身のみ)をから見たイメージ(顔はぼかされている)



狭間の地のコンセプトアート

基本的にゲーム内とほぼ同じである。このイメージをもとにゲーム世界を創造したと考えられるが、その再現度はほぼ100%である


なので特筆すべき点はあまりない。ストームヴィルの絵画の中に「失地騎士の絵」があるくらいであろうか(ゲーム内にもあったかもしれない)


287ページには地下世界が描かれており、そこには地の底から生える緑色の植物が描かれている(その緑色は地上のとはやや異質にも思える)


またマップギミックの項に記載されている鍛冶師ヒューグと思わしき混種(359)は円卓ではなく、狭間の地の家の中にいる


当初は円卓ではなくイジーのように狭間の地のどこかに配置されていたのかもしれない


NPCのページもざっと見た限り新しい情報はなさそうである


ただし、魔女ラニ次ページに神授塔にあった赤毛の死体のイメージが記載されている



死体にはキャプションがついていないが、ラニとブライヴのページに挟まれていることから、神授塔の赤毛の遺体は魔女ラニの生前(肉体を失う前)であると考えて良さそうである



Volume Ⅱ

Ⅱに記載されているのは、ボス、武器、道具類のイメージ図である


気づいた点を箇条書きにする

  • ライカードの指は7本
  • 見張り石の先端に人間の眼球が埋め込まれている
  • ユビムシは12本指
  • 火の戦車、ガンメンは3人乗り(2人は動力)
  • 317ページに「調香師の盾」のキャプションが誤植されている



まとめ

ほとんどのイメージはゲーム上に忠実に再現されているので、ゲームにない情報を求めるのならば、得られるものはあまりない


建造物、美術品武器防具の意匠紋章の図柄ははっきり見える


コレクターアイテムとして購入するのならば良いと思うが、エルデンリングの何らかの情報を引き出そうとするためだけに購入するのは価格的にもお勧めはしない


Kindle版書籍版があるが急がないのであれば上記の理由から書籍がお勧めである(本棚に飾っておける)



小説ダークソウル

かなり前に読了していたのだがタイミングがなかったのでついでに


前提としてゲームの「ダークソウルシリーズ」とは世界や設定が異なっている


一部ダークソウルを想起させるギミックや設定も登場するが名前は変えられている


  • エスト→霊薬の薬瓶
  • ソウル→本質
  • 篝火→焚火


物語としては、砂漠で死から目覚めたフェーラノスが自身と世界のことを知るためにをする、という筋である


前半は幾度も死にながら困難を乗り越えていく、というゲームと共通した流れなのでプレイ済みなら共感できる


中盤あたりからは旅を共にする仲間(生者や不死)が増え、彼らとともに3つの国を訪れてそれぞれの試練を乗り越えることになる


このあたり、なんとなくDS2DLCを想起させた。ただし展開的にはDSシリーズやムアコック的なダークファンタジーというよりも、不思議の国のアリス不条理劇に近いような印象である


仲間が増え、世界の謎が少しずつ解き明かされていくものの、冒険自体は極めて淡々と進む(原文の文体のせいもあるのだろうか)


結末を完全に明かすわけにはいかないが、総じてDS1ほどの神話的ダイナミズムはないものの、世界の終わりと再生という構造は保っていたように思われる(再生がなされたかどうかは別として)


似ている作品を挙げるとすると、やはりDS2になるのだろうと思われる


※第三者がDS風の物語を描こうとすると神話的要素が希薄化され人間の物語に主軸が移るのは、何かしらの理由があるのだろうか


3 件のコメント:

  1. コメント失礼いたします
    いつも素晴らしい考察ありがとうございます楽しみに拝見させて頂いております
    本記事に直接関係の無い話題で失礼なのですが
    フロムゲーへの理解を深めるため、ファンタジーに関連する知識(北欧神話等)を勉強しようと思っているのですが、何から手を付けたらよいのか分からず困っています
    もし(これを読めばフロムへの理解が深まる!)というようなseed氏のおすすめの書籍があれば知りたいのですがお教えいただけないのでしょうか?

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    1. コメントありがとうございます
      とっかかりとしては宮崎英高氏のデスクの書棚に入っているという
      『デビルマン』や『ベルセルク』などが良いかと思います

      エルデンリングに限れば、ジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』や『タフの方舟』、またはドラマ版の「ゲーム・オブ・スローンズ」なども良いかと思います

      他にマイクル・ムアコックの影響をインタビューで明言されていました

      SEKIROに関しては『無限の住人』、『シグルイ』、『花の慶次』、山田風太郎の『甲賀忍法帖』(漫画版は『バジリスク』など)

      ブラッドボーンに関してはラヴクラフトの『クトゥルフの呼び声』や『未知なるカダスを夢に求めて』、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』、ジョージ・R・R・マーティンの『フィーヴァードリーム』、種村季弘の『吸血鬼幻想』

      ※クトゥルフ作品は翻訳によっては読みにくいので、出来の良い漫画版でも良いかと思います

      宮崎英高氏は漫画好きらしいので、少し古めで濃いめの漫画を漁ると、何となく似ている場面に遭遇するかと思います

      フロムゲーの神話に関してはフロムや宮崎英高氏が参考にしている資料は分かりません

      私が個人的に参考にしているものを少しだけ挙げるとすれば

      『神話学入門』(松村一男)
      『エッダ ――古代北欧歌謡集』(谷口幸男訳)
      『図説 金枝篇』(フレーザーの金枝篇を後代の学者が図説したもの)
      『千の顔をもつ英雄』(ジョーゼフ・キャンベル)
      『北欧とゲルマンの神話事典』(原書房)
      『黄金と生命』(鶴岡真弓)
      『永遠回帰の神話』(エリアーデ)
      『ギルガメシュ叙事詩』(矢島文夫)
      『ヨーロッパ人名語源事典』(梅田修)
      『心理学と錬金術』(C・G・ユング)
      『元型論』(C・G・ユング)
      『論理哲学論考』(ウィトゲンシュタイン)

      です

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    2. こんなに丁寧にご回答いただいて...心より感謝申し上げます
      フロムの作品には単なるエンターテイメントとしての楽しさだけでなく、学術的な知識に裏打ちされた芸術性が感じられますよね
      おかげ様でフロムへの理解が深められます
      ありがとうございました

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