修正:ノアとミオ
本稿はゼノブレイド3のレビューではない。また考察でもなく個人の解釈である
オリジン
本作の舞台であるアイオニオンは、ゼノ1世界とゼノ2世界が「互いを求め」たことにより生じた世界である
二つの世界は
それぞれの未来へ向かうはずだった
ですが 世界は互いを求めてしまった(女王ニア)
二つの世界は「存在の孤独が故に」再び一つに戻ろうとする
しかしその二つの世界が正と負という相反する世界であったがために、その交わりは世界を消滅させてしまうことを意味していた
存在の孤独が故に
再び一つに戻ろうと――
それは 破滅を意味していた
相反する性質の世界は
交わることで すべてを消滅させてしまう
光だけを残して――(女王ニア)
ただし二つの世界の消滅後も残るものがある
それが「光」である
つまり「光」は世界の消滅を乗り越えることができる性質を持っているのである
そこでゼノ1世界の女王メリアとゼノ2世界の女王ニアは、世界の全情報を「光」に変換することで消滅を超克しようとした
光だけが 私達に残された最後の
共通の言葉でした(女王ニア)
そのための全物質→光情報への変換保存装置がオリジンである
オリジン――
世界に存在するすべての情報を
光となった言葉を記憶する
未来へと渡り往く希望の船――
オリジンは 消滅した世界を
再生させるシステムだったのです(女王ニア)
世界の消滅後、オリジンは光に変換された旧世界の情報を基にして世界を再生させる予定であった
しかし、世界の再生は行なわれなかった。衝突したその瞬間に世界は静止してしまったからである
そして――
その時は訪れた――
世界の再生は行われなかった
世界は “その瞬間”
静止してしまったのです
ゼットらメビウスによって――(女王ニア)
アイオニオン
このシークエンスがやや曖昧なので横道に逸れるが解釈を述べたいと思う
オリジンはゼノ1世界とゼノ2世界の双方で半分ずつ建造されている
ニアの右隣に居るのは… |
二つの世界が衝突する瞬間に二つのオリジンは一つになり、オリジンとして完成するものと思われる
そして作中に登場するオリジンを見る限り、オリジンは球形をしている。つまり完全体のオリジンが実現されているのである
ということは、アイオニオンはゼノ1世界とゼノ2世界の衝突後に発生したことになる
ただし、二つの世界の衝突は一瞬にして行なわれるわけではなく、接触から完全な対消滅に至るまでは時間的な幅がある
世界が静止したのは二つの世界が接触し、オリジンが完全体となった瞬間のことであろう
その瞬間、オリジンの中にある全人類の“ある想い”がメビウスZ(XY)として具現化した
ある想いとは、未来(消滅)に対する不安であり恐怖である。その負の感情は現状維持を求める強い願いとなった
その願いは世界を再生する力、すなわち世界創造の力をもつオリジンによって形を成したメビウスにより成就される
そして二つの世界がインタリンクすることで世界は静止し、永遠の今の続くアイオニオンが誕生したのである
これを図にしたものが以下である(本作との関係が分かりやすいようゼノ1世界をケヴェス、ゼノ2世界をアグヌスとした)
静止世界を永遠の流れとして表現したのは、ゼットがそう表現しているからである
お前達は流れを止めに来たのだろう?
永遠に静止したこの時の流れを
この私を 消し去ることによって(ゼット)
この流れを維持しているのが命である
ただ世界をその場その時に留め――
閉じた時間の中を 永遠に漂うことが
“彼ら”の願いだった
ノア:俺達の命を糧にして――
その通りです(女王ニア)
ゼット
メビウス(Z)の発生時期もやや曖昧である。ニアの説明からはZは衝突以前にすでに存在していたようにも解釈できる
世界は “その瞬間”
静止してしまったのです
ゼットらメビウスによって――(女王ニア)
ゼットはオリジンを掌握するために
ケヴェスの女王を捕らえました
ゼットは ケヴェスの女王の持つ鍵を使い
オリジンのすべてのを掌握した
オリジンの掌握は 世界の掌握と同じ
世界に枷を嵌め 理を自由にできる
生も死も 思い通りに(女王ニア)
ただし筆者としては、ゼットがオリジンを掌握したのは世界が静止した後のことであり、それによって構築されたのがアイオニオンであると解釈した
女王メリアがそう言っているからである
アイオニオン(この世界)は 静止した時の中
永遠の今を選択したメビウス(想い)によって創られた(女王メリア)
メビウスの誕生と同時に静止した時が生じ、その後メビウスによってアイオニオンが創られたという流れである
これらの解釈の根本となっているのが、二つの世界の衝突は一瞬ではなく、ある程度の時間を掛けて行なわれる、とするものである
消滅現象の予兆である黒い霧は同時ではなく不規則に、さまざまな場所で発生している(最初に観測されたのはゼノ1DLC)
※厳密に言えばアイオニオンは完全に静止した状態ではなく、わずかずつ時間が進んでいる。よって衝突に伴う消滅現象が逐次観測される
二つの世界は衝突して即すべてが消滅するわけではなく、消滅現象からも推測されるように、漸進的に消滅していくと考えられる
そして頻発する消滅現象によって増強された人々の想いが最終的にゼットを誕生させたのである
ゼットは――
あれは人ではない
想いなのだ
誰もが抱く不安 恐怖――
そういった想いが集い
人の形を成したモノがゼットだ
人からメビウスとなった者達とは違う
“真のメビウス”なのだ(女王メリア)
ゼットはゼットという個でありながら、人々の想いの集合体である。そしてそれは誰もが持つ未来への不安、そして恐怖から生じる現状維持を是とする消極的態度である
個であって個ではない
そなた達の内にもメビウスは在る
もう 気づいているのではないか?(女王メリア)
ゼットの在り方は人々の未来への不安と恐怖を反映したものである。それは世界を静止させて閉じた時間の中を永遠に漂う、という願いに帰結する
人々の望みは 流れる川の様なもの
誰もが望んでいるのだ
永遠の今を
現に私はここに在る
私の存在が その証左なのだ
ただ――
ただ世界をその場その時に留め――
閉じた時間の中を 永遠に漂うことが
“彼ら”の願いだった(女王ニア)
つまり「ゼットは人々の想いから生じたメビウスである」、ということになるが、この表現は「アイオニオンは人々の願いから生じた世界である」、と言い換えることもできる
ニアがゼットはメビウス(世界)そのものと言って良い、というのはこの意味であろう
中でもゼットは
メビウスを統べるメビウス――
メビウス(世界)そのものと言って良い存在なのです(女王ニア)
真のメビウスであるゼットを倒すことができれば世界は動き出す
ユーニ:てめぇをぶっ倒せば 世界が動き出す――
ってのは どうやら本当のようだね
なぜならばメビウスは、未来への不安や恐怖から未来への道や可能性を閉ざしている人々の弱い心を力の源としているからである
ノア:わかったよ
メビウスの力の 本当の源が――
何故 永遠の今を求めようとするのかが――
タイオン:僕もわかった気がする
女王のあの言葉――
僕達の内にもメビウスは在る
ユーニ:ああ
あれアタシ達自身だ
自分で自分を怖がって 決めつけて――
セナ:未来への道を閉ざしてる
ランツ:その可能性を
誰の心にもある永遠の今を求める弱い心に打ち克つことで、世界は未来へと進むことができる
ミオ:だったら――
できることはただ一つ
ノア:信じるんだ
これまでの俺達自身を
その先にある未来の姿を
ちなみにこの時のノア達には世界が再生されるという確証はない
だが確証もまたない
もし――
もし世界が女王の言葉通り再生せず
消滅してしまったら?(クリス)
夢想であったならどうする?
甘言にのせられて 賭けるのかい命を?
その責任は 誰が取る?(クリス)
ノア:俺は――
それでも良いと思ってる
成功が確約された未来に進むことは、真の意味でメビウスに打ち克つことにはならないからである
成功が約束された未来に進む場合には、未来への不安や恐怖は生じないからである(その感情を抱く必要はない)
不確かな未来へ足を踏み出すことではじめて、本来的な意味で未来への不安や恐怖を超克したと言えるのである
想い
人々の未来への不安や恐怖が形を成したものがメビウスである
またアグヌスの女王の心と触れたことで生まれたのがウロボロス・ストーンであり、ケヴェスの女王の心とオリジンの物質が触れあい成ったものが終の剣である
オリジンを構成する物質と 私のこの胸の
“心”(コアクリスタル)とが触れ合うことで
ウロボロス・ストーンは創られます(女王ニア)
終の剣は
ケヴェスの女王の心と
オリジンの物質が触れあい 成ったもの(女王ニア)
このようにオリジンは想いを形にする力を持っている(創造の力といって良いだろう)
メビウス以外の
多くの人々の想いもまた
オリジン(この中)に生きている
そなたの持つ終の剣も ウロボロスも
その想いが形を成したもの(女王メリア)
オリジンを構成する物質は人の想いと感応することで、その想いに見合ったものを創造する
女王ニアの想いに反応して創造されたのが、二つの異質な存在を結びつけるウロボロス・ストーンである
これはドライバーとブレイドの融和を求めるニアの想いを反映したものであり、他者という異質で未知の存在への理解と受容を象徴するものと思われる
また終の剣は女王メリアの中にある「一つの時代を終わらせ、未来を斬り開く剣」への想いによって創造されたと考えられる(メリアの心に刻まれたモナドの印象だろう)
※火時計を斬る=一つの時代の終わり
そのどちらもが未来や変化することへの不安と恐怖に打ち克つためのきっかけである(他者の受容は自己の変化を意味する)
そしてニアの言うように、鍵はノア達の内にもある(それは誰の内にも存在する)
ウロボロス・ストーンも 終の剣も
単なるきっかけです
本質はあなた達自身――
“鍵”はあなた達の内にもあるのです(女王ニア)
この鍵をノアは最後に見出す
ノア:信じるんだ
これまでの俺達自身を
その先にある未来の姿を
不確かな未来や自己の変化を恐れず未来を信じて前に進むこと。自らの鍵を手に入れたノアには終の剣はもはや必要ない。故にエンディングでそれを捨てるのである
エンディング
エンディングで二つの世界が再び分かれるシーンを見たときに、「あれ? 二つの世界が衝突して消滅するんじゃないの?」と疑問に思った人も多いだろう
またはすでに再生された世界なのではないか、と解釈することも可能である
しかしこれは単に、永遠の今を実現させていたメビウス的な時の流れが止まり、世界が元の状態に戻っている場面である(つまり衝突直後)
図で表わすと以下のようになる
メビウスの輪の形で融合(インタリンク)していた二つの世界が再び分かれ、その後に衝突が起き、完全な消滅を迎えることになる
上述したように二つの世界の完全消滅までには、それなりの時間がある(ユーニが紅茶を入れるぐらいの時間はゆうにある)
そうしたある種の緩衝期間を経て、二つの世界が完全に衝突・消滅した後に、オリジンによって再生されたのがエピローグの世界である
再生世界にもさまざまな解釈があると思うが、筆者が考えるのはひとつの宇宙に二つの世界が併存するイメージである(どちらも正なので対消滅は起きない)
エピローグ中、少年ノアの耳にケヴェスとアグヌス双方の笛の音が届く
端的に言えばこの笛の音は、ノアとミオの想いが少年ノアに届けられたものであろう
記憶は潰えても 想いは残る
想いを旋律に乗せれば届く――(クリス)
その想いはミオの言うように本物なのである
でも これだけは言える
たとえ再生されたとしても
その時 その一瞬の想いは本物――
その想いを犠牲にしていい訳ない
ちなみに鳩が横切った直後、少年ノアの姿が消失する
この現象が示唆するのはDLCへの布石か、あるいは再生された二つの世界の再会であろうか(それはノアとミオの再会に象徴される)
後述するノアとミオの解釈を元にすれば、もともと世界に存在していなかったノアがその使命を終えて消失したという結論になる
再生後の世界
世界の消滅を経て再生された世界は、消滅以前の世界と同一であると言えるのだろうか
この疑問に関しては世界五分前仮説(Wikipedia)やスワンプマン(Wikipedia)などの思考実験がすでにあり、さまざまな解釈がある
これについてはエンディングでミオがひとつの見解を述べている
でも これだけは言える
たとえ再生されたとしても
その時 その一瞬の想いは本物――
その想いを犠牲にしていい訳ない(ミオ)
再生されたものであれ、そこに生じる想いは本物である
そして本作には人々の想いを宇宙の消滅を超えて保存できるオリジンが存在する
いくら想いが光情報に変換されようともその想いは本物である。よって本物の想いから再生された世界は、例えそれが再生されたものであったとしてもひとつの現実(いのち)なのである
存在するすべては現実なのだ
今の現実(いのち)――
未来の現実(いのち)――
メビウス以外の
多くの人々の想いもまた
オリジン(この中)に生きている(女王メリア)
宇宙の消滅すら乗り越える不滅の想いを言い換えたものが、ニアのいう「魂」なのであろう
私達のすべてがあそこにある
記憶も 魂も――
私達は消え そして生まれる
それが終焉なのか 始まりなのか
誰にもわからない(女王ニア)
再生後の世界は消滅以前の世界とは異なっている部分がある
オープニングでは女王様の生誕祭であった場面が、エピローグでは花火大会に変わっているのである
オープニング |
エピローグ |
この描写により、たんに静止していた世界が動き始めたのではなく、いったん世界が消滅した後に僅かに変化した形で世界が再生されたことがわかる
この差異は人々が未来への不安に打ち克ったことを意味しているものかもしれない
旧世界では人々は未来への不安から「女王」という精神的支柱に縋ろうとしたのが、その必要がなくなった新世界ではその必要性が失われ、ただの花火大会になったのであろうか
シティー
再生世界に付随する問題としてシティーの行く末がある
シティーの全情報もオリジンに記録されており、消滅後の宇宙に二つの世界と共に再生されたというふうに考えても良いのだが、ゴンドウによればどうやら少し違うようである
アタシ達のことは気にすんな
お前らが創った未来に生まれてこれるなんて
最高じゃねーか
だからよ
望むままにやりゃあいい(ゴンドウ)
シティーの情報もオリジンに存在するのは確かなようであるが、彼らはただ再生されるのではなく、新たな世界の未来に生まれるのだという
これは恐らく静止世界の流れから外れたことでシティーの人間たちのみが未来に進んでしまっていたことによる現象である
過去の一点に静止しているアイオニオンを置き去りにし、本来であれば世界の消滅により生まれ得なかった者たちがシティの住人として存在している
よって衝突直前の世界を再生した再生後の世界において、ゴンドウたちはまだ生まれていない未来の存在なのである
彼らが生まれるには世界の再生後、しばらく(未来まで)待たなければならない
それはおそらく再生されたケヴェスとアグヌスが再会を果たし、両世界の種族のあいだに子どもが生まれる時代になってからのことであろう(シティの住人はウロボロスの子孫)
よってシティの住人たちの「魂」もオリジンに保存されているものの、それが再生(生まれる)ためには、時を待たなければならないということになる
クリスが言うように、シティーの人々は未来を示しているのである
シティーに生まれた人々の命は
本来 オリジンには存在しなかった命
彼らの存在が
いずれ生まれ来る未来を示しているんだ(クリス)
ノアとミオ
これまでノアとミオを対等な存在と考えていた。しかしながらオープニングでのノアの異質性(静止した世界で動ける)などを含めると、ノアはミオは非対称的な関係にあると考えられる
ニアとの関係性が示唆されていることからミオの存在は確かなようである
よってオリジンに接触したのはミオだけでありノアはその対存在としてケヴェスに発生した存在であるとした方がよりシンプルである
※映像を見る限りオープニングのノアはそもそも存在していなかったとも解釈できる(ノアがいなくても成立する)が、ノアに衝突された人が衝撃で体勢を崩している場面があることから、すでにそのときには存在はしていたと思われる
女王ニアに近しい存在であったと考えられるミオは、世界の消滅についても知っていた可能性が高い
彼女の世界を救おうとする想いがオリジンを通して形になったものが、ノアということになる
とするとエンディングにおけるノアの消失は、世界の再生が成功し使命を完遂したことで不要になったノアが世界から消えた描写、と解釈することもできる
執政官A
執政官のなかで未登場なのはAであるが、恐らく劇場や第六章で現われるフードを被った少年であろうと思われる
このAについてはアルヴィースやアベルという説もあるが、個人的には「アイオニオン」であると思う
アイオニオンは言うまでもなくゼノ3の世界の名前であるが、この世界は二つの世界の衝突(接触)によって誕生した世界である
そして世界とメビウスが等価存在であるように、アイオニオンという世界そのものを体現するメビウスがいてもおかしくはないのである
しかしメビウスの中でXYZ以外の者はすべて人からメビウスになった者たちである
ということは執政官Aもかつて人であったことになる
人であった頃の執政官Aの該当者として個人的にあり得そうだなと思うのが、ノアとミオの子どもである(シティーの伝承は色々と怪しいので考慮しない)
確か名前は出ていなかった記憶があるので、なぜ名前が隠されているのかと考えたとき、A=アイオニオンだからなのではないかと考える次第である
しかしアイオニオンはやや長く、世界の名前として混同されやすい気がするので、アイオニオンを日本語に訳した「永遠(とわ)」がノアとミオの子どもの名前なのではないかと推測する(「希望」や「久遠」という名前もありそうだが、このあたり完全な妄想である)
つまりノアとミオという二人の人間の接触によって誕生したのがアイオニオン(永遠)であり、また同時に二つの世界の接触によって誕生したのもアイオニオン(永遠)なのである
蛇足
本来であれば一週間ほどでクリアしてレビューなりを書こうと思っていたのだが、本編が長いのと洗足(目黒区)に寄り道していたことなどから、大幅に遅れてしまった
アイオニオン世界の図については他の形も考えていたのだが、せっかくなのでメビウス図形を利用する形にした
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