ボス戦「教父アリアンデルとフリーデ」
教父アリアンデルとフリーデ戦は3フェーズある
1フェーズ目:修道女フリーデ
2フェーズ目:教父アリアンデルとフリーデ
3フェーズ目:黒い炎のフリーデ
修道女フリーデは、プリシラとベルカを継承する、忌み人たちの母としてのフリーデである
修道女フリーデが倒されると教父アリアンデルは激昂し、その釜に封じてきた火を溢れさせることによりフリーデを復活させる
見えるだろう?火がまた、チラついている
もうすぐにも、溢れてしまいそうだ…(教父アリアンデル)
この釜に封じられてきたのは世界を焼く特別な火である
言い伝えの通り、この世界を焼いてくれよ(鴉村の忌み人)
腐れを焼く、特別な火だ(奴隷騎士ゲール)
さて、絵画世界は血によって描かれる。絵画世界が腐るのも、世界を描く顔料が「血液」だからである
そして世界を焼く、とは血によって描かれた画を焼くことであり、それはすなわち、血を焼くことに等しい
だが同じ血によって、特別な火は鎮められる
アリアンデルの薔薇
絵画世界の鞠のような教父が
その血で火を鎮めるために用いたバラ鞭
血と火の関係性がここでは複雑に絡み合っている。血は腐ると火によって焼かれるものとなるが、新鮮な血はその火を鎮める力があるのである
教父アリアンデルは世界を焼く火を釜に封じ込め、自らの鮮血を滴らすことでその火を鎮めてきたのである
余談だが、自らの肉体を鞭で打つことを修練とする宗派はロシアに実在する。「鞭身派」という宗派である。ドストエフスキーの著作によく登場する他、映画「ダヴィンチコード」にも登場している(コトバンク「鞭身派」)
ボス戦「教父アリアンデルとフリーデ」
第1フェーズ
フリーデの血を見て正気を失ったアリアンデルは、釜を叩きつけて封じてきた火を溢れさせる
この時不可解な現象が引き起こされる
フリーデの血が燃え上がるのである
血は火を鎮めるはずであるのに、フリーデの血はそれが可燃性の液体であるかのように燃え上がる
しかしこれはフリーデの素性を知っていれば、当然の現象である
なぜならばフリーデは火の無い灰であり、腐れを焼く特別な火は灰にしか起(熾)こせないからである
アリアンデルに火を、アリアンデルに火を
火を起こす灰を(奴隷騎士ゲール)
それまで教父の血によって鎮められてきた世界を焼く火は、もとはといえば灰であるフリーデによってもたらされたものである
フリーデの火は世界を焼く火であると同時に、その色によっても封じられなければならなかった
オーニクスブレード
戦技は「エルフリーデの黒炎」
刀身に黒い炎を纏う
それは、彼女の内に燻り続けた
同色の炎の分け身である
フリーデの炎は闇属性ではなく炎属性である。それは黒色の炎なのである。血で描かれる絵画世界にとって、黒はすべての色を塗りつぶしてしまう終末の色である
第2フェーズ
第2フェーズで戦う時のボス名は「教父アリアンデルとフリーデ」である
両者は体力を共有し、どちらを攻撃しても体力ゲージが減少する
なぜ両者は体力を共有しているのであろうか
この疑問の答えは、これまで教父アリアンデルがおのれ血を釜に注ぎ続けてきた、という事実から導き出される
なぜ血を注ぎ続けなければ火が溢れてしまうのかというと、血の鮮度が高くないと火を鎮められないからであろう
つまり古くなった血は火を鎮める効果をもたないのである
むしろ絵画世界が血で描かれていることからも分かるように、その火は古くなった血(腐れ)を燃料にして燃え上がる
つまり釜から溢れ出た火は、教父アリアンデルの古い血を燃料にして燃える、アリアンデルの火でもある
第2フェーズ移行時のムービーで描写されているのは、このアリアンデルの火とフリーデの血(火)の統合である
本作において炎は特別な現象である
篝火はお互い分かち難く繋がっているとされ、呪術の火を分かち合ったものは火の血縁になるとされる
螺旋剣の破片
篝火はお互い分かち難く繋がっており
たとえ役目を終えた破片であっても
その繋がりはずっと残るのだろう
呪術の火(クラーナ)
呪術師にとって火は特別なものであり
大抵は一生を共にし、大事に育て続ける
彼らにとって、火はまさに半身であり
分かち合ったものは火の血縁となるのだ
教父の炎とフリーデの炎とが統合されたことにより、二人は一つの炎(存在)になったのである
それは教父とフリーデとが一心同体になることであり、それゆえに「教父アリアンデルとフリーデ」は体力を共有しているのである
直裁に言えば、第2フェーズ移行時のムービーは、教父と修道女の神的な性行為(血の営み)のメタファーである
両者は肉体のみならず魂までも結合されることで、HPという生きる力までも共有することになったのである
生命とはソウルを根源とするものであるが、ソウルは呪いに等しいものである
王の指輪[DS2]
ソウルは呪いに等しいものであり、
強いソウルを持つ者は、より強い呪いを
その身に引き受ける
双王子のソウル
薪の王たるを拒否した二人の王子は
全てを遠ざけ、火の終わりを待っていた
そのソウルは、呪いにより分かち難い
第3フェーズ
第2フェーズで「教父アリアンデルとフリーデ」が倒されると、アリアンデルが釜を強く抱きしめて爆発する
その釜に入っていたのは、世界(腐れ)を焼く火であった
その火が「灰」によって起こされることは上述した
すなわち、釜に入っていたのは火の無い灰として絵画世界を訪れたエルフリーデの火である
あるいは教父とフリーデの統合(融合)は、はるか以前から徐々に成されてきたものなのかもしれない
エルフリーデの起こしかけた火を、アリアンデルは自らの血を用いて釜の中で鎮め続けてきたのである(その血と炎は分かち難く繋がっている)
アリアンデルが釜を破壊したことで、かつてのエルフリーデが宿していた黒い炎も解き放たれる
その結果、黒い炎をふたたび宿したフリーデは「黒い炎のフリーデ」として復活するのである
第3フェーズに移行する際に聞こえるのは、教父アリアンデルのセリフである
「いつか灰はふたつ、そして火を起こす」
やはり君には、灰には、火が相応しい…(教父アリアンデル)
教父アリアンデルは釜を破壊することで、フリーデに火を返したのである
修道女フリーデのソウルによって錬成可能なのは、フリーデの大鎌とアリアンデルの薔薇である
これは両者のソウルが分かち難く繋がっていることの証左である
双王子のソウル
薪の王たるを拒否した二人の王子は
全てを遠ざけ、火の終わりを待っていた
そのソウルは、呪いにより分かち難い
※双王子のソウルによって錬成可能なのは、「ロスリックの聖剣」と「ローリアンの大剣」
エルフリーデ
かつてフリーデは卓越した剣士であった
修道女のズボン
絵画の修道女、フリーデの装束
薄青のドレスに隠されたそれは
だが剣士のズボンである
沈黙の禁則
黒教会の者たちは、皆卓越した剣士であり
ロンドールの沈黙はいつも彼らと共にある
そして剣だけは、決して裏切らない
修道女フリーデの得物である大鎌は、アリアンデルに来てから選択されたものである
フリーデの大鎌
絵画では、鎌は遠い郷愁の対象であり
故に彼女はこれを得物としたのだろう
黒教会の指導者時代の彼女の武器として考えられるのが、ヴィルヘルムに別れの品として授けたとされるオーニクスブレードである
オーニクスブレード
黒教会の指導者であった長女エルフリーデが
彼女の騎士に授けたという炎を模した大剣
だがそれは、主従の交わりの終わりを示す
別れの品であったという
戦技は「エルフリーデの黒炎」
刀身に黒い炎を纏う
それは、彼女の内に燻り続けた
同色の炎の分け身である
その大剣にはエルフリーデの内に燻り続けた(過去形)、黒い炎の分け身が宿っている
燻り続けた、と過去形で語られるように、その黒い炎は現在はアリアンデルの釜の内に封じられている。フリーデがそれを取り戻すのはアリアンデルが釜を破壊し、彼女の黒炎を解放した後のことである
火ではなく腐れを選んだ彼女にとって、黒炎を宿す武器はロンドールと共に棄てなくてはならないものであった
黒教会の指導者であったフリーデがロンドールを棄てる。それは黒教会への信仰を棄てることでもある
オーニクスブレードの能力補正には「信仰」がある
+5段階:筋力E、技術E、理力C、信仰C
だが、彼女が次に選んだフリーデの大鎌の信仰補正は「E」である。黒教会への信仰を棄てた彼女にとって、信仰を力とする武器はもはや使えなかったのである
ボスの第2フェーズでのみ、フリーデは回復の奇跡を使う。その金色の光は神への信仰を示すが、その時の彼女はアリアンデルと一心同体となっている
すなわち、彼女が第2フェーズでのみ回復の奇跡を使うのは、それがアリアンデルに由来する信仰だからである
二刀流
また戦技「エルフリーデの構え」から、黒教会の指導者時代のエルフリーデが二刀流であったことも明らかである
フリーデの大鎌
戦技は「エルフリーデの構え」
大鎌を右に、魔法刃を持つ補助鎌を左に構える
それは、かつての彼女の剣技の記憶であり
通常攻撃で跳び込みからの二連撃に
強攻撃で地を走る冷気に、繋ぐことができる
主武器を右手に持ち、左手に魔法刃の副武器を構える、というのがかつての彼女のスタイルであった
本作において魔法刃をもつ武器は限られているが、そのうちの一つに藍玉の短剣がある
藍玉とはアクアマリンのことであり、オーニクスブレード(英名:Onyx Blade)とは、鉱物の名という共通点がある
藍玉の短剣
それは旅立ちに贈られたものだろうか
古い言葉で、無事を祈る成句が刻まれている
戦技は「結晶の刃」
藍玉に込められた魔力を解放し
一時的に青い結晶の刃を作り出す
その刃は長く、直剣のように振るうことができる
時系列
ここで時系列を整理してみよう
1.エルフリーデ灰となる
2.旅立ちに藍玉の短剣を贈られる
3.絵画世界に到着
4.火ではなく腐れを選ぶ
5.オーニクスブレードをヴィルヘルムに授ける
6.ロンドールと共に藍玉の短剣を棄てる
「灰となり、ロンドールを棄てた」、と一文で語られるので分かりにくいが、灰になったこととロンドールを棄てることはイコールで繋がらない
灰となり、ロンドールを棄てた憐れな女…エルフリーデ…(ロンドールのユリア)
というのも、プレイヤーも灰であるが、灰であるが故にロンドールの王にまでなったからである
またアンリにしても即ロンドールの敵とはならず、亡者の王の伴侶として丁重(ロンドール基準)に扱われている
エルフリーデは灰となり、亡者の王になるべく旅立ったとするのが、同じ灰であるプレイヤーの辿ったロンドールルートからも合理的かと思う
その旅立ちに贈られたのが、藍玉の短剣である
藍玉の短剣はDLC第二弾の吹き溜まりの遺体が所持しているが、吹き溜まりの時空は未来なので、エルフリーデ本人ではなく、藍玉の短剣を偶然に手に入れた別人の遺体であろう
亡者の王になるため、あるいは火を求める火の無い灰として絵画世界に到着したエルフリーデは、そこで火ではなく腐れを選ぶ
ここで言う「火」とは、亡者の王として簒奪するはずであった、はじまりの火のことである
修道女フリーデのソウル
一人目の灰として絵画を訪れたフリーデは
だが教父と共に、火ではなく腐れを選んだ
フリーデがロンドールを棄てたのはこのタイミングである
腐れを選んだエルフリーデは、まだ黒教会の指導者であるうちに別れの品を騎士に渡し、主従の交わりを終わらせた
そしてその後に、エルフリーデはロンドールと共に藍玉の短剣を棄てる
藍玉の短剣は恐らくはユリアかリリアーネに贈られたものである。そのロンドールを象徴する品を棄てることで、ロンドールを棄てたことを示したのである
以上のように黒教会の指導者時代のエルフリーデは、二刀流であり、右手にオーニクスブレード、左手に魔法刃の副武器を装備していたと考えられる
この二振りを単純化すると、炎の剣と魔法剣になる
法王サリヴァーン
法王サリヴァーンもまた右手に炎の剣、左手に魔法剣を装備している
この組み合わせは、冷たい谷の踊り子にも受け継がれることから、法王サリヴァーンを象徴するスタイルであったと考えられる
サリヴァーンがこのスタイルに行きついた経緯は不明だが、右手は恐らく罪の都で罪の炎を見出した後に選んだ武器であろう
罪の大剣
法王サリヴァーンの持つ右手の剣
罪の火を称する儀式の剣
遥か昔、イルシールのはずれ
その地下に罪の都と消えぬ火を見出したとき
若き魔術師サリヴァーンの心にも
消えぬ野心が灯ったのだろう
戦技は「罪の火」
罪の火を一時的に呼び出す技
踏み込みからの強攻撃で刀身は火に包まれる
左手の魔法剣についても、法王となった後に選ばれたものであろう
裁きの大剣
法王サリヴァーンの持つ左手の剣
月の裁きを称する儀式の剣であるが
その魔力は、月よりもむしろ魔術に近い
暗い月よりも、なお暗い青色は
魔術師サリヴァーンの本質であったろう
戦技は「裁きの構え」
その刀身は構えにより暗い魔力を帯び
通常攻撃で踏み込み突き、強攻撃で横薙ぎの光波と
状況に応じ使い分けられる
法王サリヴァーンの本質は月を信仰する聖職者ではなく、暗い青色を宿す魔術師なのである
つまりサリヴァーンは、右手に炎の剣、左手に魔法剣を持つ「聖職者を騙る偽者」である
前回の考察で、教父アリアンデルと修道女フリーデは「聖職者を騙る偽者」としたが、絵画世界出身のサリヴァーンもまた「聖職者を騙る偽者」であった
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