2021年7月27日火曜日

Dark Souls シリーズ考察16 墓王ニト

最初の死者、ニト

オープニングでは「最初の死者、ニト」、王のソウルには「最初の死者、墓王ニト」とある


王のソウル(墓王ニト)

最初の死者、墓王ニトのソウル

火の時代の最初に見出された王のソウルの1つ


あらゆる生の死を司る墓王ニトは

そののほとんどを死に捧げている

それでもなお、そのソウルは大きく

王の器を占めるに足るものだ


他の王のソウルと同じくニトのソウルは火の時代の最初に見出された王のソウルである


はじめての火によりもたらされた差異のうち、ニトが見出したのは「死」だった


だが、いつかはじめての火がおこり

火と共に差異がもたらされた

熱と冷たさと

生と死と

そして、光と闇と


そして闇から生まれた他の幾匹と同様に彼は「生」も宿していた。それゆえにを手に入れた瞬間に死に、最初の死者となったのである


古竜の瞳

古竜に祈り、それに近づこうとする超越者たちの業

生とは弱さであり、火の者である神々も例外ではない

超越者の目標は、生命とは別のあり様なのだ


ニトはその力のほとんどを死に捧げており、すべての死を司っている


墓王の剣舞

ニトは神々の眠る巨人墓地の最奥にあり

静かにすべての死を司り

眷属のもたらす「死の瞳」を待っている



死の瘴気

ニトは死の瘴気を解放し古竜と戦ったという


それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ

グウィンの雷が、岩のウロコを貫き

魔女の炎は嵐となり

死の瘴気ニトによって解き放たれた


そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより

遂に古竜は敗れた


この死の瘴気とは生命にとっての猛毒である


墓王の剣

最初の死者、墓王ニトの眷属のみ持つ

死者どもの骨でできた剣


剣のまとう濃い死の瘴気

あらゆる生命にとっての猛毒となる


それまで「朽ちぬ」という超越的な存在であった古竜は、シースの裏切りにより生命へと転落し、ニトの猛毒に侵されたのである


生命に堕した古竜は死の瘴気に抗うことができず、それは次々に死んでいった


その死を司ったのが墓王ニトである



墓王の力

死にほとんどの力を捧げている墓王の力とは具体的にはどんなものであろうか


地下墓地のボス三人羽織墓王の力を盗んだとされ、その3面の仮面には神秘の力が宿っている


父の仮面

墓王の力を盗んだ屍術師

地下墓地の主、三人羽織の仮面の1つ


この仮面は雄々しい父のもので

装備重量がわずかに増える



母の仮面

墓王の力を盗んだ屍術師

地下墓地の主、三人羽織の仮面の1つ


この仮面は優しい母のもので

HPがわずかに増える



子の仮面

墓王の力を盗んだ屍術師

地下墓地の主、三人羽織の仮面の1つ


この仮面は初々しい子のもので

スタミナ回復速度がわずかに上がる


効果としては、装備重量増加、HP増加、スタミナ回復速度上昇である


奇妙なことにこれら3つの効果を合わせると、寵愛と加護の指輪ほぼ同一の効果になる


寵愛と加護の指輪

「運命的な美しさ」を謳われる

女神フィナの寵愛と加護の指輪


装備者のHP、スタミナ、装備重量

すべてを増やす効果があるが

一度つけると外すことができず

無理に外すと壊れてしまう


女神フィナはその語源から女神グウィネヴィアであることは過去に考察した(名前の話2 女神フィナと無名の王の本名


あらゆる生の死を司るニトの力が、生命の象徴たる太陽の光の王女グウィネヴィア加護と酷似しているのである


スタミナ自体を上昇させるか、あるいはスタミナ回復速度を上昇させるかといった違いはあれど、どちらもが肉体的な力を増強するものである


肉体的な力とはこうも言い換えられる「生命の力」と


生命力を増強されたことでHPや装備重量、スタミナに良い影響が出ているのである


なぜ死の王であるニトの力生命力を増強させる効果を持っているのか


それは死が生とは表裏一体の差異だからである


生が存在しなければ死ぬことができず、また死が存在しなければ生は完結しないのである


朽ちぬ古竜生命とは別のあり様と言われるのはこのためである。古竜は朽ちぬために死ぬことはないが、同時に生命でもないのである


古竜の瞳

古竜に祈り、それに近づこうとする超越者たちの業

生とは弱さであり、火の者である神々も例外ではない

超越者の目標は、生命とは別のあり様なのだ



生と死

生と死は相即不離(そうそくふり、一見対立する二つのものが、実は融合し、ぴったり一体となっていること。)の関係にあり、それは根源的には「同じ力」なのである


この生と死の一体性を示すのは、仮面と指輪だけではない


地下墓地には生命崇拝の宗教である白教の不死たちが巡礼に訪れ、巨人墓地には神聖武器を強化するための「白楔石の塊」や「原盤」が落ちている


その白楔石は邪教武器を強化するのにも使われる


神聖武器は不死狩り、すなわち不死を殺す武器であり、邪教武器は生命の最たる神を殺す武器である


聖職の種火

神聖の武器は不死狩りの武器であり

不死人や屍術師のしもべたちに有効となる


暗い種火

邪教の武器は神狩りの武器であり

神の一族やその信徒たちに有効となる


不死と生命、この対立する二つの存在を殺す武器を鍛えることができるのが、白楔石なのである


また不死たちの生命の源ともいえる篝火を盛んにする「注ぎ火の秘儀」も墓王ニトの力を盗んだ三人羽織が所有していた


このように、地下墓地や巨人墓地は「死」だけではなく「生」に関する神秘にも深く関連している


白教の最初の不死であるリロイ巨人墓地を訪れたのも、そこに「死」だけではなく「生」の真理を見出したからであろう


彼が侵入者を殺そうとするのも、それが彼の宗教や信念にとって正しいからである


墓王ニトは「死」だけではなく「生」にとっても重要な力を持っているのである


それゆえにリロイに続く聖職たち地下墓地を訪れるのである。そこに彼らの宗教における重要な何かが存在していると確信しているからである



生と死の力

では生と死の根源にある力とはなにか


ソウルである


墓王ニトは王のソウルを所持し、そのソウルの力のほとんどを死に捧げているとされる


王のソウル(墓王ニト)

あらゆる生の死を司る墓王ニトは

その力のほとんどを死に捧げている

それでもなお、そのソウルは大きく

王の器を占めるに足るものだ


それでもなお、というからには捧げているのは「ソウル」なのである


そしてソウルは同時に生命すべての源でもある


人間性

ソウルが生命すべての源であるなら

人のみにある人間性とはなんなのか?


ソウルは本性的に生命的なるものである。ニトのようにそれを死に捧げることのほうが例外的である


だが生命をたんに「生きている」とするのではなく、「生と死の循環」と解釈するのならば、生命の源であるソウルには同時に「死」も含まれていることになる


※朽ちぬ古竜が生命とは別のあり様とされるように、生命は生と死があってはじめて生命となるのである


つまりソウルもまた相即不離の状態にあり、それは扱う者の意志により生の力にも死の力にもなるのである


そして墓王ニトはその巨大なソウルの力のほとんどを死に捧げているゆえに、すべての死を司る存在になったのである



ミルファニト

DS2にはミルファニトという女性NPCが複数、登場する


ミルファニトという名前からも分かるように、彼女たちはニトのしもべである


彼女たちの言によれば、ミルファニトは「大いなる死者」からを預けられ、死と闇に囚われた者たちを慰めているという


私たちは、その大いなる死者から

歌を預けられました


その時から、私たちは歌い続けているのです

死と闇に囚われた者たちを、慰めるために

ミルファニト(死者の塔)


彼女たちの歌が「小さなものたち」(光る虫)を舞わせ死と闇をその身に宿す者は、それに惹かれ癒しと慰めを得るという


あの小さなものたちは、歌によって舞うのです

死と闇をその身に宿す者は、あのものたちに惹かれ癒しと慰めを得る

ミルファニト(祈りの塔)


その小さきものたちは、「大いなる死者」から生まれたという


あの小さなものたち

大いなる死者”から、生まれたのです

ミルファニト(死者の塔)


ここにも死から生命が生まれるという一見矛盾した現象が認められるが、生と死の根源がソウルであることを知っていれば、矛盾ではなくなる


大いなる死者から生命である小さなものたちが生まれるのは、その内に巨大な王のソウルを宿していたからである


すなわち大いなる死者とは最初の死者であり、生命の源たる王の巨大なソウルを宿す墓王ニトのことである


その力の根源はソウルにあり、ソウルとはであると同時にでもあるのである


そして死と闇に囚われた者、すなわち死者生命の放つ光惹かれ癒しと慰めを得るのである


それは失ったものへの憧憬、あるいは郷愁、あるいは愛慕である


死と闇に囚われた者とは死者に限定されるものではなく、人間全般を指したものかもしれない



死神

人間を癒し慰めるために光の虫を生み、またミルファニトに歌を授けたニトの行為は、しかしニトのわずかな側面でしかない


その力のほとんどを死に捧げているとあるように、墓王ニトの本分は生命に対して災厄や猛毒をばら撒く、死神である


死の瞳

禍々しい「死の瞳」は、他の世界に災厄をばら撒き

犠牲者となる霊体を誘い込むための手段である

犠牲者は「死の瞳」を生み、災厄は更に広がるのだ


墓王の剣

剣のまとう濃い死の瘴気

あらゆる生命にとっての猛毒となる


ほとんどの力を死に捧げ、しかしわずかに残った力が起こした一つの現象がミルファニトの歌と光る虫なのである



蛇足:最初の死者、ヤマ

インド神話には「最初の死者ヤマ」という死神がいる


ヤマは最初の人間であり、最初に死者であった


そしてヤマは最初に死んで死者の道を発見した点が強調され、死者の王として最高天にある楽園を支配しているとされる


このヤマが仏教に取り入れられて「閻魔天」となる。いわゆる地獄の閻魔大王である


日本においては地蔵菩薩と同じ存在とされ、死者を厳しく裁くだけではなく、衆生を救う救済者ともなった


地蔵菩薩は衆生(死と闇に囚われた者たち)に対して癒しと慰めを与えるのである



1 件のコメント:

  1. 死が存在するから生もセットでついてくる、とても面白かったです
    もしニトが死でなく生に多く力を注いだら、ソウルを持つ者はとても死にづらかったり、死んでもソウルを補充すれば簡単に生き返れたりするのかもしれませんね

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