2020年10月10日土曜日

Bloodborne 考察まとめ5 世界構造 追記:ロマ

世界構造

ブラッドボーンの世界には対立する2つの大きな領域がある

神秘の領域と獣性(血)の領域である


このうちヤーナムが存在するのは獣性(血)の領域である


また、この2つの中間領域として「青ざめた月」と呼ばれる領域が存在する

神秘と獣性という2つの領域に属する「青ざめた月」は両者を媒介する力を持ち、この月の接近により2つの領域は「重なり合う


※現時点においては神秘が優勢であり、その重合は神秘による獣性への侵食という形をとる


地上から見上げると青ざめた月の下部が見え、「赤い月」として認識される


3本目のへその緒(捨てられた古工房)
すべての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし
それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ


この構造は宮崎氏がインタビューで述べていた、ゴシックホラーをクトゥルフホラーが侵食していくイメージ、という設定を踏まえたものである


Bloodborneにはゴシックとクトゥルフスタイルの両方のホラーの側面があると思いますが、最初から描かれているのは前者であり、ゲームの視覚的な感触のガイドを提供します。それは、ゴシックホラーがより現実の世界に基づいているからです。もちろん、それはそれが本物であるという意味ではありません–それはグロテスクな恐ろしい恐怖の世界です。そしてここ、あなたはクトゥルフスタイルの恐怖によって徐々に侵食されているような世界を持っています。そういうイメージ。(インタビューより


本作の悲劇ならびに惨劇のすべては、これら神秘と獣性の領域が衝突することによって発生している。そしてそれは世界レベルでの現象であると同時に、人間レベルの現象でもある


赤い月が近付くとき、人の境は曖昧となり
偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん
(ビルゲンワースのメモ)


また、前回の3本目のへその緒の考察でも述べたように、2つの領域の混交は「精霊・虫」のレベルでも起きている


上位者の神秘トゥメル人の血の混交によって生まれるのが上位者の赤子であるのならば、「精霊・虫」の混交によって生まれるのが「3本目のへその緒」である


このように、世界・人・精霊(虫)という3つのレベルにおいて、獣性領域に対する神秘領域の侵食が行なわれ、それぞれ青ざめた血の空(世界)・上位者の赤子(人)・3本目のへその緒(精霊・虫)として結実するのである



青ざめた月

そして統合を果たした三者(世界・人・虫)は神秘と獣性との統合、すなわち青と赤の統合によって生み出される「青ざめた血」によって示唆もしくは直接的に表現される


世界レベルで神秘と獣性の統合が進むと、そこには「青ざめた血の空」が現れる(ヤハグルのように)

二つの世界の統合過程と「青ざめた血の空」の表出を図にしたものが以下である

※「青ざめた月」とは3本目のへその緒のテキストに登場する語句

青ざめた月と神秘領域の重なる結節点から「青い神秘」が流出し、それは獣性の赤と混じって「青ざめた血の空」を展開する


この図の概念を単純化し、視覚記号化したものが以下である



そしてこれにカレル文字「月」を重ね合わせたのが以下である




「瞳」が現れ、そしてそれはカレル文字「月」と一致するのである



※瞳の出現は2つの領域を球あるいは円(楕円)として表現した場合に限られるが、上位者の死血では神秘と獣性は円形や球形として描かれている




※このあたりの図形遊びはおまけのようなものである

ロマ

さて、上述したような世界構造にロマを含めると、以下のような図になる



ロマは赤い月の降下を防ぐ神秘の障壁を張っているのである


ゴースによって上位者となったロマは、同時に輝ける星の眷属であり、その本性は限りなく「神秘」に近い


ロマは神秘という“不可知の雲”によって赤い月を覆い隠し、赤い月が接近するのを防ぐ障壁となっているのである


やや話が逸れるが、墜ちてくる災厄を防ぐために障壁を張る少女(ロマは女性である)という役割は、FF7におけるエアリスと同じである


すなわち白痴の蜘蛛ロマとは、かの世界的RPGのヒロインに匹敵するような自己犠牲と友愛のキャラクターである


これによって私はこう主張したい。人間であったときのロマは美少女であったと。なぜならば、そちらの方がより悲劇性が高まるからである

3 件のコメント:

  1. 思いつきですがコメントします、至らない点もあると思いますがご了承下さい。       この記事でもそうですがブラッドボーンの世界では獣性と神秘の関係は赤色と青色で表される気がします。そしてその関係が酸性の物質とアルカリ性の物質の関係によく似ているように感じるのですがどうですか?青色リトマス紙の青色(神秘)を酸性の物質(獣性)が侵食していく様子や赤色リトマス紙の赤色(獣性)をアルカリ性の物質(神秘)が侵食していく様子はそれらにとてもよく似ているように感じます。そしてシードさんのブログに書いてあったように獣性と血(血質)の関係を深いものとするならば儀式の血の説明にもうなずけるとは思いませんか?『血は全てを溶かし全てそこから生まれてくる』とありますがなぜ血が全てを溶かすの?と言われれば血は獣性(酸性)と関わりが深く獣性は酸性の特徴をもっているからです。

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    1. コメントありがとうございます
      血液の溶かすという性質に着目した優れた考察だと思います

      対立物の統合という観念は錬金術にも見受けられますが、本作の根底に錬金術思想やそれを受けての精神分析学があるのならば(個人的にはそうだと思っていますが)、酸性とアルカリ性の化学的対立は極めて錬金術的、すなわち本作の思想に近いものなのかもしれません

      獣性を酸性と解釈するのならば、例えば鉛蓄電池や爆薬などは硫酸を用いて製造されていますね

      バッテリーは電気を発生させますから、黒獣パールや恐ろしい獣が電気を帯びている理由になるのかもしれません

      また工房の技術者は血を武器にすることに長けていたと思われます。その工房の技術者であるアーチボルドがトニトルスを生み出せたのも、血液の酸性的性質が要因なのかもしれません(同様に獣性を利用した爆薬は「火薬庫」へつながる)

      特に小さなトニトルスは触媒として「水銀弾」を多量に消費しますが、水銀弾は水銀と血液を混ぜて作られるものです(希硫酸に二種類の金属を沈めると電気が発生)

      以上、コメントをもとに私なりの解釈を述べてみました

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    2. 返信ありがとうございます! より深く踏み込んだ考察もしてくださりありがとうございます。これからも無理のない程度で頑張ってください!(なおこのコメントには無理に返信せずとも結構です)

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