悪夢
シモンによれば狩人の悪夢は狩人の業に芽生えたものであるというこの悪夢は、狩人の業に芽生えているのさ(やつしのシモン)
この言葉を比喩的表現ではないと解釈するのならば、悪夢とは神秘の上位者を棲まわせる植物的な領域となるが、本作にはそれと酷似したシステムが存在している
苗床である
結論から先に述べれば、悪夢もまた苗床なのである
人の次元の苗床に棲む精霊にとって苗床は一つの世界であり、唯一の世界である
ユクスキュルの提唱した環世界(Wikipedia)によれば、動物主体はそれぞれ独自の時間・空間を知覚しているという。時間と空間、つまり世界である。動物はそれぞれが各自の知覚が構成する環世界に生きているのである
苗床(人)に棲む精霊にとっても同じことである。精霊にとって「苗床となった人」は唯一の世界と認識されている
だが視点(思考)をより上位(人の認識)に移行してみれば、それは唯一の世界などではなく苗床となった人でしかない
同様に、人間は悪夢を一つの世界と認識しているが、より上位の視点(思考)に立って見れば、悪夢もまた苗床なのである
上位者とは「より上位の苗床に棲まう精霊」の意である
「我々は、思考の次元が低すぎる。もっと瞳が必要なのだ」(学長ウィレーム)
セフィロトの樹
悪夢とは苗床であるといったときの悪夢とは「狩人の悪夢」や「メンシスの悪夢」といった個別の悪夢ではなく、全悪夢を内包するような広義の悪夢である作中に描写されているように悪夢の世界は繋がっている
例えば悪夢の辺境からは漁村に浮かぶ帆船の白い帆を見ることができる。また、メルゴーの高楼も望むことができる
広義の悪夢とは全悪夢を内包するような大きな領域のことである
そしてこの広義の悪夢に「メンシスの悪夢」等々の狭義の悪夢が芽生えているのである
この構造を図で表わすと「セフィロトの樹」になる(あくまでもモデルケースであり、元ネタといっているわけではない)
丸い部分が1つの世界、つまり狭義の悪夢。この樹全体が広義の悪夢である |
狭義の悪夢とそれを繋ぐ幹(辺境)を含めた全体が広義の悪夢である
※悪夢が逆さまの世界である可能性については「考察12 宇宙は空にある」を参照のこと
悪夢
悪夢は悪夢と聞いて想起するような架空的、仮想的世界ではない宮崎:その通りだと思います。夢の中で何でもやりたいことができたら面白くない。したがって、このゲームでは、ヤーナムの設定は基本的に実際に基づいています。暗くて陰鬱で、結局は悪夢のように思われるかもしれませんが、想像できるような夢の世界ではありません。(インタビューより)
悪夢はある種の実体によって構成された1つの生態系(苗床)である
エーブリエタースの先触れがエーブリエタースの触手を召喚するように、ヤーナムに苗床ならびにそこに棲む精霊の数が増えることで、悪夢という苗床全体が召喚されてくるのである
なぜならば苗床、精霊、上位者、これらはすべて1つの元素によって成り立っているからである
それはつまり、神秘である
※精霊は上位者の失われた叡智の断片と言われ、その上位者の智慧は神秘の智慧とも言われる。苗床は神秘の軟体生物が棲みつく神秘の植物である
白い液体
神秘の力のあらわれは二種類ある。青い光と白い液体であるこのうち白い液体は「苗床を経由した神秘」である。ルドウイークの噴射する液体やエーブリエタースやアメンドーズが吐き出す白い液体がそれである(彼らは形状から半植物的な生態であるとも考えられる、つまり苗床である)
この白い液体は医療教会により抽出され、さまざまな用途に使用されている。例えばロスマリヌスの白い霧や人形の体液もそうである
いわば神秘の白い液体は人間に扱いやすいように苗床によって調整された神秘である
「苗床」の英名が「Milweed」(茎を斬ると白い液体を出すことからこう呼ばれる)であることからも、白い液体は苗床から抽出されたものであると考えられる
青い光
もう1つ、神秘には青い光を放つものがある精霊の抜け殻や彼方への呼びかけがその代表である。またアメンドーズや蛍花が神秘を使用する際に青い光が放たれる
精霊の抜け殻を使用したところ |
彼方への呼びかけ |
こちらは苗床を介さない、純粋な神秘の力である
より根源的なのは「青い光」のほうである
青い光とは上述した状況の他にも多くの場面で遭遇する
たとえば敵に殺されて遺志を落とした場合、敵が遺志を強奪していることがある。この時の敵の両眼は青く光っている
苗床の白い液体と混ざり、やや紫がかってみえる |
また本編およびトゥメルとイズ系ダンジョンの「灯り」を灯す際には青い光がほとばしる(ローランは黄色)
青い光が灯りに青い火を灯す |
さらにいえば女王ヤーナムと戦うボスエリアに灯されている蝋燭は「青い炎」がともっている
ローラン、イズ系のダンジョンでは炎の色が異なる |
また、ゲールマンがパワーアップするときの青いオーラや、月の魔物が血の球を召喚する際に見える青白い光などもその範疇である
ゲールマン青オーラ発動 |
アートワークスにはもっと青みの強い光に包まれた月の魔物が描かれている |
この正体とは一体何かというと、すでに少し触れているが「遺志」である
遺志を強奪した敵の両眼を光らせているのは狩人が落とした「遺志」だからである
その同じ青い光が、古い上位者の死血にも確認できるのである
中央やや情報にまばゆく光る青い光 |
そして繰り返しになるが同じ青い光が女王ヤーナムの間に灯されているのである
女王ヤーナムの妊娠したメルゴーの父親はオドンであるという説がある。これは例えばメルゴーが声だけの存在であること、作中でオドンがトゥメルの血に近いカインハーストの血と交わり赤子をなしていることなどが根拠である
女王ヤーナムの攻撃にテレキネシスがある。ヤーナムがお腹に手を当てると青白い光が放たれる。狩人は拘束されて宙に浮かされたのち、地面に叩きつけられる
また赤子の泣き声が聞こえた直後に退避しなければ、青い光に拘束される
加えてアートワークスでは青い光に包まれる月の魔物のキャプションになぜか「オドン」の説明が採用されている
つまるところ、神秘の青い光とは「オドン」なのである
そしてオドンとは「遺志」でもある
そう解釈すると人形の言葉の意味が理解できる
夢の月のフローラ 小さな彼ら、そして古い遺志の漂い
どうか狩人様を守り、癒してください
これはそれぞれ月の魔物、使者、オドンに加護を祈っているのである
そしてそれはすべて、狩人の夢に関係する者である
※月の魔物は狩人の夢の上位者、使者は月の魔物の先触れ、オドンは月の魔物の父親
滲んだ血
滲んだ血、とは血が溶けて輪郭がぼんやり広がるさまをいう赤い血に青い遺志の光が溶けてることでできるのが、青ざめた血の空の色である
同様に赤い血の生物に青い光のオドンが干渉して生まれたのが「青ざめた血」である
啓蒙システムからも分かるように、獣性と神秘は両極にある
啓蒙が上がれば獣性は下がり、啓蒙が下がれば獣性は上がる。啓蒙とは神秘の知恵の量(精霊の数)であると考えるのならば、獣性と神秘とは本来は相容れない属性である
ところが月の魔物は獣でありながら純粋な神秘である青い光をまとった存在である
獣と神秘の両極端に引き裂かれながら誕生したのが月の魔物であり、それゆえに彼女の獣としての肉体は神秘によって侵食され続けているのである
肉がそげ落ち肋骨がむき出しとなった月の魔物。アートワークスには傷ついていない月の魔物も描かれている |
獣である彼女がその傷を癒すに「血の遺志」が必要である。狩人が血の遺志によりレベルアップにするように、作中世界において血の遺志は肉体を強化するからである
蓄えられた血の遺志を吸おうとしている月の魔物 |
しかしながらその「血の遺志」には当然ながら「遺志」が混じっているのである
遺志はオドンであり、オドンは神秘の青い光である。それゆえに彼女はいくら「血の遺志」を補充したとしても、それは彼女にとって猛毒にしかならないのである
※獣性と神秘の相克は本作の主題の1つであるが詳細は後の考察で述べようと思う
※これまでその特性からオドン=水銀説をとってきたが一定の結論が出たようなので今後はオドン=神秘=遺志説をとる。しかしながら水銀の毒性はオドンのモチーフになっている可能性は依然として高い
赤い月
月は悪夢、つまり1つの苗床世界である。本来的に月は神秘の色、白や青白い色をしているはずである。だが、赤い月だけは色が異なる赤い月が赤いのは、そこに獣性を宿した血の獣、月の魔物が住んでいるからである
獣性の赤い血によって神秘の白い月は赤く染まり、月は赤くなるのである
そして獣性の上位者であるが故に、その接近は先触れたる地上の獣血の主を活気づかせる
ゆえに赤い月の接近は人の境を曖昧にし、人を獣化させていくのである
獣と神秘
獣憑き、黒獣パール、ローランの銀獣、月の魔物、恐ろしい獣、獣血の主といった獣系のボスは「神秘に弱い」またトゥメルの末裔、トゥメルの古老、守り人の長、旧主の番人などのトゥメル人も神秘に弱いが、例外は女王ヤーナムでヤーナムのみが神秘に耐性を持っている
女王ヤーナムが神秘に弱くないのは、その腹部に神秘の源たるオドンの子を宿しているからであろう
神秘が弱点というとメルゴーの乳母も神秘に弱い。これは彼女がもとはトゥメル人であったからとも解釈できる
また時計塔のマリアも神秘に弱いがこれはカインハーストを経由したトゥメルの血の影響であろう
神秘に強いボスとしては、醜い獣、ルドウイークがそうである。特に聖剣のルドウイークに戻った際は神秘耐性が大幅に上昇する(もっとも上昇するのは雷)。彼の首に神秘属性の液体を噴射する管状の器官が存在すること、それが苗床の一種であると考えると、神秘に対する耐性も理解できる
またゴースの遺子や失敗作たちは予想通り高いレベルの神秘耐性を誇っている
聖杯を除いた本編中で最も神秘耐性が高いのは再誕者である。また処刑隊を率いて血族を虐殺したローゲリウスは再誕者に次ぐ神秘耐性を持っている
耐性からも穢れた血と神秘との暗闘が見て取れるかもしれない
聖堂街上層に青く光る眼をもつ罹患者の獣が登場する。これなどは神秘の術に長けた聖歌隊により神秘の力を付与された獣と解釈することも可能である
青い光は遺志の光である。獣の病の治療のために反対属性である神秘を注入されたのかもしれない |
アメンドーズ
やや意外なのはアメンドーズが神秘に弱いことである。しかしアメンドーズは獣に縁の深いローランの聖杯をドロップするうえ、トゥメルの冒涜にも登場することから、あるいは彼もトゥメル人だったのかもしれないまた落とし子と呼ばれ複数いることなどからも、かなり異質な上位者であるとも考えられる(上でアメンドーズを苗床としたが、早計だったかもしれない。アメンドーズの分類については今後の課題である)
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