2020年4月4日土曜日

Bloodborne 考察19 カインハースト4 処刑人

怨霊

カインハーストの貴族たちは血を嗜むほかに、怨霊の乱舞を愉しむ悪趣味な側面も持ち合わせていた

処刑人の手袋
カインハーストの所蔵する秘宝の1つ
遠国の処刑人の手袋
処刑人の家系に代々受け継がれ、夥しい血に塗れたであろうそれは
いまや尽きぬ怨霊の住処であり、血の触媒がそれを召喚する

貴族たちはこれを好み、怨霊の乱舞を愉しんだという

以下が処刑人の手袋を使用した時のエフェクトである


これと同じ技を使うのがローゲリウスである




ローゲリウスはカインハーストの秘宝に由来する技を使い、なおかつその秘宝が処刑人のものであるのと同様に、自らも「処刑隊」を率いているのである

血を触媒として怨“念”を呼び出す技は、ローゲリウスの車輪にも見られるが、それを装備するアルフレートも処刑隊の一員を名乗っている


ローゲリウスの車輪
かつて殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊の武器
カインハーストの穢れた血族を叩き潰し
夥しい彼らの血に塗れ、いまやその怨念を色濃く纏っている
車輪仕掛けの起動により、怨念を解放すれば
その素晴らしい本性が露わになるに違いない

処刑人

そもそも遠国の処刑人の手袋はなぜカインハーストにあったのか。それは処刑人の家系に代々受け継がれてきたものであり、であればその子孫が所有しているのが自然なことであるように思う

なぜ遠く離れたカインハーストにそれがあったのかという疑問に対する答えはいくつか考えられる

まず、それを遠国から購入するなり奪うなりして運んできたというもの。しかしそれならば戦利品として堂々と飾っておくのが筋というものである。だが、処刑人の手袋はわざわざ「秘宝」に指定されているのである

秘宝とは、人に見せず大切にしておく宝のことであり、興味本位で購入した、あるいは戦利品として奪ってきた物品に対するものとしては、いささか丁重すぎる扱いである

もう1つの答えとして、処刑人の一族がカインハーストを来訪したというのが考えつく

しかし単なる訪問者の所有物を「秘宝」とする理由も意味もないのである。手袋を献上されたとして、やはりそれは堂々と飾っておくのが相応しいもののように思える

なぜ処刑人の手袋のような禍々しい物品は秘宝としてカインハーストに所蔵されたいたのか

結論から先に述べれば、処刑人の手袋はカインハースト王家にとって重要な物だからである。なぜそれが重要かと言えば、それが「処刑人」のものだったからである

カインハーストにとって「処刑人」のもつ罪人を殺害する技術は何よりも尊ばなければならないものだったのである

なぜならば、カインハーストの貴族は血を嗜む因習があり、ゆえに血の病の隣人であり、獣化した貴族を処理する「処刑人」が必要だったからである

レイテルパラッシュ
古くから血を嗜んだ貴族たちは、故に血の病の隣人であり
獣の処理は、彼らの従僕たちの密かな役目であった

処刑人は人を処刑する技術に長け、それは獣を殺害する狩人の技術としてカインハーストの地で花開いたのである

もちろんレイテルパラッシュにあるように、獣化した貴族たちの処理は従僕の役目であったであろう。だが、貴族よりも位の高い王族やその頂点にいる王が獣化した場合に、処刑人が王の首を刈ったのである

ローゲリウスのEnemy IDは「KingReaper」である

その意味は「王の刈り手」あるいは「死神の王」(Grim Reaperで鎌をもつ死神)とも取れるが、ローゲリウスがを持ち、処刑隊を名乗る理由は彼が「王の首を刈る死神(処刑人)」だからである

処刑人の役割は獣化した王族の処理である

ゆえに、人ならぬ存在となった血族ならびに女王アンナリーゼからしてみれば、処刑人はいつ牙をむくか分からない不穏分子である

成長した女王アンナリーゼは、処刑人の一族をヤーナムに追放したのである

処刑人はカインハーストにおいて高い地位にあった。あるいは王自身であったのかもしれない。なぜならば、ローゲリウスは秘宝の1つ幻視の王冠を被り、玉座に座っていたからである

幻視の王冠
カインハーストの所蔵する秘宝の1つ
かつて幻を視るといわれた古い王の冠
また秘密を隠す幻を破るカギでもある
故にローゲリウスは、自らこれを被った
もはや誰一人、穢れた秘密に触れぬように
寒々とした玉座から、はたして何が見えていたのだろうか

ローゲリウスはそんな王冠があることも、その隠し場所も知っており、なおかつその能力を認知した上でそれを被り玉座に座ったのである

まるで最初から幻視の王冠の存在を知っていたかのような手際の良さである。事実ローゲリウスは知っていた、あるいは幻視の王冠そのものが彼の家に伝わっていたのかもしれない

だが、ローゲリウスが処刑隊を組織したのは、医療教会の創設時期とそう違わないタイミングである。つまりわりと最近の出来事であり、カインハーストに処刑人がいた時期と、ローゲリウスが処刑隊を組織した時代はそれなりに分け隔たっているのである



ゲールマン

カインハーストの処刑人ローゲリウスとの間に位置するのがゲールマンである

その鎌状の武器からも判断できるように、ゲールマンはカインハーストの処刑人の出である。その狩りが弔いを意味するのも、葬送の刃という銘を持つのも、彼が葬送に携わる処刑人の一族だからである

カインハーストの獣を処理する技術はゲールマンによって初期狩人に伝わり、また一部は歪んだ形で伝えられたのである

古狩人の手甲にある「ある種の金属が獣血を祓う」とは、カインの手甲に記された「銀製の鎧は、悪意ある血を弾く」の歪んだ伝播である

古狩人の手甲
当時、一部の狩人たちは
ある種の金属が獣血を祓うと信じていた

カインの手甲
ごく薄く、布のごとき銀製の鎧は、悪意ある血を弾くとされ
彼ら近衛騎士は、これを頼り女王のために「血の狩人」となる

また、狩人のズボンにある「獣血は右足から這いあがる」とは、カインの騎士右足が欠けていることから連想されたものであろう



しかし騎士の像女王の間にたどり着かなければ目にすることができないものである
ゆえに「右足」に関する迷信は騎士から由来したのではなく、ゲールマンの右足から連想されたものである

遺志を継ぐ物ENDにおいて主人公の左足が欠けているように、狩人の夢を管理する者はその片脚を月の魔物に奪われるのである



ならば、ローレンスとゲールマンが月の魔物と邂逅し、狩人と狩人の夢がはじまった際に、ゲールマンは右足を失ったことになる

つまり遅くとも狩人の創始からゲールマンは右脚がなかったのである

それを見た古狩人たちのなかから「獣血は右足から這いあがる」という迷信が生まれたのである

ゲールマンの狩りズボンの裾は左右で長さが異なっている


この服はゲールマンの日常の衣服を調整したものであるが、あるいは彼が狩人になる前から右脚がなかったと推定するのならば、その理由は一つしかない

ゲールマンはカインハーストの騎士だったのである

ゲールマンの狩りズボン
最初の狩人、ゲールマンの狩装束
まだ工房はなく、日常の衣服を調整したものであるが
これが後の狩装束の原型になっていった

処刑に最も長けた処刑人の一族が、獣を処理する騎士となるのは当然のことと言える

そしてその技は、最初の狩人ゲールマンをもって狩人たちに伝えられていったのである


カインハースト

Playstation.comのブログには山際眞晃プロデューサーによるエリア紹介の記事がある


これによればカインハーストとヤーナムとの間にはかつて交流があったという

カインハーストはかつてヤーナムと交流のあった古い貴族たちの城で、独自の文化による何らか特別な構造があるかもしれません。(上記ブログより)

一介の学閥に過ぎなかったビルゲンワースからなぜ狩人なる獣の虐殺者が誕生したのか

なぜ狩人はその誕生直後から獣を屠る完成された技術を有していたのか(狩人になった後にいくつか改良された痕跡はあるものの、ゲールマンの葬送の刃はマスターピース、つまり最高傑作である)

狩人の技はカインハーストの処刑人から連綿と伝えられてきたものだからである

やがて医療教会内部に始祖への回帰運動が起こり、それは処刑隊として結実したのである。それはおそらく、かつて追放された恨みを抱いてきた者(つまり処刑人の一族の直系)によって企図され、そしてそれはカインハーストの虐殺となって果たされたのである


マリア

ゲールマンがマリアに対して好奇の狂熱を抱いていたのも、彼女が彼の旧主である不死の女王アンナリーゼの傍系にあたるからである

マリアの狩装束
不死の女王、その傍系にあたる彼女は
だがゲールマンを慕った。好奇の狂熱も知らぬままに

その血が特殊であり、血の赤子を抱く可能性すら秘めていることをゲールマンは知っていたのである。ゆえに好奇の狂熱を抱き、漁村においてそれが発露したのである(長くなるので詳細は別の考察に書く)



蛇足

狩人の技術がどこから来たのかという疑問に対するかなり飛躍した回答

ただしカインハーストの狩りの技術や仕掛け武器がヤーナムの狩人に影響を与えたことは、レイテルパラッシュ→銃槍の例を見ても明らかである

カインハーストを考えるときもっとも厄介なのが時系列である

もともとカインハーストには血を嗜む貴族たちがいて、やがて穢れた血により血族が生まれた。その時期はウィレームの言い方からするとそれほど古い時代ではないようである

それから少ししてローレンスとゲールマンは青ざめた血と遭遇し、やがてローレンスは医療教会を創立する

血族の誕生、医療教会創設、狩人の誕生、(漁村事件)などは、極めて短い時間に起きたような印象である

一方でマリアは女王の傍系ともされ、女王とマリアの間にはある程度の時間が流れていることも考えられる

そもそも傍系の意味もあまり判然としないが、マリアをアンナリーゼの妹とするのならばかろうじて傍系とも言える(穢れた血を飲んだ王妃によりアンナリーゼが不死の女王として誕生、翌年あたりにマリアが生まれたという想定である)

この場合、マリアの年齢を18~20ぐらいと想定すると、最短で血族の誕生から19~21年程度で済む(“女王の”傍系とするにはやや苦しいか)

このあたりはDLCのマリアを含めて後日考察しようと思っているので今の段階では結論はない

3 件のコメント:

  1. カインハーストの騎士やゲールマンに共通する『足を失う』という身体的特徴が意味する事をネットで検索するとブラボで少し面白い解釈が出来ると思いました。
    まず、神話において、足を欠損している事は非人間性の象徴であるという事です。例として、トロイア戦争のアキレウスや悲劇のオイデプス等があります。そして、ブラボ内でのゲールマンなどの狩人たちやそれに類する者たちは人を越えた者である事を象徴していると考えます。
    次に夢の占いの分析において、足は人を支える物であり、右足が人間関係等の対外的関係を表し、左足が人の内面性を表しているそうです。
    この考えを当てはめると、カインハーストの騎士はどんなに武功を重ねても、カインハースト以外の名誉は得られないという事を示し、ゲールマンに関してはローレンスやマリア等の人や人間関係をを失っている事を表現していると思いました。
    そして、意思を継ぐ者のEDで左足を失う主人公は月の魔物に精神を乗っ取られる事と、その体を操作するプレイヤーを失う事と表現されているのではないかと思いました。

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  2. 女王アンナリーゼの傍系という表現には、[マリアとアンナリーゼの先祖を遡れば繋がる]ともとれると思います。
    意味通りな血族のどこまでが傍系にあたるかは知りませんが、直系王族が絶えた時、何代か遡って傍系を王に建てるというのは現実の歴史にも見られ、天皇家にも例があります。
    とすれば、マリアが傍系と表現されることと年代に相違はないのではないでしょうか。

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  3. 大変素晴らしい考察だと思います。
    ゲールマンがカインハースト出身というのは、盲点でした。
    そう考えると、烏羽のアイリーンが千景の狩人(カインハースト由来)と因縁がありそうなこと、アイリーンの武器とゲールマン武器には共通して希少な隕鉄が使用されていることに納得がいきます。
    是非ともアイリーンに関しても考察を拝見したいです。

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