未使用データには「Great One Beast」というボスが存在する
直訳すれば上位者の獣となるが、名前やその姿からも分かるように「獣タイプ」の上位者である
Bloodboner Wiki より転載「Great One Beast」 Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License |
獣タイプの上位者は珍しく、他には月の魔物に獣の特徴が一部認められるくらいである
本考察ではブラッドボーンにおける「Great One Beast」の位置とその意味について考察してみたい
獣の病
獣の病が上位者の呪いであり、その原因が虫であることは過去の考察で何度か述べている
しかしその虫のさらなる根源、つまり虫を送り込んだ者については単に上位者としてのみ扱ってきた
※これは何も出し渋っていたわけではなく、漠然とした方向性はあったものの明確な答えを見いだせていなかったからである
結論としては虫の根源は「Great One Beast」である
というのも、オドンやエーブリエタースに代表される「神秘系上位者」が人を苗床にし、Great One Beastという「獣系上位者」が人を獣化させると考えると、構図がすっきりするからである
しかもこの構図は本作の各所に見られる「神秘と獣性の対立」の構図と完全に一致するのである
神秘vs獣性
神秘と獣性は啓蒙と獣性の関係としてシステムに落とし込まれているが、この対立構造はそれだけにとどまらず、本作の世界全体に浸透している
つまりオドンに代表される神秘系上位者と、上位者の獣という獣系上位者の対立構造が世界設定にうかがえるのである
これはクトゥルフ神話の旧神と邪神に対比することが可能である
一般的に旧神は宇宙や星(星の戦士など)と関連付けられ、宇宙各地で邪神を封印してきたとされる。かつて地球を支配していた邪神たちも旧神によって封印され、今は旧支配者と呼ばれている
これを本作に適用すると、オドンに代表される神秘系の上位者たちは旧神勢力であり、彼らに封印された上位者の獣は旧支配者となる
作中に登場する概念に旧支配者を探すと「旧主」が当てはまる。これを裏打ちするかのように、旧主の番犬は「獣」の姿をしている
Bloodboner Wiki より転載「旧主の番犬」 Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License |
すなわち旧主とは「Great One Beast」であり獣タイプの上位者なのである
旧主の眠り(封印)を守る番犬が獣の姿をしているのは、血を持つが故に影響を受けて獣化したからであろうか(後述するが旧主の番犬は旧主の従僕ではなく、旧主の牢獄を見張る獄卒である)
一方、業火に焼かれた番人は血のない灰であるがゆえに獣化することなく人の姿を保持している(罪人がその番にあたったことからも分かるように、番人は名誉ある任務ではない)
番人と番犬は封じられた旧主を見張っているのである(それはある種の罰として)
だが、封じられている旧主はただ漫然と眠っているわけではない(眠り=封印については後述する)
旧主の遺志は封印を突き抜けて、さらに悪夢を介して(このあたり大祭司クトゥルフと同じメカニズム)、現実世界へともたらされたのである
※海底都市ルルイエに幽閉され眠っている大祭司クトゥルフは、普段は海の水(大量の水!)に遮られて人に干渉することができないが、まれに夢を介して人間に干渉するという
遺志は呪いとなり、それは虫となって世界にもたらされ、生物の血液に寄生し、やがて宿主を獣化させていったのである
※上位者の獣から受け継いだ「血」そのものに獣性が宿っていた、という考え方もできる。その場合、虫は獣の病を発症させるスイッチのようなものかもしれない
青ざめた血の考察において上位者の祝福が聖霊、上位者の呪いが虫という図を出したが、より適切になるよう修正を加えた図が以下である
右下の「獣血」は「血質」としても良いかもしれない |
聖霊を送り込む上位者と、虫を送り込む上位者とは別個体なのである
そしてそれはクトゥルフ神話における旧神と邪神の関係と同じ、封印する者と封印された者という構造を保持しているのである
業火
旧主の番人たちはその姿と魂を業火に焼かれ、灰として永き生を得たという
これまでこの業火を旧主の属性としてきたが、実はそうではない。この炎は上位者の獣を封印するための炎の檻なのである
大量の水が封印(断絶)の比喩であるように、業火もまた封印(断絶)の比喩なのである(水と炎の同一性については次の項)
そこに幽閉されているのは、神秘を宿敵とする獣性の上位者、「Great One Beast」である
業火によって断絶(封印)され、眠っている上位者の獣は自身が創造した悪夢の中に棲んでいる
しかし何らかのタイミングで悪夢と現実世界とが接近したとき、上位者の獣は捕らわれた自分の代わりに呪いを送るのである。すなわち虫である
※かつて上位者の怒りに触れて滅びたとされるローラン。その上位者とは「Great One Beast」のことであろう
火と水
大量の水は眠りを守る断絶とされる
「湖」
大量の水は、眠りを守る断絶であり、故に神秘の前触れである
求める者よ、その先を目指したまえ
一方で旧主の眠り(封印)を守る番人は業火に焼かれたという
火と水という正反対の概念が登場し、双方ともに眠りを守っていることになる
この2つは別々の封印(眠り)のことを指しているか、あるいはどちらかが正しく、どちらかは間違っていると解釈しそうになる
だがここにいう「火と水」とは神話学的に言えば「同一のエネルギー」なのである
基本的に相反する組み合わせの火と水の背後にあるエネルギーはひとつであり、同じものなのである。(『千の顔をもつ英雄』ジョーセフ・キャンベル)
同一のエネルギー、すなわち神秘である
獣性や血の根源である上位者の獣は神秘の檻に幽閉され、眠りながら復活の時を待っているのである
そしてまれに条件が揃うと呪いを世界に送り込み、それは生物の血に潜む虫となって、その生物を淀ませるのである
ブラッドボーンやっていて、一番引っかかっていたところなので感謝です。
返信削除いえいえ、こちらこそ考えるきっかけをいただいて感謝しています。いつかそのあたりを考えなきゃいけないな、と思いつつ、ついつい先延ばしにしていました
削除炎が封印だとすると、ローラン製の獣が過敏に炎に反応するのは封印を本能的に恐れているのかもしれませんね。
返信削除あと今回の考察を見て思ったのが、主人公が輸血された血って、やはりマリア様の気がしてきました。
1.opの獣の炎上。あれって獣性の封印だったのでは?
2.狩人の夢に選ばれた。そもそも月の狩人は血族関係者でないと選ばれない気がする。(狩人狩りアイリーンは血族しか使わない「獲物」という言葉を使う。灰狼デュラはここの考察から)
3.カインハ—ストからの招待状。女王の傍系の輸血液だから血族扱いされた?
4.実験棟で何故かマリア呼び。元の血がマリア様だから皆錯覚した?
これだけ要素が関わるとそんな気がしてなりません。