坩堝の騎士の筆頭、オルドビスとシルリアの名前が地球の地質年代から採られていることは、発売直後(あるいはネットワークテスト)の頃から指摘されてきた
オルドビスはオルドビス紀から、またシルリアはシルル紀(シルリアとも呼ぶ)と同名である(さらに源流を辿ると古種族にまでさかのぼれるが今回は省略)
またオルドビス紀、シルル紀を含む「古生代」から「古原生代」までの地質年代を合わせると16となり、作中に登場する坩堝の騎士と同数となる
表中にある番号と下のリストの番号は無関係 |
- ストームヴィルの封牢
- ストームヴィル城
- 赤獅子城(ボス)
- 永遠の都ノクローン(鐘楼ワープ先)
- 永遠の都ノクローン(シオフラ水道橋)
- 永遠の都ノクローン(シオフラ水道橋)
- アウレーザの英雄墓(オルドビス)
- アウレーザの英雄墓(無名)
- 名も無き永遠の都(シルリア)
- 王都ローデイル(ラダゴン大彫像の先)
- 王都ローデイル(スタート地点に戻るショトカ前)
- 崩れゆくファルム・アズラ(竜の前に立っている)
- 崩れゆくファルム・アズラ(獣人と戦っている)
- 火山館
- 行き止まりの地下墓(霊体)
- 行き止まりの地下墓(霊体)
と、ここまでは恐らく有名な話である。これまで筆者がこの話を考察に含めてこなかったのは、単に地質年代とエルデンリングの設定との関連性が見出せなかったからである
もしかすると命名規則には特別な意味はなく、単にそれっぽい名前を付けたいから付けたのではないか、とすら思っていた
本稿では、なぜ坩堝の騎士に地質年代の名称が付けられているのか? なぜ古生代から原生代までの16紀が選ばれたのか? について考えてみたい
地質年代
古生代から古原生代とはどのような時代なのかを要約すると「生命の坩堝の時代」ということになる
このうちまずは原生代にカテゴライズされる古原生代、中原生代、新原生代について見ていこう
より大きな区切り「累代」がある |
原生代で最も古い古原生代には、全ての真核生物の祖先が誕生している(Wikipedia)
その後の中原生代には生命の中に「有性生殖」を行うものが発生している(Wikipedia)
新原生代に入ると地球史上最も過酷な氷河時代が訪れ、原生生物は大量絶滅し、地球は完全に凍結(全球凍結)してしまう(Wikipedia)
その後、原生代末期のエディアカラン(エディアカラ紀)に入ると生物は多様性を増し、エディアカラ生物群と呼ばれる豊かな生物相を形成(Wikipedia)
ここで地質年代の累代が原生代から顕生代へと移行する
顕生代
顕生代の最初期、古生代に区分されるのが「カンブリア紀」、「オルドビス紀」、「シルル紀」、「デボン紀」、「石炭紀」、「ペルム紀」の6区分である
カンブリア紀には有名なカンブリア爆発があり、生命はその多様性を一気に爆発させる(Wikipedia)
オルドビス紀にも生物の多様性が進み、軟体動物(オウムガイなど)や節足動物(三葉虫)、半索動物(筆石など)が発生
しかしオルドビス紀末に再びの大量絶滅が生物を襲い、シルル紀へと移行していく
生物はシルル紀に本格的に陸上に進出しはじめ、陸棲節足動物や最古の陸上植物が誕生する
デボン紀に入ると、魚類の多様性と進化が急速に進み硬骨魚類と両生類が誕生、また昆虫類も出現する
※デボン紀後期から石炭紀初期にも大量絶滅があった
石炭紀はその名の通り石炭が多く見つかる時代層である。ということは大森林が地球を覆っていたということになる
この時代、シダ植物が発達。昆虫や両生類が栄え、翅をもった昆虫が初めて出現する。また石炭紀後期には単弓類(胚が羊膜をもつ。爬虫類や哺乳類の祖先)が出現した
古生代最後のペルム紀に両生類や爬虫類が巨大化。後の恐竜の祖先となる双弓類や、哺乳類の祖先となる単弓類が繁栄する
しかしペルム紀末に起きた大量絶滅により、海洋生物のうちの96%、全生物種の90~95%が絶滅。スーパープルームと呼ばれる地球史上最も激しい火山活動が起き、それが大量絶滅に繋がったとも言われている
さて、以上が坩堝の騎士が関係していそうな16の地質年代の簡単な説明である。これらの年代を要約するとしたら、やはり「生命の坩堝」と呼ぶのが相応しいと思われる
坩堝の騎士たちが坩堝と呼ばれるのも、これら生命の坩堝の時代を体現する者たちだからであろう
そして坩堝の騎士たちの時代は、そのまま黄金樹の時代と重なる(現在は黄金樹の時代末期なので坩堝の騎士は蔑まれているが)
つまり黄金樹の時代とは、地球の地質年代における「古生代~古原生代」に相当するのである
では、なぜこれら16の地質年代が黄金樹の時代として設定されたのであろうか
この問いに答えるには、黄金樹の時代(古原生代~古生代)の前後の年代を見る必要がある
三畳紀
古生代末期、ペルム紀の後に始まったのが三畳紀である
ペルム紀末期の大量絶滅の後、空白地帯を埋めるように新しい生物群が発生している。その最大のものは、三畳紀中期に発生した巨大な体軀をもつ恐竜たちであろう
ペルム紀においてすでに誕生していた主竜類が大型化し、エオラプトルやヘレラサウルスなどの恐竜や翼竜、ワニが出現、カメ類も現われた
三畳紀の末には小規模な大量絶滅があり、海洋棲爬虫類や単弓類(哺乳類型爬虫類)が絶滅している
しかしいくつかの恐竜は絶滅を逃れ、恐竜の大繁栄は白亜紀末の大量絶滅まで続いていく
中生代最後のジュラ紀の後、現代へと続く新生代が始まる
太古代
古原生代(原生代に区分)の前の累代が、太古代である
太古代の生物の主役は、古細菌と真正細菌である。太古代の初期(あるいはその前の冥王代)に全生物の共通祖先が誕生。太古代には古細菌と真正細菌の門の多くが出揃ったと考えられている
端的に言って太古代は菌類の時代である
支配種
さて長々と地質年代とその特徴について語ってきたが、年代をその時代に繁栄した種によって特徴づけると以下のようになる
- 太古代:菌類の時代
- 古原生代~原生代:生命の坩堝の時代(軟体動物、節足動物、昆虫、植物、魚類、両生類、単弓類など)
- 中生代:恐竜の時代
- 新生代:哺乳類の時代
これがエルデンリングと何の関係があるのだろうと思われるだろう。では、これを逆にしてみるとどうであろう
- 新生代:哺乳類の時代(ヒトは新生代の先端に位置する)
- 中生代:恐竜の時代
- 古原生代~原生代:生命の坩堝の時代
- 太古代:菌類の時代
時間の逆転した世界では、哺乳類(ヒト)の時代が最も古い年代となる
ヒトの時代が終わった後に恐竜の時代が始まり、その後に坩堝の時代があり、最後に菌類の時代が到来する
狭間の地の歴史では、黄金樹の原初は坩堝の時代とされている。また黄金樹の前史は古竜の時代だったとされている
そして地下には黄金樹の以前に栄えた文明の墓場があり、また太陽を崇拝する古い文明の存在も示唆されている
太陽の都の盾
太陽を戴く都が描かれた、栄誉の盾
だが、これはもうボロボロである
そして、太陽の都もまた
もはやどこにも、存在していない
黄金樹の前史は古竜の時代である。ならば地下にある古代文明が栄えたのは古竜の時代より前の時代ということになる
また先史時代の主は古竜である。その古竜は王を守る巌の壁であったという。つまり時代の主は古竜であるが、古竜の主は王である
竜印の大盾のタリスマン
黄金樹なき先史時代の主たる古竜は
王を守る、巌の壁であったという
故に竜姿は、あらゆる護りの象徴である
王自身が古竜であるのなら、「古竜は王を守る、巌の壁である」という表現はややおかしい(王自身が王であるのなら、古竜に守ってもらう必要はないし、古竜は巌の壁であるとも言われないだろう)
つまりこの文章からは、王は古竜でなかったとも読み取れるのである
王が古竜でなかったとしたら、王は何者だったのか。ヒトである
狭間の地ではまずヒトの時代があり、その後に古竜の時代が始まったのである
そして古竜の時代が終わった後、世界は黄金樹という樹木の繁栄する時代に入ったのである
黄金樹のはじまった時代を地質年代に当てはめるとしたら、樹木が繁栄し大森林を形成していた石炭紀となるであろう
上述したように黄金樹の時代はここから古原生代まで続くことになる
そして古原生代の後に到来する年代は太古代。菌類の時代である
過去の考察でも述べてきたように、朱い腐敗や腐敗は菌類の特徴を持っている
つまりマレニアは大古来(菌類の時代)を到来させるべく誕生した、次代の神なのである
地球の地質年代と狭間の地の歴史
要するに狭間の地の歴史は、地球の地質年代を逆転させたものとなっているのである
この二つの歴史を付き合わせた図が以下である
さて、英語版Wikipediaの「地球の地質年代」のページには興味深い図が示されている
Geologic clock |
地質時計と題されたその画像では地質年代が時計のように表現されている
それはまるで「リング」のようでもある
0時のHadean(冥王代)から始まり、12時(11時59分)のCenozoic(新生代)までぐるりと一周している歴史の円環である
無数の時代が構成する大いなる歴史の円環。これこそまさに「エルデンリング」なのかもしれない
またこの図では新生代の後に再びHadean(冥王代)から円環を再スタートさせられるようにも見える
狭間の地の歴史では、この時計は逆に進む。つまり新生代から始まり、最後に冥王代を迎え、再び新生代を開始するのである
現時点における狭間の地は、Proterozoic(原生代)からArchean(太古代)への移行期にあたる
生命の坩堝の時代は終焉を迎え、次なる菌類の時代が到来しつつあるのである
この時、黄金樹は力を失い、次なる菌類の力すなわち朱い腐敗が力を増していくのである
そしてすべての生物が一つ(冥王代)となった後、再びヒトの時代が始まるのである
16体の坩堝の騎士
以上によりなぜ坩堝の騎士が16体でなくてはならなかったのかが明らかになったかと思う
つまり狭間の地の歴史は地球の地質年代を逆転させたものであり、このうち黄金樹の時代は恐竜(古竜)の時代と菌類(朱い腐敗)の時代の間に挟まれた範囲となる
地質年代でいうのならば、太古代と中生代に挟まれた期間である
そしてその設定から自動的に導かれる古原生代から古生代までの16の地質年代の名称が、坩堝を象徴する騎士の名として採用されたのである(厳密には2体分しか明かされていないが)
その他
この仮説を当てはめると、結びの司祭ミリエルは古竜(恐竜)の時代から生きていると考えられる
また巨人の時代はスーパープルーム(大規模火山噴火)の起きたペルム紀、夜の律は全球凍結が起きた新原生代に想定することができるかもしれない(ラニの暗月)
地球の年代では樹木の繁栄する石炭紀の後にペルム紀が始まっている
しかし時間の逆転した狭間の地では黄金樹の時代は巨人戦争で巨人の火に勝利することにより始まったのである(つまりペルム紀の大規模噴火→石炭紀の樹木の繁栄)
また地球における全球凍結はシデリアンからリィアキアンまでのあいだに起きたとされている(何度か起きたとも考えられている)
シデリアンは古生代最初の時代であり、時間の逆転した狭間の地では黄金樹の時代の最末期にあたる
ゲームの舞台はこの黄金樹の最末期である。そしてこの時代に地球が全球凍結したように、狭間の地では、冷たい夜の律が確立されたのである(夜の律ルート)
そして上述したように黄金樹の時代(古生代~古原生代)が終わった後にはじまるのが、太古代、すなわち菌類の時代である。これはマレニアが体現する腐敗の律の時代である
黄金樹の存続、あるいは夜の律や腐敗の律を選択しなかった場合におとずれるのが、狂い火の時代である
それは、すべてが大きなひとつに還る時代である
…すべては、大きなひとつから、分かたれた
分かたれ、産まれ、心を持った
けれどそれは、大いなる意志の過ちだった
苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ
それらはみな、過ちにより生じた
だから、戻さなくてはならない
混沌の黄色い火で、何もかもを焼き溶かし
すべてを、大きなひとつに…(ハイータ)
大きなひとつとは、太古代(あるいは冥王代)に発生したすべての生命の共通の祖先である
それがエルデンリングを指すものなのか、それともエルデの獣やそれと共に到来した黄金の流星のことなのか、それは分からない
しかし狭間の地におけるエルデンリング(エルデの獣、黄金の流星)は、すべての生命の祖先であると考えられる
以上、狭間の地の歴史が地球の地質年代を逆転したものと類似していることの考察である
蛇足
FF16の体験版もプレイしたのですがレビュー3連発はさすがにアレなのでボツになりました。FF16体験版、面白かったです。
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返信削除エルデの獣ってカンブリア紀のハルキゲニアに似ていませんか?
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