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2020年12月5日土曜日

Bloodborne 考察まとめ8 啓蒙と獣性

啓蒙/獣性システム

啓蒙/獣性システムはこのゲームの根幹に据えられたものであり、またその影響は多岐にわたるので、まずはそれぞれの確認から始めたいと思う


啓蒙

ゲーム内のヘルプによれば、啓蒙とは以下のようなものである


啓蒙の度合い

人ならぬ知識を得るほどに高まる

特別な鐘を鳴らすときに必要となり

また高いほど発狂しやすい


ステータス画面などでR3を押し込むと見ることができる


しかし啓蒙の値が影響を与えるのはこれらだけではない

啓蒙値による世界の変化をまとめたものが以下である


啓蒙1

  • 人形が起動、血の遺志によりレベルを上げることができるようになる
  • 人形の隣のメッセンジャーより「狩人呼びの鐘」と「共鳴破りの空砲」を贈られる
  • 啓蒙取引が可能となる


啓蒙15

  • 教会の使いがオーラをまとい特殊な攻撃をしてくるようになる
  • ヘムウィックに狂気者が出現するようになる


啓蒙40

  • 儀式を暴く前でも大聖堂やヤハグルでアメンドーズが見える


啓蒙50

  • 儀式を暴く前でも狩人の夢のBGMが変わる
  • 聖堂街にあるレバーの周囲に使者が見える


啓蒙60

  • 儀式を暴く前でも、すべてのエリアで赤子の泣き声が聞こえる


また上のヘルプにもあったように、啓蒙の値が高いほど、発狂耐性が下がり発狂しやすくなる


加えて、啓蒙の値が高まれば獣性の値が下がり、逆に啓蒙の値が下がることで獣性の値が上がる



獣性

ゲーム内のヘルプによれば、獣性とは以下のようなものである


獣性。一時的獣化に際し

高いほど獣に近くなる




ここでいう一時的獣化とは、「獣性ゲージ」が表示されている時のことである


「獣の爪」とカレル文字「獣の抱擁」を同時に装備



「獣の爪」とカレル文字「獣の抱擁」を同時に装備すると獣化するが、これは「ゴースの寄生虫」とカレル文字「苗床」を同時に装備した際に苗床化するのとになる現象である


端的にいえば獣性の値とは、獣血の丸薬を使用したり獣の爪を装備した時の「獣性ゲージの長さ」である


このゲージは攻撃がヒットするごとに貯まっていくが、ゲージが貯まれば貯まるほどに狩人は攻撃力を増し、逆に防御力は減少する


ゆえにゲージが長いほどゲージを満たした時の「最大攻撃力」は増える


あまり使う機会はないが「鎮静剤」により獣性を抑えることができる

つまり鎮静剤は「発狂」と「獣性」に効くのである



発狂

さて、以上が啓蒙と獣性の表面的な説明である。ここから先は過去の考察を踏まえた上で考察していくことにする


過去の考察では、啓蒙とは精霊の卵が孵化した際に得られる神秘の智慧である、とした(「考察31 啓蒙」参照のこと)


つまり啓蒙が高まるとは、精霊がより多く孵化し、より多くの神秘を拝領されたことを意味するのである。また、上述したように啓蒙の高まり発狂耐性獣性の減少をもたらす


このうちまずは発狂とは何かについて考えてみたい


発狂という言葉からは、精霊から流れ込む人ならぬ知識の量が脳の許容量を超えた際に起きる理性の喪失といった印象を受ける


しかし、実はそうではない


ゲーム内において発狂ゲージが貯まるのは以下の状況である(見逃しがあるかもしれない)

  • メンシスの脳みそ邪眼に見られる
  • ほおずき邪眼に見られる
  • 星の子らに噛まれる
  • 瞳の苗床につかまれる
  • 教会の使い(啓蒙15以上)の十字架攻撃
  • 瀉血の槌の変形後L2攻撃後


わかりやすくするためにまずは邪眼に限って検討してみたい(その他の状況は別項)


邪眼をもつのはメンシスの脳みそほおずきである


ほおずきに関しては、メンシスの脳みそとの類似点や実際に巨大な瞳をもつこと、またメンシスの高楼でほおずきが2体いる場所は「邪眼橋」(アートワークスより)と命名されていることから、邪眼をもつと考えた




メンシスの脳みそに関しては、メンシスの脳みそがドロップする生きているヒモに根拠がある


生きているヒモ

メンシスが悪夢で得た巨大な脳みそは

確かに内に瞳を抱き、だが完全な出来損ないであった

その瞳は邪眼の類いであり、脳自体は腐りきっていた


考察32 内の瞳」(補遺:生きているヒモ)において、邪眼とは「虫」に寄生された瞳であると結論づけた。その瞳には獣性の根源たる「虫」が寄生しているのである


さて、メンシスの悪夢の各所には、壁に浮き出た瞳眼球に脚の生えたクモのようなオブジェクトが見られる


しかし、これらの瞳に近付いても発狂ゲージが貯まることはない。つまり狩人を発狂させるのは「瞳」ではなく「虫に寄生された瞳」、つまり邪眼に限られるのである


そして単なる瞳と邪眼差異は、その内部に虫が寄生しているか否かである


すなわち、邪眼に睨まれることで狩人が発狂するということは、瞳に寄生した虫が狩人の体内にいる何かを刺激しているのである


例えば「ゴースの寄生“虫”」のようにである


ゴースの寄生虫

このは「苗床」の精霊を刺激するという


このテキストから読み取れるのは「虫は精霊を刺激する」という観念である


※ゴースの寄生虫はその形状や性質から精霊の一種と考えられるが、寄生生物とせずあえて「虫」とネーミングされているところが示唆的である


結論を先に述べれば、発狂とは「虫」に刺激された精霊が活発化し、体内の「虫」を排除しようとした結果、狩人が獣血(虫)が変異した血の槍で身体の内側から貫かれ、ついに血液噴出させて大ダメージを受ける現象である


血の槍は女王アンナリーゼの技にもある。その血には劇毒(獣血の主)が含まれている


さて、繰り返すが啓蒙が高まる獣性発狂耐性下がる

なぜならば、刺激される精霊が多いほど(つまり啓蒙が高いほど)、虫を排除する力は増大する。すなわち発狂しやすくなるからである


逆に精霊と虫の力が拮抗しているのならば、精霊はなかなか虫を排除できない=発狂耐性が高いのである


つまり発狂耐性は二つの勢力のバランスに左右されるのであるが、しかし獣性が高くなったとしても啓蒙が下がることはない


啓蒙と獣性のバランスは啓蒙の増減のみによって決定される


このアンバランス(非対等)が何によってもたらされるのかは後述する


またあらゆる状態の虫が精霊を刺激するわけではない。精霊を刺激するのは「虫が発する特定の周波数の音(虫の声)」だけである(メンシスの脳みそほおずきと対峙した際に聞こえる

光は電磁波の一種であり特定の周波数をもつ


虫が声を発しようとすることは「獣の咆哮」に示されている


獣の咆哮

忌まわしい不死の黒獣、その力を一時的に借りる触媒であり

圧を持った獣の咆哮により、周囲のものを弾き飛ばす


つんざくその悲鳴は、しかし使用者の声帯が出しているものだ

人の内に、いったい何者が潜むのだろうか


使用者の声帯を借りて声を発している者こそが、「虫」である(ただし獣の咆哮は人の声帯を借りているので精霊を刺激する周波数にはならない)


また、頭の患者たちやアデラインが耳にしたように、精霊は湿った声を囁く。つまり精霊はは視覚や触覚ではなく主に聴覚によってコミュニケーションをとる生物なのである


邪眼に寄生した虫は、対象(敵対者)が視界に入るや歓喜(憎悪)の声をあげ、その声が精霊を刺激するのである(虫を鳴かせる必要がある)


刺激された精霊は活発化し、虫を排除しようとする。虫は体外へ排除される際に血槍に変異し、血槍は狩人の身体をつらぬき、最終的には発狂として狩人に大ダメージを与えるのである


狩人がHPにダメージを受けるのは、狩人の体力(HP)の基になっているものが「血液(獣血)」だからである。狩人は血液を大量に失うことで「生きる力(HP)」を失い、大ダメージを受けるのである


輸血液

血の医療で使用される特別な血液。HPを回復する

ヤーナム独特の血の医療を受けたものは

以後、同様の輸血により生きる力、その感覚を得る


以上が発狂のメカニズムである


つまるところ発狂とは人が発狂してるのではなく精霊が発狂している様を表現したものである


虫が同族の虫を刺激しているとも考えたのだが、そうすると啓蒙の高まりにより発狂耐性が下がることの説明がつかない(むしろ啓蒙により獣性が抑制されるのだから発狂耐性は上がるはずである)


※また精霊が精霊を刺激するということも検討したものの、純粋な獣血から構成される「瀉血の槌」を説明するのが難しく断念した。虫に寄生された精霊が同族の精霊を刺激するような声を発するというのは、瀉血の槌を除けば可能な仮説である



星の子らと瞳の苗床

狩人を発狂させるもののうち、星の子ら瞳の苗床は共に眷属である


眷属とは精霊に寄生された元人間のことである


星の子らは妊娠中の胎児が精霊に寄生されたものであり、瞳の苗床はDLCの実験棟で行なわれていたように、人間が苗床となったものである


元人間という点が重要である。ヤーナム民の血は獣血に汚染されているからである


要するに彼らは精霊に寄生された苗床であるが、同時に虫にも寄生されているのである


※メンシスの脳みそやほおずきはよく見ると、使者の身体を寄せ集めて作られている。使者を精霊と考えると、虫に寄生された精霊、という共通点が見いだせるかもしれない(ただしこれも瀉血の槌の扱いが難しい)


すなわち、攻撃の際には星の子らや瞳の苗床に寄生している虫が声を発し精霊を刺激しているのである


瞳の苗床のつかみ攻撃を受けると、「キーン」という不思議な音が聞こえる。これが虫の声(精霊を刺激する周波数の音)であろう


星の子らについては攻撃時に鳴き声を発するが、あるいはそれが虫の声とも考えられる(獣の咆哮との差異が難しくなるが)



教会の使い

長くなりそうなので簡単に済ませるが、教会の使いの十字架(狩人のマークに似た十字架)は、啓蒙が15以上あると赤いオーラをまとう


この十字架により狩人は発狂させられるが、このゲームにおいては赤は虫の色である


また光が振動(波)であるように、赤いオーラも特定の周波数を持っており、それは精霊を刺激する周波数なのである



瀉血の槌

次にかなりイレギュラーな存在である瀉血の槌のL2攻撃について検討する


精霊の発狂により宿主の体内から獣血ごと排除された鋭利な武器の形状をとる

の赤い色は「虫」の色である

これの性質を利用したのがブラドーの瀉血の槌である


瀉血の槌

はらわたの、心の底に溜まったを吸い

おぞましい本性を露わにする

それはまた、悪い血を外に出す唯一の方法だ

地下牢に籠ったブラドーは、そう信じ続けていた


瀉血の槌は悪い血つまり獣血を外に出すことで、虫の形状を変化させて武器として利用したものである

血液と共に虫が体外に排出されたことで鋭利な武器となる

また変形後L2攻撃は地面に先端を叩きつけて衝撃波を発生させる範囲攻撃であるが、使用すると発狂ゲージが貯まる



上述したように発狂とは、虫の音(声)に刺激された精霊が活発化することである


すなわち、虫の塊である先端部が叩きつけられたことで虫が苦悶の声をあげ、その虫の声(特定の周波数の音)に反応して、精霊が活発化するのである(あるいは衝撃波に虫の声に近しい周波数の音が含まれているのかもしれない)


※ちなみに連盟関連で「虫」を潰すことがあるが、これは虫が声を上げる隙を与えず踏み潰して殺しているので精霊は刺激されない。あくまでも精霊を刺激するのは生きている虫の声である(生きているヒモのように)


このように発狂を促す対象、例えばほおずき瀉血の槌の先端などには必ずがいて、その虫の声により精霊が刺激され発狂に至るのである


邪眼瀉血の槌L2の双方に発狂を促すような要因があるはずである。メンシスの脳みその光と音、ほおずきの、瀉血の槌の衝撃波、それらの共通点として「振動」(周波数、音)がそうなのではないかと考えたものである



鎮静剤

さて、鎮静剤により発狂ゲージが減少するのは、鎮静剤の原材料が人血だからである


鎮静剤

神秘の研究者にとって、気の狂いはありふれた症状であり

濃厚な人血の類いは、そうした気の乱れを沈めてくれる


それはやがて、血の医療へと繋がる萌芽であった


ここで名指しされているのは神秘の研究者であって獣性の研究者ではない


シンプルに考えるのならば、神秘の研究者のみ気の狂いを発症する理由は研究者が神秘を取り扱っているからであろう


神秘を取り扱うゆえに彼らは少なからず精霊寄生されており、その精霊が虫の声を聞いた際に刺激されて狂い出すのである


後述するが精霊は脳に宿るために人の精神に強い影響を与える。気の狂いとは精霊が狂いはじめたことで最初に現われる症状である


鎮静剤により気の狂いが静まるのは、獣血を摂取したことで体内の精霊と獣血の力のバランスが改善され、発狂が押しとどめられたからである(すべては二つの衝動の間の葛藤(バランス)であるである)



恐ろしい獣

啓蒙/獣性システムが示すように、二つの属性は絶妙なバランスのうえに成り立っている。これら二つの属性の間の葛藤が本作の根幹概念でもある


獣に変身したいという衝動は、私たちが皆持っている人間性という基本的な感覚と相反するものです。その人間性は一種の枷のようなもので、変身をその場に留める役割を果たしている。変身したいという衝動を固定している枷が強ければ強いほど、その枷が最終的に壊れたときの反動は大きくなります。その結果、あなたはより大きな生き物に、あるいはよりねじれた生き物に変身することになる。この二つの衝動の間の葛藤が、ここでは一つの概念となっています。初期にデザインされた獣のキャラクター、特にクレリック・ビーストは彼らのアイコンとなっています。これは、クレリックが最も恐ろしい獣であるという考えと結びついています。(インタビューより)


ここで「私たちが皆持っている人間性」と「人ならぬ神秘」とは相容れない概念ではないかと思われるかもしれない


だがここでの彼の論旨は「二つの衝動の間の葛藤を概念として表現したものが恐ろしい獣である」という本作の根幹部分に存在する観念(アイデア)のほうである


人間性という語句は、神秘と獣性の関係うまくぼかしわかりやすく説明するために持ち出されてきた用語であろう


作品内において「二つの衝動の間の葛藤が獣化を引き起こす」の二つの衝動に当てはまるのは「神秘と獣性」である(知的探究心と暴力衝動


獣性値の高い装備を着ることで狩人は獣化しやすくなるが、啓蒙を高めることで獣性値は抑えられるということは、すなわち神秘は獣化に対する枷として機能していることになる


さらにいえば、聖職者が最も恐ろしい獣になるのは、医療教会がゲーム内において最も神秘の取り扱いに長けた組織だからであろう


高い獣性を抑えるためには高い神秘が必要なのである。また逆に高い神秘さえ獲得すれば獣化しにくくなる


例えば狩人が獣性値の高い装備を着ていて、啓蒙取引などで啓蒙を失った場合、獣性ゲージが表示されて「一時的獣化」の状態に移行する


この過程は、枷が壊れることでその反動が現われるとする説明そのものである


啓蒙の値が高ければ、強い獣化衝動に抗うことが可能なのである


作中で啓蒙の値が高いと考えられる聖職者枷が外れることにより恐ろしい獣になるのは、このためである




聖血

ちなみに、ヤーナムの血の医療に使われる血には「精霊の卵」が含まれている。このことはエミーリアの説教にも表現されている


聖血を得よ

祝福を望み、よく祈るのなら

拝領は与えられん



ここに言われる祝福とは精霊に寄生されることである


夜空の瞳

精霊に祝福された軟らかな瞳


眼球の内部に精霊(軟体生物)の姿が見える


聖血血の医療の根源にある。それはつまり精霊の卵を含む血こそがヤーナムの血の医療の根源なのである


神秘に獣性を抑制する効果があると気づいた医療教会は、獣の病を撲滅するために精霊の卵を含む血をヤーナムの民に摂取させたのである


またこの聖血に獣性の虫が含まれていることも、エミーリアの説教に言われている


聖血を得よ

だが、人々は注意せよ

君たちは弱く、また幼い

冒涜の獣は蜜を囁き、深みから誘うだろう


聖血には冒涜の獣(獣性)も潜んでいるのである


獣が「蜜」を囁くのは、その本性が「虫」だからであろう。連想ゲームをするまでもなく、現実においても虫と蜜は深い関係にある(例えば受粉樹液に集う昆虫たち)




獣化

興味深いことに鎮静剤は「獣性ゲージ」も減少させる


この際の作用機序は、血に飢えて活発化した「」に人血の濃縮したものを投与したことで、虫の求血衝動が抑えられ獣化一時的に治まったものと考えられる


ブラッドボーンの舞台の大本にはゴシックホラークトゥルフホラーがある。また宮崎英高氏は吸血鬼ドラキュラの影響を口にしている


啓蒙と獣性はそれぞれ啓蒙がクトゥルフホラー獣性がゴシックホラーに属するものであり、であるのならば「獣性」が吸血鬼のように「血」を求めるのは当然のことである


これは獣の病に悩まされるヤーナムの民の飲血嗜好からもうかがえる


匂いたつ血の酒

投げつけると濃厚な匂いを放つ、熟成した血の酒

それは血に飢えた獣を強く惹きつける


輸血液

故にヤーナムの民の多くは、血の常習者である


つまり獣は血を好むのであり、その嗜好は獣の根源たる「虫」から来るのである


血に飢えた虫たちが血を得るために宿主を操って他者の血を奪おうと暴走する。これが人が獣化するメカニズムである


しかしながら獣化が軽度であれば、濃厚な人血の投与により虫は一時的に鎮静せられるのである




啓蒙と獣性

さてようやく本題に入る


啓蒙と獣性の関係性が啓蒙/獣性システムとしてゲーム内に落とし込まれていることは言うまでもない


啓蒙が高まれば獣性が下がり、逆に啓蒙が下がることで獣性が上がる


しかしながらこの関係性は対等なものではない。獣性値がいくら上がろうとも啓蒙の値が下がることはないからである


これは精霊と虫の力の優劣というよりも、人体における寄生部位の違いから発生するものである


大聖堂のローレンスの頭蓋のみが祀られたように、狂人の智慧のグラフィックが頭蓋骨であるように、またDLCにおいて苗床になったのが「頭の患者」であったように、精霊は人の脳に宿るのである(または脳液)



脳液

そして脳液とは、頭の中で瞳になろうとする

その最初の蠢きであるという



脳液を経て脳に寄生した精霊神秘の智慧を人の脳に注ぎ込む。より細かく言えば精霊の卵が孵化すると同時に人の脳に神秘が流れ込み、人は啓蒙を得る


このとき重要なのは精霊が寄生するのが脳(脳液)であるということである


脳は精神の座であり、人の意志決定を左右する器官であるが、悪夢の世界において「遺志(=意志)」とは、狩人を存在させる創造(存在)のエネルギーである


青い秘薬

それは脳を麻痺させる、精神麻酔の類いである


だが狩人は、遺志により意識を保ち、その副作用だけを利用する

すなわち、動きを止め、己が存在そのものを薄れさせるのだ


※青い秘薬のテキストから分かるように、遺志狩人の意志に制御されている。これに対し「○○の死血」の遺志死血に宿っており持ち主から切り離された遺志である(それゆえ第三者が獲得することができる)


つまり精霊は脳に宿ることにより、悪夢の世界における創造のエネルギー「遺志」を掌握しているのである


一方の虫が寄生するのは主に血液である。血液は脳にも流れているが、血液と脳液という棲む場所の違いにより完全な衝突にはいたらない(脳液は脳脊髄液と解釈した)


精霊に影響を受けた遺志により獣化は抑制される一方で、肉体と血液のみを掌握している「虫」精霊を抑制する力はない


宇宙的に見れば双方は対等に近い間柄であろうが、こと人体というフィールドにおいては、脳を掌握する精霊の優位は揺るがないのである


ただしその力が弱まれば、つまり啓蒙(神秘)が減少すれば遺志の力も減少し、代わりに獣性の力が増大するのである




一方で獣性がいくら高まろうとも啓蒙が下がることはない。これは体内でいくら獣血の虫が増えようとも、脳と遺志を掌握している精霊には影響を及ぼせないからである


まとめると、啓蒙と獣性が対等でないのは、啓蒙をもたらす精霊は脳液(脳)に宿ることで遺志を掌握しているが、獣性をもたらす血液(肉体)に宿るにすぎないからである



旧市街

啓蒙と獣性の複雑な関係性ゲーム内の出来事として描いたのが「旧市街の惨劇」である


発端である灰血病、その治療薬である白い丸薬、そして灰血病を引き金として蔓延してしまったという獣の病


これらの根っこの部分に存在するのが、精霊と虫なのである


灰血病に関する詳細は前回の考察(「考察41 灰血病」)参照のこと



蛇足

冒頭にも書いたが啓蒙と獣性の影響はゲームの広範に及ぶので、簡潔に説明するだけでも骨が折れる

考察に関しては、虫が精霊を刺激し精霊が発狂する、という部分はそれなりに満足しているが、虫の声が精霊を刺激するという部分にはあまり納得がいっていない

しかし、上でも書いたが邪眼と瀉血の槌L2、瞳の苗床のつかみ攻撃、星の子らの噛みつきに共通する要因がなくてはならない(それらは発狂ゲージを貯めるので)

その共通要因として「特定の周波数」(要するに音)以外に思い浮かばなかった

とりあえずなんとかまとまったものの、修正されるかもしれない


3 件のコメント:

  1. 音が精霊を刺激するという点に関して、説を補強できそうなものを見つけたのでここで報告させていただきます。エーブリエタース戦において、体力が半分程度になったときにエーブリエタースはダメージゾーンを展開します。この時、エーブリエタースからは「キーン」という甲高い音がするのですが、このゾーンの展開と同時にプレイヤーに重なるようにして触手(あるいは虫?)のようなものが一瞬出現します。また、音というと、聖歌の鐘(体力回復)やマダラスの笛(能力補正が神秘ではなく血質)など、体力や血に関わるものもあるようです。これらが参考になれば嬉しいです。
    また、本題からは逸れますが、一つ発見したことがありましたのでそれも伝えさせていただきます。以前種氏は禁域の森の墓について考察をしていました。それ関連なのですが、その墓の中でも大きい墓石の裏側に大量の虫らしきもの(見た目はナメクジっぽい)が付いていました。個人的には墓の主がナメクジ(精霊)の苗床になっている、と捉えています。こちらも参考になれば幸いです。

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    1. コメントありがとうございます(Cyberpunk2077にはまっていて返答が遅れましたすいません)

      なるほど、エーブリエタースのダメージゾーンは気が付きませんでした
      あの謎の攻撃の正体は不明でしたが、もしかすると「音」が関係しているのかもしれませんね

      聖歌の鐘やマダラスの笛も言われてみれば「音」ですね。すばらしい着眼点だと思います

      これまで音には注目していなかったのですが、「音」を主題にして考察できるかもしれません

      墓裏のナメクジは何度か触れたことがあるのですが、はっきりとした結論はまだ出ていません

      コメントを参考に、音も含めてそろそろ何らかのまとまった考察を書ければなと思います。ありがとうございました

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  2. 別項で触れられていたかもしれませんが、英語でプレイすると、発狂は Frenzy と表記されています。

    Frenzyは逆上、乱心、狂乱、熱狂と訳される語であり、種氏の精霊反応説を補強すると思います。

    ふつう「発狂」とは訳さないので、かなりミスリード。翻訳調を愛する宮崎氏のワザですね。


    また、脳に寄生する精霊と、血液に寄生する虫の非対称関係について、血液は脳に入る時に血液脳関門で強力にフィルタリングされますから、納得が行きます。

    2021年もブラボ考察、楽しみにしています!

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