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2020年11月30日月曜日

Bloodborne 考察41 灰血病

考察まとめとするにはテーマが小さい気がしたので通常の考察に変更

訂正:寄生虫は弱毒をもつのではなく、無毒。関係する部分を修正した


灰血病という名前は開発中に偶然的に生まれたものであることが、宮崎英高氏のインタビューより明らかになっている


つまり灰血病は世界設定として最初から想定されていたものではなく、開発の過程で導入された後付けの設定なのである


実のところ灰血病の考察としてはこれが「答え」である


要するに、開発中に生まれた偶然の産物である


しかしゲーム世界に導入されている以上、設定厨(失礼)である宮崎英高氏が、何の設定も付与しないまま放置しているとは考えにくい


さらに彼自身が「これらが意図通りうまくいったのか?」と疑義を呈するからには、何らかの意図があっての灰血病という概念が導入されたものと考えられる


そこで今回は灰血病という設定をもとに、旧市街で起きた惨劇や、その原因を探ってみたいと思う



医療教会

灰血病の発生に医療教会が関与している、というのは海外で発表されたコミックスでも採用されている説である


厳密には公式とは言えないものの、否定する論拠は見受けられず、また私自身も過去に旧市街への医療教会の関与を考察したことがあることから、今回も「医療教会関与説」を採りたいと思う


以下が過去の考察の部分的引用である


さて、『Bloodborne: The Healing Thirst』(fandomによる要約)において、灰血病発生の契機となったのは、医療教会である


医療教会の聖職者たちが旧市街の水道に「怪しげな粉末」を投入し、それが灰血病を引き起こしているというのである


この灰血病の治療薬として配られたのが白い丸薬である


白い丸薬

毒を治療する小さな丸薬

かつて旧市街を蝕んだ奇怪な病、灰血病の治療薬


もっとも、その効果はごく一時的なものにすぎず

灰血病は、後の悲劇、獣の病蔓延の引き金になってしまった


白い丸薬を購入できるようになるのは、聖職者の獣を狩り「剣の狩人証」を入手した後のことである


剣の狩人証

かつて医療教会の工房が発行した、狩人証の1つ

銀の剣は、教会の狩人の象徴である


ルドウイークを端とする医療教会の狩人は

また聖職者であることも多かった

そして、聖職者こそがもっとも恐ろしい獣になる


剣の狩人証で購入できるようになるアイテムは他に「教会の石槌」「教会の連装銃」「狩長の印」「狩人の確かな徴」「携帯ランタン」である


これらのアイテムは言うまでもなく狩人、それも教会の狩人に関連深いものである


つまり、医療教会は灰血病の発生と治療に深く関与し、その結果、旧市街は獣の病が蔓延し、最終的には火によって焼尽せられたのである


煤けた狩装束

旧市街の事件、獣の病の酷い蔓延と街を焼く浄化の時代に作られ

濡れたようなマントが、炎に対して高い防御効果を発揮する


これは、燃え盛る炎と血の焼ける臭いの中で

生き残った罹患者を狩った、そういう装束なのだ



※詳細は過去の考察参照のこと



神秘の液体

次に、医療教会が具体的にどのような思想のもと、いかなる技術を用いて「灰血病」に関与したのかを考えてみたい


医療教会の獲得した大きな知見の一つに「神秘を宿す白い液体」があるが、この液体は、医療教会の初期に「苗床」からもたらされたものである


正しくは白濁した液体と表現すべきか


この白い液体は神秘を宿していたことから様々な用途に使われている


例えば人形の動力として


やはり白濁した液体である

また、この白い液体はルドウイークも吐き出す


ルドウイークは精霊に寄生されている「半苗床」である

※ルドウイークは完全に精霊に寄生されているわけではない。彼の身体は半分が苗床であり半分が獣である。よって眷属の範疇から外れる


またカレル文字「苗床」の英名は「Milkweed」(トウワタ)であるが、現実にあるMilkweedは英名の通り、切ると白い乳液を出す


つまり「苗床(Milkweed)」の本質的な性質は「白い液体」と不可分なのである。そしてその白い液体には「神秘」が宿っているのである


まとめると「苗床」から採取される白い液体には神秘が宿っており、その神秘の力は医療教会の大きな力となっていったのである


なぜ白い液体の話を述べているかというと、この白い液体こそが毒を癒す「白い丸薬」の原材料だからである


そして白い丸薬が毒を癒すのは、その毒が獣性を宿す「虫」に由来するからである


ブラッドボーンにおいて神秘と獣性は対立する属性である。この対立項はゲーム世界に落としこまれ、「啓蒙/獣性システム」としてプレイヤーに提示されている


神秘と獣性は二元論的な対立関係にあり、この対立する二つの属性のあいだに置かれて右往左往しているのがヤーナムの人間となる


啓蒙をもたらす神秘により毒が癒されるのであれば、その毒は「獣性」に由来するものなのである



獣性

さて、医療教会は神秘のみならず「獣性」も制御していたことが「獣の抱擁」にうかがえる


「獣の抱擁」

獣の病を制御する、そのために繰り返された実験の末

優しげな「抱擁」は見出された


試み自体は失敗し、今や「抱擁」は厳重な禁字の1つであるが

その知見は確かに、医療教会の礎になっている

※余談だが獣化したルドウイークの頭蓋骨も医療教会の礎になったといわれている


つまり医療教会は獣を克服しようと企図したのである。しかしこれは大それた野心ではない。なぜならば医療教会は確かに獣に対する特効薬、すなわち「神秘の白い液体」を有していたからである


そして彼らはそれをもって「獣の病」を制御しようとしたのである


神秘の白い液体による獣性の制御、それにより造り出されたのが「劇毒」ではなく「無毒」の寄生虫である(寄生虫の発生起源については後述する)


ヨセフカの診療所の地下にある湖に住む寄生虫


寄生虫

さて、この寄生虫は獣血の主(虫)とよく似た姿をしているが、獣血の主が「劇毒」をもたらすのに対して、この寄生虫は無毒化されている





寄生虫が毒をもたないのは、医療教会の実験により「劇毒」が「無毒」にまで弱められたからである(しかし人を獣にする力は保たれたままである)


医療教会は無毒化した「虫」を人々に感染させることにより、その獣害を減らそうとしたのである

この無毒化した虫の卵こそが、コミックスに描かれた「怪しげな粉末」の正体である



灰血虫

獣の病の根源に「」がいたように、苗床の根源に「精霊」がいたように、灰血病もまた「灰血」の「」がもたらす病なのである

※ブラッドボーンにおいて不可解な現象、病気の根源には必ず何らかの「得たいの知れない生物」がいる


神秘の白い液体によって弱められた「獣血の主」、それが灰血虫である




獣血の主が劇毒をもたらすのに対し、灰血虫が無毒なのはこのためである


この虫の開発コードはストレートに「parasite(寄生虫)」である


そしてこの虫は、神秘の白い液体を摂取させることで意図的に脆弱化させられた虫である


獣性を宿す獣血と、神秘を宿す白い液体が混ざり合ったこの虫が吐き出すのは、赤と白の混じった色の血、すなわち「灰血」である


完全に白い液体では「」ではなくなる。赤い血に白い液体がうっすらと混ざり、色あせて薄まる。その色こそが「灰血」なのである



白い丸薬

風土病である「獣の病」を一掃しようと、医療教会はこの灰血虫の卵旧市街の水道に投入したのである


結果として旧市街の人間は「灰血虫」により灰血病となり、虫が吐き出す毒に悩まされることになる。というのも、虫は人の淀みの根源であるからである


連盟以外、誰の目にも見えぬそれは

汚物の内に隠れ蠢く、人の淀みの根源であるという



この毒害を抑えるための手段として用いられたのが、白い液体を固めた白い丸薬である


白い丸薬は「虫」を無毒化した際に用いられた白い液体よりも純度が高いものである


そうして医療教会は毒害を神秘の丸薬により抑え込もうとしたが、その効果は一時的なものでしかなかった


白い丸薬

毒を治療する小さな丸薬

かつて旧市街を蝕んだ奇妙な病、灰血病の治療薬


もっとも、その効果はごく一時的なものにすぎず

灰血病は、後の悲劇、獣の病蔓延の引き金になってしまった


なぜならば獣性は、人が血に依るかぎり根絶できないからである


神秘により一時的に抑制されたことで獣性はかえって活発化し、ついに神秘の枷を解き放ち、より強い獣性となって人間を襲ったのである


獣に変身したいという衝動は、私たち全員が持っている人間性という基本的な感覚と相反するものです。その人間性は一種の枷のようなもので、変身をその場に留める役割を果たしている。変身したいという衝動を固定している枷が強ければ強いほど、その枷が最終的に壊れたときの反動は大きくなります。その結果、あなたはより大きな生き物に、あるいはよりねじれた生き物に変身することになる。この二つの衝動の間の葛藤が、ここでは一つの概念となっています。(インタビューより)


この点で確かに「灰血病」は獣の病蔓延の引き金になった


というのも、弱められた獣性を抑制するために投入された白い丸薬が「」として働き、その枷が強すぎたために、枷が壊れたとき大きな反動となって旧市街を襲ったからである


このように神秘と獣性は表裏一体であり、徹底的に人間の手に負えないものとして描かれている


どちらに手を出しても手痛いしっぺ返しを食らうことになるのである


獣性を克服するためには神秘による抑制では足りず、かえって獣の病という悲劇をもたらしてしまう


人間が獣性を克服するためには神秘の統御だけでなく、獣性の統御も必要なのであり、神秘と獣性とを完全に統合することにより、はじめてそれが成されるのである


神秘と獣性の完全なる統合とは、すなわち「上位者の赤子」になることである



寄生虫の起源

寄生虫が登場した時期については医療教会初期、もしくはさらにさかのぼれるかもしれない


というのも、この寄生虫は獣血の主(虫)が神秘の影響により弱体化することにより生まれるからである(自然の状態でも発生しうる)


この寄生虫が出現するのは、禁域の森の地底湖、カインハーストの谷間、メンシスの悪夢である


地底湖はその直上にヨセフカ診療所があることから考えて医療教会の関与が色濃い。しかし神秘的な湖であり、その神秘性に影響を受けて獣血の主(虫)が弱まった、とも考えられる

※マダラス兄弟との関係を考えると天然であってもおかしくはない


カインハーストのそれは、処刑隊がカインハーストの強い獣たちに抗する寄生虫兵器として持ち込んだものの生き残りであろう

※無毒化した寄生虫が広まれば、結果として獣化した際の獣も弱くなる


メンシスの悪夢のそれはメンシス学派が持ち込んだものであろう。強い獣性を抑えるための予防薬だったのかもしれない


メンシスの悪夢の個体はローランの銀獣を倒した際に飛び出してくるが、興味深いことに「」で攻撃すると出てこない(内臓攻撃も)


松明などに言われているように、獣は「炎」を恐れ炎は獣に特攻があるが、その獣と同じように寄生虫は炎が苦手なのである(寄生虫と獣性の関わりを示すものであろう)


蛇足

まとめとして「灰血病」を扱うのはテーマとして小さすぎるのではないかと思ったのだが、獣性と啓蒙の関係性を考える上でモデルケースとして提示するにはうってつけであると考え直し考察したものである

6 件のコメント:

  1. 仮に聖杯ダンジョンの毒沼や毒付きナイフの毒がこちらの記事と同じ虫入りの毒だったとしたら・・・と考えたら面白いですね。神秘に満ちているイズダンジョンには毒沼が無かったりヤーナム狩人には虫の毒を扱う知識があったのか・・・と想像もできます。  デモンズソウルお楽しみのところの投稿ありがたいです。

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    1. ありがとうございます
      デモンズが一段落してサイバーパンク前のいましか書く暇がないかな、とまとめはじめたものです

      いちおうこの後に「啓蒙と獣性」についての考察まとめを載せる予定です(あと出来れば動画も)

      さて、極論すれば毒と薬とは同じもの(人間にとって都合がよいか悪いかによって分別される)ですから、医療教会が毒薬の知識を蓄積していても不思議ではないと思われます

      灰血の獣患者や血に渇いた獣が「毒」をまき散らすのも
      獣と毒とに何らかの相関関係があり、二つを結びつけるものがあるのではないかと思いました
      それが「虫」なのかなと…

      確認してないのですがイズダンジョンには毒沼がないかもしれない、という指摘は鋭いですね

      精霊(神秘)と虫(獣性)の接触がヤーナムに災厄をもたらしているのだとしたら、イズは神秘特化エリア、ローランは獣性エリア、というふうに聖杯ダンジョンのテーマが見えてくるような気がします

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  2. ワクチン打ったら副作用が酷かった、みたいな感じですか・・・

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    1. そのたとえは適切かと思います
      そういえば狂犬病ワクチンがパスツールによって開発されたのは、ちょうど本作の舞台であるヴィクトリア朝時代ですね

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  3. 種氏の灰血病の症状の考察は的を射ていると思っています
    理由は作中の様子からおそらく灰血病にかかっている血に乾いた獣の血を吹き出すモーションが
    苦しみながら毒を含む血を排出しているかに見えますし(故に血に乾いてしまう)
    また病あるいは毒に犯されているであろう獣といえばこれも種氏が考察なさっている月の魔物の肉体を
    連想させます(もし宮崎氏が灰血病と敗血症をかけているなら骨や内臓がむき出しになり痛々しい姿した
    こいつが当てはまるのか?)
    長文失礼しました。次回の考察も楽しみにしております。

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    1. ありがとうございます
      なるほど、血に渇いた獣を例に挙げるととてもわかりやすいですね
      なぜ血に渇いているのか、なぜ毒をまき散らすのかに対する充分な解答にもなっています

      いただいたコメントを元に加筆してみたいと思います

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