3本目のへその緒
3本目のへその緒とは比喩であり、生物学的にいう「へその緒」ではない
このアイテムの本義は別名の「瞳のひも」のほうである
3本目のへその緒
別名「瞳のひも」としても知られる偉大な遺物
上位者でも、赤子ばかりがこれを持ち
「へその緒」とはそれに由来している
すべての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれは青ざめた月との邂逅をもたらし
それが狩人と、狩人の夢のはじまりとなったのだ
使用により啓蒙を得るが、同時に、内に瞳を得るともいう
だが、実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった
そこでまず最初に「瞳のひも」のうち「瞳」について考察してみたい
瞳
脳の瞳に関しては前回考察したように各陣営で求めるもの、そして実際に得られたものが異なっている
このうち今回の話で重要なのは実験棟の瞳である。過去の考察で実験棟の希求した瞳とは、精霊の卵である述べた
精霊の卵は人の脳内で孵化すると啓蒙(=神秘)をもたらし、やがて宿主を苗床へと変異させてしまう
しかし実験棟のレベルでは上位者には至れず、上位者のなり損ない「失敗作たち」を生み出すのが関の山であった
しかし確かにそれは人を人ならぬものに変異させる「瞳」ではあったのである
ひも
次に「瞳のひも」の「ひも」について考察してみたい
ゲーム内において「ひも」という名を持つアイテムがもう1つある
生きているヒモ
メンシスが悪夢で得た巨大な脳みそは
確かに内に瞳を抱き、だが完全な出来損ないであった
その瞳は邪眼の類いであり、脳自体は腐りきっていた
しかし、それはやはり上位者であり、遺物を残す
特に生きたものは、真に貴重である
ひらがなの「ひも」とカタカナの「ヒモ」の違いはあれど、音としては同一であり、また瞳のひものひも部分と生きているヒモとは、その特徴的な渦巻き形状などよく似ている
瞳のひもは左回り、生きているヒモは右回りの渦であることは示唆的である |
過去の考察(補遺:生きているヒモ)で、硬直的な形状、またその赤色から生きているヒモを「虫」の一種と結論づけた(メンシスの脳が出来損ないであったのは、この虫が寄生していたからである)
さて、獣性の考察において、人を獣に変異させるのは「虫」であるという考察を述べた
この虫は「獣の上位者(Great One Beast)」から呪いとしてもたらされ、呪いは虫となって人の血に棲み、人を獣化させるのである
獣は呪い、呪いは軛
そして君たちは、教会の剣とならん(流浪の狩人、ヤマムラ)
すなわち精霊は上位者の先触れとされるが、虫も上位者の先触れなのである
この二者は神秘と獣性を世界にもたらすものであるが、その背後(あるいは上方)には、彼らの上位存在がやはり対立構造を保持したまま位置しているのである
右下の「獣血」は「血質」と読み替えても良い(ステータス基準) |
上位者の赤子
しかしながら、「すべての上位者は赤子を失って」おり、彼らが赤子を作れるのは女王ヤーナムのように特殊な血を持つ者を妊娠させた時だけである
トゥメル人は神秘の知恵(啓蒙)と獣血(獣性)をもつ種族である。つまり不完全ながらも統合させた「青ざめた血」をもつ者たちなのである
※不完全である理由は、彼らの体内で神秘の青と獣性の赤とが完全に融合されていないからである。神秘は知恵として、獣性は血として個々に存在している。とはいえ一個体の中に同時に神秘と獣性とが宿っているという状態は、青ざめた血の擬似的な再現である
青ざめた血の擬似的な再現とはいえ、それは「赤い月の接近」と同じ現象を引き起こす
すなわち、二つの世界の境が曖昧になり、両者が統合されることで上位者の赤子が誕生するのである
こうした現象により女王ヤーナムは、上位者の赤子を身ごもれるのである
そうして生まれるのが「上位者の赤子」であるが、上位者の青い神秘と赤い獣性が融合した彼らの血は完全な「青ざめた血」である
つまり悪夢の住人である上位者は、現実世界の住人の血を利用することで、現実世界にその器(肉体)を獲得することができるのである
※ここでいう夢と現実は一般的な、形而上学的世界と形而下的世界を言うのではなく、世界の二つ面のことである。すなわち夢も現実も確固として存在している。しかし人間には夢の面を見ることが難しいのである
つまり上位者の赤子とは、現実世界にも悪夢の世界にも存在することのできる、「青ざめた血」を持った上位者のことである
※故に古代トゥメル人は「特別な赤子」を抱くことが出来たのである
瞳のひも
さて、ようやく本題に入る
青い神秘と赤い血が統合されることで誕生する「上位者の赤子」、その赤子とともにあるのが「瞳のひも」である
上位者の赤子とは要するに、上位者とトゥメル人との神秘的な交わりによって誕生した生物学的な子孫である
しかし、赤子に付随する「瞳のひも」とはなんであろうか
まず「瞳」とは、精霊の卵である
次に「ひも」とは、虫である
精霊は神秘を象徴し、虫は獣性を象徴するものである
上述したようにこの両者は、神秘の上位者と獣の上位者からもたらされるものである。すなわち、神秘と獣の上位者に属する生物である
上位者とトゥメル人の神秘的な交わりにより、その二者の生物学的な子孫が誕生する。だがそれだけではない。同時に彼らに属する精霊と虫とが交わることで、精霊と虫の生物学的な子孫も誕生するのである
もう一度言う、瞳とは精霊の卵である、ひもとは虫である
この両者の交わりにより誕生するのが「瞳のひも」である
瞳(精霊)+ひも(虫)=瞳のひも
そして精霊が人を苗床にしたように、また虫が人を獣にしたように、「瞳のひも」は人を上位者の赤子にするのである
なぜなら「瞳のひも」は上位者の赤子と同じように、完全に統合された「青ざめた血」をもつからである
※一般的に、人間のような複雑な生物よりも単純な生物のほうが形態や性質が変化しやすい
3本目のへその緒を使用すると青ざめた血のエフェクトが出るのはこのためである(左は狂人の智慧使用時)
上位者の叡智にも血のエフェクトは出ない。血のエフェクトが追加されるのは3本目のへその緒のみである |
3本目のへその緒とはいわば青ざめた血の虫の卵、すなわち上位虫の卵である
※新規エリアに到達した際の啓蒙取得エフェクトにも微かに青ざめた血を確認できる。これは狩人の体内に青ざめた血の虫の卵があるからともいえる。狩人が最初に受けた血の医療、その源には青ざめた血の聖血があるからである
内の瞳
以上により、3本目のへその緒のテキストの意味が理解できる
3本目のへその緒
使用により啓蒙を得るが、同時に、内に瞳を得るともいう
だが、実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった
使用、とは上位虫の卵を寄生させることである
寄生すると同時に卵は孵化し、狩人は啓蒙を得る
孵化した上位虫により、狩人に青ざめた血がもたらされる
青ざめた血とは上位者の血であり、「瞳」である
瞳の数が充分な数であれば(3本)、狩人は上位者の赤子に変異する
すなわち青ざめた血とは、狩人における「瞳」の比喩である
「上位者の死血」。赤い血に青い神秘が混ざった「青ざめた血」は、「瞳」のように見える |
3本の3本目
3本目のへその緒を3本使うことで狩人は上位者の赤子に変異する。なぜ3本かはゲーム内の設定から言えば、アデラインは脳液を3個使うことで苗床になったことから説明される
すなわちブラッドボーンの世界では、人間に寄生する精霊なり虫の卵は3個使うことではじめて人を完全変態させうる力をもつのである
※3個設定はゲーム的な都合と解釈することも可能であり、その都合の必要のなかったロマなどは瞳のひも1個で上位者になったのかもしれない
※また学長ウィレームの言葉「我ら血によって人となり、人を超え、人を失う」を、1本目により人となり、2本目により人を超え、3本目により人を失い上位者になると解することも可能かも知れない(狩人は夢の存在として人以前の存在と前提)
赤子
たんに上位者になるだけではなく上位者の「赤子」になる点については、獣性の側から説明可能である
女王アンナリーゼは血の穢れ(寄生虫の幼生)を啜る。血族の悲願、血の赤子を抱くためである
血の穢れ
故に彼らは狩人を狩り、女王アンナリーゼは
捧げられた「穢れ」を啜るだろう
血族の悲願、血の赤子をその手に抱くために
つまりブラッドボーンの世界では、虫は血の赤子に変異するのである
狩人が変異した上位者の赤子は、確かに血の赤子である。ただしその血は「青ざめた血」であり、いわば「青ざめた血の赤子」といえるものである
そして完全に統合された青ざめた血を持つものは「上位者」になる
よって狩人は上位者の赤子になったのである
狩人
「幼年期のはじまりEND」の狩人は、ただの上位者の赤子ではなく、「人の進化は、次の幼年期に入ったのだ」と言われる存在である
ここに言う人とは「血」をもつ生物学的な人のことである
人の血を捨て上位者になるのではなく、人の血を有したまま上位者になる。そのことが人が「血」を克服することであり、人の進化の次の段階をあらわすものなのである
またスタート地点にある「青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために」の青ざめた血とは、月の魔物のことであると同時に、自らの内に青ざめた血を得ること、すなわち上位者の赤子になることをも意味している
それにより全うされる狩り、とは人類の血に潜む獣性を克服したことを意味し、逆に血に潜む獣性を克服できなければ狩りは全うされたとはいえないのである
ジョーゼフ・キャンベル的に言えば、英雄は未知の世界を旅し、数々の試練をくぐり抜けた後に、父(オドン)と一体化し、自ら神となって現世に帰還、世界に新しい力をもたらしたのである