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2020年6月14日日曜日

Bloodborne 考察28 マダラスの双子とヴァルトール

マダラスの双子

マダラスの双子の情報はほぼ彼らの装備品とその出現場所に限られる

以下がその装備品ならびにテキストである

マダラスの笛
禁域の森の住人、マダラスの双子の笛
言葉すら介さず、毒蛇と共に育った双子が
人ならぬ友誼を交わした絆であろう
腑分けされた獣を餌とし、毒蛇は途方もなく育った
また死した後も、悪夢の内から双子の笛に応えるという


腑分けの仮面
禁域の森の住人、マダラスの双子の覆面
恐らくはその兄のもの 
双子は言葉すら介さず、毒蛇と共に育ち
長じて人らしさを覚え、狩人となった
彼らは愛する毒蛇の内に「虫」を見出し
そして、弟は兄を殺したという


腑分けの装束(手袋、ズボンとテキストは同じ)
禁域の森の住人、マダラスの双子の装束
恐らくはその兄のもの
双子はともに狩人であり、獣を腑分け、持ち帰り
村人たちの禁忌の研究に供したという


幼年期

まずは双子の生い立ちを時系列順に整理してみよう

マダラスの笛
言葉すら介さず、毒蛇と共に育った双子が

腑分けの仮面
双子は言葉すら介さず、毒蛇と共に育ち

やや文章はことなるが文意は同じである

ここから読み取れるのは、双子は毒蛇と共に育ったことである

言葉すら介さず、とは他に言葉を話す者がいなかった。つまり両親とは別離していたことを示している

言葉を喋ることのできない両親のもとに生まれたと解釈することも可能だが、その場合は「毒蛇と共に育てられ」と記述されるはずである

マダラスの笛
言葉すら介さず、毒蛇と共に育った双子が
人ならぬ友誼を交わした絆であろう

言葉すら介さず育った双子は、毒蛇と友誼を交わしたという


青年期

腑分けの仮面
長じて人らしさを覚え、狩人となった

腑分けの装束(手袋、ズボンとテキストは同じ)
双子はともに狩人であり、

 長じて双子は狩人になったという。どのように人らしさを獲得したのかは不明である

オープニングから推測するに、狩人になるには「血の医療」により何らかの試練に合格しなければならない。恐らく双子はビルゲンワース(あるいは医療教会)により初期血の医療の被験体となったのであろう

腑分けの装束
双子はともに狩人であり、獣を腑分け、持ち帰り
村人たちの禁忌の研究に供したという

狩人となった双子は獣を腑分け、村人たちの禁忌の研究に供したという

村人とは禁忌の森にわずかに残る廃墟に住んでいた者たちであろうか

彼らの禁忌の研究の詳細は不明だが、腑分けした特別な人体パーツ聖杯の儀式に利用されることから、それに準ずるような研究をしていたと思われる

病巣の臓器
医療教会が、その探索のために腑分けした特別な人体パーツ

禁域の森はビルゲンワースと隣接するエリアである。そのビルゲンワースは神の墓に潜ることに熱意を向けていたことから、村人たちはその研究に協力していたとも考えられる

ビルゲンワースは、古い学び舎です
狩人なら知っているでしょう。ヤーナムの地下深くに広がる神の墓地
かつてビルゲンワースに学んだ何名かが、その墓地からある聖体を持ちかえり
そして医療教会と、血の救いが生まれたのです(アルフレート)

墓暴きの装束
医療教会の源流はビルゲンワースであり
故に彼らは、遺跡が何ものであるかを知っている


毒蛇

双子が狩人になった後も毒蛇との交流は続いていたようである

マダラスの笛
腑分けされた獣を餌とし、毒蛇は途方もなく育った

だが、彼らは愛する毒蛇の内に「虫」を見出してしまった

腑分けの仮面
彼らは愛する毒蛇の内に「虫」を見出し

この時すでに双子は連盟員であったと思われる
というのも、「虫」を見いだせるのは連盟員だけだからである

※例外的に狩人の悪夢の赤目狩人は「淀み」をつけていなくても「虫」を落とす。恐らくこれは「狩人の悪夢」が「悪夢」だからであろうと思われる(ローレンスの頭蓋のように現実の物理・因果法則は成り立たない)


連盟の狩人が、狩りの成就に見出す百足の類
連盟以外、誰の目にも見えぬそれは
汚物の内に隠れ蠢く、人の淀みの根源であるという
それを見つけ踏み潰すことが、彼らの使命なのだ
おそらく慈悲はあるのだろう
願う者にだけそれは見え、尽きぬ使命を与えるのだ

虫を踏み潰すことを使命とする連盟員は、「虫」を見いだしたからには愛する毒蛇とて狩らねばならない

毒蛇は双子に狩られたのである



兄殺し

毒蛇の内に「虫」を見出したことが、別の惨劇を引き起こす

腑分けの仮面
彼らは愛する毒蛇の内に「虫」を見出し
そして、弟は兄を殺したという

「…そして」とあるからには「虫」と兄殺しには何らかの関連性があったことがうかがえる
そしてそれは、兄を殺さなければならないほどの理由である

もっともシンプルな答えとしては毒蛇と同じ理由が考えられる

「虫」である

兄の内にも「虫」は巣食っていたのである。それゆえに弟は兄を殺さねばならなかったのである



ここで一つ疑問が浮かぶ。毒蛇や兄はなぜ「虫」に感染していたのか

マダラスの笛にこうある

マダラスの笛
腑分けされた獣を餌とし、毒蛇は途方もなく育った

この腑分けされた獣とは、獣の病にかかり獣化した元人間である(狩人であるからには普通の獣ではない)

獣の病に感染した肉を喰らい、毒蛇は途方もなく育ったのである。途方もなく育った原因もにありそうである

以前、獣の病の根底には血に潜む寄生虫がいるという考察をしたことがある(「考察25 獣血」

おそらくは獣の肉を喰らったことで、毒蛇もまた寄生虫に寄生されたのであろう

また「虫」狩りの成就に見出されるものである。それはつまり狩りを成就し、その後に腑分けした獣の血肉に見出されることを意味している

毒蛇は獣の血肉を喰らったために「虫」に寄生されたのである


連盟の狩人が、狩りの成就に見出す百足の類

獣の肉を喰らうと「虫」に感染する
この事実が、獣喰らいを禁じる理由である

「淀み」
人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ
禁じられた獣喰らいの内に見出されたというそれは
「淀み」の意味を与えられ、連盟の誓いとなった

とはいえ、これでは兄が感染している理由にはなりそうにない(獣を喰らったなら別だが)

禁域の森にある村の上流には地底湖がある



この湖に住むのが下の寄生虫である



このMobのEnemy IDは「Parasite(寄生虫)」である
そしてこの寄生虫、獣血の主に寄生する虫とよく似ているのである


この虫の棲む地底湖の下流に禁域の森の村はある

禁域の森にいる生物は地底湖から流れ出す汚染された水を飲んだのである
そうして、すべてが汚染されたのである

この寄生虫がどこからやって来たかというと、地底湖にそびえ立つ旧神の石碑である


旧神の石碑の裏はナメクジのようなものに侵食されている




双子が毒蛇を狩った後、兄もまた「虫」に感染している
それ以外に弟が兄を殺す理由がないからである

腑分けの仮面
彼らは愛する毒蛇の内に「虫」を見出し
そして、弟は兄を殺したという

弟は普段飲んでいる水に「虫」の卵が混じっていることに気づいたのだ

そして弟は兄の内に「虫」を見出し、殺したのである



連盟員

兄を殺した弟は連盟員としての活動を続ける



マダラスの弟を連盟員として召喚できるのは、禁域の森ビルゲンワース狩人の悪夢である

またヴァルトールを殺害する、あるいはヴァルトールイベントを完遂することで「灯り 禁域の森」近くに現われ一方的に襲ってくる

長の鉄兜を受け継ぎ「連盟の長」になったプレイヤーをなぜ連盟員であるマダラスが襲ってくるのか

この時までにマダラスの弟が殺害した相手は、虫に感染した毒蛇ならびである

つまるところ、ここでもまた同じ理由で殺そうとしてくるのである

というのも、連盟の長、ヴァルトールは「虫」に感染しているからである

「淀み」
人ならぬ声の表音となるカレル文字の1つ
禁じられた獣喰らいの内に見出されたというそれは
「淀み」の意味を与えられ、連盟の誓いとなった

連盟以外、誰の目にも見えぬそれは
汚物の内に隠れ蠢く、人の淀みの根源であるという

カレル文字「淀み」は獣喰らい、つまりヴァルトールの内に見出されている
その「淀み」の根源は「」である

よって、「淀み」を見出されたヴァルトールも「虫」に感染しているのである
そしてマダラスの弟は虫に感染した連盟の長を殺そうとしていたのである

以前の考察「儚い瞳の寄生虫」瞳に寄生する虫の考察をした

その虫に寄生されたと思われるルドウイークは右目の変異が特に激しい。一方で左目の方はルドウイークが我に返った際にも強調されるように人のそれを保っている



片目の鉄兜右目を閉ざし左目のみで世界を見る兜である
ヴァルトールの右目はルドウイークのように蕩けて盲目となっているからである

話は少し変わるが、血に酔った狩人の瞳は虫に寄生されて蕩けてしまった瞳のことである

血に酔った狩人の瞳
血に酔った狩人の瞳。瞳孔が崩れ、蕩けており
それは獣の病の特徴でもある
血に酔った狩人は、悪夢に囚われるという
悪夢の中を永遠に彷徨い、獣を狩り続ける
ただ狩人であった故

獣を狩る狩人であったがために、獣の返り血を浴びることが多く感染機会もまた頻繁なのである。寄生虫は宿主を操りさらなる血を求める。なぜならばその血によって寄生虫は増えることができるからである

悪夢とは寄生虫に操られたその状況のことでもある


※追記:ヴァルトールイベントを遂行すると「獣喰らいのヴァルトール」を召喚できるようになる。そのヴァルトールには両眼がある。これは連盟の長を辞めたあとのヴァルトールではなく、獣喰らいの時代つまり連盟になった直後の姿である。また悪夢なのでローレンスと同じく、その姿は現実とは異なると解釈することもできる



右目

さて、虫に感染し、かつ「淀み」をつけた連盟員の目には「虫」が見える

ヴァルトールが「虫」を見いだせたのは虫が寄生した右目だけであった
ルドウイークの例からも分かるように寄生虫感染の初期症状は右目から現われるからである

獣血は右足から這いあがる、というように右半身にまず症状が出る

ゆえに右目を閉ざしたヴァルトールには虫が見えない

長の鉄兜
ヴァルトールは、もう長い間「虫」が見えなくなっていた

にもかかわらずヴァルトールはこう言っている

人の世は汚れ、そして素晴らしい。どこもかしこも「虫」だらけだ!

これはヴァルトールの嘘というよりも、右目の視力を失う直前に見た光景なのである

どこもかしこにも「虫」が見える理由はルドウイークと同じく、眼球に寄生虫が寄生しているからである(種類はルドウイークのそれとは異なり獣血の主タイプ)

視界いっぱいに虫が見える光景、それがヴァルトールの右目が最後に見た光景なのである

汚物の中にのみ見出されるはずの虫が、世界中に塗れて見えたのはこれが理由である。ヴァルトールは眼球を泳ぎ回る無数の「虫」を直視したのである

なぜヴァルトールが鍵のかかった風車にいたのか?
マダラスの弟から逃れるためである

これはヴァルトール側の視点である

いっぽうマダラスの弟側の事情は以下のようなものである

兄や毒蛇と同じ水を飲んでいたマダラスの弟もまた寄生虫に寄生されていた
その症状はヴァルトールと同じである

視界中に「虫」が見えるのだ
それはつまり、彼が視線を向けた対象に「虫」が重なって見えるのである

ゆえにたとえそれが連盟の長を継いだ者だったとしても、彼は虫憑きを狩らねばならないのである。なぜなら彼は「虫」を踏み潰す使命を持つ連盟員だからである


狩人が「虫」を潰すごとにヴァルトールはなぜか狩人の目に言及する

…ほう、お前。どうやら、「虫」を潰したようだな
俺は連盟の長、そんなことは、をみれば分かるものさ
…ああ、同士。よい目になってきたな
「虫」を潰し、潰し、潰し、潰し、潰し…汚物塗れの人の世を知り…
だが折れぬ狩人の目

なぜ連盟の長は狩人の目を見ると虫を潰したかどうか分かるのか

さらに虫を潰すと「よい目」になってきた、と褒められるがよい目とは何か
そして「折れぬ、狩人の目」とは何か

ヴァルトールは連盟の長であるがゆえに知っているのである
優秀な狩人であればあるほど、「虫」に感染しやすいことを。そしてその寄生虫の初期症状が右目に出ることを知っているのである

症状が進めば進むほどに、それはつまり「虫」を潰すことでその卵が飛散し、狩人に寄生する虫の量が増えるほどに、目は蕩けていく

それがよい目である

また折れぬ狩人の目、とは「導き」に言及されるルドウイークの有様である

「導き」
故に、ルドウイークは心折れぬ。ただ狩りの中でならば

ヴァルトールは心折れぬルドウイークの姿を狩人に重ねているのである。そのルドウイークの右目は虫(精霊)の寄生により蕩けている


連盟

ヴァルトールイベントを開始すると、何か連盟が邪悪に対する正義のように感じてしまうことがある

人の淀みの根源である「虫」を踏み潰し、世界を汚物塗れと断じる彼らの思想は、荒廃の一途をたどるヤーナムにおいて、一条の光が射し込んでくるように感じられるのである

だが、獣の病を癒すために古い血に頼ったローレンスがその古い血に呪われて獣化したように、に祈る聖職者がその神によって獣化したように、ヴァルトールや連盟さえも宇宙的悪夢に囚われ、翻弄されているのである

連盟はけっして真実でも正義でもない。彼らの目に映る汚濁は彼ら自身の血肉なのである



追記:獣喰らいのヴァルトール

上でも少し触れたがイベントを完遂すると狩人の悪夢で召喚できるヴァルトールが「連盟員の長、ヴァルトール」から「獣喰らいのヴァルトール」に変わる

このヴァルトールには両眼が揃っている
連盟員の長を辞めた後とも解釈できるが、実際は長になる前、獣を喰らった直後のヴァルトールである
ゲーム的には「獣喰らいのヴァルトール」のほうがHPが高く、これは全盛期であることを示している

イベントを進めたことでヴァルトールはさまざまなしがらみから解放され、全盛期の姿で召喚されるようになったのである(ストーリー展開により全盛期の力を取り戻すという概念はSEKIROの一心も共通している)

狩人の悪夢は「悪夢」である。ローレンスがその姿を現実のものと違えていたように、狩人の悪夢では狩人は自らの理想的な姿を体現することができるのである

またヴァルトールはなぜか狩人の悪夢でしか召喚することができない

なぜならば現実世界におけるヴァルトールはすでに獣と戦う力が衰えているがゆえに召喚に応えられないのである(狩人とは戦えるが)

禁域の森の風車小屋でヴァルトールは右手に持った杖で体を支えている。これは右半身の自由が効かなくなっていることを示している

ヴァルトールが狩人として活動できるのは、狩人の楽園たる狩人の悪夢の中だけなのである


※自分の中では結論が出ていたものの書き忘れていたので追記


蛇足

予定ではマダラスの弟とヴァルトールは分けようと思っていたのだが、まとめて考察した方がわかりやすそうだったので1つの考察にまとめた

そのためにやや長くなってしまった

最近は寄生虫の話ばかりしているような気もするが、これは動画シリーズがDLCに突入したことで隠されていた狩人の秘密が明らかになってきているからである





2 件のコメント:

  1. 本筋とズレますが、寄生虫の症状が右目に現れるのは、大半の人の利き目が右目のために血流が右目に集中するからではないでしょうか。

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  2. おもしろいです。現実にも飛蚊症とかあるわけで、あれと統合失調症とのコンボと考えると急に実感が出てきてぞっとします。

    しかしブラボの虫の話に触れていると、やはり自然発生説を思い出しますね。奇しくも作中の文化レベルとあっていますし、作中の設定は現代のものよりも当時の思想をベースにしている感じがしますね。

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