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2020年7月27日月曜日

Bloodborne 考察36 養殖人貝

漁村に住む謎の軟体生物「養殖人貝」について考察する
※漁村概論は後日


漁村の生物

漁村には数種の生物が棲息している。それが以下である

漁村の住人
・漁村の住人(各種武器、怨念タイプ)
・漁村の司祭(長い杖を持った個体)
・瘤あたま(井戸にいる巨人)

魚犬
魚犬
軟体生物
軟体生物


養殖人貝



このうち漁村の住人と魚犬はともに「魚類」の特徴を持つ
軟体生物養殖人貝は「軟体生物」の特徴が強い


魚化

漁村の住人と魚犬は生物が「魚化」した個体である
元は人間と犬だったものが何らかの影響により「魚類」の特徴を持つに至ったものである

共通するのは背中の大きな背びれである



この両者は「苗床」に共通する「軟体化」は引き起こされておらず、全身が硬い貝(フジツボ)や皮膚で覆われている。このことから住人と魚犬は内に精霊を宿す「苗床」ではなく、人が獣に変化する獣化に近い性質のものであると考えられる

さて、本作において人を変異させるものといえば「」である

「右回りの変態」
血の発見は、彼らに進化の夢をもたらした
病的な、あるいは倒錯を伴う変態は、その初歩として知られる

人が血によって獣化する病気が「獣の病」である。その根源には獣血があり、獣血の主がいる(獣血の主が虫であるかについてはこの考察には関係ない)

血によって引き起こされた獣の病により人が獣化したように、血によって人が魚化するのが漁村の風土病である

ではなぜ住人は魚化したのか

感染を引き起こした血の主が「魚類の特徴」を有していたからである

つまるところ、上位者ゴースである

ゴースの背びれ

ゴースは住人や魚犬と同じように大きな背びれがある。またアートワークスの遺子には後ろ足に水かきが確認できる

本編において「獣の病」がヤーナムに蔓延したように、DLCでは「魚の病」が漁村に蔓延したのである

その原因はどちらも上位者の血であろう

ゴースの遺体を斬ると「血」が出る



軟体生物

漁村のいたるところに見られる「軟体生物
灯火の燃料としても使われている。「炎は神秘に通じる」

軟体生物といえば医療教会における「精霊」である

精霊の抜け殻
上位者の先触れとして知られる軟体生物の抜け殻
軟体生物は多種存在し、医療教会は総じてこれを精霊と呼ぶ

またナメクジに似た形状からエーブリエタースとの関わりも疑われる

真珠ナメクジ
地下遺跡の各所に巣食う、奇妙な小生物たち
特にナメクジは、見捨てられた上位者痕跡である

以上のテキストから、漁村の軟体生物は精霊でありエーブリエタースの痕跡であると結論づけることも可能である

しかしながら、この軟体生物をよく見るといわゆる「ナメクジ」とは形がかなり異なっていることがわかる

ナメクジの触手というより、頭足類(イカやタコ)の触手の生え方に似ている

形状的にはカレル文字「苗床」とゴースの寄生虫を装備したときに見られる軟体生物と似通っているが、細部は異なっている



上位者の赤子となった狩人とも似ているが、胴体の膨らみなど違いがある

またこの軟体生物は卵を産む
黒い球体のようなものが卵である

過去の考察で「瞳」とは精霊の卵であり、卵が孵化することが啓蒙であると述べた
その「瞳」大量に産み付けられているのである

これは「瞳=精霊の卵」であるとするならば、かなりおかしな事態である
ビルゲンワースや医療教会が求める「瞳」いたるところにあり、しかし一顧だにされず捨て置かれているのである

なぜ漁村に侵攻したビルゲンワースはこの卵をかき集めなかったのか?
なぜわざわざ床に落ちている「瞳」を無視して、住人の頭の中からそれを見つけ出そうとしたのか?

頭の中で孵化し、脳に寄生することが「瞳」を得る唯一の方法であるとも考えられる。寄生虫が宿主を操り、都合のよい行動をとらせることは現実世界においても確認されている

※例えばロイコクロリディウム(グロ注意)
この寄生虫に感染したカタツムリは、おそらく視界が遮られることが影響して[2]、明るいところを好むようになる。(Wikipedia)

※例えばカマキリに寄生するハリガネムシ
成虫になったハリガネムシは宿主の脳にある種のタンパク質を注入し、宿主を操作して水に飛び込ませ、宿主の尻から脱出する(Wikipedia)

※宿主の行動に影響を与えるという意味で狂犬病もその範疇に入るかもしれない(Wikipedia)

しかしながら、住人の頭の中から「瞳」を得たとして、その後はおそらく被検体の頭の中に瞳を移植するという行程に移ると思われるが、わざわざ頭の中から取り出さなくとも漁村の床に放置してある「卵」でも同じことができるのである

このように漁村の軟体生物を精霊と断定すると、大きな矛盾が生まれてしまうのである

こうした矛盾を生じさせないためには、この軟体生物は精霊ではない、とするのが適切であろう

この軟体生物は精霊でもなく、ゆえにエーブリエタースとも関係がない
ではこの軟体生物はゲームの設定的にどのような意図にもって漁村に導入されたのであろうか

結論を先取りすれば、この軟体生物は養殖人貝を位置づけるための装置なのである



養殖人貝

漁村の住人が「魚化」したのだとしたら、養殖人貝は「苗床化」している

苗床ということは内に精霊を住まわせているはずである
そして形態的な特徴の一致から、その精霊はゴースに巣食う「ゴースの寄生虫」の可能性が高い

※ここで精霊=寄生虫としているのは過去の考察からの応用である

しかしゴースの寄生虫は人に宿らないと言明されている

ゴースの寄生虫
海岸に打ち棄てられた上位者ゴースの遺体
その中に大量に巣食う、ごく小さな寄生虫
人に宿るものではない

ゆえに養殖人貝は人にゴースの寄生虫を寄生させた「苗床」ではない

養殖人貝が人の姿をわずかに残しているがために、人が養殖人貝に変異したと考えがちであるが、そうではない

養殖人貝は軟体生物にゴースの寄生虫を寄生させたものなのである

すなわち、あの軟体生物がゴースの寄生虫に寄生されることにより、養殖人貝の姿をなしたのである
そして軟体生物が人の特徴を持つに至ったのは、ゴースが人の特徴を有しているからである

ゴースは人のを持っている
また養殖人貝の尻尾ゴースの尾とよく似ている




養殖人貝の尻尾はやや膨らんでいるという特徴的な違いがあるが、これは養殖人貝の元が胴体の膨らんだ軟体生物だったからである

すなわち、ロマとロマの子らや、エーブリエタースと星の子らのように、養殖人貝とはゴースの子らなのである。そしてロマの子らや星の子らが実際に上位者の赤子ではないように、養殖人貝もまたゴースの実の子ではない

生物が精霊の苗床になることで、精霊の属する上位者に似た姿を持つに至ったものたちなのである

ロマの子らや星の子らは、おそらく元は赤子であったろう
それと同じように養殖人貝の元は、漁村に棲息するあの軟体生物なのである


Snail Women

養殖人貝の英名はSnail Womenである。直訳するとナメクジ女といった意味だろうか。ここからあの軟体生物がナメクジであることがわかる

しかし、ナメクジといってもエーブリエタースの痕跡である精霊としてのナメクジではなく、生物としてのナメクジである

生物としてのナメクジであるがゆえにビルゲンワースは価値を見いださず、その卵は捨て置かれたのである(エーブリエタースの痕跡としての真珠ナメクジは儀式素材として用いられる)


非眷属

これまでの考察で苗床=眷属としてきたが、苗床であるはずの養殖人貝眷属ではない
このことから、上記の仮説を修正する必要がある

眷属とは、トロフィーにあるように「輝ける星の眷属」である

トロフィー:イズの大聖杯
輝ける星の眷属たちの故郷 その封印たる「イズの大聖杯」を手にした証

眷属とは生物が苗床になることにより変異するものであるが、眷属になれるのは輝ける星に関連する苗床のみである

一方で養殖人貝に棲まうゴースの寄生虫は「輝ける星」とは無関係である

確かにゴースの寄生虫は星輪の幹たる「苗床」の精霊を刺激する。しかしながらゴースの寄生虫自体が星と関係するとはテキストのどこにも書かれていない

眷属とは輝ける星に属する「苗床」にのみ与えられた称号である
少なくともゴースは「輝ける星」ではなく、その先触れを宿した苗床も「眷属」ではない


漁村の軟体生物が養殖人貝に変異したことに違いはないが、もう1つ変異の方法が存在する
漁村の住人たちと同じく、ゴースの血によって変異したという仮説である

しかしながら、漁村の司祭が「共に呪詛を哭いておくれ」と頼む「すべての血のなきものたち」とは、ゴースの血を受けた者ではなく、ゴースの寄生虫により苗床となった者たちのことである

これは漁村の司祭が「苗床」を装着した狩人を仲間と認識し「呪詛溜り」をくれることからも明らかであろう

すなわち、ゴースにひれ伏し、従属していると思われる養殖人貝たちもまた「苗床」であると考えるのが自然と思われる


蛇足

漁村全体を考察しようとするとラヴクラフトの『インスマウスの影』やその他に登場するインスマウスを引き合いに出さなければならない。しかしクトゥルフホラーを持ち出すことで逆に断定しきれない部分も出てくると思われたので、今回は本編以外の知識はなるべく除外した

7 件のコメント:

  1. 最近クトゥルフの情報と絡めた考察が多かったので、こういう作品内の情報のみで考えていく考察が出て嬉しいです。

    クトゥルフも大好きですし、元ネタですから、考察するときには必要だと思うのですが、あまりそっちに偏りすぎると、ブラボじゃなくなってしまうと思っているので。

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    1. ありがとうございます

      元ネタ系の扱いは注意を要しますね。肝に銘じます

      私としては元ネタをある種のソナーとして用いています。本編で不明な点について手当たり次第にソナーを打って反応があればそれで考えてみる、という手法です

      しかしその考察が本編の伝承に矛盾するのであれば放棄しなければならないと思っていますし、本編の要素によって説明できるのであればそれ以上元ネタに触れる必要ないと思っています

      ですので元ネタ系を出すときは基本的に考察途上のものが多いです

      漁村に関していえば、あからさまなほどクトゥルフ色が強いのでついつい元ネタに走ってしまいがちですが、実はそれこそがある種の罠なのではないかと疑いはじめています

      漁村をクトゥルフで覆い隠すことで本当の核心部を秘匿しているようなイメージです

      クトゥルフに引きずられるとかえって本質を見誤る、というのがクトゥルフと漁村を比較してきた私の印象です

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  2. 考察材料が少なすぎるため、ほとんどネタ考察なのですが……
    「貝女」で今さっき検索をかけたときに偶然『嬰』という漢字がヒットしました。(本当は純粋に養殖人貝を検索したかっただけなんですけどね)
    ブラボの考察的には、赤子の意味を持つ字がヒットしたことが何やら意味深に感じます。
    あえて考察を続けるならば、養殖人貝はメルゴーやゴースの遺子に近い上位者の赤子みたいなものなのかも。つまり漁村でも赤子を得ようと模索していた訳です。
    漁村民たちは養殖という形で赤子を作ろうとした、たぶん上位者から受精卵やら上位者の幼体を取り出して育てようとしたのかなぁと妄想が広がりました。
    90%妄想の考察なのでたぶん当たってません。なので日頃のぞかせてもらっているシードさんのブログにひっそりと書いておきます(笑)

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    1. なるほど、嬰児の『嬰』はそれっぽいですね
      その想定に立って名前を読解するのならば、養殖人貝は「養殖された嬰児」となるでしょうか

      「すべての上位者は赤子を失っている」との兼ね合いが難しいですが、赤子を求める試みはヤーナムの歴史を通じて繰り返されていたようなので、漁村でそれが行われていなかったとも言い切れません

      養殖された赤子(嬰児)の直系が星の子らやロマの子と考えると名前との整合性もとれる気がします
      素晴らしい考察ありがとうございました

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  3. 評価が過大すぎると思いますが、考察を読んでいただきありがとうございます
    私としてはブラッドボーンをプレイ済みの状態を想定して考察を書いているので、プレイしていただけるとよりいっそう楽しめるかなと思います

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  4. 養殖人貝の考察面白かったです。
    魚人が獣の病の一種や、軟体生物の苗床化という考察に瞳の鱗が落ちます。
    養殖人貝及び漁村に関して私は漁村にはゴース信仰と上位者の養殖があるように思えました。
    以前、魚人の考察では魚人司祭の放つ雷がブラボ本編の青色ではなく黄色である、というこの差異は漁村には信仰が息づいている証拠だと思います。
    テキストにはありませんが漁村ではゴースは豊漁の兆しであった。悪夢から漁村の海に出現する際にゴースは小さな精霊を連れてくる。その精霊が魚の餌となり魚が大量に増えるか巨大化する。漁村の漁師がそれを獲るというサイクルを何年間か続けた。
    そして、ゴースが死に浜に打ち上げられた。漁村の者たちはその肉を食らい、魚人化と啓蒙を得た。
    そして、ゴースに成長する軟体生物がちょうど漁村にはいた。もしくは、ゴースに育つ軟体生物の生息地域が漁村であった事で、漁村が養殖した人貝は放流されるとゴースと成長して、また漁村に戻って産卵をする。漁村に大量にある軟体生物達はゴースが産んだ本当の子かもしれません。
    これが漁村のゴース信仰かもしれないと妄想します。漁村がこのゴース漁を続けるのは貧しいからです。漁村とヤーナムを比較し、漁村はあまりにも閑散しており、漁以外の経済活動が無い。だから、漁村は魚人となりながらも続けた。ゴースは幸をもたらすから。この事で漁村でゴースは神となり、信仰は極まり、司祭は黄色の雷を放つ程になったと考えられます。
    そして、シードさんが考察されたビルゲンワースのゴースによる人の産み直しの実験は御神体のゴースを汚す行為であり、ゴースの産む血の無き軟体生物を冒涜した事なったのではないかなと思いました。

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    1. ありがとうございます
      ゴース信仰をある種の蛭子信仰ととらえ、さらに人魚伝説を加えた漁村の構造はSEKIROとの類似点が見いだせてとても素晴らしい考察かと思います

      ソウルシリーズでは雷は信仰の象徴でしたね。ゴースへの信仰が雷となって現れる、というのは過去作から見ても説得力があるかと思います

      ゴースの子に関してはやはり3本目のへその緒の「すべての上位者は赤子を失い…」がネックになってくるかと思います(それを言えば遺子もそうですが)

      またゴース→軟体生物→養殖人貝→ゴースという生命のサイクルが完成していると、現時点でも赤子を失っていないことになる気がします(解釈次第ですが)

      冒涜に関しては漁村の司祭が「冒涜的殺戮者」とビルゲンワースを名指ししていることや、漁村のささやきが「母は殺された、赤子は奪われた」とあることから、神を殺し神の子を奪ったことを指すのかなと思います(その後の行為も冒涜的だったと思われます)

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