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2020年5月12日火曜日

Bloodborne 考察23 アメンドーズ

アメンドーズ

アメンドーズの名は、アーモンドを意味する日本語方言「あめんどう」の複数形である(wikipedia)

アメンドーズあめんどうず(複数形)=アメンドウたちAlmonds

という解釈である

これは実際に複数のアメンドーズが作中に確認できることと合致している
またアーモンドの種子とアメンドーズとは、楕円形の形や表皮の凹凸など形状的にも似通っている


Amygdala

アメンドーズの英名 Amygdala扁桃体を意味する言葉である

扁桃体(へんとうたい、英: Amygdala)は、ヒトを含む高等脊椎動物の側頭葉内側の奥に存在する[1]、アーモンド形の神経細胞の集まり。情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つことが示されており、大脳辺縁系の一部であると考えられている(wikipedia)

Amygdala自体に複数の意はないが、扁桃体は通常2つあることから少なくとも単体とは考えられていない

また扁桃体は情動とくに恐怖や記憶と関係し、『2006年の研究では、患者が恐怖表情や恐ろしい場面に直面した際に扁桃体の過剰な活動が見られることが示された。』(wikipedia)という

人が恐怖を感じたときに活発に活動する扁桃体は、赤い月が接近し人々の恐怖が最高潮に達した際にアメンドーズが姿を現すことと通ずるものがある

また人の脳に寄生するトキソプラズマは、その巣をしばしば扁桃体に形成するともいわれる


アーモンドの木

Amygdalaギリシャ語と解釈すると「アーモンド」となり、これは日本語名アメンドーズと意味が重なる

つまりAmygdala(アメンドーズ)という名前は、英語として解釈した「扁桃体」という意味も含まれるかもしれないが、第一義的には植物のアーモンドを前提として命名された名前と考えられるのである

植物としてのアーモンドは、バラ科サクラ属落葉高木である(wikipedia)

※SEKIROの桜竜もサクラ属であり、サクラ属の上位者たるアメンドーズと設定的に同じである。またサクラ自体の原産地もヒマラヤと考えられ、中央アジアかつ崑崙山脈を含むことから、SEKIROとブラッドボーンの共通性を考えるうえでも重要である

ヘブライ語でアーモンドを意味する「シェケディーム」は、「見張る」、「目覚める」を意味する「サクダ」や「シャカッ」と語源が同じである

これは作中において、アメンドーズが狩人を見張るような動作をすることの理由の1つである
※後述するが「監視者」というフレーズは他の文脈でも登場する

またモーセの兄アロンの杖はあめんどうの木で作られているという(wikipedia)

アーモンドの木には「監視者」「用心」の意味があり(『イメージ・シンボル図鑑』)、ユダヤ教の『大燭台(メノーラー)は、七枝のアーモンドをかたどったものであった。』(『旧約聖書の世界』)という

以下が大燭台の画像である

大燭台の形はカレル文字「深海」と酷似している


「深海」系のカレル文字は本編では禁域の森悪夢の辺境に落ちているが、禁域の森には地面からキノコ状に生えたアメンドーズの姿が見られるし、悪夢の辺境のボスはアメンドーズである

また大聖堂にはヒゲの生えたアメンドーズの像が並んでいるが、その最奥部になぜか葉を落とした樹木が一本立っている
※手前にいるのはエーブリエタースの像だと思われる

これは葉を落としたアーモンドの木である(上述したようにアーモンドは落葉高木)
※落葉した画像が見つからなかったので枝がよく見えるものを


つまるところ、大聖堂の階段に立ち並ぶするアメンドーズ像からも分かるように医療教会アメンドーズを崇拝対象としていたのである

※正確にはアメンドーズたちのなかでもその主(あるじ)を主神とし、立ち並ぶアメンドーズ像はその配神(はいしん、主神以外に祀られる神)である



落とし子

蜘蛛のパッチによればアメンドーズは「憐れなる落とし子(piteous bastard)」である

…ああ、アメンドーズの件は、気にするな
あれは憐れな落とし子。…ゆえに、救いもあったろう(蜘蛛のパッチ)

落とし子という単語は他に「古の落とし子Lost Child of Antiquity)」や「ローランの落とし子(Bastard of Loran)」として登場する

古の落とし子カインハーストの他に聖杯ダンジョンにも登場するが、Lost Child は「捨て子の巨人(Giant Lost Child)」というふうに、捨て子というニュアンスが強く、またアメンドーズのそれ(Bastard)とは使われている単語も異なっている

英語のBastardとは私生児や庶子という意味の他に「雑種」や粗悪品といった意味がある
※SEKIROの弦一郎も市井の出とされある意味で落とし子といえるのかもしれない

古の落とし子のプログラム上のIDは「LarvaMegabat」であり、直訳すると巨大蝙蝠の幼生である。ここに私生児や雑種といったニュアンスはない

また捨て子の巨人のIDは「AbandonedGiant」であり、直訳すると「放棄された巨人」であり、これなどは何者かによって作成された巨人という設定までうかがえるものである



さて、アメンドーズは上位者である。上位者とは本作においては神とも神に近いとも言われ、世界そのものに影響を与えられるような絶大な力を持つ存在である

それを示すように、アメンドーズはプログラム上のID では「FalseGod」すなわち「虚偽の神」と名づけられている

虚偽の神を「not神」(神ではない)と解釈することもできなくもないが、事実アメンドーズは上位者である

またアメンドーズの死後、パッチが「私は神を失った。新しいそれを、探さなければならない」と口にすることから、アメンドーズは神であるが「不誠実(False)」な神と解釈するほうがより自然である

アメンドーズは神であるが「不誠実」であり人に邪悪な偽りを吹き込むような神なのである

これによってパッチの以下のセリフも意味が通じるようになる

すまんが、考え事をしているんだ
そうさな、優しげな神と、その愛のひけらかしについて(パッチ)

ここにいう「優しげな神」とは虚偽の神アメンドーズのことであり、その愛のひけらかしとは人をたぶらかすような邪悪な甘言のことである



クトゥルフの落とし子

アメンドーズ像の容貌はラヴクラフトの描いた「クトゥルフ」に酷似している
ラヴクラフトの描いたクトゥルフ
大聖堂に並ぶアメンドーズ像
宮崎英高氏によれば、ブラッドボーンは『クトゥルフの呼び声』に大きな影響を受けたという(インタビューより)

当然ながら両者が類似しているのは単なる偶然ではなく意図的なものである

『クトゥルフの呼び声』には旧支配者を祀る「大祭司クトゥルフ」なる異形の存在が登場するが、「大祭司クトゥルフ」がアメンドーズであるかというと、そうではない

「大祭司クトゥルフ」は単数であり、複数個体が確認されているアメンドーズとは生態が異なっている

だが、この大祭司クトゥルフが地球に飛来した際に同行してきた眷属たちがいる
※ここにいう眷属とはブラッドボーンにおける眷属とは概念が異なる

それがクトゥルヒと呼ばれる「落とし子たち」である(wikipedia)

落とし子たちは「クトゥルフの星の落とし子(Star-Spawn of Cthulhu)とも呼ばれ、詳細はニコニコ大百科に詳しい(ニコニコ大百科)

クトゥルフの星の落とし子はクトゥルフによく似ており、クトゥルフ神話TRPGでは上級の奉仕種族に分類され、「5体の監視者」と呼ばれるエリート個体の存在も確認されている

また星の落とし子たちは主(大祭司クトゥルフ)の代わりに信者たちの崇拝を受ける上級司祭の役割も果たしているとされる

ブラッドボーンにおいて、クトゥルフに似たアメンドーズが何をしているかというと、「監視」である。その様は主人公が近付いた時に顔を向けてくることからも明白である

また主の代わりに崇拝を受ける偽の神としても活動し、大聖堂に祀られたアーモンドの木ならびにアメンドーズ像はそれを象徴的に示しているのである

星の落とし子たちも大祭司クトゥルフと同じように海底都市ルルイエやムー大陸各地封印されているとされるが、この邪神たちは大祭司クトゥルフと同じように夢を通じて人を操って崇拝させるという



ルルイエ

大祭司クトゥルフは海底に沈んだ石造都市ルルイエにて眠っているが、眠りとはここでは「封印」であり、封印が解けたときに石造都市は浮上し、地上に狂乱を撒き散らすとされる

呪われたトゥメルの冒涜遺跡のボスは順番に、旧主の番人、旧主の番犬、アメンドーズである

ここでアメンドーズだけが異質であり、一見したところで法則不明である

しかしながら、旧主の番人の装束には以下のようなテキストが見られる

骨炭の仮面
最古の番人たちの、骨炭の仮面
上位者たちの眠りを守る番人たちは
その姿を魂と業火に焼かれ、灰として永き生を得たという

最古の番人たちは、「上位者の眠り」を守っているのである
眠りとは上述したように「封印」であり、封印されているのは大祭司クトゥルフである

つまるところ、呪われたトゥメルの冒涜においては、番人の存在からその最深部に封印されている上位者が推定され、そのうえで最後にアメンドーズが登場することから、封印された上位者を大祭司クトゥルフに類比することができるのである

もっと簡潔に述べれば、番人の封印する上位者たちとは、大祭司クトゥルフとその眷族たち、すなわちアメンドーズの主ならびにアメンドーズたちなのである

※大祭司クトゥルフと星の落とし子たちは姿が似ているとされる。ゆえに本作におけるアメンドーズの主も、アメンドーズに似た姿をしていると思われる

※上位者の眠りを守る番人たちを倒した後に、当の封印されていた上位者が登場する、というのはゲームの流れ的にも自然である



深海

大祭司クトゥルフの眠る石造都市ルルイエは海底に沈んだとされる。海底とは深海のことであり、大量の水が眠りを守る断絶であることは、カレル文字「深海」「湖」などで言及されている

「深海」
大量の水は、眠りを守る断絶であり、故に神秘の前触れである
求める者よ、その先を目指したまえ

また大祭司クトゥルフとその眷族は暗黒星から到来したとされることから、「宇宙」とも繋がりがある

医療教会が初期に「海」に瞳を求め、やがて聖歌隊が「宇宙」に思索を求めるようになる経緯には、宇宙から到来したクトゥルフの海底都市というイメージが反映されているのである



クトゥルフの系譜

クトゥルフはタコとドラゴンと人とを戯画化したような外見をしているとされる。また口元からは無数のヒゲが生え、胴体は鱗に包まれ、未発達の翼を背中に備えている

端的に言ってクトゥルフは海棲生物的な特徴を持つ邪神である

邪神の落とし子でありその似姿をもつアメンドーズの他にも、ブラッドボーンには海棲生物的な特徴を持つ上位者や眷族、怪物が登場している
アメンドーズの尻尾

具体的に言うと星の娘エーブリエタースであり、海辺に打ち上げられたゴースであり、あるいは白痴のロマである

以下はラヴクラフト自身が作成した家系図(架空)である

1933年4月27日付 ジェイムズ・F・モートン宛の書簡(『Selected Letters of HP Lovecraft IV』)

中央あたりにCthulhu(クトゥルフ)の文字が確認できると思う
その子孫をたどっていくと、下の方にGhoth the Burrowerの名前が見えるかと思う

Ghoth the Burrower つまり「ゴース」である


またロマはゴースによって上位者になったと考えられることから、ロマもまたクトゥルフの系譜になる

すなわち、海棲生物的な特徴を有する上位者ならびに眷族はクトゥルフの親族であり、大祭司クトゥルフが海棲生物の特徴を有するがゆえに海棲生物的な造形をしているのであり、また宇宙に由来するゆえに宇宙や星と関係する名がつけられているのである



補足:眷属

作中に登場する眷属は以下の9種族である(Bloodborne設定考察 Wikiを参考にした)

眷属


  • 星界からの使者
  • 脳喰らい
  • 蛍花
  • 学徒
  • 星の子ら
  • ロマの子ら


眷属かつ上位者


  • 星界からの使者(大)
  • 白痴の蜘蛛、ロマ
  • 星の娘、エーブリエタース


悩ましいのはゴースによって上位者となったと思われるロマが眷属であるのに対し、ゴース自身は眷属でないことである。また、クトゥルフに近しいものであるにも関わらずアメンドーズも眷属ではない

この差異はいったいどこから来ているのだろうか

結論から先に述べれば、眷属とは元人間であり上位者によって人ならぬ存在に変化させられた者たちのことである

ゆえにもともと上位者であるアメンドーズやゴースは眷属ではない

このうち星の娘エーブリエタースは、封印された上位者たちもしくはそのにより上位者に引き上げられた人間である

また白痴の蜘蛛、ロマゴースによって上位者に引き上げられ、星界からの使者(大)はエーブリエタースによって上位者に引き上げられたものと考えられる

上位者でない眷属たちはそれぞれ、エーブリエタースやロマ、星界からの使者によって人が人ならぬ存在に変異させられた下級奉仕種族とも呼べる者たちである



6 件のコメント:

  1. 眷属と言えば"星界"自体が無形の上位者で、イズ系のヌメヌメした連中はその眷属だ、みたいな考察を見たことがあります。

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    1. 星界の眷属を水棲生物系とすると、星と海を繋ぐものが必要になりますが
      星界=星海=海という連想が働いているのかもしれませんね

      おそらく無形ということで想定されているのはオドンでしょうか
      オドンの赤子(アリアンナの赤子)はエーブリエタースの幼生の姿をしています

      また過去の考察で触れた記憶がありますが、宇宙的エネルギー「オド」を上位者として解釈したものがオドンである、と考えるのならば星界=オドンというふうにも考えられる気がします

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  2. アメンドーズの転移について、狩人の悪夢へ運んでくれたのはゴースがアメンドーズ(クトゥルフ)の子孫だからなのは納得できたが、教室棟→悪夢の辺境に飛ばされた理由がさっぱり分からん。
    アメンドーズの信者であるパッチが導いたせいだが、そもそもパッチは何故狩人をあんな手間掛けてあそこまで導いたのだろう。ソウルシリーズのパッチなら略奪が目的で、行動も単純だから分かり易いが、ブラボのパッチは金貨にあまり興味はなさそうだし、狩人そのものが憎くてアメンドーズに殺させようとしたくらいしか思いつかない。けれどわざわざ殺す為にあそこまで導くかと言われれば余りに回り道すぎな気もしますし、謎が多いキャラです。
    そもそも、アメンドーズの事を知っているの作中だと彼だけなんですよね。

    後、「考察21 古い血」で虫についての考察を上げたのでもしよければ意見して下さい。

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    1. 「たとえ私が君に生贄を望んだとしても、それは心の中のこと」と自白することから、信奉する神への生贄として狩人を誘い込んだのだと思われます

      隠し街ヤハグルなんかですと、アメンドーズと交信しているようなメンシス学派や、祈りを捧げる老女たちなどが確認できることから、知っている者はそれなりにいるような気がします

      また、各教会にはアメンドーズの像もたくさんありますね

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  3. 考察でも何でもないし周知かも知れませんがアメンドーズのあみあみの中にアーモンドがあるっぽいんですよね

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  4. アメンドーズに捕まれるとワープするの、あの手が狩人の使う灯火と同じ「灯り」だからかも知れませんね。メノーラーがモチーフなら、当然手の先に当たるのは蝋燭の火ですし。

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