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2020年4月22日水曜日

Bloodborne 考察21 古い血 ※虫追記


通過儀礼

血の医療とはヤーナムの風土病「獣の病」に対する治療法である
古都ヤーナム
遙か東、人里離れた山間にある忘れられたこの街は、
呪われた街として知られ
古くから、奇妙な風土病「獣の病」が蔓延っている(公式サイトより)
主人公が血の医療を受けた後に見る「獣が炎によって撃退されるムービー」は、獣の病に対する血の医療の効果を象徴的に示したものである


血の医療を受けたとしても多くの者には劇的な変化は起こらない。なぜならば彼らの矮小な精神には恐ろしい獣は棲みついていない、あるいはいたとしても小さな獣性だからである

輸血液
血の医療で使用される特別な血液。HPを回復する
ヤーナム独特の血の医療を受けたものは
以後、同様の輸血により生きる力、その感覚を得る
故にヤーナムの民の多くは、血の常習者である

だが常日頃は心の奥底に潜む獣性を理性の固い枷で拘束している者、巨大な獣に転ずるような獣性を秘めている者恐ろしい獣となるのである

剣の狩人証
そして、聖職者こそがもっとも恐ろしい獣になる

しかし稀におのれの人間性に潜む獣に打ち克つ者が現われる

それが狩人なのである

いわば血の医療獣への勝利は人が狩人になるための通過儀礼なのである

狩人になるためには、その精神に獣性を秘めていなければならない。また、その獣性に打ち克たなければならないのである

医療教会の狩人に聖職者が多かったのも、彼らが獣を棲まわせていることが多かったからであろう


血の医療に使われる血については、上位者のものであるのかトゥメル人のものであるのかヤーナム人のものであるのかも判然としない

「拝領」(カレル文字)
それは医療教会、あるいはその医療者たちの象徴である
血の医療とは、すなわち「拝領」の探求に他ならないのだ

拝領には貴人から賜るという意味がある。ゆえにその血は人類よりも格上の者であると考えられる

またアデーラの血施しは、医療教会の拝領の価値の象徴であって、拝領そのものではない。また「施し」という言葉が使われることから拝領とは厳密には異なる

アデーラの血
教会の尼僧たちは、優れた血を宿すべく選ばれ
調整された「血の聖女」である
その施しは、医療教会と拝領の価値の象徴なのだ

次にトゥメル人の血である可能性であるが、トゥメルの女王ヤーナムの血は医療教会によって穢れた禁忌の血とされていることから、トゥメル人の血でもない

アリアンナの血
古い医療教会の人間であれば、あるいは気づくだろうか
それは、かつて教会の禁忌とされた血に近しいものだ

血の医療に使われる血についてはエミーリアの祝祷に詳しい

聖血を得よ 祝福を望み、よく祈るのなら 拝領は与えられん(エミーリアの祝祷)
Seek the old blood. Let us pray, let us with. To partake in communion.

ここで聖血は old blood と英訳されている

このold bloodは、警句「かねてを恐れたまえ(Fear the old blood.)」に言われる血である

つまり医療教会の血の医療は、聖血(old blood)が根底にあり、その血はヤーナム人(血の聖女)のものでもトゥメル人のものでもないのであれば、上位者の血ということになる

※クトゥルフ神話においても神々は Great Old Oneと呼ばれる。また「古のもの(old one)」や「旧神(Great Old One)」の名でもある



獣血の主

とはいえ実はもう一つだけ血の持主が考えられる

恐ろしい獣である

感染症のワクチンのように薄めた獣血を注入することで血中に抗体を作り出し、獣の病への免疫をつけるのである

ボス「獣血の主」とは、獣血の供給源であることを意味するということも考えられる

医学的にも理にかなっているように思えるし、ワクチンが強すぎた場合その病気に罹患する、つまり獣化するという現象の説明も可能である

しかし二つほど問題がある

まず獣血が古い、あるいは古くなくてはならない理由がないのである

また獣血の主は英語版では Bloodletting Beast と訳されるが、Bloodlettingは「血塗れ」、「瀉血」、「流血」、「放血」といった意味であり、血のというニュアンスは存在しない


ここで言われる「」とはあの獣のことではなく、獣についた「寄生虫」のことである。獣血の主についた寄生虫は百足の形をしており、その形状やモーションはSEKIROの「蟲」と酷似している

Bloodborneにおける「」は「人の淀みの根源」とされる


連盟の狩人が、狩りの成就に見出す百足の類
連盟以外、誰の目にも見えぬそれは
汚物の内に隠れ蠢く、人の淀みの根源であるという

その虫に寄生された獣血の主がドロップするのが「冒涜の聖杯」であり、呪いとは上位者の怒りに触れた証であるという

獣血の主に寄生した「虫」を呪いととらえるとしたら、それは上位者の怒りに触れた証なのだから、「虫」は上位者に由来するものであろう

これはSEKIROにおいて、人を人外にする「蟲」の源をたどれば「竜胤」に行き着くのと、まったく同じ構造である

「虫」もそのをたどれば「上位者」に行き着くのである
※上位者の眷族が虫ということではなく、あくまでも上位者の呪いに影響された「虫」が人や獣に寄生するようになった

そしてSEKIROにおいて蟲に寄生された赤目が不死に近いような異常な生命力を得るように、本作においても「虫」は寄生した対象に異常な生命力を付与するのである

これは血の聖女と言われるアデーラやアデラインの血を飲むと体力が回復しつづけるという効果からも裏付けられる

本作における「虫」は成長するとやがて宿主の左顔面を割って外へ出る
この症状はローレンスの頭蓋獣血の主に共通するものである(あるいは遺跡に祀られた頭部にも)

ここまで「虫」が育った宿主の体は「聖体」とされるのである

なぜならば充分に育った虫は「卵」を生みそしてそれは「聖血」として「拝領」されたからである

その卵は人の血や汚物に棲みつき、人の淀みの根源となって、人を淀ませる
やがて人はその淀みにより獣化するのである

寄生虫による感染、これがヤーナムの風土病「獣の病」のメカニズムである


※以下の考察は「old」や悪夢ローレンスの「」に着目した仮説である
聖血=虫説とは相容れないが、作中においても現実のローレンスと悪夢のローレンスはその姿が異なることから、両方の説を並記することにした


Old

ここで簡単にまとめると、血の医療に使われる血とは「聖血」のことであり、その血はウィレームが恐れた「」であり、またold bloodと訳される「古い血」のことである

しかし一言に「古い」といっても、いったい何が古いのかまったく分からない

クトゥルフ神話の設定を踏襲し、上位者をあらわすのに Great Old One から old(古き)というターム(用語)を拝借した、とも考えられるが、作中においては old の文字は「旧主」として使用されている

ボス「旧主の番人」ならびに「旧主の番犬」の旧主は英語版では Old Lords と訳されているのである

そしてOld Lordsとは「上位者たち」または「上位者たちの眠り」のことなのである

骨炭の鎧
最古の番人たちの、骨炭の鎧
上位者たちの眠りを守る番人たちは
その姿と魂を業火に焼かれ、として永き生を得たという
故にその鎧は、いまや白く筋張った脆い骨炭にすぎないが
それでもなお、我々には理解できぬ遺失技術の神秘を残している

その番人は上位者を守ることで灰になるほどの業火に焼かれており、これはOld Lordsの属性がであることを示唆している

そしてこのとは、獣の病を撃退した炎でもある

古い血とはOld Lords、つまり最古の番人たちの守る上位者の血であり、その属性はである。故にその血を受け入れることで、獣血を炎によって撃退することができるのである

Old Lordsの炎によって獣血を撃退した者こそ狩人である
故に狩人はOld Lordsの支配下にある者であり、旧主の番人の末裔ともいえる

骨炭の仮面
鋭く尖った大きな帽子は、古い番人のシンボルであり
彼らがある種の罪人であった証であると考えられている

「…お願いだ、悪夢を、終わらせてくれ… たとえ罪人の末裔でも… …憐れじゃないか。俺たち、狩人たちが…」

狩人が罪人とされるのは、旧主の番人から続く罪人の伝統に連なっているからである



二つのトゥメル

話は少し変わるが、女王ヤーナムの治めるトゥメルは最古のトゥメルではない
女王ヤーナムはあくまでもトゥメル文明の末裔たちの王なのである

トゥメル=イルの大聖杯
トゥメル=イルとは、トゥメル人の王ないし王都を意味する
それは、上位者の眠りを祀るトゥメル文明の末裔たち
せめて彼らのを戴こうとした証しであろう

つまり女王ヤーナムのトゥメルは、時系列的には最初にあったトゥメルのかなり後に存在したことになるのである

そして最古のトゥメルに生きていたのが、旧主の番人たちである

骨炭の仮面
最古の番人たちの、骨炭の仮面

トゥメルには二つの時代が存在する

一つ目は最も古いトゥメルであり、旧主とその番人たちの生きた前トゥメルである
二つ目はその末裔たちが興した女王ヤーナム後トゥメルである

この二つのトゥメルは端的に言って祀る神が異なっている

前トゥメルは炎の上位者を祀り、その番人たちは血すら渇き果てた「」である
後トゥメルは血の上位者を祀り、その伴侶は特別な赤子を抱く「女性」たちである

血のトゥメル(後トゥメル)の血統は薄まりながらもカインハースト→ヤーナムと受け継がれ現代のヤーナム人へと到ったのである。だが、彼らは血によって人を失う病気、つまり獣の病によって苦しんでいるのである

※獣の病についてはまだ本格的に考察していないが女王ヤーナムの呪いなのかもしれない
※また後トゥメル人は前トゥメル人の末裔であるから、前トゥメルの血も現代ヤーナム人に受け継がれているともいえる


血の医療

女王ヤーナムに由来する「獣の病」、その風土病を克服するために見出されたのが「古い血」である

古い血は獣の病を炎によって浄化する。なぜならば獣は炎を恐れるが、古い血は「炎の上位者」のものであるからである

火炎瓶
かつて旧市街の悲劇でそうであったように
病の浄化の偏見もあり、獣狩りに炎はつきものである
だからだろうか、ある種の獣は病的に炎を恐れるという


血の医療を受け入れた者は、「おのれの獣性」と対峙しなければならない(獣化衝動は人間性と相反する)


獣に変身したいという衝動は、私たちが皆持っている人間性という基本的な感覚と相反するものです。その人間性は一種の手錠のようなもので、変身をその場に留める役割を果たしている。変身したいという衝動を固定している手錠が強ければ強いほど、その手錠が最終的に壊れたときの反動は大きくなります。その結果、あなたはより大きな生き物に、あるいはよりねじれた生き物に変身することになる。この二つの衝動の間の葛藤が、ここでは一つの概念となっています。(インタビューより)



人間性の炎によって獣性に打ち克ったものだけが、獣を狩る狩人になれるのである


※この血と炎の対立軸は、クトゥルフ神話におけるナイアルラトホテップとクトゥガとのそれに近いのかもしれない
※血の上位者に連なる獣は炎に弱く、旧主の番人の骨炭の鎧は血に弱い



Old Lords

血の上位者の候補としては滲む血がその本質とされるオドンや、月の魔物が挙げられる

だがOld Lordsに関しては、複数形であるように複数個体いると思われるが、おそらく作中には登場しない

かつて旧主を守った番人番犬がわずかに生き残っているだけである
しかしながら旧主の番人の骨炭装備から旧主の性質を逆算することも可能かもしれない

※ここから下は推測や考察が飛躍することを先に述べておく

骨炭の仮面には8つの眼がある。8つの眼をもつ生物としてはクモがよく知られている



また旧主の番人はモーションや体型が女性的であるという指摘は以前からなされてきた
つまり旧主の番人は炎の上位者に侍る女性たちなのである

さてここからさらに飛躍してフロムの別ゲームとの比較にうつる

骨炭シリーズのとんがり帽子はデモンズソウルからおなじみの、ある属性を持つ女性たちと共通している

とんがり帽子をかぶっているのは、デモンズソウルに登場する闇の魔術師ユーリア、DS1の魔女ビアトリス、DS2の魔女ジャーリー、DS3の闇術士カルラといった魔術師の女性たちなのである(その何人かは罪人として知られる)

血晶古老ローガンなど似た帽子を被っているが、どちらかというと「ビッグハット」の部類である

旧主の番人たちも上記の女性魔術師たちの系譜と考えるのならば、女性の可能性が高い

また番人たちは魂を焼くほどの業火にさらされているが、ソウルシリーズでは呪術の火混沌と関連することが多い

混沌の炎の種火
混沌の炎の種火は廃都イザリスのであり
DS1には混沌の娘が登場するが、彼女の下半身はクモである

これを混沌の炎に侍るクモ属性の女性の構図ととらえるのならば、旧主の番人の設定とよく似ている

本作にはクモ属性を持つと思われる上位者が一体いる。それが「メルゴーの乳母」である(8本の腕やわずかに宙に浮いていること、彼女の配下がクモであることなど)

メルゴー高楼に登場する蜘蛛型の敵のEnemy IDは「Devotee_of_Death_And_Darkness(死と闇の信者)」であるが、メルゴーの乳母のEnemy IDは「LesserDemon_Death_And_Darkness(死と闇の下級悪魔)」である

ここで女性やクモと関連づけられているが、DS2においては王妃デュナシャンドラ深淵から飛び散った破片のひとつとされ、つまるところ深淵の娘たちである

混沌や闇、深淵といったネガティヴな現象には女性がひも付けられているという観念があり、それが本作ブラッドボーンにおいても旧主の番人という形として表わされたのである

そして旧主の番人が侍るのは「業火」であり、旧作の設定を援用するのならば、それは混沌の業火なのである

故に旧主とは混沌の主、となる(あるいは混沌=闇=深淵と考察することもできるかもしれないがここでは省く)

クトゥルフ神話側から考察するのならば、クトゥルフ神話の旧神(Old Ones)リゲル(オリオン座)ベテルギウスから到来したとされる

リゲルもベテルギウスも恒星、つまり太陽のように自ら光を放つ星であり、その番人を務めるのであれば、必然的に恒星の放つ業火に焼かれることとなる

また旧神のうち名前の判明しているノーデンスは「大いなる深淵の王」である

クトゥルフ神話における旧神と本作の旧主とは、その名前(old)に加えて設定までもがほぼ重なるのである(複数存在することも含めて)

※上位者の恒星が実際にあるわけではなく、それはおそらく悪夢の形で存在していたのであろう


ローレンス

ローレンスの頭蓋は医療教会のはじまりとして機能したという

彼の獣としての姿は、炎の獣であり属性的には前トゥメルの上位者の系列である

獣となったローレンスの血炎の上位者に属する。故に獣の病を撃退する力を持つのである

医療教会は獣化したローレンスの血を、その治療薬として使用したのである

よって確かにローレンスの頭蓋(それはローレンスが獣化した証)は、医療教会の血の医療のはじまりとして機能したことになる

それ以前は血の医療を確立するには血の量が足りず、医療教会としての活動は不可能だったからである

古い血の出所は不明だが、ビルゲンワース神の墓で見つけてきた聖体から得られたと考えられる。そしてそれは確かに(後に)医療教会と血の救いを生んだのである

またローレンスの頭蓋聖体として大聖堂に祀られているのも間違ってはいない

要するに聖体は二つあったのだ

一つはビルゲンワースが神の墓地から持ちかえった聖体
これは後に医療教会と血の救いを生むことになる

もう一つはローレンスの頭蓋である
これは医療教会のはじまりとして機能した後に、現在は大聖堂に聖体として祀られている

アルフレートの言葉は矛盾していたのではなく、聞き手が二つの聖体を一つのものと解釈することから発生する錯誤なのである




蛇足

以前から「血」が人を獣にし、「血」が治療に使われ、その結果「炎」が獣を撃退する、という流れに不可解なものを感じていた

「血」は穢れたものであると同時に聖なるものとしても考えられているが、それは「血」の種類が違うことからくる区別であることは、アルフレートの言葉のとおりである

よっておそらくは「血」には幾種類かがあり、そのうちの一つが人を獣にし、一つが炎となって獣を撃退するのであろうと考えたのである

問題となったのはこの「炎」がどこから来たかである

獣の病の抗体のイメージとすることも可能であったが、わざわざ「古い血」としていること、また old blood を持つに相応しい Old Lords が存在していることから、旧主の血仮説を提唱したものである

13 件のコメント:

  1. 獣が炎によって撃退されるムービーは、月の光が当たって
    燃えたのだと思っていました。

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    1. なるほどそれは思いつきませんでした。月光の聖剣の光波にあるように、神秘の月の光はこの世界では何らかの力を持っていますね。ルドウイークが見たという導きの光との関連も考察してみたいです

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    2. ひょっとしたら炎はオドン由来……?
      オドンは水銀弾等と縁があるっぽい(オドンの蠢きなど)上位者で、水銀弾は火器の弾だから
      オドン=水銀弾=炎
      のような関係ができるのかも?
      めちゃくちゃ弱そうな根拠だけど……

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  2. あそこで月の魔物に選ばれたということです。
    主人公のご都合的展開で

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    1. ブラッドボーンはある種のギャルゲーですから、わりとそういう主人公優位の展開になりますね
      結局のところ主人公は赤子になって幸せになれましたし

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  3. トゥメル人が祀っていたのは姿なきオドン(ノーデンス)ではないでしょうか? BloodBorneでは眠り=断絶=封印が同じ意味を示しており、「上位者たちの眠り」と複数扱いの事から、上位者(旧支配者)の封印をトゥメル人は守っていたのでは?
    そこに封印を解こうとするニャルラトホテプが月の魔物と同じく化身である血の女王(赤の女王)を送り込み、血の交わりによって上位者の赤子メルゴー(ノーデンスとニャルラトホテプの子?)に泣かせる事で眠り(封印)を解かせ、目覚めた上位者(旧支配者)の一柱である炎の上位者(クトゥグア)が炎を撒き散らしたのではないでしょうか。
    主人公の獣が燃えるのは、ノーデンスがニャルラトホテプに対抗すべく天敵であるクトゥグアの血が混ざった輸血液を輸血されたからではないでしょうか?(血の医療者=ノーデンス説)

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    1. おお、いかにもクトゥルフ作品に出てきそうなストーリー展開ですね

      現ヤーナムで上位者の来臨を望む者とそれを隠す者の争いがあったように
      過去のトゥメルにもそうした出来事があったというのはとても説得力があります

      封印と封印を破る者の争い、というクトゥルフ的な観点は私としてはとても新鮮に思えました

      血の医療者=ノーデンス説も『霧の高みの不思議な家』に登場する恐ろしい老人や、そこに登場するノーデンスを彷彿とさせて面白いです(なんとなくあの家のイメージは本作にも反映されている気がします)

      またノーデンスは深淵の神ですから確かに古トゥメル人の祀っていた神に相応しいように思えます

      私としては眠りを眠り→夢(悪夢)というふうに積極的、能動的な状態としてとらえていたので封印や断絶との関わりは盲点でした。しかし夢もまた現実からの断絶と考えるとそう解釈できますね

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    2. 血の女王がニャルラトホテプの化身「赤の女王」、姿なきオドンがノーデンスの説はけっこう根拠があると思います。
      血の女王の子孫であるカインハ—ストの感覚麻痺の霧と月の魔物の血の泡は同じく回復を阻害します。また赤の女王は蛇の髪と蝙蝠の翼と牙を持った怪物の姿も持ち、これらの要素の内蛇は禁断の蛇の寄生者、蝙蝠はカインハ—スト城の古の落とし子に受け継がれています。
      次にノーデンスの伝承では姿が見えず、女性に強姦して子を孕ませた逸話があります。また、ヤーナム各地に建てられている石像ですが、犬やグリフォンなど、ノーデンスの一面であるヌァザ、ゼウスを祀る意味があったのではないでしょうか?
      もう一つ、ビルゲンワースの残った学徒やウィレームはノーデンスの信者だったのではないでしょうか? 墓守シリーズの地下遺跡の神秘とは、トゥメル人が祀っていた神、ノーデンスの神秘だと考察します。学徒やウィレーム先生の身体が軟体動物や刺胞動物門に近づいていたのは、海神であるノーデンスの信者となったためその恩恵を受けた結果、あのように変異してしまったのではないでしょうか?
      そう考えると、何故ウィレーム先生がロマの居場所を教えてくれたか説明ができます。ノーデンスには奉仕種族である夜鬼が仕えていますが、この姿が使者によく似ているのです。つまり、月の狩人とは、ニャルラトホテプとノーデンスの両方から目を付けられており、ノーデンスの使者である主人公に対し、信者であるウィレーム先生は協力したのではないかと思われます。
      以上、拙い考察でしたが参考になれば幸いです。

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    3. 個人的にはブラッドボーンの下敷きになったのは『未知なるカダスを夢に求めて』と考えているのですが、そこでもやはりニャルラトホテプとノーデンスは対立していますね
      カーターを挟んだ対立軸は確かにブラッドボーンにも反映されていそうです

      ノーデンスは「偉大なる深淵の主」(Lord of the Great Abyss)とも「大帝」とも呼ばれる(Wikipediaによれば)ことから、Lordの名にふさわしい神であるとも思います

      またニャルラトホテプはラヴクラフトが幼い頃に見た「悪夢」により生まれたとされます
      本作の悪夢という題材そのものが、ラヴクラフトの悪夢すなわちニャルラトホテプからとられたものとも考えられます

      吸血鬼をクトゥルフ解釈するとほぼ赤の女王ですね

      これは本作のゴシック・ホラーにコズミック・ホラー(あるいはクトゥルフ)が侵入していくるという構造を踏襲したものかと思われます

      とても参考になる考察ありがとうございました
      曖昧だった部分がクリアになり本作全体の考察がまとまってきた気がします

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  4. 血と炎の関係を考えると、カインハーストの傍流に連なるマリアが炎を操れるのが、謎ですよね。
    まぁ、血の女王と炎の戦士との交配が行われたと考察できますがよく分からないです。
    あと、クトゥルフと炎で関連があると思うのはクトゥグアか、星の戦士が思い浮かびます。

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    1. マリアの炎は謎が多いですね…いちおう狩人は番人の末裔と解釈すると炎も使えるのかなと。そのあたりのことを旧主を含めていま考察書いてます

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  5. 動画の「獣血の主」を見て思ったのですが、トゥメル時代には虫が2種類いたのではないでしょうか?

    上位者と獣の違いは何か。それは体内の虫と共生しているか寄生されているかです。上位者は寄生虫と共存していますが、獣となったモノは脳を食われ脳死してしまったため寄生虫に支配されています。これはおそらく人の脳こそが苗床と近い性質を持っているからではないでしょうか。その証拠にローレンスの頭蓋は割れ、狂人の智慧に描かれているナメクジは頭蓋から飛び出ています。
    そしてこの共生と寄生の違いこそが全ての原因なのです。
    ゴースの寄生虫はおそらく漁村の住民に寄生したために住民の姿は魚人と成り果てたのでしょう。つまり、上位者に寄生した寄生虫は次に寄生した人々の姿を変えるということです。なら虫は寄生した人の数だけ増殖するかと言えば、恐らく違います。恐らく寄生した個体は成長することが出来ても、繁殖することは出来ないのではないでしょうか? 彼らが繁殖できるのは共生している上位者の身体だけ。寄生して身体を動かしている間は繁殖するほどのエネルギーを蓄えるのが困難なのでしょう。
    神秘とは虫であることから、地下遺跡の神秘とはノーデンスが人々に与えた虫なのでしょう。そしてこの虫はSEKIROの蟲と同じく宿主の意識を保ったまま宿主を不死とする効果を持っていたのでしょう。その証拠こそが旧主の番人であり、罪人だからこそこの蟲を宿せたままでいられたのでしょう。
    しかし、トゥメル遺跡には「獣血の主」という明らかにこの虫とは違い宿主を脅かす虫が存在します。ならこの虫は何処から来たのか。
    ここで鍵となるのが、「血の女王」です。血の女王は風習として血を啜り、血を啜らせることがあります。この行為はノーデンスの虫を体内に入れ、ニャルラトホテプの虫を相手に呑ませるためのものだったのです。
    ノーデンスも近くに上位者が近づけばすぐに検知するでしょう。ですが変換器の人間ならば? 虫を別の虫に変えるだけの人間ならば気づけないのではないでしょうか?
    これこそが数多くの人が獣となり、同時に旧主の番人が人のままだった理由です。彼らは罪人だったため、当時女王だった血の女王に接触することがなかったのでノーデンス製の虫のままだったのです。

    そしてこの説は「失敗作たち」と「星界からの使者」の違いにもなります。
    「失敗作たち」が失敗作だったのは、瞳が不完全だったため。実験棟の肥大した頭部の内側にカメラを合わせると、瞳に成り掛けの球体を見つけます。この瞳が未完成だったため「失敗作たち」は自力で神秘を起こせず空仰ぐ星輪の幹に祈りを捧げています。反対に「星界からの使者」は自らだけで神秘を引き起こしています。
    彼らが生み出された理由、それは血の医療の要である虫を繁殖させるために上位者の肉体がどうしても必要だったからです。
    この証拠が、娼婦アリアンナの赤子です。何故彼女の子が「星の子ら」だったというと、彼女はオドンに孕ませられたのではなく、一般に支給されている血を輸血して身籠もったからです。つまり現代のヤーナムで支給されている血が「星界からの使者」の血なのではないでしょうか。
    なら聖歌隊が作るまで、更に言えば聖歌隊ができるまでどうしていたかというと、恐らく例外である獣となっても繁殖できた「獣血の主」の血を輸血していたのだと思います。本来ならば軟体動物に近い上位者から生まれた虫に寄生された人々が獣化した場合その上位者に似るのですが、寄生した獣から生まれたためそれを輸血した人々は「獣血の主」に寄生された獣と同じように毛物動物となったのではないでしょうか?

    以上、虫の考察でした。

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    1. たいへん示唆に富む考察ありがとうございます

      2種類の虫というのは、確かにそうだと思います
      作中でも獣血の主に寄生している虫とゴースの寄生虫という2系統確認できますね

      獣血の主(虫)は獣化と劇毒をもたらし、一方でゴースの寄生虫は星の介添えたるあり方を啓示するという「苗床」を刺激するとされます

      プレイヤーがゴースの寄生虫と「苗床」を装備すると軟体生物的な姿になりますが、これをゴースの寄生虫に寄生された症状、と見ることもできるかもしれません(「苗床」のみでも頭部がそうなりますが)

      虫の感染が血によって媒介されるというのは本作のタイトル「ブラッドボーン(血液感染)」からも妥当と思われます

      二種類の虫が獣化と軟体生物化という二つの症状を人にもたらし、その効果の違いが「右回りの変態」と「左回りの変態」という差異になって現われるのかもしれません

      アリアンナの赤子については、3本目のへその緒(アリアンナの赤子)に、「姿なき上位者オドンもまた、その例外ではなく 穢れた血が、神秘的な交わりをもたらしたのだろう」とあることから、やはりオドンの赤子ではないかと思います

      ヴァルトールと彼が率いる連盟は、人が獣化するという現象の奥底に「虫」を見出した最初の組織なのかもしれません

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