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2019年9月27日金曜日

Sekiro 考察53 〈竜殺し〉葦名一心

SEKIROのもう一人の主人公とも言うべき葦名一心について考えてみたいと思う

これまで一心についての考察を避けてきたのは、考察素材が乏しいからではない。その逆で一心についてはありすぎるほど考察素材がゲーム中に示されている

しかしながら、それらを集めてもまったく核心部分が見えてこないのである。まるで故意に秘匿されているかのように、一心という人物像を構築するための重要な情報が抜け落ちているのである

そうした一心というキャラクターを図にしたものが以下である
一例である


さまざまな事柄に関わり、重要な局面で常に顔を見せているにもかかわらず、その中心部がすっぽりと抜け落ちている

例えばその居城に竜胤の御子()を住まわせていたにもかかわらずそれについては触れようともせず、丈と共にいたであろう巴の思い出を語りながらその行く末は何も語らない。

修羅についても曖昧な情報しか得られないうえに、不死斬りに関しては赤と黒の二振りあることまで知り、かつ「黒の巻き物」に関係していると思われるのに、やはり核心的な情報は明かさないままである

重要な情報を有しているにもかかわらず、なぜその情報を得ることが出来たのか、まるで分からないままなのである

この中空構造は当然ながら偶然による産物ではなく、意図的なものであると思われる。それほどまでに肝心な部分だけがすっぽりと存在しないのである

この中空に何があるのか、なぜ隠されているのか、どうすれば隠されているものを暴けるのか、それをまず考えていきたいと思う


二つの世界をつなぐ軸

さて、前回の「雑文 世界構造」でも述べたようにSEKIROの物語は舞台が二重になっている。仙郷を中心とした神の世界と、葦名城を中心とした人の世界である

このうち人の世界を代表し、もっともよく体現するのは人の世界の支配者である「葦名一心」である

そして神の世界体現するのはもちろん「桜竜」であるが、桜竜にも中空構造が見いだせるのである

桜竜の中空構造


桜竜もまたさまざまな事柄に関わり、重要な局面で登場し言及されるのにもかかわらず、その核心的な部分は伏せられたままであった

仙郷はどういった空間なのか、とは何か、源の水がおかしくなった原因は何か。そもそも竜胤とは何か。それぞれ断片的な情報しか与えられず、桜竜自身が関わっていたと思われる核心部は中空のままである

つまるところ、一心と桜竜とは共に中空構造を有するキャラクターなのである

上述したように神と人の世界とは二重、つまり重なっている。であるのならば、二つの世界をそれぞれ体現する桜竜と一心もまた重なっていると考えられる

試しに二つの中空構造を重ねてみる。すると当然ながら中心部に空きが残る。これが謎の核心部である

さて何度も言うが、葦名と仙郷とは重なった状態にある。そして固定されているがゆえに源の水の引き起こす災厄が仙郷と葦名を貫いて発生しているのである。

もし二つの円が重なって固定されているのだとしたら、中心を貫く「軸」の存在が推定されるが、その軸とは二つの世界を貫く「出来事」であり、まさにそれが物語の核心なのである

ではその「出来事」とは何か

それが「一心による桜竜殺し」である

一心が桜竜を殺したことで二つの世界は繋ぎ止められ、源の水という「歪み」が二つの世界を貫いて浸食しはじめたのだ



剣鬼一心

一心が若い頃に桜竜とまみえているのは、「秘伝・竜閃」の存在からもうかがえる
秘伝・竜閃
秘伝・竜閃
納刀の構えから、高速の斬り下ろしと共に
真空波を繰り出す流派技
形代を消費して、使用する
力を溜めると、斬り降ろした後、衝撃波が飛ぶ
若き剣鬼一心は、死闘の日々を重ね
ただ、ひたすらに斬った
如何に斬ろうか、如何に斬るべきか…
そう突き詰めるうち、気づけば刃は飛んでいた

秘伝・竜閃は衝撃波を飛ばす技であるが、これは桜竜の技でもある


さらにその技に竜閃と名付けたことから、一心は桜竜とまみえ、それだけでなく戦って桜竜の竜閃を体験していることも推測できる

如何に斬ろうか、如何に斬るべきか…
そう突き詰めるうち、気づけば刃は飛んでいた

如何に斬ろうか突き詰めているうちに、かつて戦った桜竜の技を無意識のうちに飲み込み、竜閃を編み出したのである

竜閃とは、竜のひらめきと書くがこれは竜から閃いた技だからこの名をつけたか、あるいは真空波の光るさまが桜竜の振るったそれと酷似していたから名付けたのであろう

一心が戦った相手の技を飲み込むことは「戦いの残滓」にも触れられている

戦いの残滓・剣聖葦名一心即ち、死闘を重ね、貪欲に強さを求め、
あらゆる技を飲みこもうとした一心

さらに一心は「雷返し」を放つことも出来る。この技は葦名流伝場に掛け軸が張られていることから、葦名流創始者の一心が使えるのは当然といえるが、この技は隻狼がそうしたように桜竜にダメージを与えるられる数少ない手段である

一心は桜竜討伐に必要な「雷返し」を使うことができ、後に桜竜の技を彷彿とさせるような「竜閃」をも編み出している

また一心は「黒の不死斬り」の所在を知っていた。敵将、田村主膳と戦っている時にすでにそれを握っていることから、愛刀にしたのは国盗り戦より以前であることがわかる


以上のことから、一心は桜竜を殺すことが出来る不死斬りを所有し、かつ桜竜に対して特効をもつ技を修め、また後に桜竜の技をも自分のものとしているのである

つまるところ一心は桜竜を殺すことができた


桜竜

桜竜がすでに死んでいるとしたら、では隻狼が戦った桜竜とは何だったのか。もちろん巫女の記憶の中の桜竜である


記憶から再現された世界に赴き、すでに現実世界で失われてしまったアイテムを入手することができる、というシステムは「平田屋敷」で経験済みである

桜竜はすでに一心によって殺されている。水生村や源の宮の貴族たちに異変が起きたのは、桜竜が蟲によって傷つけられたからというわけでも、丈によって枝を折られたからでもない

桜竜が一心に殺されたことで、異変が起こり始めたのである

※一心が仙郷に渡った当時は水生村の輿入れの儀もまだ執り行われていたと思われる


さて一心は黒の不死斬りを用いて桜竜を殺害している。この黒の不死斬りの能力は「開門」である。竜胤を供物に黄泉から死者を全盛の姿をもって黄泉帰らせるのである

開門によって黄泉帰らせたのはである

桜竜は故郷より放たれたのち、源の水に誘われて葦名の地に根付いたという

神食み
HPを完全に回復させる、いにしえの秘薬
全ての状態異常も、併せて回復する
葦名のひと際古い土地に生える草木には、
名も無き小さな神々が寄っていたという
これは、そうした草木を練り上げ作られる
神々を食み、ありがたく戴く秘薬である
だが、神なる竜が根付いたのちは、
そうした小さな神々は、姿を潜めてしまった…
根付くとは、そこで生きることが出来るようになるのと同時に動けなくなることでもある

桜竜が桜竜として生きられるのはおそらく「故郷」のみであったであろう。葦名のそれは「あるべきではない場所に、あるべきではないものがある」状態にあり、それは桜竜の本来的な生き方ではない

故郷から切り離されたがゆえに桜竜は流されている間も衰弱していったのであろう。ゆえに特殊な力を持つ葦名の水に惹かれ、根付くことでようやく生き延びたのである

代償は、その場から離れられなくなることである

桜竜の生態を以上のようなものと考えるのであれば、全盛とは故郷にいた頃の姿であり、移動のために揺り籠に入れる状態、つまり「竜胤の御子」の状態である


葦名城

丈は常桜を仙郷の名残として持ってきたという。また葦名に降りてきて少ししてから唐突に帰還手段を探しはじめていることから、もとは二度と仙郷に戻らないつもりで葦名に降りてきたと考えられる

おそらく丈の当初の目的は竜の故郷へ帰ることであったであろう。だがその情報は意図的に隠され、プレーヤーには丈のホームシックにより降ってわいてきた仙郷帰還計画の段階から知らされるのである

丈に関連する事柄も二つの世界を貫く「隠された軸」であるが、これもまた一心による桜竜の殺害に端を発しているのである

ゆえに同時にそれは一心の核心部でもある。丈を自らの居城に住まわせたのは(しかも御子の間という仰々しい部屋まで造って)、自らの行為(桜竜殺害)により生まれ出たに対して、一心が責任を感じていたからであろう

一心による桜竜殺害というを想定することで、丈が葦名に降りてきたタイミングとその理由、一心の居城に住んでいた理由などが理解できるように思える


故郷へ帰るための移動手段(揺り籠)を探していた丈を、仙郷から追ってきたのは巴である(同時に舞い降りたのかもしれない)

奥義・浮き舟渡り
その遣い手は、
浮き舟を渡り、葦名に舞い降りた
名を、と言う

は使用する技やその名前(御前)から淤加美一族であると推測されるが、彼女は丈を「主」と認識している

秘伝・渦雲渡り
源の渦を望む、己が主
その小さな背中が、巴にとっては全てだった

さて淤加美一族は本来であれば桜竜を崇拝していたはずである。だが、巴は神なる竜ではなく丈を「全て」と考えているのである

例えば巴が丈の乳母や世話係であり、その愛情ゆえにそうした認識に至ったということも考えられる。けれども現実においてもそうであるが、たとえ子供に愛情を注いだとしても、その子供を主人とは認識しないであろう

あくまでも「主」とは乳母を雇っている者、つまりこの場合は桜竜のみである

にもかかわらず、巴は丈をとし「全て」としている

なぜか?

桜竜はすでに死んでいて、その血を受け継ぐのが「丈」しかいないからである

彼女にとって丈とは唯一の「主であり、神なる竜」なのだ。ゆえに巴は竜に奉献されるを丈のために舞ったのである

竜の舞い面
源の宮で、淤加美の女武者は、
竜がために舞いを捧げた
すると不思議と力がみなぎったという

常桜の下で、丈様が笛を吹かれ、巴殿が舞われる
それを見るのが、たまらなく好きだった(人返りルート・エマ)


葦名城

話がだいぶ仙郷関連にずれてしまったが、これまで述べてきたように、一心の桜竜殺しは仙郷と葦名をつなぐ「軸」であるので、仙郷側の出来事も語らなければならなかったのである

葦名側の出来事としては、上でも少し触れたが丈が葦名城に住んでいたことであろう。「神なる竜」は、竜の故郷への帰還手段を探すために御子の間に滞在していたのである

一心が丈を歓待したのは自身が桜竜を殺害し、それによって丈を黄泉帰らせたからである。一心は殺害し、なおかつ生き返らせるという二重の責任を負っているのである

一心の部屋の側に「黒の巻き物」が置かれているのは、一心がそれを書き記し隠匿していたからである、とするのがもっとも蓋然性が高いように思える

黒の巻き物のあまりにも具体的な記述に不可解な点を覚えたのは私だけではないであろう。だが、それを記したのが一心であり、彼はそれ以前に黒の不死斬りを用い「開門」の儀を執り行っていたことがあると考えると、その具体的な記述は当然のことといえる

自身が実際に行ったことであるゆえに、その記述は具体的なのである

だが丈は竜の故郷へ帰る方法を見つけられず、目的を不死断ちに変更し仙郷に戻ろうとするもそれも果たせず、病に罹って衰弱していく一方となった

竜胤断ちの紙片
丈が遺した竜胤断ちの書の一部のようだ
 不死斬りがあれば
 我が血を流すことが叶うはず
 血を流せば、香が完成し、仙境にいける
 そうすれば不死断ちもできるだろう
 竜胤の介錯、如何に巴に頼もうか…

巴の手記
柔らかな字でしたためられた巴の手記
 丈様の咳は、ひどくなられるばかり
 仙郷へ帰る道は、どうやら叶わぬ
 せめて竜胤を断ち、人に返して差し上げたい
 人返りには、常桜の花と不死斬りが要る
 なれど、花はあれども不死斬りはない
 仙峯上人が、隠したのであろう
 竜胤を断つなど、あの者は望まぬゆえに…

結局のところ赤の不死断ちは入手できず、巴は自害しようとするもそれも果たせず、死ぬこともできない丈の肉体は惨たらしいことになったと思われる

苦しむ丈を救うために一心は黒の不死斬りを用いて再び「開門」の儀を執り行ったのである

そして生まれたのが九郎であった

九郎は神なる竜の全盛、つまり故郷にいた頃の姿をとる。そのために丈としての記憶はない。九郎は黄泉帰ってすぐに平田家へ養子に出された

なぜならば竜胤の御子にとって葦名城は危険だったからである

そこには丈の持ってきた「常桜」が咲いていたからだ

なぜ丈が病に罹ったのか。神の片割れ(あるいは眷属)たる「常桜」に生気を吸い取られていたからである

ゆえに葦名城から遠ざける意図で九郎を平田家へ養子に出し、またに命じて「常桜の枝」を折らせたのである

丈の介錯をしたのも一心であろう。その一連の出来事に梟は立ち会っていた(おそらくお蝶も)。黒の不死斬りの「開門」を目の当たりにし、老いた忍びは野望を抱くこととなったのである



葦名一心

以上のように葦名一心の中空構造を埋めるは仙郷と密接に結びつき、物語の核心そのものともいえる

正確な時系列は分からないが、一心は田村主膳と戦うための力を求めて、あるいは自らの剣の腕を試すために仙郷へ渡り、そこで桜竜とまみえ、戦い、殺害したのであろう

一心の手に入れたとは「竜胤の御子」であり、その従者である不死の「巴」である

※一心と巴が戦ったのは、巴が不死になる前だったと思われる。というのも丈という少年の庇護者である巴を相手に一心が本気で戦うとは思えないからである。巴と一心との立ち会いは、一心の言葉を信じるのならば、まぎれもない真剣勝負であった

一心:巴… あれほどの遣い手は、そうはおらぬ
まるで、舞いのように、あの女は戦う
あやつの瞳を覗いておると…
水底に引き込まれるような、心地がしたものよ
カカカッ、見惚れて、斬られそうになるなど…
この一心、長く生きたが、あの一度のみじゃ

※ここに言う水底とは、源の宮の湖の底をイメージしたものかもしれない

仙郷から戻った後、一心は竜胤の御子と巴七本槍、希代の医師であり機巧師でもある道玄、人間離れした忍びども、そして葦名衆を率いて国を盗り、葦名の支配者となった

まるで英雄譚の主人公のようである

事実、一心は一時代前の主人公であった

隻狼が関わるのは、そうした英雄譚の終章、『英雄の最期』の章なのである

ゆえにSEKIROは葦名一心の物語でもあった。だからこそ全てのルートで最後のボスが一心なのである

20 件のコメント:

  1. 一心に桜竜を殺させたのは、「桜竜の不死の力」を求めた宮の貴族(人間の頃)だったんじゃないかと妄想。
    そこで、「ぬしの世話係」さんを使って(そそのかして)一心と桜竜を会わせたとか、
    結局、宮の貴族たちは不死になったが「人でもなくなった」とかだったら面白い…かな。

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    1. 人間の欲望が歪みとなってめぐりめぐって自らに帰ってくる、という因果応報の思想は、ソウルズボーンや次作のElden Ringなんかにも見いだせるかもしれません
      人間に対する皮肉みたいなスパイスが効いてます

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  2. 初めまして。
    なるにぃさん経由で来ました、お茶汲み社長と申します。
    とても読みやすくて分かり易く、読み終えた今は何の抵抗も無く、すとんと腑に落ちました。
    考察は情報量が桁違いに多いので苦手意識がありましたが、他の記事も少しずつ読み進めていきたいと思います。

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    1. はじめまして。
      なるにぃさんの動画はすさまじい量の情報をとてもわかりやすくまとめられていますね。考察の裾野が広がりまくってて見ていて圧倒されます
      ここは全編独り言のようなブログですが暇つぶしにでも読んでってください

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  3. これまで解説を全て読めているわけではないのですが、開門に必要な供物は竜胤なのだとしたら終盤で弦一郎が自害して全盛の一心さまを黄泉返らせたことと若干矛盾するように思えます。構造としては個人的にはとてもしっくりくるので、あくまで竜胤や若変水を含めた不死性を対価にしてるのかと素人ながら感じました。

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    1. 終盤の弦一郎による「開門」は、その直前に九郎を斬ってその血を捧げたからではないかと思います
      血のついた黒の不死斬りを用いて人を斬ると「黄泉返る」のかなと

      丈と巴でいうと、丈をまず斬って血を捧げ、その不死斬りをもって巴を斬って「九郎」が誕生したのかなぁと今思いつきましたが、根拠はあまりないです

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  4. 少し前に書かれていた考察の中で、竜胤は子を成すことで継承されるため、九郎は丈と巴の子だということを仰っていましたが、丈の「小さな背中」という記述があるように、いささか契りを結び子を成すには二人のあいだの年が離れすぎなのではないのでしょうか…(個人的にはそういう展開大好きですけど)

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    1. あ、失礼しました不死斬りでよみがえりをさせたんですね…最後まで読みきっていないまま書いてしまいましたごめんなさい🙏
      確かに、前回の考察よりも、不死斬りでよみがえりをさせたって考察の方が現実味がありますね…

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    2. 弦一郎の開門の儀から推測するに、竜胤の血を吸った黒の不死斬りを使って対象を斬ることで「黄泉返り」が成るのかなと思います

      丈の血を吸った黒の不死斬りで巴を斬ることで九郎を誕生させたと考えると、丈と巴は象徴的に九郎の両親に位置づけられる…のかもしれません

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  5. 一心の桜龍殺しから、丈の開門の儀式とそれによる九郎誕生の解説に舌を巻きます。凄い考察だと惚れ惚れします。
    そこで私が気になったのは、開門の儀式による龍胤の御子の生まれ直しが可能であるならば、以前の解説では源の宮で存在を囁かれながらも、実像の見てこなかった存在である(帝)とは、龍胤の御子を指すのではないのでしょうか。
    龍胤の御子=帝説は陰陽五行説と源の宮が平安京に似ている様子から説明が出来ます。
    五行の土に対応する五虫は人です。加えて色は黄土色で作中の九郎が身に付けている着物は黄土色にも見えます。ここで桜龍と青龍のような五行による繋がりが見えます。
    加えて源の宮は葦名の外にある内府のような権力組織から追い出された者達が作り上げた痕跡があります。宮の貴族は陰陽道に精通していることから、龍胤の御子を神輿にして上級魚人たちが宮の政治を担っていただと思います。それが決定的に崩れたのが、今回の解説である一心の源の宮強襲時ですね。
    桜龍の死、丈の損失による大打撃が若さを循環させる儀式を破壊して、宮の貴族を化け物に落とした。
    あと、今回の一心の桜龍殺しという考えを読んで、一心はスサノオを見なすこじつけが出来ると思いました。
    桜龍(ヤマタノオロチ)を殺して不死斬り(草薙、天叢雲剣)を手にした。
    あと、スサノオのは嵐を体現した神とも言われ、あの最後の一心にも当てはまります。
    補足で、やさかにの勾玉が龍胤の御子を指しています。勾玉は胎児を表している説があり、変若の御子にいる九郎は正に胎児を見なせます。そして、龍胤を宿す巫女(あるいは変若の御子)は神を表す神鏡、御神体(=ヤタノカガミ)です。

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    1. 五行説、日本神話からの視点とても参考になります
      竜胤の御子=帝ですが、帝がいたと想定すると平安期を代表する創作物、『平家物語』との連想からそれは幼帝(安徳天皇)だったのではないかと私は思います。ですので、竜胤の御子=帝というのは個人的にはあり得ると思います

      五行説的に竜胤の御子を「土」とすると、五味では「甘」となりおはぎ好きの理由になるのかもしれませんね

      一心=スサノオですが、私はスサノオというよりイザナギなのかなと思います。あまり根拠はないですが。イザナギがカグツチを十束剣で斬りその血から神々が生まれたという神話が、不死斬りで桜竜を斬ったことで竜胤の御子が誕生したというふうに変換されたのかなと

      スサノオは人格的には弦一郎に近いような気がします
      これは完全な妄想ですが、ヤマタノオロチ退治がSEKIROの最も初期のコンセプトであり、何頭かの竜を退治することで葦名を鎮めるという話だったのではないかなと…

      三種の神器に関しては、不死斬り(剣)、竜胤の御子(勾玉)、揺り籠(鏡)と考えると確かにすっきりしますね。三種の神器を集めた者が神(竜)の力を得ることができる。面白いです

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    2. 返信ありがとうございます。
      五行説に対応する五味という物があり、「土」と「甘」が繋がるとは知らりませんでした。

      一心=イザナギ説。確かに、一心は葦名の国を作りました。この点でイザナギの逸話にある国造りの伝説と符号する要素はあるのは納得できるのですが、私的には、一心=スサノオが作中では色濃くあると思いました。ただし、弦一郎もまたスサノオの要素を持っていると言えます。
      私は、一心と弦一郎がスサノオの多面的性質持つ神の対極的な特徴や話を二つに分けて、それぞれのキャラクターに加えている物だと考えられます。

      スサノオの幼稚あるいは粗暴な面。父イザナギに母イザナミのいる根の国に行きたいと駄々を捏ねて、高天ヶ原(スサノオの故郷)を追放され、高天ヶ原を荒らし回り、天照の岩戸隠れの引き金になり、放逐される。という面があります。
      一方では、出雲ではヤマタノオロチの生け贄となるクシナダヒメを助ける為にオロチを退治し、天叢雲剣を手にする英雄的一面があります。
      加えて、このヤマタノオロチ退治は産鉄民族を平定した象徴であるとされます(不死斬りの考察際に出た一心の落ち谷の衆平定とのリンク)。
      この事からスサノオの英雄的面を一心が担い、スサノオの粗暴あるいは負の面を弦一郎が担っていると考察出来ると思いました。ただ、これもSekiroの世界観やキャラの造形の下地を作り上げる伝説の要素を抽出して、組み換えた名残と言えます。
      私からの一心=スサノオ説の補強になればと思い、書いてしまいました。

      あと、一心=イザナギ説を考えた際にイザナギと共にあるイザナミは誰かと考えると巴であると考えられます。
      これはこじつけですが、イザナミは火之神カグツチを産んだことで焼死する話があります。これをSekiro世界の出来事として考え組み立てると、巴は修羅になった事になります。
      何故なら、丈は巴に介錯の依頼を考えるが、巴から拒否される旨のテキストがありました。そこで、丈は次に一心に介錯を嘆願したのではないのか。そして、一心は丈を斬りました。その場に巴が来て、怒り狂い左腕から炎を出しながら修羅に落ちます。しかし、一心は技も魂もない彼女に以前のように心が引き込まれる事なく、巴の左腕を切り落とし、彼女は正気に戻ります。そこで、巴は末期の願いに丈の血のついた黒の不死斬りで首をはねるように伝えるのでした。一心は首をはね、丈(九郎)が生まれてしまった。という妄想をしてみました。これは時系列は無視と猩々修羅化の際に一心が左腕だけを的確に切っている事からもこじつけてみました。
      以上、長々と書いてしまいました。
      失礼しました。

      削除
  6. はじめまして。
    なるにぃさんのところから飛んできました。一通りの考察を拝見させていただいて、ただただすごいの一言に尽きます。
    あくまでも考察で人により意見が様々であることは承知の上で、なるにぃさんの動画と照らし合わせたときに疑問に思った部分があります。
    上記の考察で黒の不死斬りは国盗り前に一心が所有しており、桜竜殺害に使用したのではないかとのことでしたが、なるにぃさんの7月頃の動画で、黒の不死斬りは国盗り後、仏師に命令し五重の塔の反転した不動明王から取ってきたとの考察を拝見しました。そこに一心の黒の不死斬りの入手時期の違いがあると思うのですがどうでしょう。もし自分の把握不足や認識違いであれば申し訳ありません。

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    1. 一心の黒の不死斬り入手時期に関しては、私も未だに迷っているところです
      今回の考察では一応の解釈として国盗り前に設定しましたが、実は国盗り後でも可能だと思います

      またどうしてもこの考察と整合性をとろうとするのならば、国盗り後に一心が不動明王のもとへ黒の不死斬りを戻したのを仏師が盗み出したとか、あるいは一心がふたたび使おうとしたとかいろいろ考えられると思います

      いくつかの考察をひとつにまとめようとすると、どうしても細部の修正が必須になると思います

      これはどこに焦点を当てるかという問題になってくるのですが、例えば仏師に焦点を当てようとした場合、仏師と黒の不死斬りが関連していたと考えると、ではそれがどのような関わり方であったのか、解釈によってかなりの幅が出てきてしまいます

      ただしそれでも、仏師と黒の不死斬りが関係していたという軸になる考察は変わらないわけです
      ですので、軸がぶれないのであれば各考察と矛盾しないような解釈をすることも可能ですし、すりあわせることによってより大きな考察が得られるのではないかと思います

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  7. 素晴らしい考察です!何度も読み返しました!
    読んでてすごく楽しかったです!ありがとう!

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    1. 感想ありがとうございます
      SEKIROが面白すぎてあれこれ考えているうちにこうなりました
      ただしあくまでも一解釈に過ぎないので過信は禁物だと思われます

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  8. 凄い考察ですよねというよりもう凄まじいというか、流石なるにぃさんに賢者と言われるだけはありますよね、そして知れば知るほどフロムに対して戦慄を禁じ得ないなどう考えても民俗学者とかその道の専門家でもなきゃわからないし知識はあっても生かすことができなきゃこんな物語つくれないこれ程の戦慄を感じたのは諸星大二郎以来だな。

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    1. フロムソフトウェアの作品は考察するたびに、教養不足を痛感させられます。真正面から考察するにはあと十倍ぐらいは知識が必要かもしれません

      諸星大二郎の『妖怪ハンター』なんかの影響も見え隠れしてますね。比較するのも面白いかもしれないです

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  9. こちらこそたくさん読んでいただいてありがとうございます

    五里霧中の状態から始まったSEKIRO考察ですが、この考察をもってようやく自分なりの解釈が出せたのかなと思っています
    英雄としての一心の姿が見えたとき、なぜだかとてもフロムらしいなと感じたのを覚えています

    振り返ると我ながらあきれるほどの量の考察を書いてますが、SEKIROの考察は楽しかった記憶しかありません
    それもこれもSEKIROの完成度が非常の高かったおかげだったと今は感じてます

    ゲームプレイにしろ考察にしろ、フロムソフトウェアのゲームは極上の遊び場を用意してくれているような印象があります

    まず何よりもSEKIROが素晴らしいゲームであることが、これまで考察し続けられたことの大きな要因だったと思います(考察しないからだめなゲームというわけではありません)

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  10. 斬り続けて行くうちに斬ることが目的となり修羅となる…はずなのに一心はなぜ修羅にならなかったのか、それとも若き剣「鬼」一心とあるから修羅にはなっていたのかもしれない…などと思ってみたりしながら楽しく読ませていただきました。

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