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2019年8月5日月曜日

Sekiro 考察47 神紋・寺紋・家紋

源の宮の神紋

家に代々受け継がれる紋を家紋というが、神社にも紋が存在し、それは神紋と呼ばれる

源の宮によく見られる紋は、神紋である(アートワークスより)


この神紋を言葉にするのならば「重ね右三つ巴に波」である

重ねや右、三つは「巴」の変種を意味する形容詞であるから、紋の種別としては「巴紋」のカテゴリに入る。巴紋から説明したいと思う


巴紋

というのは、神社の紋として代表的な神紋である
この巴は複数の事象を意味し、「行運流水」「渦巻」「勾玉の変形」「胎児の姿」「」そして「稲光・雷紋の変形」などの解釈がある(『神紋総覧』 丹羽基二 講談社学術文庫)

源の宮の各所で見られる「勾玉」や「源の水」、そして桜竜ステージに見られる「雷」などを象徴する紋として採用されたと思われる

またひとつの解釈であるが、揺り籠に宿る竜胤を胎児として見るのならば、巴紋は桜竜の竜胤としての姿そのものであるとも言える

また巴紋は武神である八幡宮の神紋であり、この八幡宮をとくに篤く信仰したのが「源氏」である

巴紋のうち最も多いのが「右三つ巴」である(右と左を誤称している場合が多いが、図柄的には「右三つ巴」が最も多い)

以上のことから、源の宮の神紋として「三つ巴紋」が採用されたのはある意味で必然的なものである

重ね」は一種のバリエーションであるか、あるいは水・雷(神鳴り)・竜胤を意味する「三つの巴」が合わさって「桜竜」を示しているのかもしれない

」には水神の神霊が宿るとされ、これも「」を象徴する紋である。また、「江島神社」「住吉神社」などは、海と関係する逸話により波紋を用いていることから、西から流れ着いた桜竜の逸話をとって「波紋」を重ねているのかもしれない

福島県の苕野神社(くさのじんじゃ)(Wikipedia)には、「海の果てから流れ着く神」という、SEKIROの背景にある神話を考えるうえで興味深い由緒が伝わっている(漂着する神はわりと多いが)

福島県の苕野神社(くさのじんじゃ)は一名安波(あんば)さまという。日本武命が東夷征討の折、闇淤加美神以下三神を奉斎したものだが、波を静め夷賊を平定するために波に剣を神紋とした。(『神紋総覧』 丹羽基二 講談社学術文庫)

真言宗も三つ巴紋を寺紋とする。


源の宮の紋

源の宮の居住区には他にも紋がある(葦名城天守にもありますが)

これは木瓜紋と呼ばれる紋である。神紋としては祇園神社が多く用いている。その祭神は牛頭天王・スサノヲであり、祇園祭は怨霊の祟りによる悪疫を退散させるために始められたものである

源の宮の居住区にこの紋が見られるのは、「死なず病」という悪疫がらみであるかもしれず、桜牛と併せて考えると、牛・悪疫というモチーフが見出せるのかもしれない

また木瓜紋は、中国では窠(か)紋といい、

地上に卵を生んだ鳥の巣を象ったもの(『神紋総覧』 丹羽基二 講談社学術文庫)

卵の入った鳥の巣を図案化したもの(「すだれ資料館で学ぶ、涼しさを演出する簾の歴史」)

であるという

それが日本に渡り、帽額(もこう)模様と似ているものだから、もこうと呼ばれやがて「木瓜」と呼ばれるようになったという

帽額とは、御簾(みす)の上長押(なげし)に沿う上辺をいう。蝶紋と共に描かれるなど、源の宮の居住区のそれと模様がぴたりと一致する。このことから、この木瓜紋は窠紋であることがわかる

比較画像



そしてこの窠紋変若の御子の袈裟の図柄とよく似ている
※窠紋は唐の時代には官服の図柄としても使われた
アートワークにはもっと詳細な図柄が載っている

窠紋とはもともと卵の入った鳥の巣を図案化したものである。そう見ると変若の御子の袈裟の図柄も、「揺り籠に入った竜胤(魂)」を図案化したもののように見えてくる

木瓜紋は窠の紋で木瓜は当て字である。正確には窠紋である。窠とは木の上に作られた鳥の巣にたいして地上にある鳥の巣のことで、形が鳥の巣に似ている。そして、昔の窠紋は現在のように整った形でなく、中に小さな丸が数多く描かれている。これは巣の中の卵といわれる。(『日本家紋総鑑』 千鹿野茂著 角川書店)



桜紋

花見台の下部を被う布には、「三つ盛り亀甲に桜紋」が描かれている(「梅」の可能性もあるが場所的に桜だと思われる)



仙峯寺の寺紋

仙峯寺の寺紋は「五鈷鈴に違い銀杏」である

五鈷鈴密教の法具であり、銀杏長寿の象徴である。密教と長寿(死なず)を探求する仙峯寺を表わす寺紋として相応しいように思う

浄土宗が銀杏の寺紋を用いることも関係しているのかもしれない


葦名家

葦名家の家紋は「立ち杜若の丸」の系統である
葦名家の家紋については過去の記事動画で詳しく触れているので繰り返さない

動画用に作ったもの



平田家家紋

楔丸と平田家の家紋は同種のものである
もっとはっきりした画像がアートワークスにある

平田家が葦名家の分家であることを考えると、葦名家と同じく植物である可能性が高い

葦名家は「杜若」なので、平田家もそれを受け継いだと思われ、であるのならば、平田家の家紋は「杜若のつぼみ」を図案化したものである…と、思ったのだが

以下の画像を見て欲しい。黄色く着色されている

黄色い杜若は存在しない。よって別の花種であると思われる
別の花種とはつまり「菖蒲(しょうぶ、あやめ)」である(「黄菖蒲」がある)

以下は七本槍の具足である。この兜飾りを葦名家のものだと思っていたのだが、これは平田家の家紋を飾ったものである
七本槍の具足

葦名七本槍・山内式部利勝
上の画像は葦名七本槍・山内式部利勝のものであるが、陣羽織には平田家の家紋が染められている。であるのなら、兜飾りもまた平田家のものであり、「菖蒲紋」なのである

丸に菖蒲革

中央のつぼみ(あるいは茎)を刀剣に見立てるのは、菖蒲紋にはよくある意匠である


内府方の家紋

言わずと知れた葵の紋である

言葉にするのなら「違い二つ葵に亀甲」であろうか
左右にあるのようなものの正体はわからない

三つ葵紋の徳川家のイメージを喚起させるような図柄である


御子の胴服の紋

四つ方喰(よつかたばみ)を葉で飾った家紋である

四つ方喰は「奥州藤原氏」に関連する家紋とする説もある


田村主膳

丸に九曜(まるにくよう)は、奥州征伐に功を上げた千葉氏系統の家紋である

奥州藤原氏を象徴する四つ方喰を背負う九郎(葦名衆)とは、敵同士とも考えられる

そのあたりの構図をまとめた図が以下であるが、動画用に作ったものであり信用しなくてもよい



蛇足

紋関係の現時点でのまとめのようなものである。紋が示す現実の家門とゲーム内のキャラクターの関係性については、強く主張する気はない(そういった見方がある程度のものである)

変若の御子の法衣の図柄については、アートワークスに詳細な図が載っているが転載はしなかった

その図柄についてだが、窠紋(かもん)であるとは思うものの、蝶紋であるべき場所に記されているのは、蜘蛛(あるいは蟲)かもしれない(ゲシュタルト心理学に使われる図のようなものなので、何にでも見えてくる)



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