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2023年6月7日水曜日

【レビュー】ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム

ゼルダと生成AIで遊んでたらァ

もう疲れちゃって全然動けなくてェ…


世界内存在

持論だが、優れたオープンワールドゲームとは「世界がただそこに在る」のではなく、「キャラクター(プレイヤーの分身)が世界内に存在する」ことを強く感覚させてくれるようなゲームである


前者と後者のもっとも大きな相違としては、前者の世界がキャラクターが通過するだけの通路であるのに対し、後者のそれはキャラクターのアクションに対してその都度、適切な反応を示す、双方向性をもった世界であることである


プレイヤーはキャラクターを介して世界に干渉し、その干渉に対して世界の方も反応を示す。この絶え間ない繰り返しが、優れたオープンワールド特有の「世界内に居る」という感覚をもたらすのである


この点で「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム(TotK)」は、唯一無二の高みに達した傑作であるといえる


前作ですでに達成されていた「世界内存在感覚」はプレイヤーの感覚を拡張することでより洗練され、オープンワールドゲームの新たな次元を切り拓いたともいえる


確かに遊んでいて楽しいゲームはゼルダの伝説の他にもある。だがTotKにはそれ以上の、人間の感覚を拡張させるようなシステムが導入されているのである



感覚の拡張

感覚の拡張を可能としたのは、TotKに導入されたリンクの新能力「ウルトラハンド」、「スクラビルド」、「トーレルーフ」、「モドレコ」、「ブループリント」である


このうちウルトラハンドスクラビルドについては、現実世界でも道具を使えば再現することは可能であろう。しかしトーレルーフは全く新しい感覚をもたらす能力である


例えばビルの1階にいたとして、天井を通り抜けてビルの屋上に瞬時に移動することなど、常人には思いつかない発想である


その「もしありえたら」という発想を形にしたものがトーレルーフであり、この能力によって拡張された時空感覚が、TotK特有のリアリティとしてプレイヤーにもたらされるのである


筆者はこのトーレルーフという感覚の拡張をすんなりと理解することができず、トーレルーフを使えば進めるという場面で、何度か立ち往生したことがある


上述したようにウルトラハンドやスクラビルドは、現実世界でも何らかの方法で実現可能な能力であるから理解しやすい


だが、トーレルーフによってもたらされる感覚の拡張全く新規なものであり、容易に理解することができなかったのである


しかし一度理解してしまえば天井新たなルートとなり、これまで退屈だった地下洞窟からの脱出閉鎖環境からの瞬時の解放という、ある種の快感さえ伴う楽しみのひとつになったのである


この意識の変革感覚の拡張こそがTotKの最大の特徴であると考える


これまでの常識は覆され新たな能力によって獲得された新たな感覚、意識、発想がプレイヤーの助けとなり、またゲーム攻略のためにその能力を要求されるのである


この文脈でいえば、モドレコは人間の「時間感覚」を拡張する能力である


局所的に時間を巻き戻すことは、現実では不可能に近い能力であろう。しかしTotKの世界内においては、可能なのである


そしてこの時間感覚の拡張がトーレルーフと同様に、プレイヤーに新たな意識と感覚をもたらすのである


拡張された感覚を用いてプレイヤーは世界に干渉し、世界はその干渉に対して適切な反応を返すことで、「世界内に存在する」という感覚をプレイヤーにもたらすのである


名作オープンワールドには感覚を拡張するシステムが導入されているものが多い。たとえばフォールアウトシリーズのV.A.T.S.やアサシンクリードシリーズのパルクールなども、人の感覚を拡張したシステムと言える



ゼルダの伝説

ストーリー的な面からいうと、ヒロインがヒロインらしいことに格別の感慨新鮮さを覚えた


そもそも本シリーズは「ゼルダの伝説」というタイトルであるが、基本的にリンクの冒険を主軸としている


しかしTotKにおいては、リンクの旅リンクの冒険であると当時にゼルダの足跡を辿る旅でもある


ンクの旅とはゼルダが辿った神話的・伝説的な物語を辿ることであり、まさしく「ゼルダの伝説」を辿る旅であった


ゲームの主人公はリンクである。しかし物語の主役はゼルダである。この二重構造が本作のオープンワールドとしてのプレイアビリティと、深みのあるナラティブ両立させている


根本的に自由度重視オープンワールドというジャンルは、ストーリードリブンとは相性が悪い


プレイヤーはオープンワールドという世界で遊びたいのであり、長時間のストーリームービーを観たいわけではないからである


この相反する両者共存させる方法として確立されたのが、本作のリンクの冒険ゼルダの伝説という二重構造なのではないだろうか


プレイヤーリンクとしてオープンワールドを好きなだけ楽しめる。その上でリンクにゼルダの物語を辿らせることでストーリーを提示していく


ただしストーリーを提示する順序は、プレイヤーの化身たるリンクの冒険の次第によりランダムであり、また断片的である


プレイヤーは提示されるストーリーをただ漫然と受け取るのではなく、断片的なストーリーを自らのうちで整理し、推測し、起承転結のある一貫したストーリーを再構築することができる


この行為そのものが、本作ののようなパズル的な性質を持っている。これもまたプレイヤーを飽きさせない工夫のひとつなのかもしれない



ゲームプレイ

TotK反射神経を必要とする純粋なアクションゲームというよりも、「気づき」のゲームであると言える


敵との戦いにしても真っ向正面から戦うばかりでなく、様々な解法が用意されており、そのうち一つに気づくことさえできれば、戦闘の難易度は大幅に下がる(というよりも、その時点で実質的に戦闘は終わる)


※例えば杖にサファイアをスクラビルドすることで、ラスボス前の魔物の群れでさえスライム以下の雑魚になる(他にもケムリダケやコンランダケなど、勝つ方法は様々に思いつく)


本作TotKは、この「気づき」の要素が前作ブレス・オブ・ワイルドよりもさらに強まっている


の攻略などもゾナウギアを駆使すれば、想定された攻略法を完全に無視してクリアすることも可能である


※祠の難易度は前作よりも低い気がする


オープンワールドの特徴の一つである探索に関しても、一歩一歩、歩を進める探索も可能であるし、面倒ならば鳥望台を使って上空から一気に目的地に到着することも可能である


これまでのオープンワールドはある意味で二次元的世界にキャラクターが縛り付けられていた


どれほど高低差があろうとキャラクターは地続きのオブジェクトから離れることができず、いわば2Dマリオ世界に閉じ込められているようなものであった


※例えそこが空に浮かぶ島であっても、そこは三次元的世界に存在しているのではなく、たんに空に浮かぶフィールドにいるというだけである


しかしながらTotKではゾナウギア、パラセール、トーレルーフといった各種システムにより、真の三次元的世界がキャラクターに解放されたのである



欠点

と、ここまで基本的にべた褒めしてきたが、TotKにも欠点はある


ひとつには、過去の賢者のムービーがほぼ同じ内容の繰り返しであることが挙げられる


シナリオ的にそうならざるを得ないことは理解できるものの、もう少しなんとかならなかったのか、とは思う


いっそ各賢者の時代が違っていたら歴史の流れのようなものを感じられてよかったかもしれない(本作のシナリオ的に不可能だが)


あるいは竜の泪のそれのように、断片的に語るという手法でもよかったかもしれない(ただし、断片的に語るほどの物語があるかというと…)


最大の欠点ゴーレム関連のアレコレである


ゴーレムのパーツ集めまでは良しとしよう(パズル的な要素もあり楽しめた)。だが肝心のゴーレムの乗り心地使い勝手戦闘は本作で最悪の部分である


ゴーレムに乗って戦うボス戦何が面白いのかすら理解不可能であった


なんというかインディーズ出来の悪い3Dゲームをやらされているような感想しか抱けなかった


ロボット(あるいはパワードスーツ)に搭乗して戦う(フォールアウト4にもあったが)。この要素自体がロマンの塊であるし、この要素だけで面白いものになるという期待さえ抱ける


だが現実は、鈍重・紙装甲・低攻撃力鉄くずのような代物に乗り、普通に戦えば雑魚の相手に苦戦するという苦行である(早々に降りて進んだが)


これの何が楽しいというのかゴーレムというのならせめて敵の攻撃を跳ね返すぐらいの装甲と、敵の群れを一掃できるような攻撃力が欲しいものである


※理想は風の谷のナウシカに出てきた巨神兵


さらにいえばカスタマイズすることで走破性や隠密性、機動性を変更できると理想的である(そこはアーマードコアに期待しよう)



総評

ゲームの出来を点数で評価することにあまり意味を感じないのだが、あえて点数をつけるとしたら、92/100である(ちなみに前作は95/100)


ただしゴーレム関連がなければ98点であった(賢者ムービーで-2)


ゴーレムに関しては苛立ちというよりも、「これさえなければ…」と、口惜しさ、悔しさすら感じてしまう


それほどまでにゴーレム要素は本作品の汚点である。なぜこれが採用されたのか、なぜこれが製品版に存在しているのか、なぜ自分は五人目の賢者など探そうとしてしまったのか…


本作品のゴーレムは、その存在自体がである



1 件のコメント:

  1. ゼルダインプレッション、お疲れ様です

    某SNSで「実質エルデン」といったような言説がバズっていましたが
    「おっ?オープンワールドに対して”縦”に拡張していくようなデザインを行っていくような、日本人クリエイターのシンクロニシティ的なことか?」

    と思いきや
    リソースの乏しい最序盤では死にゲーさながらの難易度、といった点に基づいての話だったため
    なんだかなあ; と思った記憶があります

    火竜の頭という無力化装置が最序盤に手に入るし、「ガチりにいく」死にゲーライクなプレイに誘導してるわけではないのになあ。

    なんならエルデンだって弱点や対策を考えればギミックボス&エネミーに早変わりするゼルダ的スタイルが表出するし・・・


    生成AIは沼ですね
    はっきりとは言いませんが、「サブスクリプションの出費」は半分以下に減りましたね・・・
    人類はデーモンに変質する前の原初の「泥」を手に入れてしまったのかもしれません

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