前回の考察「神殺し」の説明不足だった部分の補足と、メタ視点からの考察の追記
ラダーンの痩せ馬
考察ではラダーンの痩せ馬をラダゴンから授けられたもの、と述べた
このことの根拠としては、痩せ馬のたてがみが赤いことが挙げられる
つまり痩せ馬は赤毛の獣なのである
この赤毛の獣というジャンルには他に「ラダゴンの赤狼」がいて、これもまた赤毛である
赤毛(赤髪)というのは狭間の地において巨人族の属性であるとされる。しかしその赤毛は何らかの理由(呪いだろうか、と疑われている)、によってラダゴンにも発現している
火の巨人の追憶
巨人たちは、皆一様に赤髪であり
ラダゴンは、自らの赤髪に絶望したという
それは巨人の呪いだったろうか
その赤毛を誇っていたのがラダーンであり、兜飾りにも赤毛のモチーフを取り入れている
ラダーンの赤髪兜
赤髪をなびかせた、黄金獅子の兜
将軍ラダーンの装備
父ラダゴンから受け継いだ、燃える赤髪を
ラダーンは、英雄の象徴として誇っている
我こそは、英雄の子。そして戦王の獅子である
より直接的に赤毛を引き継いだのがラダゴンの赤狼である。この赤毛の獣については謎が多く正体がはっきりしない。しかし赤毛であること、「ラダゴンの」とつくことから、ラダゴンに連なる獣であると考えられる
さて、痩せ馬は自前の赤毛を持つ獣である
このことから、ラダーンの痩せ馬はラダゴンに関連する獣であると考えられ、またラダーンが「ずっと共にあるため」重力の力を学んだとあることから、ラダーンにとって特別な獣であったと考えられる
赤毛であり、またラダーンが特別視するような馬。しかもそれは名馬ではなく、みすぼらしい痩せ馬である。
これらの条件に当てはまるものを考えたとき、それはラダゴンから与えられた特別な馬だった、と推定することも可能であろう
以上の根拠から、ラダーンの痩せ馬はラダゴンから与えられた獣なのではないかと考えた次第である
神人に影従の獣が与えられるというシステムを模倣したラダゴンが、デミゴッドであるラダーンに与えたのが赤毛の獣、すなわち「痩せ馬」だったのではないかと思われる
降る星
考察では降る星を落としたのはラダゴンなのではないか、と述べた。これについては、大いなる意志の仕業であると考えた方がよりシンプルであると思っている
ただし考察でも述べたように、未だ見放していないデミゴッドたちに大いなる意志が降る星を送り込むとは考えにくい
この点に関して、大いなる意志がデミゴッドを見放した時期に様々な解釈が成り立つことから、はっきりと断定はできない
個人的には大いなる意志がデミゴッドたちを見放したのは、ラダーンとマレニアの決戦後のことであったと考える
というのも、ラダーンとマレニアの決戦がもし仮にどちらかの勝利に終わっていたのだとしたら、その勝者がエルデの王になった可能性が高いからである
決戦に勝利したデミゴッドはエルデの王を目指し、「最強」であるからには、その野望は果たされたと思われる
また例えその野望が途中で潰えたとしても、エルデの王になるかもしれない、という希望であったはずである
とすると、エルデの王となりエルデンリングの修復を行う可能性のあるデミゴッドたちに対し、大いなる意志が降る星を送り込んで滅ぼす必要はない
そしてサリアに降る星が落とされたタイミングはラダーンとマレニアの決戦以前であるのだから、降る星を落としたのは大いなる意志ではなかった、と考えられるのである
※考察でも述べたが、降る星の飛来を「偶然」で済ませるには、落下地点やその数(デミゴッドの領地と同じ数)が恣意的すぎる
メタ視点
考察では、最大の自負に対して最大の試練が与えられる、という原理(法則の方が適切か)を述べた
重力を修めたラダーンには重力に対する最大の試練たる降る星を与え、法務官ライカードには法に対する最大の試練、「罪」を与え、終わることのない知を求めるギデオンには知の終わりという試練を与えた
なぜこのような法則、あるいは構造になっているかと考えるのならば、エルデンリングがジョージ・R・R・マーティン氏(以下GRRM)とフロムソフトウェア(宮崎英高氏)の協業である、という制作方式に理由があるように思える
GRRMが担当したのは神話とされる。より厳密には狭間の地の始まりから女王マリカ体制の確立、その支配下におけるデミゴッドたちの繁栄、といったあたりまでを担当したと思われる
このことは、インタビューにおいて明らかにされている
・GRRMが書いたのは英雄的なキャラクター
この英雄的なキャラクターを歪めるのが、宮崎英高氏の仕事であったという
・英雄を堕落させ、歪めることが宮崎氏(フロム)の仕事
さらに堕落した英雄を見たらGRRMはショックを受けるかもしれない、とさえ述べている
・堕落した英雄を見たらGRRMはショックを受けるかもしれない
要約するとGRRMが英雄たちを創造し、宮崎英高氏がその英雄たちを堕落させたのである
GRRMが創造した英雄像について、それが歪められる前の状態をまとめたものが以下となる(※褪せ人のギデオンに関しては、褪せ人が英雄に含まれるのか判然としないので除外した)
・重力の力を極めた将軍ラダーン
・慈悲無き裁判官、法務官ライカード
この二人の英雄を歪め、堕落させるのが宮崎英高氏の仕事であった(ラニ、ミケラ、マレニアも含まれる)
卓越した英雄を堕落させるためには何が最も有効であるかと考えたとき、その英雄のもつ最大の自負に対して最大の試練を与えるのが、物語的にも最も効果的なのではないかと思われる
つまり勇者がその勇気を、賢者が知識を、剣士が剣技を試されるように、英雄のキャラクター性に対して最大の打撃を加えるのである
こう考えたとき、重力の力を極めた将軍ラダーンに最も相応しい試練は、重力に対する最大の脅威、落下する隕石をぶつけることである、という解が得られる
また法務官ライカードには「法」に対する最大の試練、「罪」をぶつけるのが最も効果的であろう
宮崎英高氏の与えた最大の試練に対し、ラダーンは打ち勝ち、ライカードは敗北した
ラダーンが試練に打ち勝った理由としては、最強のデミゴッドとして試練に打ち勝つことが、よりキャラクター性を際立たせること(負けたらデミゴッド全体が卑小な感じになる)、またラダーン(軍)がマレニアの最大の試練となることから、まだ退場させられないことから、このような決定がなされたと考えられる)
マレニア
英雄の一人であるマレニアにも最大の試練が与えられた。腐敗の力を宿すマレニアに対する最大の試練とは、最強のデミゴッドであるラダーンと、その炎の軍勢との戦いである
戦灰「赤獅子の炎」
戦技「赤獅子の炎」
将軍ラダーンと共に戦った、赤獅子の軍勢の戦技
前方広範囲に、強い炎を放つ
赤獅子の火炎壺
ラダーン軍の生き残りは
今も、火で朱い腐敗を食い止めている
火の癒しよ
自らの内に火をおこし、病毒を焼く
毒と朱い腐敗の蓄積を軽減し
また、それぞれの状態を癒す
ゲーム設定においても、マレニアの弱点は「火」である
そして最大の試練に対するマレニアの戦いは、炎の軍勢には勝利したが、ラダーンとは相討ちという結果に終わった
この終局は最強の二人を矮小化せずに歪めて堕落させるために必然的に選ばれたものである
どちらか一方の勝利が明確だったのならば、敗北した方に弱いという印象が与えられるが、その場合ゲーム的には敗北した方との戦闘は消化試合になってしまう
プレイヤーのモチベーションを下げず、破砕戦争における最強の二人と戦うためには、二人は相討ちでなければならなかったのである(戦争の勝敗は別として)
また最強の二人が試練にも打ち勝てずに負けたとなれば、強いという最大のキャラクター性が毀損されてしまう
よってこの最強の二者は、試練には打ち勝ったものの、別の何らかの理由によって歪められ、堕落しなければならなかったのである
その解決法として持ち出されたのが「朱い腐敗」による自爆的な終局である
これにより、最強の英雄は最強のまま歪められて堕落し、最強の状態でプレイヤーと対峙することが可能になったのである
二人は試練に負けた敗北者ではなく、また、どちらかがより強いというわけではないのである
ミケラ
ミケラに与えられた試練とは、「永遠に幼い」こと、そしてそこから生じる災難である。また彼が独自に見出した試練として「朱い腐敗」に抗することが挙げられる
腐敗の女神の追憶
ミケラとマレニアは、唯一人の神の子供である
故に二人は神人であるが、その生は脆弱であり
一方は永遠に幼く、一方は腐敗を宿した
ラダゴンの光輪
しかし、幼きミケラは原理主義を捨てた
それが、マレニアの宿痾に無力だったから
無垢なる黄金、そのはじまりである
※マレニアの腐敗は双子であるミケラも共有する試練として設定されたものかもしれない
永遠に幼いことに対して、ミケラは聖樹に宿るという方法によりこれを克服しようとしている
…なるほどな。やはり聖樹は、抜け殻だったか
ミケラは聖樹に宿ろうとした
だが完全な宿りを前に、何者かが聖樹を切開し、幼子を奪った(ギデオン)
永遠の幼子であることが、別の試練を生じさせた(むしろこちらの試練の方が主軸かもしれない)
モーグによる誘拐である
これに対しミケラは自らの能力をもって抗する
誘惑の枝
神人ミケラは、あらゆる者から愛された
愛するを強いることができた
モーグを魅了することで、繭に宿ることに成功したのである(それは緊急避難的な状態であるのかもしれない)
…おお、そうか!やはりミケラは、血の君主の元にいたか!
…さて、どうしてくれようか
繭の内で、眠り続けるのであれば、それでよいが
あるいは、滅ぼすべきかもしれんな
…ミケラ、あればかりは得体が知れぬ…(ギデオン)
いつか繭から羽化することでミケラは己の試練に打ち勝つことができる。その点で、ミケラは試練に挑んでいる真っ最中ともいえる(DLCの布石か)
ただし彼のあり様は第三者(モーグ)によって歪められ、現時点では堕落したものとなっている
ラニ
星の律を掲げるラニに与えられた試練は、星そのものが封じられるというものであった
運命を封じられたラニは、星の律を掲げることができず、気の遠くなるほど長い時を無為に過ごしてきた
ミケラと同様に、ラニもまた試練の最中といえるのかもしれない
ラニの試練を彼女に替わって克服するのが、プレイヤーたる褪せ人である
ラニのストーリーラインが特別なものであり、固有のエンディングまで用意されているのは、褪せ人が彼女の試練を身をもって経験するからなのかもしれない
試練
以上のように英雄たちには、それぞれに相応しい試練が与えられている
試練に対するそれぞれの結末は異なり、ライカードは敗北、ラダーンとマレニアは勝利、ミケラとラニはゲームスタート時点では未決着、といったところだろうか
※ただしマレニアは朱い腐敗という試練に敗北したという見方もできる
これらの試練を英雄たちに与えたのは、宮崎英高氏である。エルデンリングの舞台を整えるうえで、英雄たちは歪められ堕落していなければならなかったからである
そして英雄たちは単に試練に敗北するのではなく、それぞれのキャラクター性を損なわないように配慮されたうえで、それぞれに相応しい結末を用意され、きちんと歪められ堕落させられている
このあたりの設定のバランス感覚というか職人芸的な妙技は、宮崎英高氏ならではのものであろう
蛇足
完全な蛇足だが「狭間の地を振り返る」というエルデンリング動画を作成している
ゼルダの発売日(5/12)までに「火山館」まで終わらせようとしたら結構ハードでブログの考察が遅れ気味に
この考察も本来は前回の考察のすぐ後に記事にする予定だった
次の考察(陰謀の夜)も構想だけは数週間前からあるものの書けていない
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