ウル王朝概要
ウル王朝の名はウルの王朝遺跡という地名として登場する
※「ウルの王朝遺跡」をウルという地域にある無名の王朝遺跡と解釈することもできるが、今回は素直にウルという名の王朝があったと解釈する
ファルム・アズラの考察に移る前にエルデンリングの概要を述べたい
エルデンリングとは、大いなる意志が狭間に送ったエルデの獣が変化したものである
エルデの流星
かつて、大いなる意志は
黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り
それが、エルデンリングになったという
何度目かになる宵眼の女王関連の考察である
基本にもどって宵眼の意味から考察してみたいと思う
日本語の「宵」には次のような意味がある
宵(よい)
日が暮れてからしばらくの間。(夕暮れに続く)夜の初めの部分。」(岩波国語辞典)
宵(しょう)
日が落ちてくらくなった時。よい。よる。「春宵・秋宵・徹宵・終宵」(岩波国語辞典)
つまり宵眼とは、夜の初めのような色合いの眼のことをいう
一方、英語版では宵眼の女王は「Gloam-Eyed Queen」(黒炎の儀式)や「Dusk-Eyed Queen」(神狩りの剣)と呼ばれている
Gloamには「日没の直後」という意味の他に、「黄昏」や「夕暮れ」といった意味がある
またDuskには「夕闇」や「夕暮れ」、「暮れかかった暗い色」という意味がある
まとめると、日本語では「夜の暗さ」が強調されるのに対し、英語ではその他に「夕暮れ」や「黄昏」というニュアンスも含まれる
よって宵眼(Gloam)という言葉は「夜の初め色の眼」、「夕闇色の眼」「夕暮れ色の眼」、「黄昏色の眼」というふうに解釈の幅が広い
宵眼色の眼として最も適切と思われるのが、狂い火ENDでメリナが見せる瞳の色であろう
その薄青い色は確かに夜の初めの蒼い闇を彷彿とさせる色である
では英語版のGloamを「黄昏色の眼」や「夕暮れ色の眼」と解釈するのは間違いかというと、必ずしもそうとは言えない
というのも、黄昏とは昼でもあり夜でもあるような(あるいは昼でもなく夜でもない)曖昧な時間を言うが、メリナはまさに昼と夜の瞳を持っているからである
狂い火ENDで明らかにされるメリナの左眼の色は「宵眼」であり、これは夜の初めの色である
しかし出会った時には左眼は封じられ、かわりに右眼が開かれている
その右眼の色は黄金樹の祝福を受けた「金色」である
金色を昼の色、そして宵眼を夜の色と解釈すると、彼女の両眼をあわせて「黄昏(昼でもあり夜でもある)の眼」とすることも可能であろう
この解釈における宵眼は、たんに夜色の瞳を指すだけでなく、金色と夜色の瞳の両方が揃っていることを指すことになる
しかしながらもちろん「夜の瞳」だけでも「宵眼」であることに変わりはない
ある意味で宵眼とは「夜の瞳」と「黄昏の瞳(昼と夜)」のダブルミーニングなのかもしれない
宵眼という言葉には、「夜の瞳」と「黄昏の瞳」の両方の意味があり、そのどちらもが宵眼の意味に相当するのである
※ただし筆者が想定している宵眼の女王は両眼ともが「夜の瞳」を持っていたと考える
メリナと同じく宵眼を受け継いだのがラニである
彼女が宵眼を持つことは指殺しの刃を扱えることから逆算することができる
指殺しの刃
運命なき者には振るうことはできず
大いなる意志と、その使いたちを
傷つけることできるという
作中でラニは指殺しの刃を使って二本指を殺している。ということは、運命なき者ではなく「運命ある者」である
また運命ある者が振るうことで起きる事象は、大いなる意志と、その使いたちを傷つけることである
傷つけることができる=殺すことができる、というのは「指殺しの刃」という名前と、実際にラニが二本指を殺したことからも明らかであろう
つまり運命ある者が振るう「指殺しの刃」は、神たる大いなる意志を殺すことができるのである
神を殺すことのできる力、それは死のルーンの力に他ならない
そして死のルーンの別名は「運命の死」である
以上のようにラニの宿していた「運命」のひとつが「運命の死」であることは、彼女が指殺しの刃を使って二本指を殺害した、という事実から導くことができる
そして運命の死の象徴は「宵眼」である
「そして貴方に、運命の死を」のセリフとともに描写される宵眼 |
ただし、宵眼を持つことが=運命の死を持つとは限らない
ラニが二本指を殺すために指殺しの刃を必要としたように、宵眼は運命の死を操ることのできる者の印であって、運命の死そのものではないからである
※これはメリナが黄金樹を焼くために巨人の火を必要としたことと対応する
以上の考察によりメリナとラニを宵眼の女王としてもいいのだが、両名のキャラクター性は神肌関連の美術スタイルとそぐわない
とはいえこれは印象論なので明確に否定しきれるわけではない
ただ個人的にはメリナとラニは宵眼の女王本人ではなく、宵眼の女王から宵眼を受け継いだ者たちである、と考える
宵眼の女王から宵眼を受け継いだといっても、彼女たちが宵眼の女王の娘であるといっているわけではない
メリナはおそらくマリカの娘(もしくは分け身)であり、またラニはラダゴンとレナラの娘である
では、どのようにして彼女たちは宵眼を受け継いだのか
一言でいえば、ラダゴンが巨人の呪いにより赤髪になったように、宵眼の女王の呪いにより宵眼という呪いを獲得したのである
メリナとラニの母親(父親)は「マリカ=ラダゴン」であり、マリカ=ラダゴンが受けた呪いを両者が受け継いでも不思議ではない
実際、ラダーンやライカードはラダゴンから赤髪の呪いを受け継いでいる(おそらくラニも)
同じようにメリナとラニは、宵眼の女王の呪いをマリカ=ラダゴンを通して受け継いでしまったのである
あるいはラダゴンが巨人の呪いとして赤髪をもって生まれたように、マリカ自身の眼が呪いにより「宵眼」となっていたのかもしれない
作中のマリカは一度たりとも眼を見せることがない
これを意図的な演出と考えるのであれば、彼女の瞳に何らかの秘密が隠されていてもおかしくはない
そしてその秘密とはマリカの瞳が宵眼だった、ということなのかもしれない(この仮説から宵眼の女王=マリカ説とすることも可能である)
マリカの娘として生まれ使命を与えられたものの、しかし呪われた宵眼であったメリナは、その宵眼を封じられることになる
獣の瞳には三本爪の傷跡があり、メリナの左眼にも三本爪の刻印がある |
そしてメリナの宵眼が宿すのは、「運命の死」である
狂い火ENDにおいて、「…そして貴方に運命の死を」と同時に宵眼を見せるからである
本編において運命の死が解放により引き起こされたのが、黄金樹の炎上である
またその前段階として、巨人の大釜に燻っている火を特別な種火によって燃やさなければならない
特別な種火とは火の幻視を宿す者である
世界樹を焼く火は、狭間の最も高い場所、巨人の大釜に燻っている
けれど、それを燃やすには、特別な種火が必要なのさね
…火の幻視を宿す者、その贄だけが、大釜の火で世界樹を焼くんだよ(指読みのエンヤ)
その火は黄金樹の禁忌たる、滅びの火と呼ばれている
火の僧兵の兜
巨人たちの山嶺にあるという
黄金樹の禁忌たる、滅びの火
彼らは、その監視者である
メリナが特別な種火になれたのは、その左眼に宵眼を宿していたからであろう
それは黄金樹にとっての運命の死である
まとめると、宵眼の娘たちとは宵眼の女王の宵眼を受け継いだ者たちのことである
それは母(父)であるマリカ=ラダゴンから娘たちへと受け継がれた呪いである
しかしラダゴンの赤髪がラダーンにとって英雄の証であったように、宵眼もまた彼女たち、とくにラニに強い影響を与えたと考えられる
さて、前回の考察で宵眼の女王=夜人説を唱えた
簡単にまとめると、夜人たちから神人として選ばれた者が宵眼の女王となったが、マリケスに敗れた後に神狩りの黒炎の力を失い、再びただの夜人に戻った、とする説である
また、やがて宵眼の女王は老いた雪魔女としてラニの師となり、冷たい魔術と暗い月への恐れを教えた、とした
その老いた雪魔女が冷たい魔術の他に精通していたのが、冷たい夜の律に属する霊体技術である
夜の律に霊体を扱う技術が含まれることは、カーリア城館の無数の霊体や、ボスとしてのレナラがラニが呼び出した霊体であることが根拠である
満月の女王としてのレナラの専門分野は「魔術」であって、霊体ではない。だとしたら霊体を扱う技術を持っていたのは夜の律を掲げるラニしかいない
私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ(ラニ)
同じ冷たい夜の律を掲げたのが夜人を出自とし、かつて宵眼の女王と呼ばれた老いた雪魔女なのであろう
神人は他のデミゴッドと違い、各々の律を掲げることを本分とする
神人とは、通常のデミゴッドとは異なる存在
エルデンリング、即ち女王マリカの時代が終わったとき
神となり、新しい律を掲げるべく、尊く生まれ落ちているのです(賢者ゴーリー)
宵眼の女王が掲げていたのは「運命の死」を象徴とする夜の律である(マリカが掲げていたのが「永遠の生命」を象徴とする黄金の律である)
冷たい夜の律は宵眼の女王からマリカ(ラダゴン)を経由してラニへと受け継がれたが、同時にラニには神人の肉体も受け継がれていた
そこでラニは神人の肉体を殺すことで、純粋に霊的な宵眼の女王になろうとしたのである
彼女が老いた雪魔女を人形のモデルとしたのは、その目的が宵眼の女王となることであり、老いた雪魔女がかつて宵眼の女王だったからである
ただしラニが目指したのは、神人システムから解放された純粋に霊的な宵眼の女王である
そのために彼女は神人の肉体を捨てる必要があったのである
さて、宵眼や冷たい夜の律に霊体技術が含まれるのであれば、霊馬の前の主やラニに霊呼びの鈴を託していったのは老いた雪魔女である可能性が高い
霊馬という他にない霊体を乗りこなすことの出来る者は、高い霊体技術を持っていなくてはならない
それが可能だったのは、かつて宵眼の女王として夜の律を掲げ、最後は老いた雪魔女となってラニの師となった夜人であろう
老いた雪魔女は、同じ宵眼をもつメリナとラニに霊馬と霊体を操る道具を託していったのである
メリナとラニの神秘的な繋がりは、二人がともに宵眼を受け継ぐ者であるという共通点から生じたものなのであろう
そしてメリナが左眼に宵眼を受け継いだように、ラニは右眼に宵眼を受け継いだのである
ラニの右眼から霊体が漏れていることから分かるように、おそらく神人であった頃のラニは右眼に宵眼を宿していた
前回、今回と宵眼の女王=夜人説をもとに考察を進めてきたが、もちろんこれが正解と言いたいわけではない
あくまでも宵眼の女王=夜人説をもとにした考察であり、数多くある解釈のひとつに過ぎない
ただし宵眼の女王=夜人説を採ることで、冷たい夜の律→黒い月→夜人→宵眼の女王→宵眼→ラニ→冷たい夜の律というふうにバラバラだった事象が説明できるように思える
※宵眼の女王からは黒炎→神肌が分岐する
概要は過去の考察で述べているので簡単にまとめるが、宵眼の女王はマリカと同世代に生きていた神人であると考えられる(過去の考察参考のこと)
しかし彼女はマリケスに敗れ、運命の死はマリケスの黒き剣に封じられることになる
神狩りの剣
かつて神肌の使徒たちを率い
マリケスに敗れた、宵眼の女王の聖剣
修正:いただいたコメントをもとに神狩りの剣について修正