脳の瞳については過去の考察から大幅に変更が入っている
瞳
瞳はウィレームにとっては探求の象徴である
「瞳」「瞳」はまた、学長ウィレームが追い求めた探求の象徴である彼は人の思索のあり方に絶望し、高次元思考者たるを目指した自らの頭、脳の中に、思考の瞳を欲したのだ
ミコラーシュにとって瞳は、獣の愚かさを克させるものであった
ああ、ゴース、あるいはゴスム我らの祈りが聞こえぬか白痴のロマにそうしたように我らに瞳を授けたまえ我らの脳に瞳を与え、獣の愚かさを克させたまえ(ミコラーシュ)
初期医療教会(実験棟)にとって瞳は、上位者の声を聞くための触媒である
脳液(屋根裏)医療教会初期、上位者は海と紐づけられていた故に頭の患者は、自らを水で満たし、海の声を聞くそして脳液とは、頭の中で瞳になろうとするその最初の蠢きであるという
脳液がほしいの。暗く蕩けた脳液がだってもう、ずっとずっと、湿った音が聞こえないのよ…(アデライン)
※また後述するがやや変則的ながら聖歌隊も脳に瞳を得ようとしている
つまりアプローチの仕方には差異はあれど、各陣営は脳に瞳を得るために活動しているのである
3本目のへその緒
瞳獲得の方法としてプレイヤーに提示されているのが3本目のへその緒の使用である
3本目のへその緒使用により啓蒙を得るが、同時に、内に瞳を得るともいうだが、実際にそれが何をもたらすものか、皆忘れてしまった
ウィレームもかつて3本目のへその緒による瞳の獲得をもくろんでいた
3本目のへその緒(偽ヨセフカ)かつて学長ウィレームは「思考の瞳」のため、これを求めた脳の内に瞳を抱き、偉大なる上位者の思考を得るためにあるいは、人として上位者に伍するために
しかし、である「かつて」とあるように学長ウィレームが3本目のへその緒を求めたのは過去のことである。実際、ウィレームを倒した時に得られるのはカレル文字「瞳」であり、それは血に依らずに神秘の力を得ることができるものである
秘文字の工房道具カレル文字を脳裏に焼き、その神秘の力を得ることができる血に依らぬそれは、学長ウィレームの理想に近いものだ
血に依らぬ、と強調されているように、この「瞳」の獲得の仕方は、3本目のへその緒による瞳獲得とは方法や志向が異なるのである
宮崎英高氏はインタビューで各陣営の背景哲学についてこう述べている
それがウィレームであろうと聖歌隊であろうとメンシス学派であろうと、それらのそれぞれはそれらを駆り立てる特定の背景哲学を持っています。(インタビュ-より)
つまりウィレームは血に依る瞳獲得ではなく、カレル文字による瞳の獲得を目指したのである。それは3本目のへその緒と決別するという意味である(ゆえに「かつて」なのである)
またウィレームの直系である聖歌隊も3本目のへその緒を求めていない
目隠し帽子帽子の目隠しは、彼らが学長ウィレームの直系である証であるたとえ、いまや道を違えたとしても
直系であり、しかし道を違えた彼らは星からの徴を求めたのである
聖歌装束見捨てられた上位者と共に空を見上げ、星からの徴を探すそれこそが、超越的思索に至る道筋なのだ
加えて、実はミコラーシュも3本目のへその緒による瞳の獲得を目指していない
というのも、ミコラーシュは入手した3本目のへその緒をメルゴーと邂逅するために使用してしまったからである
3本目のへその緒(メルゴー)故にこれはメルゴーとの邂逅をもたらしそれがメンシスに、出来損ないの脳みそを与えたのだ
上で引用したように、ミコラーシュはゴースあるいはゴスムから瞳を授けられることを目指している
さらにいえばゲールマン含む狩人陣営も3本目のへその緒による瞳獲得をめざしていない。というのも3本目のへその緒が古工房に捨て置かれているからである
現時点において3本目のへその緒による瞳の獲得をめざす勢力ならびに人物は存在しなかったのである
※ただしプレイヤー狩人は入手した3本目のへその緒を使ったことで上位者の赤子へと変異することから、結果的に3本目のへその緒による瞳の獲得をめざした、と言えるかもしれない
以上が宮崎英高氏のいう各陣営がそれぞれの背景哲学を持つという意味であろう
すなわち「瞳」という1つの概念に対して各陣営がそれぞれのとらえ方、哲学を持ち、それぞれのやり方で「瞳」を獲得しようと探求を続けていたのである
それゆえにプレイヤーがどれか1つの哲学を「瞳」を得る唯一の方法であると早合点してしまうと、誤謬に陥るか、複数の矛盾する情報のなかで延々と堂々巡りを繰り返すことになるのである
ちなみにDLCの実験棟も「瞳」に対する独自の哲学を持っている。彼らはカレル文字でも血に依るのでもなく、「海」がその中心教義である
脳液(屋根裏)医療教会初期、上位者は海と紐づけられていた故に頭の患者は、自らを水で満たし、海の声を聞く
それぞれの瞳
各陣営がそれぞれの瞳を目指し探求に励んだ結果、各陣営はそれぞれの「瞳」を獲得している
ウィレームが獲得したのはカレル文字「瞳」である。確かにその「瞳」は脳裏に焼き付けられ、ウィレームに神秘の力をもたらしたのである(しかし上位者にはなれなかった)
実験棟(初期医療教会)も彼らの「瞳」に到達した者たちである。彼らは精霊の卵という「瞳」を獲得した。それは「苗床」となり医療教会の神秘方面の知見となったのである
また聖歌隊は星からの徴という「瞳」により、星界からの使者(大)と邂逅し、メンシス学派は瞳を宿したメンシスの脳を得たのである
このように各陣営はそれぞれの哲学に見合った「瞳」をそれぞれ得ているのだが、各陣営とも彼らが求める真の「瞳」を獲得できていない
ウィレームは遂に上位者に伍することはできず、ミコラーシュは獣を克することはできず、聖歌隊は超越的思索に至れず、実験棟の試みは失敗作を誕生させたのみであった
真の瞳とは、つまるところプレイヤー狩人が「幼年期のはじまりEND」で到達した、人の進化の次の段階にあたる上位者の赤子のことである
トロフィー「幼年期のはじまり」自ら上位者たる赤子となった証。人の進化は、次の幼年期に入ったのだ
そしてそれは「青ざめた血」を求めることで達成される(これについては「考察まとめ1 青ざめた血」)
それゆえ血に依らぬ手法を理想としたウィレームには到達できなかったのである。またその他の陣営に関しても出来損ないの脳の瞳を得ることはできたが、彼らの最終目的である真の瞳は得られなかったのである
脳の瞳
各陣営の獲得した「瞳」は言うなれば、出来損ないの「脳の瞳」である
ウィレームはカレル文字「瞳」を脳裏に焼き付け、メンシス学派は瞳を宿した巨大な脳みそを手に入れ、初期医療教会(実験棟)は、脳に宿った精霊の卵(瞳)を手に入れたのである
やや複雑なのが聖歌隊である。実際に星界からの使者(大)という上位者を確保しており、一見すると「瞳」を手に入れたようにも思える
だが、星界からの使者(大)は「赤子」でないという点で真の瞳ではない
とはいえ、聖歌隊の気づき、「宇宙は空にある」は一読すると脳とは関係ないように思える
だが、この空はエーブリエタースと共に見上げる空である
聖歌装束見捨てられた上位者と共に空を見上げ、星からの徴を探すそれこそが、超越的思索に至る道筋なのだ
つまりエーブリエタースは空を見上げていることになるが、嘆きの祭壇にいるエーブリエタースの顔は上ではなく、まるで視界を閉ざすかのように地面に向かって伏せられている
この意識的な視界の喪失は、仮面で目を覆ったウィレームや目隠し帽子を被った聖歌隊と共通の思想様式である
つまり、彼らが見ているのは物理的な空ではない
彼らにとって視覚は空を見上げるうえで障害にしかならないのである。それゆえに彼らは眼を覆って視覚を失くし、物理的ではない形而上学的な領域を見上げているのである
それはつまり「精神」という空である
その精神が宿るのが「脳」である
彼らはウィレーム直系の思索哲学を持ち、しかし道を違えて超越的思索を探求している
思索とは思考であり、脳は思考の座である
聖歌隊は精神の空に宇宙があることに気づき、精神の最も深い部分から到来する「星からの徴」を追い求めたのである
そしてそれはウィレームの血に依らぬ手法とは道を違えた手法、つまり「血」に依る思索によって成されたものである
すなわちエーブリエタースの血を拝領することで彼らは神秘の力を体内に取りこみ、それにより精神を介して神秘的実体である「宇宙」へアクセスしたのである
その内の幾人かは星からの徴を獲得して星界からの使者となり、さらに一人は星界からの使者(大)となったのである(星からの徴は超越的思索に至る道筋であって、そのものではない)
偽ヨセフカの治療に使われたのはエーブリエタースの血である。その血を輸血された人間は精神を介して宇宙とつながり、星からの徴を得て星界からの使者に変異するのである
そうした精神の宿る場所は脳であり、その精神を介して宇宙とつながるのであれば、それはつまり脳と宇宙をつなげることに他ならず、その宇宙にある星から到来した徴は脳に宿ることになる。それは脳に宿った星からの徴、つまるところ脳の瞳である
以上の関係性を図にしたのが以下である
蛇足
本作では1つの言葉や概念に複数の意味を重ね合わせるという手法が用いられている
この手法にとらわれると、プレイヤーは1つの意味に固執するあまりに誤謬の罠に陥るか、互いに矛盾する複数の事実のなかで自家撞着の袋小路をさまよい続けることになる
解決法は単純で、1つの概念に複数の意味が重ねられていることに気づけば良いだけである
「瞳」はその典型で、各陣営によって「瞳」へのアプローチが異なるのだから「瞳」として得られた成果も異なるのは当然のことなのである(しかしほとんどの成果は出来損ないである)
この「瞳」は最終的に狩人の変異した「上位者の赤子」とも重なるが、その「上位者の赤子」についても複数の意味が重ねられた複合概念(多重概念)である
上位者の赤子の多重性については後日考察する予定だが、端的に言って上位者の赤子とは単に上位者の遺伝子を受け継ぐ子と言う意味もあれば、もっと特別な意味を有した存在でもある
いつも考察楽しく読ませていただいております。ウィレーム先生が瞳が必要だと喝破して具体的に説明をしなかったばかりに教え子たちが各々突き進んだ結果本編の有様という
返信削除エーブリエタースの血を輸血した結果使者になる、というところでやつしの男ほど獣化が進んでしまった(ある程度制御は出来ていたようですが…)人でも使者にできてしまうあたり濃厚な神秘というのは獣性を確かに強力に押さえつけるようですね。強力すぎて治療にはやはり活かせそうにないので偽ヨセフカは効き目を見て自分には古い血が良さそうだと判断したのかも…
以前からカレル文字がすごく面白いと感じており、ウィレームのドロップする「瞳」が出来損ないな感じがして引っかかっていたのですが、ストンと納得できた気がしました。遺跡の獣をきっかけにカレルが見出した獣に端を発して神秘にまつわるものも多く、最終的に求めるものに到達できずとも血に依らない進化を求めたウィレームとその弟子の成果なんだなぁと思うとやはり面白いものですね。
話題が飛んでしまいましたが動画もブログもこれからも楽しみにしています。
コメントありがとうございます
削除そういえばカレル文字については本格的に考察してませんでしたね
血に依らないカレル文字やその筆記者カレルは興味深い点が多いです
カレル文字を脳裏に焼くことで神秘の力を得る、という方法は実験棟の「頭の中の瞳」とも共通する点があるように思えます
学長ウィレームからはじまった「瞳」研究の歴史を時系列順にまとめてみるのも面白いかもしれません
人形は赤子となった主人公に特に驚くこともなく
返信削除なれた手付きでお世話しているようにも見えるような。
人形には赤子育成機能も搭載されているのでは…?
人形の乳母機能については過去に考察していますが、未使用データに人形の子守歌があるようです
削除→https://www.youtube.com/watch?v=nEvHa9UQPR0
詳細はこちらへ「考察29 人形と月の魔物」
→https://souls-seed.blogspot.com/2020/06/bloodborne-29.html